【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】 - 暇つぶし2ch250:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 03:44:06 JakRcthF
>>243
>>245のいうとうり、なんで今までこのネタが無かったのかが不思議だ。

今まで色々なローゼンの小説を読んできたが、性転換、逆行、クロス、立場の入れ替えなんかはほぼなかった。
上に挙げたネタでなんか書けないかな。
まあ、逆行は原作がまだ完結してないから無理っぽいんだろうけど・・・


251:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 11:15:57 FTukinwK
>>243
乙です。
いつかやろうと思っていたネタでしたが、俺が書くよりケットシー氏が書かれた方が良いので単純に嬉しいですw

>>250
上で挙げられた全てのジャンルは長編でこそ面白味を増す設定であるから、
このスレに投稿されるほぼ全てのssがショートショート以下の長さであることを考えれば
今までそれらのジャンルが出なかったのはある意味必然かもしれんね。

252:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 11:38:53 1Froh9Zw
>>243
これは女性受けしそうな作品ですねw
乙ですー


253:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 11:44:09 fSxFH4qW
こういうSS書いてる人って文系大学で国語でも専攻してんのか?

254:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 22:49:17 FTukinwK
>>253
それはいくらなんでも現代文学を専攻している世の大学生に失礼だと思うが。

255:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 23:07:47 3q5N/Nt5
それが何か?

256:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 23:52:53 ZUTyL1Q0
>>253は褒め言葉、
>>254は誰でも慣れれば書けるはずだガンバレ


で脳内変換した

257:以前SS書きました
06/04/07 17:02:12 11PC7pk+
>>253
気持ちさえあれば意外と書けますよ。
表現は文庫から学べますしw


258:ケットシー
06/04/07 20:14:56 gIQASey8
私も見よう見まねで書いてます。
だから、それなりの文しか書けないんですがw
国語の勉強はあまり真剣にやってなかったです。
SS書いてる今では、真面目にやっておくべきだったと反省してたり。
なので、根気さえあれば誰でもそれなりのSSは書けますよ。
文章を書くには慣れも重要かなと思う、勉強嫌いな私です。

>>251
ネタは早い者勝ちということで、恨みっこなしでw

では、投下いきます

259:ケットシー
06/04/07 20:16:16 gIQASey8
>>242

「僕はローゼンメイデン第五ドール桜田ジュン」
「私は真紅。それ以上は何も聞かないで」

 騒々しい出会いが一段落した所で自己紹介を始める二人。
 人形の自己紹介を聞いても、真紅はそれほど混乱しなかった。彼女はローゼンメイデンに関する書籍を読んでいてジュンと出会ったのだ。わずかでも予備知識があった分、冷静に対応できた。
 真紅の自己紹介については、深く考えないでおいてほしい。真紅は真紅。それでいいではありませんか。

 自己紹介が終わった所で、ジュンは大切な交渉を持ち掛ける。これを成すために真紅が選ばれたのだ。

「ローゼンメイデンはアリスゲームで争っているんだけど、それにはミーディアムの協力が必要なんだ」
「アリスゲーム? ミーディアム?」
「そう、アリスゲーム。アリスを生み出すための戦い。僕にとっては非情に迷惑な戦いなんだけど、狙われているから戦うしかないんだ」
「それで、ミーディアムは?」
「ミーディアムは、僕達ローゼンメイデンに力を送ってくれる人間を指す言葉。今から真紅がそれになるんだ」
「は? どうして?」

 ミーディアムになれと言われ、真紅が見るからに嫌そうな顔をする。戦いに巻き込まれるのだから、それが常識的な反応だろう。
 こうまで露骨に嫌な顔をされるとは思っていなかったジュンは、一瞬怯みながらも説得する。

「ホーリエがお前を選んだからだよ。人工精霊は、ドールに見合うミーディアムを選ぶ事ができる」
「それはいいけど、私に見返りはあるのかしら」
「見返り?」
「当然でしょ。得る物も無いのに戦うなんてごめんなのだわ」

 交渉はここでストップしてしまう。歳に似合わず、やけに現実主義な真紅の主張に、ジュンは何も言い返せなかった。アリスゲームに報酬など期待できない。

260:ケットシー
06/04/07 20:17:10 gIQASey8
 ジュンがこの場は諦めようとした時、二人の頭上から黒い羽が数本落ちてきた。ここは屋内。野鳥の可能性は無い。

「もう来たのか!」

 ジュンが張り詰めた表情で周囲を見回して警戒する。
「来たって、何が?」
「敵だよ、敵。他のローゼンメイデンが来たんだよ!」
 敵襲と聞いて真紅も表情を硬くする。すでに彼女も逃げられない所まで来ていたのだ。
 二人が背中合わせに警戒する中、敵は静かに現れた。

「ジュン、やっと会えた……」

 外から入ってきたのか、黒い翼を持った人形が窓ガラスを通り抜けてきた。
 その人形は長い黒髪に真っ白な肌で、まるで幽霊のようだった。何故か、その服装はパジャマにカーディガンの姿だった。

「第一ドール柿崎めぐ……!!」

 ジュンが黒い翼のドールの名を呼ぶ。彼女は第一ドールの柿崎めぐだった。
 ジュンはめぐを見て恐れおののいた。その様子は、蛇に睨まれた蛙さながらだ。
 だが、めぐの様子は正反対だった。儚げに微笑むと、両頬に涙の筋を作らせる。

「何十年もあなたを探したわ。今度こそ、あなたを逃がさない……」

 めぐは両腕を広げ、浮遊したまま無音でジュンに近寄っていく。
 ジュンは逃げたかったのだが、金縛りにあったように体が動かない。
 とうとう、めぐはジュンの身体を捕まえ、両腕でひしと抱き締めた。

「ジュン、大好きよ。だから、おとなしくしててね」

 そう言った後、めぐはジュンを強引に押し倒した。ジュンは必死にもがいて助けを呼ぶ。

「真紅っ、助け……」


261:ケットシー
06/04/07 20:18:23 gIQASey8
 真紅は助けを求められても、何もする気が起きなかった。どこから見ても、ただの惚気だ。
 だが、傍観していられるのも最初だけだった。
 なんと、めぐがジュンに跨ったままパジャマを脱ぎ始めたのだ。上着を脱ぎ、ズボンに指を差し込んだ時、さすがに真紅も黙っていられなくなった。

「ちょ、ちょっと貴女、何をしてるの!?」
「見て判らないの? 服を脱いでいるの」
「そんなの判ってるわっ。だから、どうして脱ぐ必要があるのかと聞いているのだわ」
「だって、服を着てたらできないでしょ」
「できないって、何が」
「子作り」

 真紅の時間がたっぷり十秒は止まった。
 人形が子作り? 子作りって、やっぱりアレのこと? ちょっと待って。そもそも人形にできるの?
 真紅の思考が同じ疑問で何周もループする。
 その間にめぐはズボンを脱ぎ、下着も脱ごうとしていた。
 固まっている真紅をどうにか呼び戻そうとジュンが声を掛ける。

「真紅、これがアリスゲームなんだ! だから、早くミーディアムの契約を……!!」

 この呼び掛けで真紅は溺れかけていた思考の海から生還した。この部屋で男女の情事をおっぱじめられては堪ったものではない。

「契約はどうすればいいの?」
「この指輪に誓いの口付けを……」


262:ケットシー
06/04/07 20:19:13 gIQASey8
 伸ばしたジュンの左手薬指に薔薇の指輪が具現化する。
 めぐはジュンのズボンを脱がすことに夢中で、そのやりとりには気付いていない。
 真紅の唇が指輪に触れた瞬間、ジュンの身体は自由になった。
「きゃっ」
 めぐが突き飛ばされて床に仰向けになる。
 真紅の左手にも指輪が具現化し、赤く光って熱を持つ。彼女を通して力が送られている証だ。

「指輪が熱い……」
「ミーディアムの力を使ったからだ。おかげで助かったよ」

 ジュンがズボンのベルトを締めながら説明する。そんな姿で感謝されても誠意は半分も伝わらないが……。
 あられもない姿で倒れていためぐが、むっくりと上半身を起こす。

「ジュン、どうして拒むの……?」
「こんなの間違ってるよ。だから……」
「私のこと、嫌い?」
「そんなんじゃない。でも、ごめん」

 正面から拒絶されためぐは居たたまれなくなって、脱ぎ散らかしたパジャマや下着を急いで掻き集める。
 そして、今度は窓ガラスを破って外へと出て行った。その目尻には、光るものが見えた。





263:ケットシー
06/04/07 20:20:37 gIQASey8
「ねえ、アリスゲームって何なの?」

 めぐが去った後、真紅がアリスゲームの詳細をジュンに尋ねた。ミーディアムになった以上、知らなかったでは済まされない事が起こるかもしれないし、知る権利もあるはずだ。

「その話は少し長くなるから、紅茶でも飲みながらにしよう。窓ガラスも元に戻さなきゃいけないし」
「当然、ジュンが淹れてくれるわよね? 私は協力してあげる立場なのだから」
「かしこまりました」

 ティータイムを提案したジュンに、すかさず真紅が注文を入れる。彼女の露骨だが正しい意見に、ジュンは必要以上に改まってささやかな反撃をした。
 早くも真紅に使われるジュンだった。

 お茶にする前に、ジュンは風通りがよすぎる窓を直すことにした。
「ホーリエ、頼む」
 赤い光の精霊が現れ、窓の前で踊る。
 すると、ばらばらになったガラスの破片が、どこからともなく集まってきた。
 窓ガラスが時間が巻き戻るように元通りになるのを、真紅は呆然と眺めていた。魔法としか言いようのない奇跡に、驚嘆の声も出なかった。
 次は崩れた本棚をてきぱきと整理し、ジュンは電気ポットのお湯で紅茶を淹れにかかった。



264:ケットシー
06/04/07 20:21:52 gIQASey8
「なかなかの腕前ね。もう少し熱い方が好みなのだけど」
「覚えておきます、お姫様」
 ジュンが淹れた紅茶を彼女なりに褒め、ジュンは思いっきり皮肉混じりに受け答える。
 それでも、真紅はお姫様と呼ばれて悪い気はしなかったようだ。彼女は涼しい顔で紅茶を啜る。
 ジュンも紅茶で喉を潤しながら、アリスゲームの話を始めた。

「ローゼンメイデンは全部で七体。その中で男として作られたのは僕だけなんだ」
「どうして貴方だけ男なの?」
「それはアリスゲームのためさ。僕を巡って残りのドールズがしのぎを削る。何のためかは、めぐに聞いただろ?」
「まさか、本当に子作りのために?」
「その「まさか」だよ。僕との間の子が、アリスとして誕生するらしい。お父様も信じられない事をしてくれるよ……」

 人形の子供がアリスとして生まれる。そんな馬鹿げた話に真紅は眩暈を起こしそうになった。それにはジュンも同感で、彼も頭を抱えて塞ぎ込んでいた。
 話は解っても、当然湧いてくる疑問がある。好奇心に負けた真紅は、恥ずかしげもなくそれを尋ねる。

「貴方、子供が作れるの?」
「僕はローゼンメイデンだぞ。不可能は無い!」
「そうね……」

 ジュンの自信たっぷりな返答に、真紅は疲れを感じずにはいられなかった。



つづく

265:ケットシー
06/04/07 20:25:01 gIQASey8
暴走しまくりのケットシーです。
ついでなのでアリスゲームも改変しちゃいました。
血生臭くないローゼンメイデンがあってもいいですよね?
別の方向で生臭いですがw

266:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 20:33:25 8cfWYspL
子作りてwwwwwwなんかほのぼのしてていいですね。



267:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 20:47:19 MPpCAmhk
>>265
ちょwww
いろいろツッコミたいが黙って続きをwktk

268:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 20:50:49 W8kH6UeS
ちょwwwめぐがズボンかwww

269:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 21:00:58 HoFp2zxO
人形とセックスかいな

270:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 22:08:35 PG6IrWHv
他のドールが誰なのか気になりますwww

271:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 00:17:04 l7tc2cCg
ジュンは薔薇男児だったんだなw

272:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 01:24:41 jCgJDA/c
トゥモエとみっちゃんと韓国海苔は確実に出てくるだろうなw
後は大穴で由奈か。

273:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 01:29:54 +ak0TTE1
マツ・・・

274:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 01:34:01 i7FXG8OO
>>273
……ジュンに子作りを強要する姿を想像してしまった。
鬱だSNOW

275:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 03:48:06 aOJ62lvA
>>273
・・・え?7人?ふむ
けど主要人物の人間の女って5人しかいないよね?
だから数合わせに翠星石が起用されるのだとしたら・・・
JUMに△×を強要する翠・・・JUMに○□を強要する翠・・・
うわぁぁ、俺の思考がぁぁーードカーンッ

276:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 03:52:27 Yjz7QKSq
巴の母いるでしょ

277:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 04:30:08 J+sfz08S
そこで最凶メンヘラーオディールさんですよ

278:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 04:52:22 GBuukZBu
コリンヌもな

279:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 08:25:00 7bbP47bi
里芋ドール、加藤さんを忘れてないか?

280:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 01:17:57 XSYVmWPZ
アナゴは?

