【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/22 18:02:46 oB4Irn8J
■スーパーリンク
URLリンク(www.tbs.co.jp)
↑ TBS公式
URLリンク(p-pit.ktplan.ne.jp)
↑ もものたね (原作PEACH-PITのHP)
URLリンク(www.gentosha-comics.net)
↑ コミックバーズ
URLリンク(kanaria.ddo.jp)
↑ アップローダー (画像関連)
URLリンク(i.cool.ne.jp)
↑ ローゼンメイデンAA保管庫
URLリンク(futaba-info.sakura.ne.jp)
↑ 虹裏キャラ辞典 (実装・赤提灯など)

3:1
06/03/22 18:29:12 oB4Irn8J
保守も兼ねて、とりあえず投下

4:1
06/03/22 18:30:10 oB4Irn8J
 桜田ジュンはとても不機嫌だった。
 理由は膝の上に座っている彼女にある。
 彼女の名は翠星石。今夜も寝る前に本を読んでもらっているのだ。
 ジュンが本を読む声に聞き入っている彼女は、とても素直で可愛げもある。
 だが、昼の彼女はまるで別人だ。
 ジュンを平然と「チビ」と呼び、憎まれ口を次々と連発する。
 今日も酷い言葉で罵られたジュンは、今の状況が納得できない。
 どうして、こんな奴のために毎晩本を読んでやらなければならないのか。
 特に悪く言われた日には、こんなふうに思えて仕方がない。
 ジュンの我慢も限界を超えようとしていた。

「ジュン、どうしたです? 続きを読むです」
 朗読が途切れた事に文句を言う翠星石。
 ジュンの気持ちを知らない彼女は、遠慮無しに先を促す。
 無性に頭に来た彼は、ささやかながら復讐する事を決心した。
「これから話す事は、嘘みたいだけど本当にあった話です」
「え? そんなの本のどこにも書いてないですよ」
「いいから聞け。今日はとっておきの話をしてやる」
「おもしろそうですぅ。せっかくだから聞いてやるですぅっ」
 ジュンを信用しきっている翠星石は、期待に瞳を輝かせる。
 これから眠れない夜が訪れるのことも知らずに……。

5:1
06/03/22 18:31:16 oB4Irn8J

「も、もうやめるですぅっ。聞きたくないですぅ……!!」
「―テレビの電源がひとりでに入り、砂嵐の画面が徐々に井戸のある風景に変わっていく」
 翠星石が身を縮こまらせながら、涙声でジュンの話を止めようとする。
 怖がりすぎているせいか、鞄に逃げもできないし、耳も塞げなくなっていた。
 もうお解かりだと思うが、彼がしている話は怪談物だ。
 翠星石がかわいそうになるほど怯えているのだが、ジュンに話を中断する気配は見えない。
 これは彼女へのおしおきだ。それに、話し手として、これ以上嬉しい反応はない。
 ジュンはやや調子に乗りながら、話を最後まで続けた。

 話し終えて一時間後、今度は逆にジュンが困り果てていた。
「おーい、もう話はないから寝ろよ」
 膝の上の翠星石は何も答えない。彼女は怖くて、ずっとジュンにしがみついていた。
 何度も鞄で寝かそうとしたが、ぎゅっと彼の服を握って絶対に離れない。
 効き目がありすぎるのも困りものだ。ジュンは溜め息を吐いて同じ言葉を繰り返す。
「もう寝ろよ」
 返事はない。
 まだ駄目だと思った時、蚊の鳴くような声がする。
「……寝れるわけないですぅ」
 返ってきたのは震えた声だが、やっと会話ができたことに少し安心する。
 そして、声が出るようになった翠星石は、真っ先に批難する。
「どうして、あんな話をするですか。やめてと言ってもやめないですし……!」
「いや、あの、いつもあんまり僕を馬鹿にするから、おしおきにと……」
 やりすぎたと自覚しているジュンも、だんだん声が小さくなる。
 その理由にショックを受けた翠星石は、涙目でジュンを見上げる。
「それにしても酷すぎるです。ジュンは翠星石が嫌いですぅ……?」
「悪かったよ。もうしないから……」
 この後、ジュンはひたすら頭を下げ続けた。


6:1
06/03/22 18:32:44 oB4Irn8J
 夜も更け、そろそろジュンも睡魔に負けそうになっていた。
「なあ、離れてくれないか?」
「ムリですぅ! 独りになんてなれないですぅ」
 いまだに翠星石はジュンの胸から離れられないでいた。
 ジュンが引き剥がそうとすると、とたんに泣き出しそうになる。
 まだまだ眠れそうになかった。


 翠星石は夢を見ていた。
 お日様の暖かい日差しが降り注ぐ庭で、花や木の手入れに勤しむ。
 木は青々と茂り、花は色鮮やかに咲き誇る。蝶は華麗に舞い、鳥が美声を囀る。
 こんな楽園のような庭は見たことがない。
 庭師の翠星石は、まさに夢のような時間を過ごした。

