06/04/05 20:14:35 Xz9OOSZ4
「まったく、こんなに酷く言われたのは生まれて初めてだわ」
真紅は助けようともしないで本の山を一瞥する。彼女の中では、失礼な人形よりも本が傷まなかったのかが心配だった。
誰も助けてくれないので、男の子は自力で本の山から這い出る。頑丈な人形である。
「暴力まで振るうなんて……。こんな酷い人間は初めてだ」
真紅はまだ減らず口を叩く人形の前にズンと立ち、迫力のある目で見下ろす。
「貴方が悪いのよ。人を一方的に悪者にして。私はネジ穴を探しただけよ。勘違いもいい加減にしてほしいわ」
真紅の言い訳を聞いた男の子は、黙り込んでしまった。冷静になって考えれば、勝手に決め付けてしまった自分が悪いと思ったからだ。
真紅は脱がした服を拾い、男の子の前に放った。
「服を着なさい」
男の子は黙ったまま学生服の袖に腕を通す。
「手を上げたのは謝るわ。ごめんなさい」
真紅がぶっきらぼうに殴った事を詫びた。人形相手に謝るなんて馬鹿みたいだが、彼女はこの男の子が可哀想に思えたのだ。
「僕の方こそ、ごめん」
服を着終えた男の子も、顔を上げないでぶっきらぼうに謝る。
二人の心が初めて繋がった瞬間だった。
つづくと思う