281:吝嗇 ◆NbRB5BoUN6
06/04/09 16:31:05 F9Ea18CB
では、一本投下します
渋いお茶など煎れてご笑読下さい
歯にしみるような甘口のお話なので


282:魔法の言葉 (1)
06/04/09 16:32:16 F9Ea18CB

大学病院の一室、心地よい5月の風が病院の薬臭い瘴気まで流し去ってくれるような、そんな穏やかな時間

病室には一人の少女と、一体のドールが居た

不治の病の少女の病室だった、他の姉妹をすべてブッ壊す使命を負った、命宿る人形がそこに居た
その少女の生命を食い物にするために媒介の契約をしたドールは、最近は戦う以外の時間を
少女の病室で過ごす事が多かった、喋るでもなく触れ合うでもない時間、ただ、少女の歌が好きだった

「水銀燈・・・いいこと考えたの♪」
「めぐ・・・アンタのその顔、怖いわよぉ」

窓枠に腰掛けていた水銀燈は体をひねってめぐの顔を見た、めぐの笑顔を見て自分の顔をひん曲げた
めぐの瞳がクリクリと動き、イタズラっぽく光る、めぐは水銀燈と出会うまではこんな顔をしなかった
水銀燈はめぐのその目がキライだった、こういう目をする時、めぐは突拍子も無い事を言い出す
この間こんな目をした時、めぐは真顔で「水銀燈、キスをしましょう」と言い出した
水銀燈はメグのその目が嫌いだった、嫌いすぎて胸の鼓動が不安定になる、キライすぎて目が離せない
キライで・・・キライで・・・目が離せなくて・・・胸がドキドキして・・・動けなかった・・・そして受け入れた

「わたしの・・・お嫁さんになりなさい!」

水銀燈は腰掛けていた窓枠から落っこちそうになった、普段は蒼白な顔を真っ赤にして、めぐに毒づく
「バ・・・バ・・・バカじゃないの?あんたイカレてるわぁ!この私に白いウエディングドレスを
着ろですって?イヤよ!バカじゃないの?何で二人してバカ面並べて、あんたらがありがたがる
『キョーカイ』とか『シンプ』の前で、『生涯愛する事を誓いますか』なんて・・・イヤよ!絶対イヤ!」

水銀燈は絶対イヤだった、めぐはひどいと思った、とても意地悪でイヤな奴だと思った、絶対に無理
ドールの自分に、罪を重ねた自分に、そんなママゴト遊びのような真似なんて、そんな、幸せなんて・・・

「・・・・めぐ・・・・・イヤだからね・・・バカよ・・・めぐはバカよ・・・こんなジャンクのわたしを・・・貰ってくれるなんて
誓うから・・・何でも誓うから・・・幸せにしてくんなきゃ・・・・・イヤだからね・・・・・わたし・・・・う・・・う・・・」

水銀燈の震える背中を見つめるめぐは、もういちど目をクリクリとさせて笑った

その笑顔は・・・水銀燈の心を奪った笑顔



283:魔法の言葉 (2)
06/04/09 16:33:14 F9Ea18CB

「めぐのプロポーズ作戦、大成功♪」
「・・・・・・・・バカぁ・・・・・ドールとじゃ、女のコ同士じゃ、結婚できないじゃない・・・」
「いいこと考えたの♪」
「めぐゥ・・・アンタのその顔、怖いわよぉ」

めぐはベッドの上で身軽に転がった、1年の保証すらないメグの病は、精神的な変化でほんの少し好転した
それが「容態の急変」で瞬の間に消えてしまう命だとしても、めぐは今を楽しんでいた
ベッドの手すりに引っ掛けていたコード、その端のボタン、あまり使わなかったナースコールを押した

ポーン

スピーカーから声が流れる、水銀燈は嫌いだった、距離を隔てて声が届く現象、摂理に反してると思う
めぐの部屋にそんなものがあると、自分の声とめぐの囁きに割り込む物があると、その・・・ジャマになる

「ハーイ、柿崎さん、どうかしましたか?」
「あ、婦長さん?ちょうどよかった、わたしロンドンに転院しま~す♪、今すぐ!」
「え?ロンドンって?ちょっと柿崎さ(ブツッ)」

めぐは二人の邪魔をする無粋なコードを引き千切った、水銀燈の不満を一瞬で解決、そしてまた笑った
水銀燈は不安だった、何だかワケのわからない展開、ひどい目に遭う予感じゃない、逆の不安

「ろんどんって、どんなオトギの国よぉ?わたしたちが結婚できるの?」
「ねぇ水銀燈・・・エルトン・ジョンって知ってる?ジョージ・マイケルは?」
「?」 

英国が採択した新法案で、同性のパートナーとの事実上の結婚を果たしたアーティストの名を、
水銀燈は知らなかった、めぐは知っていた、病室の青春、ラジオが友達だった時期がとても長かった

水銀燈は再び俯く、やっぱりこのミーディアムはダメだ、わたしの黒い体まで何だか赤っぽくなるようだ
それが「幸せの前の不安」だなんて信じられなかった、まさかあの「何とかブルー」とかいう物だなんて

「ダメよ・・・やっぱりダメ・・・だってあんたら人間が遠くに行く時は
『ヒコウキ』に乗らなきゃいけないんでしょ?めぐ、そんな体で長旅なんて無理よぉ、死んじゃうわよぉ」
「いいの」
「よくないわぁ!だ、だって、アンタが死ぬと困るのよ!バカでもアンタ、ミーディアムだからね!」
「だって・・・『愛は命がけ』って言うじゃない」

水銀燈は・・・・・何も言えず・・・・ただ・・・・・・・・・・・・・・黒い体を真っ赤の染めて・・・

「あらあら、わたしの天使さんは泣き虫さんね、これじゃ『本番』が思いやられるわ」
「バカぁ!・・・バカぁ!・・・・めぐのバカぁ・・・・びぇえぇぇん!・・・・」


284:魔法の言葉 (3)
06/04/09 16:34:36 F9Ea18CB
MEGU YOU HAVE TAKEN SUIGINTOU TO BE YOUR WIFE. WILL YOU LOVE HER, COMFORT HER,
HONOR AND KEEP HER, IN SICKNESS AND IN HEALTH, IN GOOD TIMES AND IN BAD, AND BE FAITHFUL TO HER
AS LONG AS YOU BOTH SHALL LIVE?”」


「I WILL!」


「SUIGINTOU YOU HAVE TAKEN MEGU TO BE YOUR WIFE. WILL YOU LOVE HER, COMFORT HER,
HONOR AND KEEP HER, IN SICKNESS AND IN HEALTH, IN GOOD TIMES AND IN BAD, AND BE FAITHFUL TO HER
AS LONG AS YOU BOTH SHALL LIVE?”」


「・・・・・・I WILL」



「 MEGU AND SUIGINTOU HAVE DECLARED BEFORE ALL OF US
THAT THEY WILL CONTINUE TO LIVE TOGETHER IN MARRIAGE. THEY HAVE MADE SPECIAL PROMISES
TO EACH OTHER. THEY HAVE SYMBOLIZED IT, BY THE JOINING OF HANDS, THE TAKING OF VOWS
AND EXCHANGING OF RINGS.”
“SO THEREFORE IT GIVES ME GREAT PLEASURE TO REAFFIRM YOU AS WIFE AND WIFE.” 」


「“YOU MAY KISS THE BRIDE.”」



285:魔法の言葉 (3) 邦訳
06/04/09 16:35:36 F9Ea18CB

「めぐ、汝は 水銀燈を妻とし、水銀燈を愛し、敬い、慰め、助け、
病める時も健やかなる時も、良き時も悪しき時も、
どんな時でも命ある限り誠実に尽くすことを誓いますか? 」

「誓います!」

「水銀燈、汝は めぐを妻とし、めぐを愛し、敬い、慰め、助け、
病める時も健やかなる時も、良き時も悪しき時も、
どんな時でも命ある限り誠実に尽くすことを誓いますか? 」

「・・・・・・誓います」

「本日、めぐと水銀燈は結婚し生涯を共にするという誓約を明らかにされました。
それは、両手を取り合い、愛を誓い、指輪を交換したことにより象徴されています。
それ故に、お二人を正式に妻と妻として宣言いたします。 」

「それでは、誓いの口づけをどうぞ! 」



286:魔法の言葉 (4) 邦訳
06/04/09 16:37:06 F9Ea18CB

大学病院の一室、湿っぽい6月の風を乾かすような、暖かく甘い雰囲気の病室、そんな幸せな時間

病室には、一組の・・・・・



コリント人への手紙-第13章

愛は寛容であり、親切です。
また愛は人を妬みません。
愛は自慢せず、高慢になりません。
愛は礼儀に反することをせず、
自分の利益を求めず、怒らず、
人を恨まず、不正を喜ばずに真実を喜びます。
全てを耐え、全てを信じ、
全てを望み、全てを忍びます。
どのようなことが起ころうとも、
真実の愛は決して終わることはありません。


魔法の言葉(完)

287:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/04/09 16:46:36 F9Ea18CB
この作品のタイトルは Do As Infinityの名曲
『魔法の言葉~Would you marry me?~」から頂きました

毎回甘々でも飽きるので、次あたりはスパイスの効いた作品など投下したいと思います

では

追伸
(4)のケツについてる「邦訳」は無しって事でお願いします、投下ミスです

288:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 16:49:01 mrB3nWtk
>>287
あま~~~~~~~~い!!!
GJ

289:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 17:10:18 Dw8A197F
金糸雀「イェア!ファッキンエイリアンをぶちのめすぜ!」
翠星石「フゥーハッハ!弾はいくらでもあるぜ!」

290:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 17:12:50 ncLW0sPl
>>287
いいよ。
俺はピアノマン派なんで次回はビリー・ジョエルきぼんぬ。

291:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 18:40:33 K4r9QSjY
甘すぎて糖尿病になった

292:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 18:44:35 KQqs1V/R
>>289
タイミングおせーよ

293:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 19:04:25 Dw8A197F
あー、タイミング見誤っちゃったよ。

294:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 20:05:13 l5cQehsB
>>287
その極まった甘さに乾杯
結婚までしてしまうとは思わなかったw
甘いのもいいですね、GJ

295:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 21:52:18 5NzhajOX
後日談があればなお良かったかもしれません。
でもとてもいい感じです。GJ!

296:放蕩作家
06/04/10 03:00:20 HCT/k/Om
初投下。
温かい目で読んでやってください。

297:放蕩作家
06/04/10 03:02:18 HCT/k/Om
>>296
なんか消えた・・・。
すみません。暫く待ってください。

298:放蕩作家
06/04/10 04:10:11 HCT/k/Om
ローゼンメイデンの秘密


 ジュンは復学に向けて図書館で勉強をしていた。
「ふ~・・・。一段落着いたし、ちょっと休むか」
 そう言いながら立ち上がり、体を伸ばす。
「そういえばこの図書館の奥の方って行ったこと無かったな・・・。少し覗いてみるか」
 ジュンは彼のまだ見知らぬ処女地へと足を向けた。


「・・・図書館の奥なんてみんなこんな感じか」
 人気が感じられず、どこか暗い感じがする図書館の奥には、一度も触れられた事が無いような本が、本棚を隙間無く
埋めていた。
 世界には自分しかいないのではないか。そう錯覚しそうなほど辺りは静まり帰っていた。
 そんななかジュンは、本棚と本棚に挟まれてできた通路を、本のタイトルを流し読みしながら歩いていた。
暫く足を進めていると、ふとある本のタイトルに目を留め、次の瞬間、石のように固まった。
 その本のタイトルは・・・

『ローゼンメイデンの秘密』

 ジュンは硬直した。するしかなかった。
 何だこれ?とか、何でこんな所にとか、誰よ書いたのとか、ありとあらゆる思考が彼の脳内を駆け巡り、それが飽和
状態に達した時・・・。
「は、はいーーーーーー!!!!???」
 彼は絶叫した。
 それはもう壁に貼ってある『館内ではお静かに』という壁紙に真正面から喧嘩売るような大声で。
 その後ジュンは、館内の隅々まで響いた大声を聞いた職員が、駆けつけるまでその場で唖然としていた。

 事務室まで連行されたジュンが、職員に大目玉を喰らったのはまた別の話。
 その日以来、ジュンが図書館に入るたびに、ドライアイスよりも冷たい目で見られるようになったのも、やっぱり別
の話。

(たぶん)続きます

299:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 04:48:08 hFYaBhp2
wktk

300:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 05:03:22 u9WiF+Q0
>>297
メモ帳等にこまめに保存しながら書くといい。
期待。

301:ケットシー
06/04/10 20:24:27 GPhT6aES
>>264

 真紅とジュンの奇妙な共同生活が始まった夜。普段はテレビの音もしない静かな部屋が、またまた騒がしい事になっていた。
 今度の騒ぎの元凶は、真紅の姉だった。彼女がこの部屋に乗り込んできた所まで時間は遡る。


「真紅! 今日という今日は許さないわよ」

 ノックもしないで部屋に入ってきたのは、銀髪と赤い瞳が印象的なきれいな女性だった。その肌の白さは異常で、めぐにも勝る。この女性の白さは本当に病気なのかもしれない。
 読書に耽っていた真紅は、別段驚きもせずに本から顔を上げる。

「あら、水銀燈姉さん」

 赤い瞳の女性は、真紅の姉だった。彼女の名は水銀燈といい、ここの長女である。年齢は……高校生とだけ言っておこう。ちなみに、この家は七姉妹という大家族で、真紅は五女だ。

 真紅のすました顔が水銀燈の虫の居所を悪くさせる。彼女は真紅という問題児に昔から手を焼かされているのだ。長女として生まれてしまったからには、妹の面倒を看る責任がある。その妹の中でも、真紅は群を抜いて厄介な存在だった。
 真紅の引き篭もりは今に始まった事ではない。小学校に上がる前から、今と同じような、本に囲まれた生活を送ってきたのだ。小学校へは、一年生の初めに何日か登校しただけだ。どれだけ周りに心配をかけたか、想像に難くない。


302:ケットシー
06/04/10 20:25:23 GPhT6aES
 部屋に入った水銀燈は早速、見慣れない鞄と人形を発見する。ジュンは絨毯に寝そべって何かの本を読んでいた。
 水銀燈はジュンに近付いて、本を読む人形を上からしばらく観察する。そして、いきなり学生服の襟を摘んで、猫を扱うようにひょいと持ち上げた。
「わわっ!」
 急に持ち上げられたジュンは、驚いて手足をじたばたさせる。
 水銀燈はジュンをこっちに向かせ、顔をじっくりと拝見する。