「うぅ……朝ですかぁ……?」
 窓から入る朝日に目が刺激され、穏やかな覚醒を迎える。
 鞄の外で目覚めるのはいつ以来だろうか。
 そんな事を考えている翠星石だが、目に映っているものを理解して、はっと息を呑む。
「ジュ、ジュンと寝てたですか……!?」
 目前にはジュンのかわいい寝顔が。
 彼に抱かれるように寄り添って寝ていた。
 昨晩、眠気に負けたジュンは、怖がる翠星石と一緒にそのまま眠ってしまったのだ。
 いきなりな状況に驚いていた彼女だが、それもすぐ落ち着いた。
 ジュンの緩やかな呼吸と心地良い体温が、翠星石を安心させる。
「素敵な庭を手入れできたのは、ジュンのおかげかもですぅ」
 彼女は甘えるように彼の広くない胸に頬を着ける。
 ジュンの鼓動を子守唄に、素敵な庭を目指して夢の世界へ旅立った。



7:1
06/03/22 18:33:51 oB4Irn8J
 朝から桜田家は賑やかだった。
「翠星石ずる~い。ヒナもジュンとねんねするのぉ」
「ジュン、見損なったわ」
 雛苺がジュンにまとわりつき、真紅が怖い顔をする。
 翠星石が二度寝をしたので、いつもの時間に起きた残りの人形達に現場を見られてしまったのだ。
 仲良くベッドで寝入っている姿は、相当な衝撃を与えたらしい。
「僕は何もしてない!」
「翠星石、あなたもはしたないわよ」
「こ、これは不可抗力ですぅ! 誤解するなです!」
 ジュンと翠星石は揃って弁解しようと必死になる。それが庇いあっているようで、真紅を余計に苛立たせる。
 怒りっぱなしの真紅に、雛苺が不思議に思って尋ねる。
「真紅はジュンとねんねしたくないの?」
「私だって……」
「だって?」
 ぽろっと出てしまった言葉を雛苺がオウム返しする。
「うるさいわね。早く朝食を食べましょ。のりが待ってるのだわ」
 怒りではなく廉恥に顔を染めた真紅は、そう言ってドアノブにステッキを掛ける。
 真紅も内心は雛苺と同じで、翠星石が羨ましかったのだった。



8:1
06/03/22 18:35:18 oB4Irn8J
 あっという間に昇った日が沈み、時刻は人形達が眠りに就く頃になっていた。
 翠星石は今夜はベッドでジュンを待つ。
「ジュン、本を読むですぅ」
「今いく」
 急かされたジュンは、少し意外に思いながらベッドに座る。昨晩、あれほど怖い目に遭わせたのにこれだ。
 翠星石が嬉しそうに膝に登るので、意地悪かもしれないが聞いてみる。
「よく懲りないな。昨日、あれだけ怖がっていたのに……」
 昨晩の恐怖を思い出し、翠星石が一瞬肩を震わせる。
 しかし、次には何かを期待した目でジュンを見る。
「怖い話……してもいいですよ? その代わり、今日も一緒に寝ることになるですぅ」
 反省の色が見えない様子に、おしおきの効果がなかったのをジュンは思い知る。
 彼は苦笑しながら手元の本を開く。
「じゃ、読むぞ」
「はいですぅっ」
 二人だけの大切な夜が始まる。
 だが、彼らは知らない。二つの鞄がわずかに開いていることを……。




9:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/22 19:00:27 WqBDuKcc
2番手GET!
>>1乙っっっっっです。激しい批評は変わらんかもだけど、取り合えず
これで住み分けはできそうかな。

10:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/22 19:42:11 v35nuSaA
>>1

虐殺嫌いだからスレ分けありがたいです。

11:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/22 23:15:43 tlVH12UW
もっと話を!

12:SS「永遠のアリス」
06/03/23 03:59:27 BDZMF1kI
では、投下します

13:永遠のアリス(1)
06/03/23 04:00:22 BDZMF1kI

水銀燈が空を飛んでいた

水銀燈の右腕は、翠星石の蔦に引き千切られ、皮一枚で肩からぶら下がっていた
水銀燈の顔は、蒼星石の庭師の鋏によって無数に刻まれていた
水銀燈の側頭部は、金糸雀の超高周波音によって、抉られるように崩壊していた
水銀燈の胸は、深く食い込んだ真紅の花びらによっていくつもの穴が穿たれていた
水銀燈の黒い羽根は、雛苺の刺蔓によって、根元を僅かに残しむしり取られていた
水銀燈の命は、ただ見つめつづける薔薇水晶によって最後のひと匙までに奪い取られた

水銀燈が空を飛んでいた、6つのローザ・ミスティカを抱え、命を垂れ流しながら飛んでいた


14:永遠のアリス(2)
06/03/23 04:01:06 BDZMF1kI

メグは眠っていた

水銀燈が最後の命をふり絞ってたどり着いた病室、彼女のミーディアム、メグは静かに眠っていた
つい数時間前、水銀燈がすべてのローザ・ミスティカを奪うため、ここを飛び立つ少し前
メグは胸の脈打ちを止め、呼吸を止めた

戦いは地獄だった、そして戦い終わり傷ついた体で、帰るべき所へ帰る道は・・・本当の地獄だった

メグは静かに、深く、冷たく眠っていた

「メグ・・・遅くなって・・・ごめんね・・・・ほら・・・全部集めてきたよ・・・キレイでしょ・・・・・
あなたに・・・何かあげるなんて・・・これが最初で、最後ね・・・だから全部あげる・・・早く、目を、覚ましてよぉ」