「貴方がジュンね。でも、少しガッカリ。もっといい男かと思ってたのにぃ」

 初対面で名前を当てられ、ジュンと真紅はぎょっとする。そして、この人形慣れしている態度に嫌な予感がしてならなかった。

「水銀燈姉さん、ジュンを知って……?」
「よぉく知ってるわよぉ。この子の事は毎日のように聞かされているからぁ。私のめぐにね」

 それを聞いた真紅は、咄嗟に水銀燈の左手を見た。薬指に薔薇の指輪がはめられている。彼女もミーディアムだったのだ。それも、よりによって第一ドールの……。
 ジュンにとっては最悪の事態だ。あの柿崎めぐが、同じ屋根の下の住人をマスターに選んでいたのだ。めぐもこの家で暮らしていると考えた方が自然だ。ジュンの顔色がみるみる悪くなる。

「めぐの知り合いですか?」
「私はめぐのミーディアムよぉ。今日はあの子を泣かせてくれたそうじゃないの。今も私の部屋で泣いてるんだからぁ」

 水銀燈はめぐから直接、今日の出来事を聞いていた。彼女が立腹してここへ来たのは、そのためだ。彼女はめぐを可愛がっていた。
 めぐは今も傷心中らしい。そのめぐを慰める手っ取り早い方法は一つ。水銀燈は、ジュンを持ったまま部屋を出ようとする。
 それを真紅が見逃すはずも無く、慌てて椅子から腰を上げて引き止める。

「姉さんっ、ジュンをどうするつもり!?」
「めぐにあげるのよ。彼女、この子を欲しがってたから」


303:ケットシー
06/04/10 20:26:22 GPhT6aES
 水銀燈が事も無げにこう答えた。
 それはまずい。まずすぎる。確実にジュンが殺られる。というか、犯られる。 
 人形がどうなろと真紅にとっては関係ない話だったが、このまま見捨てるのも寝覚めが悪くなる。

「ジュンは私の人形よ。勝手に持ち出さないで」
「あらぁ、貴女が本以外に執着するなんて初めてじゃないの?」

 水銀燈が驚いた顔で真紅を見る。その表情から、彼女が言っていることが本当なのだと解る。それだけ、真紅は本の虜になっていたのだ。

「執着なんてしてないわ。ただ、ジュンがかわいそうだと思っただけよ」
「人形相手に?」
 真紅がジュンを人形だと言ったので、意地悪くそこにつけこむ。真紅はむっとなって声を張り上げる。
「気まぐれよっ。気まぐれ!」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるぅ」

 水銀燈は真紅の喜ばしい変化に微笑みながら、ジュンを床に下ろして開放する。
「妹をよろしくおねがいね、ジュン」
 水銀燈はウィンクをしながら小声でそう言うと、部屋を出て行った。その柔らかい表情に素直に引き込まれたジュンは、彼女が出て行った後も、しばらく惚けていた。

 好きなだけ惚けたジュンは、真紅のおかげで危機を脱したことにようやく気が付いた。水銀燈の言葉も思い出し、真紅の足下までトコトコと歩く。

「また助けられたね。ありがとう」

 真紅は黙って椅子に座り、本を開いた。

「気まぐれだと言ったはずよ」

 真紅は意地になって、助けた事を認めようとしない。彼女が素直になれるまで、まだまだ時間が掛かりそうだ。



つづく

304:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 20:45:53 NdjuKwuD
銀様ハァハァハァハァハァハァハァ

305:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 21:06:18 LxCgNI6k
銀様の「柔らかい表情」ってw
是非とも見てみたい!!GJ

306:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 23:06:29 Mq9vj4ku
 復学に向けて勉強をしている最中、真紅が背後から僕を呼んだ。
「ジュン、何か面白い本はないかしら?」
「物置にあるだろ? 探してくればいいじゃないか」
「全部読み終えてしまったのだわ」
「……ほら」
 今の僕にとっての最優先事項は、参考書と柏葉から借りたノートとのにらめっこだ。煩
わしさも手伝って、僕は机の上にあった広辞苑を、無造作に後ろに放った。背後でバサッ
と大きな音がしたのと同時に、真紅の怒鳴り声が聞こえた。
「危ないじゃないの! 私が潰れたり壊れたりしたらどうするの!」
「せいせいする」
 もちろん冗談だったが、真紅を怒らせるには十分過ぎる一言だった。

 ヒュッ……ガスッ!

 延髄に激痛が走った。「いってえぇぇぇっ!」と喚く事が出来れば、どんなに良かった
だろう。一言も発する事が出来ず、僕は床に倒れた。僕の目の前に、さっき投げた広辞苑
が転がっていた。広辞苑の更にその先、ベッドの上で、真紅が顔を真っ赤にして仁王立ち
していた。
「……ど、どうやって投げたんだ、そんな重い本を……?」
「火事場のクソ……じゃなくて、馬鹿力なのだわっ!」
 真紅の赤い顔が更に赤くなったようだ。それはそうと、僕の目が霞む。意識が朦朧とし
てきた。真紅を睨みつけたいところだが、もはやそれさえも叶わない。真紅がベッドから
飛び降り、床の広辞苑をいかにも大儀そうに両手で抱え上げた。
「随分と分厚くて重い本ね……まぁ、せっかくだから読ませてもらうわ」
「ど、どういうつもり、だよ……真紅……?」
 僕の力ない抗議を無視して、真紅はよたよたと部屋のドアに向かう。僕は重ねて尋ねた。
「こ……答えろよ、真紅……僕が……こ、このまま……起き上がらなくなったら……」
 僕の問い掛けに、真紅は澄ました顔をしながら言った。
「せいせいするわね」
「――!」
「大丈夫よ。力は加減しているから、死ぬような事はないわ。もっとも、半日ばかり悪夢
にうなされる事になるだろうけど」
 動けない僕を冷たく一瞥すると、真紅は一旦広辞苑を床に置き、ステッキでドアを開け
た。僕の横をすれ違いながら、真紅は止めの一言を口にした。
「ジュン。私は、あなたが私に言ったのと同じ事を言っただけよ?」

 キィ……パタン

 閉まったドアの向こうから、段々と遠ざかっていく真紅の足音が聞こえる。
 消えかける意識の中、僕はただ一言『ごめん、真紅』と言ったような気がした。




 なんか、初めて短い話を書いた気がする。

307:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 23:44:09 6w70HHHN
結構ピュアな真紅だね

308:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 23:56:20 9BdMt8FQ
短編SF

水銀燈「諸君、今回が我々ライノスクワッドの最初の任務だ。心してかかるように」
金糸雀「ハッハ!乗ってきたぜ!」
翠星石「ド派手にファッキンエイリアンをぶち殺そうぜ!」
~地上到着
水銀燈「ゴー!ゴー!カムン!」
金糸雀「イェア!ぶちかましてこようぜ!」
水銀燈「待て金糸雀!突っ込みすぎると死ぬぞ!」
金糸雀「もう待ちきれねえ!ヒャッフォー!」
翠星石「さすが切り込み隊長!俺も続くぜ!」
水銀燈「おい!無茶しすぎだ!そんなに突っ込むと俺も我慢できなくなってくるぜ!行け!突っ込め!ファッキンエイリアンをキルしろ!」
真紅「俺たち衛生兵がいつでもバックについてるぜ!さあ行ってきな!」
そして突っ込みすぎて囲まれた金糸雀、翠星石
敵は大量、弾は少量
金糸雀「アスホール!ファッキンビッチ!」
翠星石「隊長おせえぜ!俺たちだけで全員殺せそうだぜ!」
わらわらと沸いてくるエイリアン
金糸雀「イェア!ファッキンエイリアンをぶちのめすぜ!」
翠星石「フゥーハッハ!弾はいくらでもあるぜ!」

309:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:17:29 6x5XO0J4
向こうでウケたからって・・・

310:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:25:28 TbLloiqA
309が非常にいいこと言った

311:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:31:20 odL3bKVL
批判禁止だから何もいえない

312:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:40:52 TbLloiqA
向こうは批判禁止でないが無関心というもっと酷い状態だな。
批判でも、反応あれば書き手は喜ぶだろうに・・・

313:熊のブーさん
06/04/11 00:58:13 lQ9QqjB/
なんか流れ悪いから投下。パクリだけど・・・

《ターミネーター翠~プロローグ~》

「……なぁ」
「何ですか?ジュン」
「嘘だろう……」
「何度も言わせるんじゃねえですぅ。嘘なら翠星石はこんなところになんか来てないですぅ」

「ありえねぇぇぇーーー!!」
桜田家に絶叫が響き渡った。

事の始まりは今朝のことだった。
桜田家ドールズとのりは一昨日から二泊三日の温泉旅行だ。商店街の福引で当たったのである。
しかし我らがジュンは風邪を引いており留守番。泣く泣く旅行を諦めたジュンだったが不幸にも翌日にはすっかり完治していた。余談だがジュンの枠には巴が入ったとのこと。
家でおとなしくDVDを見ていたジュンはだらけていた。そこに響き渡るチャイム音。
ピンポーンピンポーン。
不機嫌なジュンはもちろん無視した。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン。
高橋名人もびっくりな見事な連打だった。ジュンも流石に腰を上げる。
「はいはいどなた?」
扉をけだるそうに開け……凍りついた。
そこにはダンボールを体に巻いた女性が立っていた。
「ど、どちらさまで!?」
「ふ、服を貸してくれですぅ!!」
悲壮な叫びだった。しかもその顔はジュンの良く知る顔だった。
「翠星石?」
「どうでもいいから早く中に入れやがれですぅ!!」
温泉に行ったはずの翠星石がそこに立っていた。


314:熊のブーさん
06/04/11 00:59:30 lQ9QqjB/
「助かったのですぅ……」
のりの服を勝手に使うわけにもいかないのでジュンは自分の服を着せていた。ジーンズにワイシャツというなんともラフな服装だが致し方ない。
ジュンはじろじろと翠星石を眺めた。なんか怪しい。髪の色、顔つき、左右の瞳の色、口癖、ぱっと見は翠星石だがドールの特徴とも言える球体関節が無かったような気がする。しかも目の前の翠星石は身長がどう見積もっても一八〇近くある。本物はこんなに大きいはずが無い。
「お前は何者だ?」
「翠星石ですぅ」
(いや、そうなんだろうけどさ。こんな翠星石は存在しないって言うかなんと言うか)
「えーと、正確には〔量産型翠星石試作機0001〕ですぅ」
ジュンはなんかすごいことを聞いたような気がした。
「手短に話すですぅ」

「桜田ジュン。貴方は命を狙われているのですぅ。そして私は貴方を守るために未来からやってきた人造人間ですぅ」


315:熊のブーさん
06/04/11 01:04:04 lQ9QqjB/
ジュンは開いた口が塞がらなかった。おもむろに電話帳を引っ張り出す。
「えーと、この街の精神病院っと」
「信じてないですね。チビ人間」
「当たり前じゃ! なんだ人造人間って。お前は…本物の翠星石は人形だろ!」
「人の話を聞かないチビ人間には論より証拠ですぅ。スィドリーム!」
どこからか人工精霊がやってきて、四角い機械のようなものを出した。翠星石はおもむろにスイッチらしきものを入れる。半透明の映像が浮かび上がった。
「ホログラムか?これ……」

しばらくジュンは翠星石のナレーションを交えながら映し出される映像を見た。
映し出されるのはどうやら未来の世界。だが廃墟と骨、使い捨てられた兵器ばかりだった。
翠星石が言うには近い将来世界規模の戦争が起こるらしい。ロボット工学の進化と人工知能の開発、発達により体が機械ということ以外はほとんど人間と言えるロボット達が反乱を起こしたためだ。人間VS機械である。

初めは人間側が優勢だったが次第に苦しくなってきた。そこで持ち上がった計画が人間側も人造人間を作って数で一気に押し返す計画である。
その計画の中心にいたのがジュンの子孫だった。先祖が研究したという人形の資料をベースにしてついにローザミスティカの劣化版が完成した。
劣化版といっても機能的にはほとんど同じである。ただし、半永久的には使ずnのフィールドにも入れないことが難点だが兵力としてはそれで十分な出来だった。特殊能力ドールズの活躍によって戦況は人間側に大きく傾いた。
「ここからが問題なのですぅ」

機械側も黙ってはいない。打開策としてドールズの発明を無かったことにしようとした。
そう、時間軸への干渉である。すでに理論上完成はしているが何が起こるか分からないとして禁忌とされてきたがついに決行された。
一方で人間側もスパイによってその情報を得ていたため、同時期に一体ずつ試験的に過去に送られた。対象は桜田ジュンである。
「なんか某映画と同じシュチュエーションなんですが」
「まさにそうなのですぅ。いい加減自分のおかれた状況を理解するのですぅ」

桜田家に絶叫が響き渡った。

          つづく?


316:熊のブーさん
06/04/11 01:10:52 lQ9QqjB/
ローゼンスレで出てきた話題をSSにしてみました。
続きは考えてありますが…

いかんせん某映画のパロディ+スレで出た案の引用なので不快に思われる方もいるかと思います。
「嫌だ」という声が多いのならば続きは書きません。どうすべきかご意見おねがいします。





317:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:13:38 4yz1JkjG
個人的にはノープロブレムなんだけど、翠が180cm越えは勘弁して欲しい('A`)

318:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:16:25 I6pxeyAF
映画ならマイノリティーリポート風きぼんぬ

319:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:17:42 TajsWL/u
>>316
トロスレでターミネーターの話題を切り出した者です。
wktkしてます!続きを!

320:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:21:20 aVhVZ2C6
せめて160cmくらいだなw

321:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:32:27 odL3bKVL
久々に書こうと思ったけどネタないね

322:DEATH NOTE  1/6
06/04/11 01:35:30 LTjhAEnw
桜田家、ジュンの部屋。 下の階ではいつもの人形たちがいつもの通りに騒いでいる。
しかし、彼、桜田ジュンの現在の心境は「いつもの通り」とは程遠いものだった。

漆黒。 彼の手に収まった一冊の黒いノート。
……ごくり。 ……ごくり。 渇く。 渇く。 …もう何度、唾液を嚥下しただろう。
かすれかけた声で、ゆっくり、確かめるように。 ジュンはノートの表題を読み上げた。

「…………デス・ノート」



週刊少年ジャンプ。 日本に住む男子なら、10人中10人は読んでること請け合いのキング・オブ・少年誌だ。
当然僕だって読んでる。 まして「デス・ノート」ときちゃあ、知らないワケがない。

名前を書いただけで人を殺してしまえるノートなんて、とんでもない設定だよな。
ありえないし、悪趣味だし、心臓に悪い。 だけど…面白いんだよなぁ、これが。
絶対うちのクラスにも「桜田ジュン 自殺」なんて悪ふざけをしてる奴がいるに決まってる。 くそっ。


でもまぁ、そんなのなら別にいいんだ。 
そんな田中何某やら、鈴木Aくんやらのノートに名前を書かれたからって、僕が死ぬわけない。 当たり前だけど。
そいつが自分の幼稚さと馬鹿さ加減を周囲にアッピールするだけで、ハイ終~了~、だ。

問題は、僕の部屋にあるこのノート。 「いつの間にか」僕の部屋に「現れた」このノート。
これがどうも「本物のような気がする」ってこと………。

323:DEATH NOTE  2/6
06/04/11 01:36:37 LTjhAEnw
自慢じゃないが、僕はクーリングオフの達人だ。 その商品がどれくらい「インチキ」かなんて、直感で大体分かってしまう。
で、僕はなるべく「インチキそうなもの」を買う。 だって、まともなもの買ったってつまんないじゃん。

…………だから。 僕が「これ」を買うはずはない。 ありえないんだ。
自慢じゃないが、僕はクーリングオフの達人だ。 そのせいなのか……一目で分かった。

「やばい。」

乾く。 渇く。 手に持っているだけで汗が出る。 喉が渇く。
エアコンは今日も絶好調。 なにせ、真紅たちにせがまれてこないだ新調したばっかりの新品だ。
室温は快適、湿度も最適。 なのに。 後から後から訳の分からない汗が吹き出て、一向に止まってくれない。

「開けちゃ駄目だ…」

頭の中で、正しく理性が警告を向ける。 やばい。
これを開けたら、開けてしまったら……? たとえ偽物でも。 きっと、確実に、僕の中の「何か」が壊れてしまう。

ハッと我に帰って、愕然とした。 僕の指が、知らない内に、1ページ目にかかっている…?
開けるな! …頭では分かってる。 でも、頭と、体が、なぜかちっとも……繋がってくれていない。

もちろんありえない。 馬鹿げてる。 ノートに名前を書いただけで、人が死ぬなんて。
……でも。 もし「できたら」? 本当に人が殺せたら?

………………あいつらの居ない世界が、本当に創れたら………………?


「桜田ぁー、俺の姉ちゃん、お前の姉ちゃんと友達でさぁー……」
中西。

「桜田の席もちゃあんと空けておいたんだぞ!」
梅岡。

「……………………………………」
……桑田、由奈。

324:DEATH NOTE  3/6
06/04/11 01:38:22 LTjhAEnw
緩やかに、緩やかに、僕の心が誘惑に負けていくのが分かる。
それはとてもいけないこと。 分かっている。

……でも。 いけないから、何だってんだ?

どうしてだよ? なんで僕なんだよ?
あの時、ノートの落書きさえ消してれば。 いや、あの提出したノートにさえ書いていなければ。
…そもそも、あいつらが余計な事さえしなければ。

どうしてだよ!! なんで僕なんだよ!!!!

うつろだった。 僕の頭は考えることをやめて。
僕の目はただ、僕の指がゆっくりとページを開く光景を映していた。
ページの端を空しくなぞっていた指が、やがてページとページの隙間に入って……

「ジュン」


……………「心臓が口から飛び出る」とは、まさにこの事を言うんだろうな。
100のお小言より、1000の体罰よりずっとずっと効果的。
その小さな赤い人影のたった一言で、僕はすっかりバッチリ現実に戻ってきた。

「のりが呼んでるわ。 夕食よ。」
「……先に行ってろよ。 すぐ行くから。」

背を向けたまま答えて、真紅が立ち去るのを待つ。
なんだか後ろめたくって、真紅の顔をまともに見られなかった。
いま真紅と目を合わせたら、あの凛とした視線に、心の奥底まで見透かされてしまいそうで。

今か今か…真紅がいなくなる気配をうかがう間も、僕の心は安堵と息苦しさでミキサー状態だった。
1分……2分……不思議に思って振り返る。 真紅はまだそこにいた。 柔らかに微笑んで。

「いい子ね、ジュン」

325:DEATH NOTE  4/6
06/04/11 01:40:39 LTjhAEnw
「な、な、な!? なんだよ唐突に!?」

もう焦りまくってしまって、全然口が回らない。 僕と真紅の心は繋がっている。
早い話、さっきまで僕を支配していた仄暗い考えが、真紅にバレてしまったのかと思ったのだ。

「別に。 あなたの頬……泣いていたようだから。」
「え?」

頬に手をやると、確かに濡れている。 全然気付かなかったが、僕は泣いていた…らしい。
泣いてるところを見られた気恥ずかしさやら何やらで。 できるならもう何処かに消えてしまいたかった。

でも、真紅は言った。
「顔をあげなさい、ジュン。」
「それは貴方が自分の弱さと向き合って勝った証。 貴方の誇り。 ……私の、誇り。」

……こいつは。 僕は、今にもノートを開いてしまうところだった。
楽になれる気がしたから。 もう苦しい思いをしなくても済むと思ったから。
戻ってこれたのは。 声を掛けてくれたから。 ……こいつが。

「……僕は」
「ジュン」
「うわっ!」

気が付くと真紅の顔が大接近していた。 心拍数が激増したのが嫌なくらい分かる。
落ち着け僕! 人形じゃないか! 平常心…平常心…
真紅の手の平が僕の手を包む。 平常心! 平常心!

……と。 いつの間にか真紅の手にデス・ノートが握られている。 あ、そういう事……。

「ジュン。 このノートが貴方を苦しめていたのね。」
パラリ。

「うわあああああああああ!!!???」
ここここいつ! あっさり開きやがった!

326:DEATH NOTE  5/6
06/04/11 01:42:05 LTjhAEnw
なんだよ! なんなんだよ!
さっきまでの僕の逡巡はなんだったんだよぉーーー!

あんまりな展開にノリ突っ込みしようとした矢先。 真紅の険しい顔に気が付いた。

「ジュン…………あなた、このノートを開いたの?」
「え? い、いや。 開こうとしたらお前に声掛けられてさ……」
「そう……」

真紅はノートを閉じると僕に告げた。 声が心なしか固い。

「いいこと、ジュン。 世の中には沢山の扉がある。 でも、無闇やたらに開いては駄目。」
「扉の中にいるものは、必ず貴方を見返してくる。 それは、魅入られてはならないものかもしれないのに。」
「ジュン。 貴方は開けてはいけない扉を開こうとしたのよ。」

なんだ、この剣幕は。 静かだけど、確かに怒気を含んでいる。
……まさか。 さっきまでの震えがブリ返してくる。

……本物だったのか。
僕は。 取り返しのつかないことをするところだったのか。


「………………………………ごめん。」

言葉を選んでも、適当なのが見つからなくて。 結局僕の口から出たのはありきたりな「ごめん」だった。
あぁ、そうだ。 真紅は言った。
気付こうとしなければ分からない。 自分が想われているということ、自分を想ってくれるひと。
それを、その気持ちを、僕は裏切るところだったのだ。

昔の僕ならどう思ったかは分からない。 でも、今の僕は。
そんなの嫌だと、確かに思った。
そんな僕の心を知ってか知らずか。 真紅はもう一度……今度は僕の耳元で囁いた。

「いい子ね、ジュン」

327:DEATH NOTE  6/6
06/04/11 01:45:38 LTjhAEnw
「ジュン、夕食に行きなさい。 そこに貴方を待っている人たちがいるわ。」
「……いちいち大袈裟なんだよ。」

照れ臭くてしょうがないから、憎まれ口。 まぁ、バレバレだけど。
まったく、たかが一冊のノートのために何だか随分疲れさせられたもんだ。

でも……真紅たちのような「生きた人形」がいるんだ。
僕がデス・ノートを信じかけてしまったのも、無理はない……よな?
他ならぬコイツ等に、世の中何でもアリな所を見せ付けられてきたんだから。

「ほら…………抱っこだろ。 下まで運んでやるよ。」
「私は後から行くのだわ。 『これ』をどうにかしなきゃいけないし。」

そっか。 デス・ノートの処分。 餅は餅屋というか、怪奇現象は怪奇現象に任せるのが一番いいのかもしれない。

「そんじゃ、任せた。 ……あ、死神が出てきたら僕を呼べよ? お前、怖がりなんだから。」

一言残して、僕は階段を降りていった。

328:DEATH NOTE  EP
06/04/11 01:46:39 LTjhAEnw
「……………危なかったのだわ。」

ジュンが去った後、ノートをパラパラとめくる真紅。 その表情は先程よりも一層険しい。


【○月×日 晴れ】
今日のジュンはいつもより何だか…ちょっとだけ凛々しかったです。
もちろんチビ人間にしてはですけど。
ジュンがソファに腰掛ける時、いつも左側に私の分のスペースを空けてくれてる事に、今日急に気付いてしまったです。
おかげでテレビの内容を全く覚えてないです…………覚えてる……のは……。


【○月△日 晴れ】
雛苺と金糸雀が今日もおチビ同士じゃれ合っているです。 騒がしい奴らですが、まぁ許してやるです。
……でも、二人を見ていると、どうしても私と蒼星石を重ねてしまうです。
蒼星石。 蒼星石に会いたい……。 人前でこんなこと言って、みんなを心配させたくないです。
でも、やっぱり顔に出ているんですね。 今日流れ込んできたジュンの意識は……私の傷を包もうとしてくれていたから。
きっと、ジュン自身も気付いてないですけど……。


「……………危なかったのだわ。 色々な意味でギリギリだったのだわ………」

私は何も見なかった事にして、翠星石の鞄の中にそっとノートをしまった。
私は誇り高きローゼンメイデンの第五ドール・真紅。 この物語の正ヒロインなのだわ……。



「ですぅノート・完」

329:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:52:32 CbMkq8Up
まぁオチは読めたけど面白かった
GJ




最後の真紅の必死さがツボwww

330:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:54:00 lQ9QqjB/
ワロタwww
そうきましたかw

331:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 05:12:22 UFzO3RAM
もうちょっとで、翠星石がヒロインに成り上がれたのに・・・w

次回作wktkですー

332:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 05:20:46 6x5XO0J4
真紅必死だなw


333:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 17:40:25 80MLGtOT
>>300
ご助言ありがとうございます。考え付かなかった自分が情けない(-_-;)

>>322
そんな展開でくるとはw
次回作期待

334:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 22:13:26 gfQimYBY
GJ
どこでもジャンプネタ多いな。やっぱ週刊漫画紙で一番売れてるのか。

335:熊のブーさん
06/04/11 22:49:07 7QUxIRDh
お久しぶりです。前回の続きを投下。

《ターミネーター翠~第1部~》

「最近なんかすごい不幸だ…新学期シーズンで頻繁に梅岡は来るし…風邪ひくし…命狙われるし…」
「激しく鬱モードに入ってないでシャキッとしやがれですぅ」
一人と一体はテンションがまったく逆だった。
「とにかく、翠星石が来たからには安心ですぅ。チビ人間をしっかり守ってやるですぅ」
「どうだかなぁ」
「でも、一応翠星石はお客さんですぅ。お茶くらい出しても…」

ピーンポーン

「お客だお客」
「こらぁチビ人間!!逃げるんじゃねえですぅ!!」
ジュンは一刻も早く扉を開けようとした。
たとえ梅岡でもかまわない。現実味のある話がしたかった。正直、梅岡と世間話は嫌だがしかたない。あぁ、平穏な現実へのドアノブに今、手をかけて……
「待つですぅ」
肩を掴まれ止められた。ジュンは恨めしそうに振り返る。
「なんだよお前。僕はこれからめくるめく現実への第一歩を……」
その先が言えなかった。一八〇の巨漢は険しい顔でショットガンを持っている。
「なぁ、銃刀法って知ってるかな。ってゆーかお前どこからそんなもんもってきた!!」
「静かにするですぅ。刺客かも知れないのですよ?」
ジュンの血の気が引いた。
「もしかして…もう来ちゃってたりするわけ?」
「可能性は特大ですぅ」
ジュンはゆっくりと慎重に覗き穴から様子を伺った。梅岡だ。


336:熊のブーさん
06/04/11 22:50:24 7QUxIRDh
「大丈夫だ。怪しいやつじゃない」
「情報によると相手は液体金属で出来た化け物ですぅ。どんな形にでもなれるのですよー?」
「じゃあどうやって調べろと……」
「こうするですぅ。スィドリーム、アレを」
翠星石が手をかざすと手の中には空き缶のようなものが現れた。
そして、おもむろにドアを開けると梅岡に缶を放り投げた。梅岡の足元で落ちると一気に白いもやが缶から噴出する。
「何投げたんだ?」
「液体窒素ですぅ」
翠星石はこともなげに答えた。
「おい!あれが本物の梅岡だったらどうするんだ!!」
「人体には無害ですぅ。多分!!」
みるみる内にもやが晴れていく。ゆらりと人影が現れた。
しかし、それは梅岡では無かった。水銀のような液体が人の形を作っており顔の部分だけがかろううじて元の梅岡の姿を保っている。しかも笑顔だ。
『サァクラダ~ァ~』
「……うわぁ」
「さしずめ液体UMEOKAってところですぅ」
あろうことに液体UMEOKAの第一声が自分の名前だったことにジュンは寒気がした。
液体UMEOKAは笑顔を貼り付けたままゆっくりと動き出した。
「どうするんだ?あいつ」
「こういうときは逃げるのが鉄則ですぅ。スィドリーム!」
人工精霊が大型のバイクをどこからともなく召喚(?)した。
「何でもありだな。未来の人工精霊って」
「おっと、今のうちに準備をしておくですぅ」