水銀燈は自分の集めた6つのローザ・ミスティカを、メグの体に押し込もうとするが
ローザ・ミスティカは冷たくなった体を拒むように、幾度も弾かれる
幾度も・・・・・幾度も・・・・・・

「もう・・・メグったら・・・欲張りさぁん・・・あげるわよぉ・・・最後のひとつも・・・ぜんぶ・・・あげる・・・」

水銀燈は自分の胸に深く手を刺し入れ、紫のローザ・ミスティカを掴み出すと、メグの体の上に置いた

「ひとりで壊れて・・・消えるのは・・・イヤだったの・・・メグに会えなくなるのは・・・イヤだったの・・・
・・・・・・・・でも・・・わたし・・・メグに・・・なりたいの・・・メグの・・・命に・・・・・なりたい・・・・」

ローザ・ミスティカはメグの体の上で何度も跳ねる、輝きながら、もう動かないメグの上で何度も跳ねる
何度も・・・・何度も・・・・・・・

水銀燈はもう動かなくなりつつある、冷たくなっていく両手で、7つのローザ・ミスティカをメグに押し付けた、
紫の、水銀灯の命を・・・メグに、強く強く押し付けた
強く・・・・・強く・・・・・・・・・・

お願い・・・メグ・・・わたしはもう・・・動く事も、感じる事も・・・・・・出来なく・・・・・・なるけど
そばに・・・置いてね・・・わたしは・・・ずっと・・・メグの・・・・・・そばがいいの・・・・・・お願い・・・」

冷たくなったメグは、水銀燈が最後の命で押し込もうとするローザ・ミスティカを冷たく拒み続ける
冷たく・・・・・・・・冷たく・・・・・・・・

「お願い・・・・メグ・・・動いて・・・よぉ・・・・・」

15:永遠のアリス(3)
06/03/23 04:02:18 BDZMF1kI

水銀燈は聞いた、それは水銀燈が最期に見た幻覚だったのかも知れない、でも、確かに、水銀燈は感じた

「水銀燈・・・・わたしの最初のドール・・・わたしのアリスよ・・・さあ・・・・わたしの元へ・・・」

水銀燈は、空に居るローゼンを、会いたかったお父さまを仰ぎ見た、メグの手をしっかりと握りながら
「お父さま・・・お父さま・・・・わたしの望みは・・・わたしのミーディアム・・・・いえ・・・
わたしのたった一人の・・・・メグ・・・・わたしは・・・永遠に・・・・メグと・・・・共に・・・・」
水銀燈は6つのローザ・ミスティカを、自分の紫のローザ・ミスティカと共に空へ捧げた
「ローザ・ミスティカよ・・・その在るべき所へ・・・・還れ」
6つのローザ・ミスティカは空に浮かび、各々の方角へと飛んで行った
水銀燈はそれを見届けると、メグの胸に身を委ね、微笑み、静かに目を閉じ、その動きを止めた

紫色のローザ・ミスティカは天井でぱちんと弾け、水銀燈とメグに、紫の雪となって降りそそいだ


16:永遠のアリス(4)
06/03/23 04:06:28 BDZMF1kI

柿崎メグの葬儀がしめやかにいとなまれた

家族を苦しめ、病院を困らせ、学校に背を向けたメグの葬式に参列し涙を流した人は意外に多かった
何も持たず、何も欲しがらなかったメグの棺にはひとつだけ、銀髪の美しいドールが入れられた
メグと水銀燈は棺の中、まるで二人寄り添って生まれて来たかのように花の中で安らかに眠っていた
それはまるで、同じ所から来た二人が、同じ所に還るために永遠に寄り添っているかのようだった

                永遠のアリス(完)


17:永遠のアリス (あとがき)
06/03/23 04:07:21 BDZMF1kI
後ほど、第二部を投下します、では

18:永遠のアリス 第二部(1)
06/03/23 08:01:23 BDZMF1kI

ドールショップ、その奥の工房では、金髪長身の人形師が椅子に深くかけ、壁を眺めていた
工房と売り場を隔てるカーテンは開けられ、そこには赤い目の男が寄りかかっていた

「まさか貴方がローゼン・メイデンシリーズを再び作り始めるとは思いませんでしたよ」
「そんなつもりは無いさ、僕はただ、我が師の創りしドールを修復し続けるだけさ」
作業場の隅には6つの椅子が並んでいる、それぞれの椅子の上にドールが在る、一度壊れたドール
「あなたが師を越えるために創った第七は、結局、微塵となってしまいましたね」
永い眠りについていた薔薇水晶、自らの設計でローゼン・メイデンを創り出せという、師の試練
彼が課せられた本当の試練は「負けること」自らの生み出したる物が掌の上で滅びる様を知る事だった

「ローゼン・メイデンは世界にたった八体、それ以上は存在しないし、決して生まれない
わたしの人形師としての在り方は、創ることじゃなくて蘇らせる事だと知った、だから戻したよ
師の創りし最初の姿に、見た目は変わらないだろう?でも、中身は古えの、師の生み出したる薔薇水晶」

槐は机の端、かつて薔薇水晶を構成してた土くれの山を一掴みして、また土の山にさらさらと落した
「新しい土を・・・拒んだんだ、ローザ・ミスティカが、まだ命を宿すに足る器ではないと・・・
最新の精製技術で産出された、全ての数値に置いて旧い土を上回る、新しい人形材料としての土は
かつて土がまだ職人の産物だった頃、地を這い土を舐め、土を我が子とし寝食を共にした職人の志には
遠く及ばなかった、修復のために苦労して譲り受けて来たよ、未だに生きる、土を愛する職人から」