337:熊のブーさん
06/04/11 22:52:18 7QUxIRDh
翠星石はまた缶を出させ、UMEOKAに投げつける。
動きが鈍っていたUMEOKAは白いもやに包まれると動きを止めた。
「しばらく足止めできるですぅ。さてチビ人間、早いトコ旅の支度をするですぅ」
「はいぃ?」
「鈍いですねチビ人間!この家にとどまっている気ですか?」
のり達を巻き込むわけには行かない。さすがのジュンにもすぐ理解できた。
ジュンは大慌てで家に入った。
「えーと、準備準備っと……」
ふと目に入るのは旅行用のバッグ。荷造りしたままでほったらかされていた。
「これでいいか。あとは…」
帰ってきたのり達に自分がいないことをどう伝えるべきか。今世紀最大の難問だった。
「まともに書いても普通信じないしな、かといってでたらめ書くのもマズイ」
考える人となった。
「チビ人げーん! 早くするですぅー!」
「よし、これでいこう」

「お待たせ。翠星石」
「早くバイクに乗るですぅ。」
もう既に翠星石はバイクに跨りエンジンをふかしている。ジュンは翠星石の後ろに跨った。
「……おまえの服装を何とかしてから行ってもいいかも知れん」
「そんなもの後回しですぅ。出発ですよ!」
翠星石は思い出したように振り向き、持っていたショットガンの引き金を引いた。
見事命中。UMEOKAの頭が吹き飛んだ。頭だった液体が地面に落ちてプルプルと震えている。
「完全消音装置付きなのでご近所にばれて通報される恐れも無いですぅ。今なら二つセットで三十万円ですぅ」
「色々と突っ込みたいところだがあえて我慢しよう」

グォン!ガロロロ……
けたたましい音を立てて一人と一体を乗せたバイクは走り去った。

しばらくして、固まっていたUMEOKAは動き出した。瞬く間に人間の姿に戻り抹殺対象の追跡を開始する。
「桜田ァ~待ってろよォ~」
やはり笑顔だった。
周りに人がいたら通報されそうな怪しい雰囲気だが周囲には人の影はまったく無い。

生死をかけた鬼ごっこが始まった。

    つづく

 一応3部作ぐらいで終わるように書いています。
 駄文ですがどうぞお付き合いください

338:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 23:45:20 odL3bKVL
俺の脳内では玄田ボイスのシュワルツェネッガーがですぅ口調で喋ってるんだが、何か間違ってるか?

339:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 00:18:01 ykZkHAUO
>>338、脳内フィルター!脳内フィルター!

桑谷夏子がシュワちゃんの声をあてているんだ!






_| ̄|○ソンナワケネェヨ

340:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 00:19:58 ykZkHAUO
ごめん、ageてしまった…鬱氏

341:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 08:00:45 NnDeY/yX
翠の身長は180だとはわかったが---背だけならまだいい。背が180なのはいいが、筋肉でムキムキな翠はキツいかもww

342:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 09:38:27 8aTmAWXP
だがそれがいい

………んなわけないな、こんなカオスw

343:ケットシー
06/04/12 21:03:50 rDzW6dMx
>>303

 今日の真紅は朝からずっと不機嫌だった。
 理由は、目の前の人形達にあった。

「どうして逃げるの? 手を握っただけじゃない」
「なんで手を握る必要があるんだよ!」
「私のこと、嫌い?」
「嫌いじゃないけど―って、もうそれはいいって!」
「ぐすん……」
「泣いてもダメェッ!!」

 昨日の今日だというのに、めぐは懲りずにアタックを続ける。ふられたからといって、アリスゲームを諦める訳にはいかない。これは、ただの恋愛ゲームではないのだ。
 しかし、あれだけ見事に玉砕して一晩で立ち直れる彼女は恐ろしくもある。めぐのジュンへの執着心は病的だった。ジュンが彼女を恐れるのも納得できる。

 人形達は朝からこれと似たようなやりとりを、飽きもせずに何度も繰り返していた。厳密には、ジュンはうんざりしているのだが、めぐを無視することは許されない。何故なら、彼女を完全に無視すると、もっと凄い事になるからだ。
 以前に一度、散々追い掛け回されたジュンは、彼女を無視してみた事があった。
 その時の事は思い出したくもない。めぐは口を利いてくれないことに耐え切れず、昨日のようにいきなり襲ってきたのだ。言うまでもなく、強姦である。
 その時は他のドールの助けもあって九死に一生を得たのだが、そんな危ない橋は何度も渡りたくはない。なので、めぐを放っておく訳にもいかないのだ。

 そんな理由を真紅が知るはずもなく、彼女のイライラは沸点を超えようかという所まできていた。ジュンとめぐのやりとりは、傍からだとイチャイチャしているようにしか見えない。真紅は自分の部屋に居ながら、二人の邪魔をしているように思えて居心地が悪かった。
 とてもではないが、この空気の中では落ち着いて本など読めない。読書という最も大切な行為に支障をきたされ、真紅の精神状態は平静ではいられなかった。

 それでも、真紅は本を開いて読書に集中しようとする。読書への情熱が、こんな障害如きに阻まれてはならないのだ。もはや、これは戦いだ!

344:ケットシー
06/04/12 21:05:08 rDzW6dMx

「ねえねえ、私のマスターにはもう会った? 水銀燈っていうんだけど」
「ああ、昨日の夜、怒鳴り込んできたよ。でも、優しくてきれいな人だったなぁ」
「でしょ~。今度のマスターは大当たりだわ。ジュンの新しいマスターはどんな感じ?」

 真紅の耳がピクリと動く。話題が自分の事となっては、気になっても仕方がない。
 ジュンは難しい顔をして自身のマスターの印象を語る。

「うーん……気難しい人っていうのかな。どうも、とっつきにくい感じがあるんだ。ちょっと苦手かも……」
「あはは、それってハズレってこと?」
「そうなるのかな」

 本を持つ手がワナワナと震える。
 ハズレだと? 人形風情が人間様に向かって何を言う!
 我慢に我慢を重ねてきた真紅も、標的をピンポイントで狙ったこの攻撃には耐えられなかった。
 本を閉じてテーブルに置くと、すっくと椅子を立って人形達の方へ歩を進める。
 ジュンとめぐは、二人を覆う影に気付いて上を見た。
 そこには、ツインテールを角のように立てる赤鬼の姿があった。

「真紅、どうしたの……?」

 ジュンが怯えながらご機嫌を窺うが、時すでに遅し。真紅は問答無用で二人を片手ずつに抱き上げると、部屋の出入り口へと向かった。

「読書の邪魔」

 それだけ言って、真紅は二人を部屋から放り出した。

345:ケットシー
06/04/12 21:06:03 rDzW6dMx

「追い出されちゃったね」

 めぐが何やら嬉しそうに話し掛ける。
 ドアが閉まるのを呆然と見ていたジュンは、今の状況に気付いて戦慄した。
 めぐと二人きり。それは、これ以上なく危険な状況に他ならない。
 人目があってもすこぶる積極的な彼女だ。それがなくなったら、どんな行動に出るか簡単に想像がつく。獣は野に放たれた!

「真紅っ、ドアを開けて! お願いだよっ!」

 ジュンはドンドンとドアを叩くが、鍵を掛けられたドアはびくともしない。
 部屋の中で、真紅はその様子を聞いていた。助けを呼ぶ声が、椅子に向かう彼女の足を止める。
「開けてっ! 独りにしないでっ!」
 真紅を頼るジュンの声が、彼女の心を揺さぶる。
「ひど~い、私がいるじゃないのぉ」
「め、めぐっ、ダメだって!」
「何がダメなの?」
 真紅が迷っている間にも、外のジュンにめぐの魔の手が伸びる。声しか聞こえなくても、ジュンが危ない目に遭っているのは目に見えるように分かる。
「もうっ……!!」
 意地になっていた真紅が、身を翻してドアに向かう。あれだけ散々に言われても、彼女はジュンを放っておけなかった。
 ロックを解除してドアノブを押した真紅は、助けが遅かったことを知る。

「あれ……いない?」

 部屋の前に二人の姿はなかった。廊下に出て端から端まで見渡しても、それらしい姿はなかった。めぐから逃げるためにどこかへ行ったのだろう。
 探してまで助ける気は起きず、真紅は部屋の中へと戻った。



つづく

346:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 23:18:34 gwWgd99E
ジュンの行方が気になるww
次回を待ってます。

347:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 23:28:56 USFKA6Kf
なぁ、JUM
いっそ全員相手してやれよ、不可能は無いんだろ?w

348:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 23:32:12 QmMSSJeQ
もう本格的に貞操の危機w
続き待っているのであります!

349:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/12 23:58:19 4Il6KEPW
めぐに襲われるだと……?羨まし過ぎる!!!

350:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/13 02:11:00 P2GUeByp
・・・ここってパロ書いていいの?

351:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/13 03:01:41 sZ6i6y4q
あらすじ

ダメだ、書く気力がねえや

352:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/13 09:51:22 Dkasgkgz
ドールなのに何か特殊能力ないのか?

353:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/14 01:56:45 6auwVfXk
また寂れてきたな

354:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/14 10:51:56 iYZrqBJC
もう---何かの宿命でつか?(汗

355:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/14 18:27:50 G1QNuHvt
寂れてはいけないのか?

356:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/14 21:25:49 GHoT2auI
>>350
この板ネタスレ多いし、大丈夫…と思う
どうしてもダメなら、次スレはサロンにでも立てればいいんじゃないかな

357:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/14 22:18:54 G1QNuHvt
いやいや、流行らないから他のところに立てるってのは考え方としては間違っている。

358:熊のブーさん
06/04/15 00:48:49 PErZorpn
ちょっと間が空きました。前までのお話覚えてる人います?

パロディの是非に関しては……ご愛嬌ってことで許してください。では投下

《ターミネーター翠~第二部~》

一人と一体を乗せたバイクは市街地を抜け、郊外に出ていた。
遠くに山も見える。

「おい、どこまで行くつもりなんだよ」
「海外に高飛びするですぅ」
「……マジ?」
「冗談ですぅ」
何時間走ったのだろうか。そろそろ日も暮れる。
「いつまでに逃げ続ければいいんだ?」
「大体七十二時間程。まぁ三日前後ですぅ」
具体的なゴールが見えてきた。
「やけにはっきりしてるな。理由は?」
「極秘ですぅ。たった今翠星石がでたらめにでっちあげたなんて死んでも言えるかですぅ」
ジュンは後ろから翠星石の首を絞めたくなる衝動に駆られた。しかし楽々とショットガンをぶっ放していたとはいえ運転している翠星石は細身の体だ。ハンドル操作を間違えて事故を起こされても困るので自重する。
「もちろん冗談ですぅ」
翠星石はケラケラと笑った。
「あの手の化け物はエネルギーの消費が半端じゃないんですぅ。おまけにエネルギー源はこの時代には発明されてないはずなので補給不可。よっておよそ七十二時間程度でエネルギー切れになり、ただの液体になってしまうのですぅ」
「UMEOKAのエネルギー源って何なんだ?」
「詳しく聞いてきたわけじゃないからよく分からないですぅ。確か“ようりょくたい”なるものから精製されるエネルギー源とか言ってたような…」
ジュンのこめかみがピクリと動いた。
「ソレハ、「ハッパ」トカニフクマレテイルモノデスカ?」
「それですぅ。あ、でもあいつには精製は無理ですぅ」
「なぜに言い切れる」
「大量の“ようりょくたい”と、時間が必要になるのですよ。チビ人間。まとまった量を精製するのに1週間はかかるはずですぅ」
ジュンは安堵した。
へたをすると一生逃げ回ってないといけないのかという不安が拭い去られたからだ。
「…………桜田~……………」

359:熊のブーさん
06/04/15 00:50:06 PErZorpn
ジュンのこめかみがまたピクリと動いた。
「疲れてるのかな。幻聴が聞こえるや」
翠星石は後ろを振り返った。
「幻聴ではないのですぅ。ヤツが追いついてきました」

ジュンは恐る恐る振り返る。

UMEOKAが走っていた。笑顔で。
なんというスピードだろうか。ジュンは生まれて初めて「走っている人の足元から煙が出ている」という現象を目の当たりにした。このままでは追いつかれる。
「ついに天は我を見放したか……」
ジュンは胸の前で十字を切った。
「しつこいヤツですねぇ。そんなヤツにはこれをプレゼントですぅ」
どこから取り出したかバナナの皮。中身はもちろん翠星石が頬張っていた。
ぽいと後ろに放り投げる。完全にポイ捨てだ。
「これでこけるはずですぅ。うしししし」
ジュンはもう一度胸の前で十字を切った。もうだめかもしれない。
ちらっと後ろを振り返ってみた。
それは見事な宙返りだった。UMEOKAが宙を舞う。頭から舗装された道路に突っ込み、なんか卵を地面に思い切りたたきつけたような音がした。
後に残るのは微妙に蠢く水溜りのみ。
「楽してズルして迎撃ですぅ。おっとっと」
翠星石は巧みなハンドル操作で後ろからきた大型トラックに道を空ける。
「やっぱ世の中間違ってる」
「桜田~」
また聞こえた。
「もう追いついてきたのか」
振り向いて確認する……が、道路が続いているだけで何も無い。
「今度は前ですぅ」
先程ジュン達を追い抜いたトラックの荷台の上にUMEOKAがいた。いつの間に。
「かなりまずいですぅ。緊急事態ですぅ」
翠星石が珍しく緊張した声をあげる。
「あいつ、何のつもりか葉っぱを食べてるですぅ。意味の無いことはしないはずの化け物が何故…?」
ジュンもUMEOKAを見てみた。しかしもう辺りは薄暗い。
「よく見えないぞ」
「まぁチビ人間には無理ですぅ。暗視オッドアイ完備の翠星石だから見えるのですぅ」
さすが人造人間。
「桜田~死ねェ~!」
UMEOKAの腕が変化していく。鉤爪のような形だった。引っかかれたら痛いではすまないだろう。
「スィドリーム!」
現れたるはショットガン。
翠星石は片手でショットガンをぶっ放した。しかしUMEOKAは鉤爪を振り銃弾を弾いた。あまりのスピードにジュンの目には爪の残像が見えた。
「桜田ァァァァ!!」
こちらに飛び移ってこようとUMEOKAは大きく身を屈めた。