アリス・ゲームで壊滅的な損傷を受けた6体のドール達が、在りし日の外見のままで並んでいる
「ドール達、元通り直りそうですか?・・・・すべて」
「たとえ髪の一筋でも、焼かれた灰の一粒からでもローゼンメイデンは蘇る、人工精霊が在る限り
そこには師の残したローゼン・メイデンの全て、遺伝子ともいえる生命の設計図が宿っているんだ」
「あなたで何代目、でしたっけ?」
「ローゼンの徒弟はローゼン、その徒弟も然り、何度繰り返したかは知らないよ、君もそうだろ?」
白崎と呼ばれる男、ラプラスは何も答えず、ただ謎めいた笑みを浮かべながらドール達に視線を向けた

「君はラプラスの魔、そして私はローゼン、ローゼン・メイデンを創りしローゼンの徒弟」



19:永遠のアリス 第二部(2)
06/03/23 08:03:43 BDZMF1kI
槐は、並んだドールのひとつ、美しい黒髪と紅い瞳を持つ、唯一の着物姿のドールを見つめている
「最後のドール「メグ」、第一ドールと対で作られたローゼン・メイデン第八のドール
人間の愚かさゆえに何代目かのミーディアムの手で、脆弱な人間となってしまったメグは
ローザ・ミスティカを失い、我々から、全てのドール達の記憶から、その姿を消してしまった
師が生み出したる時の姿、美しいドールの姿を蘇らせたよ、第一が取り戻した、失われた片割れ」
「彼女は・・・頑張りましたからね」
水銀燈が傷つき、耐え、成し遂げた独りぼっちの戦いを的確に表す言葉は、白崎の語彙の中には無かった
「ドール達が人の世の中で時と共に朽ちていく摂理、水銀燈はそれを受け入れた真紅達と独りで戦った
たとえ世界を壊しても、自らの身を焼かれても、想う人の命の時計を戻す、その気持ちと共に戦った
記憶が消えても滅びぬ想い、再び愛する者をこの腕に抱きたい想いのために戦う彼女は・・・美しかった」

「彼女はアリスになったんですね、壊れ、消えたローザミスティカの再生儀式、その祭司たるアリス」
「儀式という言葉には当たらぬ、再形成の作業、全てを引き換える覚悟を試される、非常に困難な作業
全てのローザ・ミスティカの力を受け、己のローザ・ミスティカの最大の力と、ドール達の強い意思で
失われたローザ・ミスティカのほんの極微の残滓から、ローザ・ミスティカは再び生まれ出ずる」

槐は水銀燈を見つめる、慈しむような瞳、彼は今まで修復対象をそんな目で見る事を己に禁じていた
「高い山の頂の花、愛する者を救う唯一の薬を生む花、全てのドールが力尽き、山を登るのを諦めた
しかし、わたしの愛しい水銀燈はすべてを捨てて、命の花を手に、愛する者の元へと生きて帰ってきた」
「記憶の封印、ローゼン氏も酷な事をいたします、彼女達、せめてあなたか私が何か知っていれば・・・」
槐は横目で白崎を見つめた、その目は彼では無く、つい先日の凄惨な光景を見ていた、目を閉じ、呟く
「姉妹が集いローザ・ミスティカを出して『ちょっと貸して』『はいどうぞ』それは果たして試練かね?」
結局、槐自身もまだ納得はしきれないようだ、彼はただ、自分の役目に没頭する事で、贖罪を望んだ

ローゼンもラプラスの魔も、そしてドール達も、いずれ最初のローゼンの施した「記憶の封印」が発動し
アリス・ゲームの事を忘れ去るだろう、そしていつの日か再びその時が訪れた時、封印は解かれる
「我らに、アリスを」の記憶が解き放たれ、全ての記憶が蘇るのは、全てを終えた後の、ほんの短い刻

「どんな花よりも気高く美しく、どんな宝石よりも輝くもの、一点の穢れも無い完全なる少女、アリス
私がこのアリス・ゲームに関して、我が師ローゼンに同意できる数少ない事のひとつは、我が師が
『無償の愛』をこのような言葉で意した事だ、現実に目の前にあるのは、打算、等価交換、穢れた愛
しかし、あるかもわからぬ美しき愛を、信じ追い求める気持ちを失った時、愛は暗闇に墜ちてしまう」

姉妹への見返りを求めぬ愛で成し遂げるアリスへの途を拒むドールを見て、ローゼンは涙を流したという

「零れ落ちてしまった姉妹は・・・「今」を守るため、時と共に忘れ去られた・・・切り捨てられた者に・・・
闇に差し伸べられる手はどこにも無いのか・・・愛はどこにある?・・・誰か・・・愛はあると言ってくれ・・・」



20:永遠のアリス 第二部(3)
06/03/23 08:04:46 BDZMF1kI

槐は椅子の上で目を閉じる水銀燈の髪を撫で、ドレスのリボンを結び直した、服の下には、胴体の無い体

「そして彼女は、自分自身と戦った、父たるローゼンの残した、他のドールとは違う、彼女の体と
ローゼン氏が全てを徒弟に託し、世界に旅立つ前の最後の作品、胴体の無い体、ボディレス・ボディ」

槐にとって最も困難だった修復、損傷は軽微だったが、体の各部の精度は他のドールの比ではなかった

「彼女達を創った初代のローゼンは、いつの日にか姉妹の身に危機が訪れた時のために、第一ドールに
自らの思想の全てを注ぎ込んだ、天駆ける翼、他の精霊を我が身に宿す力、そしてボディレス・ボディ」

もう一度彼女の体を、その胴体を掌で撫でた、今度こそ彼女は、この体を愛してくれるだろうか

「眺めて楽しむドールじゃない、ローゼン・メイデンは生き、戦うドール、そのためにあらゆる部分を
徹底的に軽量化した、軽い胴体と空間故のほぼ無限に近い可動域、全ては戦い、生き延び、守るため
世の全てを敵とし、時には姉妹達までもを敵とする宿命の彼女に、ローゼン氏はその全ての想いをこめ
他の姉妹には扱えぬ高い能力の体を与えた、ボディレス・ボディこそが水銀燈の強さ、そして美しさ」

「彼女は、指輪の契約に依らず人間の力を奪う事が出来る、それを誇っていましたね」
「指輪やネジ巻きは『互いの信頼』という最も強力な契約には及ばない、一方的に力を奪う事ではなく
心通じる者と常に力を分け合う、それがファースト・ドールが幾多の戦いを経て得た、最大の武器」
「まぁ彼女の場合は、口でそう言ってても、力を奪うよりも奪われる事の方が多かったようですから・・・」
「こう見えて小賢しい第五辺りと比べても少々抜けた所のある娘だから・・・育てた者に似たのだろう」
槐は白崎を見つめた、穢れ無き瞳が逆に滑稽に見える、白崎も槐を睨み返す、赤い鋭い目に悪意は無い
「いえ、作り手に似たに違いありません」

槐は、心から愛情のこもった仕草で、もう一度水銀燈の髪を撫でた・・・もう一度・・・



21:永遠のアリス 第二部(4)
06/03/23 08:06:39 BDZMF1kI
槐は、並ぶ6体のドールを見つめながら、無口な彼には珍しく、愛娘へ語りかけるように話し続ける
「全てのドール達は対で作られた、成長と修身を司る翠星石と蒼星石、知恵と勇気を授く金糸雀と雛苺
そして、他者を想う優しさを宿す真紅と、孤高を貫く強さを持つ薔薇水晶」
「水銀燈は『過去』ですね、彼女のnのフィールドは怖かったですからね」
槐は椅子を回し白崎を睨んだ、彼が珍しく人と多くを語る時の癖、白崎はそれが嫌いじゃなかった
「君は墓場を怖いと思う種類の者か?、彼女の中にあるのは過去の蓄積さ、宝石のような叡智の蓄積」
「そして『未来』のドール、メグと対を為す・・・」
「そう、未来への希望が無い限り、過去はただの骸と廃墟、過去を温められぬ未来もまた、空虚さ」
「彼女達、変わらないんでしょうね」
槐は自分の頬に手を当てながら微笑んだ、彼は困難な修復作業を終えて以来、少し笑う事が多くなった
「ふふふ、そうだね、水銀燈は相変わらず憎まれ口を叩き、メグは悲観的な言葉で周囲をやきもきさせる
彼女達はずっとそうしてきた、変わらないだろうね、真紅や翠星石ともきっと喧嘩が絶えないさ、ふふふ」
「でも・・・今までとは違う」
「そうさ、水銀燈もメグも、もう、片割れを無くした孤独なドールじゃない、失われた記憶の中
互いの呼び合う心を聞き、互いを見つけ、互いを信じる強い心で、自分と繋がる存在を蘇らせたんだ」

「過去」のドールは、様々な形の現在と戦った、過去を切り捨てた現在を待つ「暗黒」と戦った
そしてドール達は、現在と過去を繋ぐものの存在を信じ、それは「未来」を蘇らせた

それが、愛

「彼女はただ・・・愛したんだ・・・美しく輝く・・・穢れなき心で・・・ただひとりを・・・心から・・・
我々は、この絶望だらけの世界に泣きながら生まれた時、世界を壊す力と共に愛する心を授かったんだ」


ドール・ショップの入り口のドアの上、来客を告げる青銅のカウベルが元気よく鳴った
少年がドールショップのドアを開ける、両腕にドールを抱いた、まだ少し幼さと未熟さの残る少年
槐は再び呟く「そしてローゼンの徒弟はローゼン、その徒弟も然り」

「やぁ人形師のオッサン、学校帰りにあんたのウンチク聞いてやりに来てやったぞ、」
「こんな貧相なドール・ショップ、今日こそはまともなお茶を出してくれるのかしら」
「蒼とカナとヒナと薔薇水晶、それと水銀燈とメグのヤロウをちゃんと治すまで毎日見張りに来るですぅ!」



22:永遠のアリス 第二部(5)
06/03/23 08:08:26 BDZMF1kI
少年とともに入ってきた2体のドールを見て、白崎が彼女達から顔を逸らし、くすくすと笑う
「あの二人組は『日帰り入院』、ですか?」