360:熊のブーさん
06/04/15 00:50:52 PErZorpn

刹那、UMEOKAの姿が消えた。
ジュンは自分の目を疑った。あまりの速さにまた視認できなかったのか?
「どこに行ったんだ?」
「トンネルに入ったんですぅ。小さめのトンネルなのであのトラックの車高ぎりぎりですぅ」

その頃、UMEOKAはトンネルの入り口の天井部分に張り付いていた。
「サ…クラ…ダ……ァ」


しばらく走ると巨大な木があった。もうUMEOKAは追ってこないようだ。
辺りはすっかり暗いが、月と星の光でやや明るい。
「ここらで休むですぅ」
ジュンは疲れてもう返事も言えない。休めることはありがたかった。
ジュンは木に寄りかかって一息ついた。翠星石は火を起こそうとしている。
「こういうときこそ文明の利器ですぅ」
人工精霊がライターと小枝、紙までも出した。
将来、重い荷物は全て人工精霊に持ってもらう時代が来るかもとジュンはぼんやりと考えながら
翠星石の作業を眺めていた。

無事に火がつき、だいぶ明るくなった。
ふいに、ジュンの旅行バックから賑やかな音が流れてきた。
「あー……そういや携帯持ってきてたんだっけ……」
家の番号から着信ありだ。通話ボタンを押す。
「もしもし」
「ジュンくん!? ジュンくんなのね! 良かったぁ繋がって」
のりの声だ。もう帰ってきていたのか。
「今どこにいるの?なんなの“旅に出ますもう探さないでください。”って!」
そういえば書置きにそんなことを書いたような気がする。
「もしかして家出?今どこにいるの!!」
「……」
ジュンは電話を切り、電源をOFFにした。いちいちかまっているほど余裕が無い。
「あんまり家族にそっけない態度を取るのもどうかと思うですぅ」
「大きなお世話だ」
「心配してくれる人がいるから出来ることですよ?はい、ご飯ですぅ」

携帯食料のオンパレードだったがジュンは残さずたいらげた。
「翠星石の手料理なんですからうまくて当然ですぅ!」
いや、お前は暖めたりしただけだったような気がするが。
満腹になったせいかジュンは急に眠くなった。
「見張りは翠星石がしておくですぅ。おやすみなさいですぅチビ人間」
そのままジュンは横になり寝てしまった。

「……さてっと」
焚き火の火をつつきながら翠星石は一人思案する。
「どうにも不可解ですぅ。なぜにあの化け物は葉っぱを食べていたんでしょうか?」
翠星石は自分なりの答えが出ていた。しかしそれは最悪の部類の結末だ。
火の粉がパチパチと飛んでいる。
「あくまで仮説ですが……」
誰に聞かせるわけでもなく呟いた。
「自分でエネルギーを作りだせるように進化しているのかもしれないですぅ」
そうなると三日間逃げ切ればよいなどという悠長なことは言ってられない。永遠に鬼ごっこは続いてしまう。
「なにか手を打っておいた方がいいかもしれないですぅ……」
翠星石はちらと出しっ放しにされているジュンの携帯を見た。

        つづく


361:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/15 00:58:01 7Uxmq0oW
>>360
イイヨ 
イイヨー

362:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/15 13:54:05 b2HiOau3
どこまでマジなのか笑えばいいのかわからんですぅ

363:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/15 14:11:34 3HrxXVbl
ですぅ口調ウザ

364:I'veの『Imaginary affair』を聞いていて、なんとなく思いついた
06/04/15 23:25:09 iAQIlCkw
 ん~ん、いい天気ですぅ。ジュンの新しい門出を祝うには、うってつけです。
 それなのに、なんでのんびり朝寝坊を決め込みやがりますか、このチビ人間は。
 ほらっ、とっとと起きやがれですっ!
『ユサユサ……ユサユサユサッ!』
 はぁ、しょうがないですぅ。奥の手を使うです。
 この『えむぴーすりーめざましどけい』に吹き込んだ『起きろったら音頭』を聞けば、
一発でチビ人間が目を覚ます事間違いなしです。ここをこうして……っと!

 ♪おっきろーおっきろーおっきろーおっきろー
   おっきろーおっきろー おきろったら! ですぅ
  おっきろーおっきろーおっきろーおっきろー
   おっきろーおっきろー 寝ぼけてるひまはない! ですぅ

 ―あ、起きたです。効果てきめ……きゃあっ!
 何するですか、枕なんぞを投げやがって! 翠星石が潰れたらどうするですかっ!
『ブンッ! ゴスッ! バタッ!』
 きゃああああっ! こ、こらチビ人間起きろですっ! せっかく起きたのに寝るなです
っ! というか、永眠しないで、ですううううっ!



 遅いわよジュン……どうしたの、顔面が変な形に腫れ上がっているわよ?
 早く席について。のりが作ってくれた朝食を食べなさい。
『ペシッ!』
 行儀が悪いわよ。ちゃんと「いただきます」とおっしゃい。
 ―え? スープがぬるい?
『ペシッ!』
 自業自得よ。寝坊してきた分際で、偉そうな事を言わないで頂戴。
『ペシッ!』
 ズルズル、クチャクチャと音を立てないで頂戴! もっと上品に食事をなさい。
『ペシッ!』
 ジュン、「ごちそうさまでした」は? ―ん、よく言えました。
 あ、えっと……ジュン、なかなか似合うわよ、その新しい『せいふく』は。



 あ、ジュン君おはよう。ジュン君、今日から『がっこう』だよね? 今、僕と雛苺でジ
ュン君の靴を磨いていたところなんだ。ほら、見て。
 あ、そっちは雛苺が……あははは、ごめん。僕が磨き直すよ―これで良いかな?
 ―ジュン君、顔が真っ青だよ? ひょっとして、『がっこう』に行くのが、怖いの?
『ぎゅっ』
 ―大丈夫。ジュン君は、もう1人で歩けるんだから。さぁ、靴を履いて。
 もしも不安になったら、しゃがみこんでいい。振り返ってもいい。皆、ジュン君の事を
見守っているから。お姉さんも、柏葉さんも、真紅も、翠星石も、雛苺も―もちろん僕も。
 ジュン君は、決してひとりぼっちじゃないよ? だから、安心して。
 元気、出た? ―そう、良かった。
 ―え? 翠星石が? あ、あははは……よく言っとくよ。
 うん、いってらっしゃい!



終わり

365:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 01:57:33 lOXDzfyE
>>364
実際には、学業復帰に戻るのはいつのなるやら
個人的には学業復帰ENDでその際はアリスゲームも済んでいて
人形がお父様の元に戻っていて
ドールズの居なくなった桜田家のラストと思ってるんだけど

こう言うエンドもいいね

366:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/04/16 19:04:05 gMHgnuVM
それでは、一本投下します

「日曜夕方のブルー」を少しでも癒して頂ければ幸いです

では、SS「みっちゃんはね♪」、どうぞ

367:みっちゃんはね♪(1)
06/04/16 19:05:38 gMHgnuVM

「ハァ・・・」

ローゼン・メイデン第二ドール金糸雀のマスター、みっちゃんはため息をついていた


みっちゃんは・・・綺麗な服で着飾った可愛い女のコが好きだった、そんな写真を撮るのが夢だった
カメラマンを目指し、写真学校に入った、親の反対を押し切った手前、学費は自分でバイトして稼いだ
学校ではいい成績を維持した、卒業制作で出した東欧の少女達の写真はプロの間でも高い評価を受けた
在学中から憧れていた売れっ子カメラマンの仕事場にバイトで入り込み、卒業後はそのまま師事した
お師匠はブツ撮り、風景、何でも来いの女性カメラマンで、特に人物を撮らせれば右に出る者無しだった
生意気な新入りのみっちゃんに、自分が撮った写真が実際に媒体になるまでのすべての工程に係らせた
最初は便利屋扱いに反発したけど、対等の友人として接してくれるお師匠とは次第に打ち解けていった
キツい助手時代を数年過ごした頃、お師匠は突然、高給を貰える広告代理店の専属カメラマンをやめた
「今撮っておかなきゃいけないひとが居る」といって、カメラ片手にイラクまで飛んで行ってしまった
助手時代から、お師匠が色々な分野の撮影仕事を均等に回してくれたおかげで、その頃のみっちゃんは
何でも撮れる小器用なカメラマンになっていた、みっちゃんへの名指しでの仕事も入りつつあったので
その広告代理店からのお師匠の後釜へのお誘いを丁重に断り、このご時世に大変な独立の道を選んだ

綺麗な服で着飾った、可愛い女のコを撮りたい、みっちゃんは夢に向かって動き出した

そして・・・・


368:みっちゃんはね♪(2)
06/04/16 19:06:26 gMHgnuVM

今日の仕事は、大手スーパーのチラシに使われる商品写真の撮影、ギャラは笑っちゃうほど安い
今日のモデルはマグロの刺身だった、実際に特売で店頭に並ぶマグロよりずっと上等な代物に
さらに脂の照りを出すためにサラダ油をハケで塗り、ライトで生温くなったマグロの機嫌を伺う仕事

みっちゃんはため息をついていた、独立をしたみたはいいものの、来る仕事はつまらない仕事ばかり
夢とはほど遠い生活と、どうにも増えない残高、元より自分の写真の腕には絶対の自信を持っていた
仕事場である広告、出版業界でも、「みっちゃんに任せればいい写真撮ってくれる」との評価を得ていた
でも、いい写真を撮る人材は毎年多く吐き出されて来るが、それに回ってくる予算は年々渋くなる一方
結局、代理店時代のコネで手の届く仕事を入れてはこなすしかなかった、何でも撮ってた助手時代の
経験は役に立ったが、みっちゃんは嬉しくなかった、夢みてた未来、夢にほど遠い今、不満の多い生活

お師匠の下で広告代理店に籍を置いていた頃は、年収相当額の買い物でもすんなりローンが通った
独立した途端にガソリンスタンドや量販店のクレカ付き会員カードを作る時も審査で難癖をつけられる
「フリー・カメラマン」という職業がすでに、信販会社のブラックリストに載っているらしい


「はぁ・・・フリーでやってくのががこんなに大変なんてねぇ・・・」

みっちゃんは、またため息をついた、みっちゃんの横で、彼女のドール、金糸雀が心配そうに見る


369:みっちゃんはね♪(3)
06/04/16 19:08:55 gMHgnuVM

最初に金糸雀に会ったのは、独立してすぐの頃だった、営業下手でこなせない仕事、減りつづける貯金
何かの幻覚かと思った、幻覚なら付き合ってやれと、訳のわからないまま「まきます」に丸をつけた
あの後カナが突然やってこなかったら、多分私はろくでもない男にでも騙されてたとみっちゃんは思った

「みっちゃん・・・何か・・・疲れてるみたいかしら・・・みっちゃん・・・だいじょう・・・ぶ・・・?」
横で見つめるカナ、この感情を持つ不思議なドールの表情に気づき、みっちゃんは笑った、無理に笑った

「ハァ・・・ごめんね、カナ・・・こんな甲斐性無しのマスターで、・・・でも安心して・・・
カナには絶対、綺麗なお洋服着せてあげるし、おいしい物もいくらでも買ってあげるから・・・」

みっちゃんは決めてた、カナには決して仕事の愚痴は言わない、カナには絶対、不自由な思いをさせない
でも・・・・
みっちゃんは傍らに居るドール、端正で汚れ無き、命宿るドールを見て、もう一度・・・・繰り返した

「カナ・・・・ごめんね・・・こんな・・・私で・・・カナには・・・きっと・・・もっといいマスターが・・」

金糸雀はみっちゃんの言葉に俯いた、悩むマスター、無力なドール、金糸雀にとってみっちゃんは
ただのミーディアムではなかった、共に目覚め、眠り、一緒に生きる大切な人、たったひとりのひと
みっちゃん以外の誰かが自分に触れ、ネジを巻くなんて・・・みっちゃんと引き裂かれるなんて・・・


370:みっちゃんはね♪(4)
06/04/16 19:09:45 gMHgnuVM

金糸雀は俯いたまま叫んだ、みっちゃんに見られたくない瞳を隠しながら・・・ぽたっ・・・ぽたっ・・・

「みっちゃん!わたしはみっちゃんが・・・夢を持って生きているみっちゃんが好き・・・・こんなわたしの
・・・わたしのネジを巻いてくれたから・・・・ぐ・・・・ぐすっ・・・ひっぐ・・・ひっぐ・・・」

金糸雀はみっちゃんの横で、握った手を震わせて、涙をこぼしながらみっちゃんを見た、

「わたし・・・綺麗なお洋服もいらない、ピザ屋さんのアップルパイも・・・うぅっ・・・い、いらないかしらぁ!
みっちゃん!・・・・わたしは・・・・ムシロをまとってでもみっちゃんについていくかしら!」

金糸雀はみっちゃんの胸に飛び込んだ、綺麗な服に皺が寄り、涙で汚れるのも気にせず胸に抱きついた
いつも可愛い服を着せてくれるみっちゃんの服が、地味でくたびれたダンガリーって事に気づいて
また泣き出した

「いや・・・イヤぁ・・・みっちゃんと離れたくないの・・・・カナはみっちゃんがいいのかしらぁ~」
「カナ・・・わたしも!わたしもカナと一緒に居たい!・・・ごめんね、カナ、わたし、こんなに幸せなのに
わたし、カナと一緒に居られる・・・こんな幸せな事に気づかないなんて・・・ごめんね・・・」

金糸雀はみっちゃんの胸で大声を上げて泣いた、落ちて来るみっちゃんの涙が自分に滴るのが嬉しかった
カナはみっちゃんの胸から体を起こすと、ぐいと涙をふき、まだ赤い目のまま胸を張り、逞しく笑った