アリスゲームの後、すべてのドールは変わり果てたジャンクとなり、槐の元に運ばれた
そしてその中の2体は今、これまでと何も変わらずミーディアムの元で生きて動いている

「第五は、過酷なアリスゲームにも係らず幾重にも組み込まれたフェイルセーフ(安全装置)が働き
微小な損傷のみで済んだ、衝撃でポンと外れる関節が体の破損を食い止めた、日本の車のように精密だ
第三は外れたローザ・ミスティカを手で押し込んだら突然目を覚ました、外部の損傷もあったが
『こんなのツバつけて直すですぅ!』と、そのまま歩いて帰った、ソビエトの戦車のように逞しいよ」
「第四とは大違い、ですね」
「彼女は大変だったよ、分離したローザ・ミスティカを再び宿すために、殆どの部品を作り直した
最初から作り直すことが前提だった第二や第七、そして第八のほうがまだ作業時間は短かったよ
困難だったが、その価値はある、イタリアのハイ・スピードカーのように美しいドールだから」

少年はいつの間にか定位置となったローゼンの仕事場のデスク、その手元がよく見える彼の隣に座った
紅いドールは白崎の所まで来て、彼を睨んで「フン!」と言うと背中を向けたまま彼の側に居座り
翠のドールは店のあちこちを無遠慮に見回ると、ドール達が座る椅子の並んだ一角に突っ立ってる

少年は槐の隣、彼の手元を見ながら、時に手伝いながら、言葉と指先で語らいを重ね、
ローゼンとなるべき者に口伝される職人の秘術を、貪欲に吸収している
「ジュン君、今日はヒゲゼンマイの調律とその特性について覚えてもらおうか」

白崎は彼らを見つめた、「ローゼンの徒弟はローゼン、その徒弟も然り・・・ですか」




23:永遠のアリス 第二部(6)
06/03/23 08:12:11 BDZMF1kI
「ドールの場合はこのテンプを遅らせ気味に合わせるのか?・・・って上手いな、ローゼンのオッサン」
「我が時計仕掛けの師の直伝さ、ローゼンは時計職人であり、医師であり、お針子でなくてはならない
ジュン君もこれから多くの師を得て、多くを学びたまえ・・・それから『オッサン』はやめたまえ」
「服飾では僕があんたの師だ、あんたはいい弟子だよ、いつかは女神のローブだって縫えるよ」
少年の助力と、彼の記憶の中に在る「型紙」が無ければ、ドール達の美しい衣装の再生は不可能だった
「しかしジュン君、今回の修復を機に、その、もっと今風の露出の多い服にしては?せめて下着位は・・」
「オッサン!」

翠星石は物言わぬドール達の前に立っている、ここに来た時はいつも、妹の前にずっと突っ立っている
「こら!水銀燈とメグ、目をさましたらわたしが家来にしてあげるから、また一緒に遊ぶです・・・うう・・
泣いてないですぅ!お前らの前で泣くもんかです!蒼星石が目をさますまで泣かないって・・・ふぇぇ・・・」

真紅は白崎に背を向けていた、彼が黙しているとダダをこねるように、黙って背中を押し付けてくる
「相変わらず、わたしが嫌いみたいですね、真紅さん」
「当たり前よ!わたしは昔からあなたと薔薇水晶が大嫌い!、大体紅茶にジャムを入れるなんて・・・」
白崎は微笑む、あの房総の薔薇園手作りの薔薇ジャムを浮かべたダージェリンの芳醇さを知らないなんて

「そういわず・・・今日のはニルギリ葉にジンジャー、シナモンを加え、甘く味付けて牛乳で煮た物です」
「ヒッ!汚らわしい!・・・飲むわよ!飲めばいいんでしょ!一口だけよ・・・コク・・・も、もう一口だけ」
「あーっチャイ大好きです!わたしにもくれやがれですぅ!」
「なんだコレ、臭っせぇ!・・・ん、まぁ結構クセになりそうな味じゃん・・・」
「そうだな・・・僕もそろそろお茶にしようか、白崎君、一杯注いでくれたまえ」

ほどなくして、お茶がさめる暇も無く、来客が喧しくドアベルを鳴らす、3人の女性

「どーもー!カナにお洋服届けに来ましたぁ!いつ着れるようになるんですか?今日?明日?」
「こんにちわ・・・・雛苺におみやげ・・・・雛がまだ食べないならあなたたちが食べても・・・」
「ジュンくぅーん!最近お外を出歩いてばかりでお姉ちゃんと遊んでくれないから、捕まえに来たよ!」

間もなくドアベルが優しく鳴った、老夫婦、父と母を知らず、笑顔を知らず育った槐の顔が和らぐ

槐の時計仕掛けの師、いささか頼りなかった彼の師ローゼンとは違う、父のようなもう一人の師
「やぁ槐君、バーゼル(*世界最大の時計展)での仕事が終わったので、爺の愚痴を垂れにきたぞ」
「主人たら私がデンマーク王室のお友達に放出させた懐中時計を買い占めちゃったのよ、槐が喜ぶって」
本当の「宝」は王家や富豪の宝庫にあり、それは然るべき家柄の「お友達」の間のみで流通している
「これはシバザキ師匠、あ、白崎君、お茶を、スイスの若い技術者達は如何でしたか?教え子としては」
「日本の職人が一番、という訳でもなさそうだ、若者はどの国も変わらん、あ、土産を開けてみなさい」
王室の紋の入った箱を開けた槐の顔色が変わる、どの専門誌にも「現存しない」と記された職人の至宝
「こ、これは?幻のナポレオン・ダイヤル?白崎君!今すぐ特上の玉露を・・・あと、ヨーカンも!」