「もしみっちゃんがカメラマンでおかね貰えなくなっても、安心して!このわたしが
辻のバイオリン弾きでもやって、みっちゃんひとりくらい食べさせてあげるかしらぁ!」

みっちゃんは涙をぬぐいながら笑い出した、カナも笑った、二人で床に座り込んだまま笑った、二人で・・・
「ありがと・・・・カナ・・・・・でも私は欲張りなのよ♪カナとの暮らし、カメラの仕事、両方とも欲しいの!
ローゼン・メイデン一の頭脳派のカナリアさん、欲張りなわたしが突っ走っても、ついてこれるかしら?」
「任せてみっちゃん!カナに出来ることがあったら何でも言って!炊事洗濯用心棒、洗車に録画予約
何でも来いかしら!最もアリスになるに相応しい、この金糸雀の辞書には不可能は無いかしらぁ!」

「じゃあ・・・わたしの小さなバイオリン弾きさん・・・弾いてくれるかしら・・・・・『ニーベルングの指輪』を」
「よしきた!」

カナが生まれた時お父さまに与えられたバイオリンが、壮麗な曲の第一章「ラインの黄金」を奏で始めた

ワグナーの調べが、二人を優しく包んでいく
優しい夜が、二人を包んで流れていく


「さぁて!明日はヒラメでも撮ってくるかぁ!」


371:みっちゃんはね♪(5)
06/04/16 19:11:05 gMHgnuVM

             生まれ変わる事は出来ないけれど
                                                        
                    変わっていくことは出来るから


みっちゃんは変わっていった、少しづつ・・・少しづつ・・・

最近は仕切りを任されるようになった写真の現場では、まず時間に対して正確無比である事を心がけた
唯一、食事の時間は進行中の作業を止めてでも確保した、現場の皆で食べる「同じ釜の飯」を大切にした
本来の仕事である撮影だけでなく何でもやった、助手にやらせてた機材準備や掃除で一緒に汗を流し
スタイリストやメイクの仕事を積極的に手伝い、畑違いの構成や写植、コピーや記事書きの技術も学び
欠員は自ら補った、当然彼らの領分とプライドを尊重し、たとえ非能率的でも彼らの流儀に従った

自分の写真のクオリティは決して落とさなかった、ただ、そのために他の工程を圧迫する真似は慎んだ
それは決して難しくない事だと知った、自分の才能を発揮しながら「広く見る事」を意識すること
自分の係る作品が世に出るまでの全ての流れを広い視線で見た、全てに責任を持った

好きで集めていたロモ、希少なライカ、今の自分の仕事には高スペック過ぎるニコンのカメラ
みっちゃんの部屋には数十機のカメラがあった、それなりに使ってる物も、埃を被ってる物もあった
仕事で必要な銀塩カメラとデジカメ、ムービー各2台と、遊びには一台づつと決めて厳選した物を残し
他の物は、本当に役立ててくれる人、「腕」はあるが「武器」の無い後輩達に捨て値で譲った

金糸雀との生活も変わった

一緒に早起きをするようになった、カナと二人で毎朝6時半のラジオ体操なんて物を始めた、
出前とテイクアウトの食生活を改め、毎日ご飯を炊いた、貧乏写真学生の頃に立ち戻って自炊した
金糸雀には毎朝作ったお弁当を持たせた、カナの体の事を第一に考え、心をこめたお弁当

宅配のピザを頼むより、週末の夜に二人でおめかしして、石窯で焼いたピザを食べに行く生活

休日にはカナと思い切り遊んだ、温泉や旧跡に行った、部屋でDVDじゃなく本物の芝居を見に行った
今までやらなかった海のスポーツや雪スポーツ、登山や禅寺修行にも、カナと二人で挑戦したりした

「カメラマンズ・ワゴン」の響きに憧れ、助手時代にローンで買ったアウディ・アヴァントは売り払い
替わりに機材が積めてスタジオや現場の狭いスペースにも停められるジムニーを一括で買った

どこへでも駆けつけられるジムニーの月間走行距離は、アウディの時よりずっと多かった
色々な場所に出かけた記憶、カナと二人の思い出を、たくさん、たくさん、刻んだ


372:みっちゃんはね♪(6)
06/04/16 19:11:53 gMHgnuVM

ローゼン・メイデン達ともよく遊んだ、カナほどは人懐っこくない、気難しい姉妹達だったけれど
服が目当てだお茶が目当てだと言いながらも、入れ替わり立ちかわり部屋まで遊びに来てくれる
無愛想な黒いドールが突然やってきて、一番いい服をよこしなさいと言って来た時は傑作だった
問い詰めると彼女は顔を赤らめ「メ・・・メグのご両親が会いに来るのよ!・・・悪い?」と怒鳴り散らした
みっちゃんはひとしきり大笑いした後、うんと上等で清楚なローラ・アシュレイを見立ててあげた
その黒いドールは後でクリーニングした服を黙って置いてった・・・「ご対面」はどうなった事やら


浮いた噂と縁遠い状態は当分変わりそうにない、どうも男の心について鈍感なのは昔からの性根らしい
でも・・・花の愛好家雑誌の仕事で知り合った、やたら無愛想な初老の資産家、結菱さんって名前だったか
あの人の事は何故か頭に残った「貴女はきっと、私と同じ秘密、素敵な秘密を持っている」という言葉
何かの洒落のセリフにしては、そのひとはあまりにも透明で無垢な瞳をしていた、ドールのような瞳
その仕事の後でみっちゃんの元に届いたお誘いの手紙、古めかしい蝋封付きの便箋に綴られた夕食の招待
どうしようかと考えてると、ふふっ、と顔がほころんでしまう、でも・・・きっとまだ、早いだろう
デートのお誘いを執事とやらに任せるようでは、きっと私にはまだ早い・・・「まだ早いゾ?お坊ちゃん」
でも・・・カナとの出会いで信じられるようになった「無限の未来の可能性」の中では・・・ひょっとして・・・

みっちゃんは未来を楽しみにしていた、毎日、明日を楽しみに、仕事に遊びに生きていた
みっちゃんは生きていた、カナとふたり、生きていた



373:みっちゃんはね♪(7)
06/04/16 19:13:15 gMHgnuVM

その仕事っぷり、最初は便利に使われるだけだったが、その内周囲のみっちゃんへの評価が変わってきた
「みっちゃんはいい写真を撮る」から「みっちゃんに任せれば限られた状況での最善の物が出来上がる」

無理な納期でも間に合わせるみっちゃんの仕事は、上の人間の信頼を得はじめ
無茶な納期を押し付けるクライアントを怒鳴りつける姿に、下の人間は慕いはじめた

仕事を頼む人達も、仕事を受ける人達も、「みっちゃんなら大丈夫」と口を揃えて噂した

みっちゃんの撮影の腕は、自分でも気づかない位ゆっくりとだけど、磨かれ、冴え渡ってきた
笑顔のプロである子役モデルも、緊張で固まってる素人も、チラシ写真の鯵フライやホウレンソウさえも
みっちゃんがファインダー越しにラブコールを送ると、蕾が花開くような笑顔を浮かべた

今でもカードやローンの限度額にため息をつく事はあるけれど、みっちゃんの名前と評判を聞き
個人的な裁量で、マニュアルにある職業別限度額を大幅に越えたローンを通してくれる知人も増えた
信販会社からは限度額アップのお誘いが来るけど、どちらにしてもローンはあまり使わなくなった
仕事の出費も大きい買い物も、信用の出来ない銀行融資より自分の口座からの持ち出しで賄う事が増えた
それまで「経費」で乗せていたカナを着飾る高価なお洋服の支出を税務署に少々疑われたのには困ったが
来年明けの申告の時はこの「扶養家族」を机にドンと置いて税吏を引っくり返らせてやろうか、と思った


みっちゃんの成長に歩幅を合わせるように、金糸雀も少しづつ変わっていった
アリスゲームでいつも遅れを取っていたカナは、色々な物を見、聞き、触れ、成長と成熟を重ねていった
真紅が読書を重ねて知った心理学は、みっちゃんがカナを後学のために連れてってくれた永田町の取材で
「ひとの心理が剥き出しになる瞬間」を見た時に、カナが背中で感じた戦慄には及ばなかった
翠星石と蒼星石がnのフィールドで育んでいた巨木の自慢話も、みっちゃんと行った屋久島で
数千年の刻の輪を重ねた杉の幹に二人で抱きついた時に感じた、流れ続ける命の実感には敵わなかった
ドールのカナが宿す無限の命、人間のみっちゃんが営む老いていく命、それは全て同じ流れに在るもの

姉妹の悩みを引き受けるのは相変わらず姉御肌の真紅だったけど、彼女には経験の堆積が足りなかった
時に真紅にも裁ききれない問題が生じた時、彼女はいつも金糸雀が耳打ちしてくれる言葉に頼った
ドールのマスター達も、唯一の勤め人マスターであるみっちゃんと話す事で、多くの悩みを解きほぐした

「いつか究極の少女、アリスになる」というカナの長らくの夢は変わり始めた、カナの夢見る未来
「誰がアリスになろうと、皆でお茶して遊んで、そんな皆を誰一人犠牲にしない、誰も失わない」
ドール達の新しい未来を開こうとするカナの姿を見て、姉妹達は少しづつ変わり始めた


みっちゃんとカナは変わっていった、ある日突然ってわけにはいかないけど、少しづつ・・・少しづつ・・・

               生まれ変わる事は出来ないけれど
                                                        
                    変わっていくことは出来るから


374:みっちゃんはね♪(8)
06/04/16 19:14:25 gMHgnuVM

以前よりずっと忙しく、とても時間の流れの早い日々を送ってたある日、お師匠から手紙が届いた
なぜかベラルーシ共和国の消印の押されたエアメール、中には一枚のチラシが入ってた
郊外の大手子供服量販店の新聞折込チラシ、これでも一応は、綺麗な服を着た可愛い女のコの写真
みっちゃんが撮影だけでなく衣装、コピー、レイアウト、印刷、頒布、その他、全ての進行に係った作品
渋い予算とトラブルの連続、妥協の産物だった、でも、その状況でみっちゃんは自分の全てを発揮した
神奈川県内で配布したチラシがなぜかお師匠の手元にあり、赤いマジックで大きな花丸が書いてあった
みっちゃんは自分の写真の腕に自信を持っていた、作品を生み出すたびに顧客や同業者が誉め称えるのは
当たり前だと思っていた・・・みっちゃんは今、初めて自分が認められた気がした、初めて・・・誉められた

チラシの間に挟まっていた一枚の紙、ホテルの便箋の走り書きを見た時、みっちゃんの目に涙が溢れた



                らしくあれ
            
         神はあなたがあなたらしく生きることしか望んでいないんです

        p.s 今度あなたの小さなお友達にも会わせてね


わたしは・・・・・すぐそばで見つめてくれてるひとが居る・・・・・・・・離れていても見つめてくれるひとがいる
そのひとたちに・・・見て欲しい・・・わたしを・・・わたしの夢を・・・・・そして・・・夢に向かう、今のわたしを

遠くで見つめてくれるひと、すぐそばに居てくれるひと・・・今日もみっちゃんの横には、カナが居る

「カナ・・・ありがとう・・・・わたし・・・すべてに感謝してる・・・カナ・・・・カメラマンの仕事・・・
お師匠・・・・生んでくれたママやパパ・・・あなたを創った人形師さんや素敵な姉妹にも・・・ありがとう・・・」


「わたしの小さなバイオリン弾きさん、弾いてくれるかしら・・・・・『To love you more』を」
「まかせて!」

金糸雀のバイオリンが葉加瀬太郎のストリング・パートを誇らしく奏で始めた
みっちゃんの声が、セリーヌ・ディオンのヴォーカル・パートを静かに歌い始める

二人の旋律はいつまでも流れつづけた、二人を乗せて、未来に向かって流れつづけた

二人は、未来を信じていた




375:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/04/16 19:16:00 gMHgnuVM

あとがき

アニメやコミックでは一番ひどい扱いwの金糸雀には、逆に無限の可能性を感じます
唯一の勤め人マスターであるみっちゃんには、つい感情移入してしまいます
JUMもメグも結菱サンも不労者だし、柴崎爺ちゃんは自営で半隠居だし
不明な部分を思い切り俺補正してしまいましたが、まぁ10マソの服をポンと買える経済力ですから


では


376:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 19:45:32 gC2nDC4p
GJ!
金糸雀とみっちゃんはいいコンビになりそうだよね
みっちゃんがこれだけクローズアップされているのを読んだのは初めて

377:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 20:38:01 v7eRJ75w
力作GJです。
しっかし、以前のバーゼルとか今回のワグナーとか
趣味がオイラとモロカブリですっごいうれすぃ~っすよ(w
375氏は年末恒例のNHKバイロイト音楽祭放送を聴いてるとオイラは読んだ!
あそこでラインの黄金って…大丈夫かカナリア!あの分散和音は狂的だぞ!
おいらもまた何か書きたくなってきたよ(w

378:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 20:42:31 8ohJgYdC
どうも、始めまして
以前総合スレの方で、1つの妄想が流れたんですが
それが面白くて、是非こちらのSS職人の方々に
その妄想ストーリーを完全化させて貰いたく、来させて戴きました。

個人的には金⇔銀が見たい
金に入れ替わった銀は、とりあえずミーディアムであるみっちゃん宅に帰る。
するといつもの行事でまさちゅーせっちゅー。銀大混乱。
銀に入れ替わった金は、自由自在に飛びまわれる事にはしゃいで空中散歩
その後胴体が無い事に気付いて、10分程銀に対する同情、黙祷を捧げる。
そのあと、一度やってみたかった黒龍波を桜田宅で乱射
ドールズ大迷惑。


どなたかお願いします。

379:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 20:50:47 xzCMgF/1
リクエストスレは別のあった希ガス

380:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 21:45:37 8ohJgYdC
>>375
っはぁ~・・・
まさか翠派の私が、何の興味もなかったカナペアに
心を動かされるとは思いませんでした。
次第に成長して行く彼女達、そして後半部分では
心の中でジワッと感じさせられる物がありましたw

もうあとはこれだけです。
ブラボーブラボー!

381:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 22:23:52 v7eRJ75w
>>378
何か書きたくなってきたとか書いた後に
んな事書かれると、何だかオイラが書かにゃならないヨウナ気が…
しかも、ここに誘導されて書いた最初の話しが似た物ダッタヨウナ気もするヨウナ…
まぁ、前のに書いたピエールの奴とか、神父と水銀燈とか、薔薇水晶出撃前夜の話とか
そんな感じのおいらで良かったらガムバッテみますけど。

382:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 22:25:43 ktmpWBLx
>>375
あん?何言ってんだおめえ
金糸雀は今ようやく日を浴び始めたところだろうが

383:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 22:31:19 8ohJgYdC
>>381
差し支えなければ、よろしくお願いしますー♪

384:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 22:54:46 ZjMozEt+
>>367
GJ!!
自然と引き込まれる文章がすごい!

385:364
06/04/16 23:38:49 bwnF4Fmf
>>367-374
微に入り細に至る描写は、真似出来ません。脱帽。
薄っぺらな話しか書けない自分が恥ずかしいです。

386:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 23:50:36 8ohJgYdC
>>385
なぁーにをおっしゃる兎さんー

いや、マジ素晴らしかったですよ
恥じる様な個所など。むしろ誇ってもいいと思いますよ

387:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/16 23:55:53 ZjMozEt+
>>385
作風は人それぞれ。
心理描写が得意な人もいればギャグが得意な人もいる。
皆違うから面白いのであって一緒だったらトリビァル!

388:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 00:28:22 itYjDEXm
>>385
そう思いますよ。
ところで、起きろの歌にサクラ大戦3のエリカの歌を思い出したのは
オイラだけではあるまいて。
おっはよーおっはよーぼんじゅーる♪

370
些細な話し
舞台神聖祭典劇「ニーベルングの指輪」は
ラインの黄金=前夜
ワルキューレ=第一夜
ジークフリート=第二夜
神々の黄昏=第三夜

389:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 00:31:56 itYjDEXm
>>385
何か読み返したら意味不明だったので

「そう思いますよ。」は>>387を受けての感想ですので。

390:NOODLE  1/7
06/04/17 00:44:42 9Q8QGNbx
「やあ、ドールズ。」

カップ麺が喋った。 おいおい。 僕は熱湯を注いだだけだぞ。
予想外の事態に何のリアクションも取れずにいると、性悪人形が駆け寄ってきた。

「蒼星石…………!!!」

何言ってんの。 何言ってんの。 即席めんと聞き間違えたのだろうか。

「蒼星石………生きて………生きていたんですね。 ………ぐすっ。」
「ふふっ………相変わらず泣き虫なんだね。 …………ただいま。 翠星石。」

カップ麺が微笑んだように見えた僕は、どうかしてしまったのだろうか……。


「凄い………呼び戻したんだわ。」

いつの間にか傍らに来ていた真紅が感慨深げに、いつぞやと同じセリフを呟いた。

「いや、あの……真紅さん。 これ、麺類じゃないっすか。」

ごもっとも。 ごもっとも僕。 もう全然裁縫の腕とか関係ない。
え、何で? 何で狼狽えてるの僕だけなの?
カップ麺が喋ってるんですよ。 何でお前らちっとも驚いてないの?
おかしいよこの家! 何で僕の方が異端に見えるんだよ!

「凄いわジュン……貴方の指は、まるで美しい旋律を綴るよう……。」

出湯のボタンを押しただけなのだが。

え~。 認めたくないが、目の前の現実を整理すると。
このカップ麺はどうやら結菱の屋敷で最期を迎えたはずのローゼンメイデン第4ドール。
「あの」蒼星石という事らしい……。

391:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 00:45:42 9Q8QGNbx
日本人にはごくたま~に、猛烈にカップ麺が食べたくなる日というものが存在する。

今日は日曜日、のり姉は部活。 「麺欲」を満たすには最適の日…のはずだった。

なのになぜ自分は今も腹を空かし。 なぜ眼前には狂ったとしか言い様のない光景が展開されているのだろう。

「ふふ……こうして蒼星石の髪を梳くのも久し振りですね。」
「ごめんよ……僕も君の髪を梳いてあげたいけど、生憎と腕が無いんだ……。」
「大丈夫よ、蒼星石。 ジュンの技術なら貴女に腕をつけるくらい造作も無いわ。」

箸で嬉しそうに麺をほぐしながら、優しくカップ麺に語りかける翠星石。
返答するカップ麺。(のびてきた)
サラッと訳の分からない事を言う真紅。 ならお前やってみろ。

「あ、あのさ……言い辛いんだけど。」

苦言を呈そうとした矢先、翠星石と目が合った。
……あぁ。 ………………泣いている、のか。

当たり前だった。 そうだ、分かっているのだ、彼女だって。
こんなのは、望まれたかたちでの再会じゃない。
カップ麺は永遠ではない。 まして今は夏場だ。 あっという間に腐ってしまうだろう。
別れの時は、きっとすぐそこ。 それでも。 たとえ束の間でも。 最愛の妹と再び巡り合えたのだ。

どうして自分は、その気持ちを分かってやろうとしなかったのだろう。
今の翠星石のためを思うなら、カップ麺が喋るくらい些細な事じゃないか。

「……なんか飲むか? 入れて来るよ。 蒼星石もスープが減ってきただろ?」
「! ……ジュン。 …………………………ありがとう、です…………。」

「私には紅茶を入れて頂戴。 ミルクも忘れないでね。」
そう言った真紅の眼差しはどこか優しげで、なんだか照れ臭かった。

「そうだね……僕も紅茶を貰おうかな。 何だか酷く喉が渇いてね。」
すまん。 君は激辛キムチ味なんだ……。

392:NOODLE  3/7
06/04/17 00:46:42 9Q8QGNbx
「あ、待つですジュン。 翠星石も手伝うですぅー。」
台所に立とうとする僕に翠星石が付いてきた。

「いいのか? ……久し振りじゃないか。」
リーフを選びながら、無難な言葉を選んで聞いてみる。
束の間の再開。 1分、1秒でも惜しいはずなのに。

少しの間を置いて、翠星石がぽつりぽつりと呟いた。

「……言いたい事は沢山あるです。 あれも、これも、それも。
 でも、いざとなると、胸が詰まって言葉が出て来ないです。
 ……こんな短い時間じゃ、足りないです。 ぜんぜん、ぜんぜん、足りないです……!」

胸が締め付けられる気がした。 もし自分と姉が、最後の時を過ごすとしたら。
自分には何が言えるのだろう。 別れを受け容れて、耳に心地良い言葉を捜すのだろうか。
それとも、最後まで「今」を大切にして、さよならを飲み込むのだろうか。

……分からないけど。 今、僕には言ってやれる事がある。

「いつも通りに喋ればいいさ。 今日お前が、妹とお別れしなきゃいけないなら。
 ……何時だって、何度だって、あの子を呼び戻してやるから。 ………ぼ、僕が、さ。 」
「…………ジュン………!!」

僕にしがみついてしゃくり上げる小さい背中を、少し照れ臭いけど抱き締めた。
安請け合いをしてしまったけど。 僕にその力があるというなら、そうしたいから。



「きゃああああああーーーーーーー!!??」
突然の悲鳴で、僕らは我に還った。 この声は……真紅!?

あの真紅がこんな大声を上げるなんて……。 大慌てで居間に戻った僕達が見たものは。

「うい?」
無邪気な顔でカップ麺をすする雛苺だった……。

393:NOODLE  4/7
06/04/17 00:47:42 9Q8QGNbx
「ごめんなさいなの…………」
事情を知って散々泣き腫らした雛苺が、もう何度目か分からない謝罪を口にする。

「私が悪いのだわ……。 私が部屋にマイカップを取りに帰ったりせずに、蒼星石の側についていれば……」
真紅は真紅で、見ている方が辛くなるくらいしょげきっている。

なんて事だろう。 あまりにあんまりな結末に、僕は何も言えずにいた。
蒼星石は結局ほとんど言葉を交わす事なく、再び遠い所に旅立ってしまったのだ。

ちらりと翠星石の方を見る。 彼女は先程から俯いて押し黙ったまま。
こんなの、慰めるなんて不可能だ。 再会も別離も、何もかもが普通じゃなさすぎた。

あぁ、でも。 雛苺と真紅を見る。 今は、僕が何とかしなくっちゃ。
口を開こうとしたその瞬間、先に口を開いたのは翠星石だった。


「ほらほら皆、何て顔してるですか。 こんなの蒼星石は望んでないですよ!」
蒼星石の名前が出た瞬間、雛苺と真紅がビクッと肩を震わせる。 そんな二人に翠星石は優しく語りかけた。

「こぉら、食い意地の張ったおバカいちご。 いつまでそんな顔してるです。
 カップ麺は食べられるためにあるですよ? 雛苺がしたのは、当たり前の事です。」

「でも、あれは蒼星石だったの…………」
また泣きそうになる雛苺。 それに被せるように、翠星石が続ける。

「…確かにあれは蒼星石でした。 でも、カップ麺だったんです。
 カップ麺ですよ? 悪い冗談にも程があるです。
 本当の蒼星石の体は、ほら。 今もおじじのお屋敷で眠ってるですよ。」

「きっと蒼星石は、あんまり私が泣いてるもんだから、ちょっとの間だけ無理して帰ってきてくれたんです。
 だってそうです。 私が泣き出すと、いつだって蒼星石は飛んできて、側に付いていてくれたから。」

「だから、きっと。 また会える気がするんです。
 ……蒼星石は。 こんな形になってまで、飛んできてくれたんだから。」

394:NOODLE  5/7
06/04/17 00:48:42 9Q8QGNbx
夜。 昼間の事が気になって眠れない僕は、通販で買ったプラモデル「ガンガル」を組み立てていた。
正直こんなネタプラモ要らないが、クーリングオフできなかったのだ。

ふと。 背後に気配を感じて振り返る。 そこには予想通りの人影があった。
翠星石……そうだよな。 眠れるわけが無い。 真紅も雛苺も、今日は中々寝付けなかったみたいだった。
まして双子の姉である翠星石ともなれば、その心中は察するに余りある。

「ジュン……昼間は…………ごめんなさい、です。」
「…………なんでお前が謝らなくちゃいけないんだよ。」

誰よりも一番苦しんでるはずなのに、まだ気を遣うのか。
自分よりも真紅と雛苺の事を気に掛けて。 今、僕にまで気を遣ってる。
そんな事しなくていい。 そう言ってやりたかったけど。 今は何を言っても、苦しめてしまいそうで。

「…………ありがとう、ジュン。 …………伝わる、です……。」
……あぁそうか。 マスターとドール。 その心の海は繋がっている。
わざわざ言葉というフィルターを通さなくても、伝わるのだ。

「でも、私は、本当に大丈夫なのです。 ……だって、信じてるですから。
 ジュンのこと。 ジュンが、昼間に聞かせてくれた言葉。」
「え…………」

(何時だって、何度だって、あの子を呼び戻してやるから。)

「あ、あれは………………」
「……ジュンは、自分の可能性を否定するかもしれません。 ……でも、私は。
 信じてます。 信じられるのです。 ……ジュンの、ことば、なら。」


……胸が。 胸が痛い。 はじめて、本当の翠星石を見たような気がした。
知らず手に力がこもる。 ………あぁ、なんて、やわらかい……。
………………へ? やわらかい!? ガンガルが? ……恐る恐る手元を見る。

「やぁ。 ジュンくん。」
ガンガルが喋った。

395:NOODLE  6/7
06/04/17 00:49:41 9Q8QGNbx
次の日の朝。 ガン星石はドールズから熱烈な歓迎を受けた。

「凄い………呼び戻したんだわ。」
お前は他に言う事は無いのか。

「蒼星石かっこいいのーーー!」
ガンガルだぞ……ガンガルなんだぞ……。

「蒼星石、お久し振りなのかしらー!」
「誰だっけ?」
神奈川が泣き出した。

ああもう騒がしい……昨日のお通夜ムードは一体何だったんだ。

「ジュンくん……もう片方の腕にもデカールを貼ってくれるかい? その方が美しいよ。」
「………………」

昨日喰われたばかりだというのに、恐ろしくマイペースな奴だ。
今も乙女のドレスアップとやらで、面相筆で細部を塗装させられている。

「ひゃあっ!?」
「絆パンチ!!!」
ガンガルが奇声を上げた次の瞬間、真紅の鉄拳が僕の顔面にめり込んだ。 鼻が! 鼻が!

「まったく人間のオスは想像以上に下劣ね……塗装にかこつけて、まさか筆で乙女のあんな所を……」
「分かるかぁーーー!!!」


「まだ接着剤が乾ききってないね。 ちょっとだけ……こうしててもいいかな。」
「まぁ……フフフ、蒼星石は甘えんぼさんですね。」

肩に寄り掛かる妹?を前に、翠星石が満面の笑顔を見せる。
カーネルサンダース並の可動範囲の狭さが災いしてか、寄り掛かるというより潰されてるようだ。

まぁそんな事、今の翠星石にとってはどうでもいい事だろう。 …たぶん。

396:NOODLE  7/7
06/04/17 00:51:00 9Q8QGNbx
カップ麺からガンガル。 食物から人形へ。 見ようによっては一歩前進だ。
だが、以前より確実に騒々しくなった部屋を見て、一瞬ジュンはこれで良かったのだろうかと思わず自問してしまった。

目頭を押さえて俯くジュンに、翠星石がいつもの調子でのたまった。

「まぁ今回の事は確かにジュンのお手柄ですけどぉー。 だからってあんまり自惚れるなですぅー。」

な!? なななな!? 何だそりゃ。 そりゃ無いだろ!

お前な、昨日の夜はあんな泣いてた癖に……。
文句を言おうと顔を上げると、そこには柔らかな笑顔の翠星石がいて。


あぁ、くそ、まったく。
照れ臭くて視線を逸らすと、今度はガンガルと目が合って。



ガンガルが微笑んだように見えた僕は、何だかこんな日常も悪くないような気がしたんだ。

                                                 おわり


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