「お茶の温もりは人を呼ぶと言いますが・・・翠星石君、スコーンでも焼きましょうか?」
「任せるですぅ!まずはトウモロコシ粉と天ぷら油、それからチリ・パウダーを・・」
「そっちのスコーンですか・・・」


24:永遠のアリス 第二部(7)
06/03/23 08:15:52 BDZMF1kI
思いがけず催された午後のお茶会、小用でその輪から外れた槐に白崎が声をかけた
「彼は『ローゼン』になれますか?」
「師の言葉、ローゼンはローゼン・メイデンを創り、そしてローゼン・メイデンもまたローゼンを育む
ジュン君はドール達とそれに関わる人たちから何かを学び、そして彼女達もまた、何かを得るだろう
それに・・・ふふふ、似てないかい?彼は我々が伝え聞く初代のローゼンに、よく似てると思うんだが」
「あえて申し上げます、似てません」
白崎はきっぱりと答えた、ドール達が想い慕う父祖たるローゼンは高貴なる美貌の持ち主と聞いている

「いつの日か再び、人間の愚かさゆえにローザ・ミスティカが失われる日が来るだろう、その時は
彼女達は再び集い、魂の存続の選択をする、復活の実行者アリスを生み出す選択、戦う事もあるだろう」
「もしも・・・」
「わたしは信じるよ、彼女達が決して「終末」を選ばない事を、もしも復活の試練に傷ついたとしても
その魂さえ滅びなければ、その時代のローゼンが、一粒の芥から彼女達の肉体を、必ず蘇らせる
ローゼンが継承される限り、ローゼン・メイデンは滅びない、彼女達が存在し続ける事そのものが
人間の技巧と進歩、生命を生む未知の力への憧れ、それは・・・人間の愛への永遠の希望だから」
「そしてそれは、少女の美しさ、薔薇の花のような美しさを形作る・・・ですか?」
「それが一番、大事だろ?」
槐と白崎はかすかに、しかしとても愉快そうに笑みを交わした

一度壊れた6体のドールは、既に最後の仕上げを残すのみとなって並べられた椅子の上で憩っている
最後の作業、余り仕事熱心とはいえない上に、字を書くのが少々苦手な当代のローゼンが残した作業
6通の「まきますか」「まきませんか」のメッセージ、彼がそれを著し終えれば、ドール達は新たな
マスターを求めて世界へと放たれる、槐がそれを渋ってるのは、自分の作品への未練だろうか
6体のうち3体のドールは既にマスターが決まっている、いずれも自分のドールが完成した暁には
自らの手でネジを巻くために地の果てまでも追いかけて行く覚悟を持ったお嬢さん達、彼女達の催促で
ローゼン・メイデンは現在、前例の無いバックオーダーの状態にある、槐も最近やっと納期を意識し始めた
未知のマスターを待つ薔薇水晶、そして水銀燈とメグ、その3体全てのネジを巻きたがっているのは
どうやらジュン君とそのお姉さんのようだ、もっともそれは真紅と翠星石の嫉妬に阻まれているようだが
「人形同士でミーディアム、それも面白いかもしれないね、互いが互いのネジを巻き・・・なんてね」
白崎はありえないと首を振る、しかし最近彼女達はありえない事をよく起こす、もしかして・・・
彼は並んで眠る水銀燈とメグ、まるで夢の中で軽口を叩き合ってるかのように寄り添う二人を見つめた

「わたしもせいぜい、ジュン君の為に意地悪な「試練」を考えておくとするかな?我が師のように」
「ローゼンの徒弟はローゼン、その徒弟も然り、です」

二人は、ドール達と、ドール達の縁の者に囲まれた少年を見た、椅子の上でまだ動かないドールさえも
表情を和らげてその少年を見つめているように見える

それは、ドール達に「お父さま」と愛される初代のローゼンに驚くほどよく似ているように思えた



25:永遠のアリス 第二部あとがき
06/03/23 08:21:20 BDZMF1kI

前半部分は、ある夜ボクが見た夢の中身そのまんまです
アリス・ゲームへボクなりのオトシマエをつけたいと思い、第二部を書きました

追伸、
「第八ドール・メグ」の執筆にあたっての外観のモデルは「地獄少女」の閻魔あいタンとさせて頂きました

では


26:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/23 09:53:11 yPRLzZry
ここは感想ありですか?
久々に良SSが二つで小躍りしてますよ
感動した!面白かった!

27:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/23 13:32:48 V7DTnndp
超GJです。
インド風煮出し紅茶とか、バーゼルとか、設定がかなりツボにハマリマシタです。
ヒゲゼンマイとか読んだ途端、妄想が花開いて
テンプを仕様してるなら、こいつはきっとトゥールビヨンだな、
しかも100石位ルビーの代わりにRMの欠片を使用しシャトン止め…ローゼンならやり得るとかなんとか。
ううっ、おいらの妄想も貧相だなぁ…。
バーゼルはアンティーク扱ってましたっけ?アンティコルムとかなら知ってるんですが…。
それにしても、バーゼルで仕事って…ジジイって独立時計師だったんだ…。

28:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/23 14:24:28 DUzGshkx
GJ
メグが八番目とかびっくりの連続で斬新でした。

29:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/23 22:21:47 wVmv4MSy
感動しました。とても。

30:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/23 23:16:24 V7DTnndp
娘の入学のために久しぶりに訪れた母校。
卒業式も終わり、春休みの中学校には生徒の喧騒もなく、たおやかな時間が流れている。
古い学び舎だ。僕が中学生として通い、引きこもりながらも卒業し、やがて結婚して生まれた娘が同じ中学校に今、入学する。
校舎だけが今でも変わらない。
あの頃の思い出が蘇る。

懐かしくて切ない思い出がある。
もう20年以上も昔、僕とローゼンメイデンというドール達の物語が始まった。
そして、突然その物語は終焉を迎えた。
自由意志を持つアンティークドール…そんな御伽話を信じる人はいないだろう。
だけど、僕と僕の妻はその御伽噺を現実に体現したのだ。
妻とは幼馴染だった。特別に仲良しと言う訳では無かったが、ドール達との触れ合いの中で、僕達の絆は徐々に深まっていった。

そんな御伽噺の時間は夢の様に終わり、ドール達は突然僕の前から姿を消した。
理由は今でも解らない。
僕達は彼女達を必死に探したが、とうとう見つける事は出来なかった。
そして、そんな現実を直視する事を拒否した僕は、それが無駄だと分かっていても、
ドール達が帰って来ることを信じ、彼女達を待ち続け、いつしか自暴自棄の生活を送っていた。
そんな僕の心の支えになってくれたのが妻だった。彼女のお陰で僕は立ち直る事ができたといっても過言ではない。
現実は容赦なく流れて行く。
その流れに溶け込みながら、1年が過ぎ、5年が過ぎ、美化された思い出を共有する僕等はやがて結婚し、娘を授かることとなった。
そういえば、娘の容姿はあの人形達と同じ位になっているのだろうか…彼女達はどんな思いを持ってここから去っていったのだろう。

帰り際、校舎にチャイムが流れる。
ふり返った夕焼けの差し込む教室で、あの時どこかに置いてきた子供の心と、
人形達の思い出が一同に介して同窓会を開いているような…そんな気がした。

夕食後、久しぶりに娘と3人で星を見た。
冬の大三角形は、訪れた春の星座に押し流されて、大空に季節の変わり目を告げている。
ドール達もどこか遠い世界で、この星の輝きを眺めているのだろうか。
僕は今でも彼女達の帰りを待っている。

人形達の物語…そんなおとぎ話は、もう、娘には通用しない…。

31:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/23 23:19:44 V7DTnndp
卒業と入学のシーズンですねぇ。
そんなシーズンにのせて、オイラなりにその後を書いてみました。

32:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/03/23 23:31:08 BDZMF1kI
トリ付けました
>>13->>25を書いた者です
レス多謝です

>>27
詳細なご感想ありがとうございました
用語は知ってる単語並べただけですが、反応してくれるとは書き手冥利に尽きる思いです
SSだけでなくビギンとか読んでた若気の至りの過去まで救われた気がしました

>>1
通しで読んでみて、改めて翠のカワイさと真紅の静かなる炎に悶々としました
「こ・・・こここのサダコという奴はなかなか見所が・・・あわわわ・・・グスッ・・・コワイデス」
こういう場を与えてくれた事も含めて、スーパーGJ!

では、また何か書けたらスレ拝借に参上します

33:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/23 23:41:22 BDZMF1kI
>>30
グッジョブ!
やはり巴か!巴はJUMを尻に敷くか、それともデレ化か、妄想が走る

34:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 04:41:40 jCY1nmkb
>>1
翠派の私には心に染みる作品でしたwグッジョブ!
その翠星石、単価いくらかな?

>>18
すごくいい、感動しました!グッジョブ!
今までエンジュ、兎共、どうしようもない悪役と言う印象ばかりでしたが
こうした、弟子を見つめて周囲に貢献する様なエンジュは素晴らしいですね!
2人がこんな人格だったなら、何と素晴らしい第二期になっただろうに
うおーんうおーん、翠星石ぃ(ノД`)


この一般スレは、伸びるよぉー!

35:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 09:32:02 MA80TH/g
>41
>42
>49
>50
>51

36:1
06/03/24 10:24:04 W6uBY54E
>>30
時期ネタGJ
しんみりきた

>>32
レスどうもです。そう言っていただけると嬉しいです。
それと、>>25まで読ませていただきました。
ローゼンメイデンにはみんなハッピーが似合いますよね。よかったです。
またの投下を楽しみに待ってますよ。

>>34
この翠は高いですよ。一億万円でどうですか?なんてね

スレ立てした以上、スレの維持に協力しなくては。
SSのネタ考えてきます。

37:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 11:50:44 3ay1Pkq1
続きに期待してます。

38:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 12:17:57 jgnHWwHB
普通のSSはこっちじゃないといけないの?
あっちは虐待専用になっちゃったの?
普通のを書いたはいいが、どっちに投下すればいいか分からん

39:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 12:20:01 1mPsc8eE
虐待以前に議論で埋まってるから投下する意味あるかな?

40:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 13:12:34 my365pk5
>38
どっちに投下スレばいいか判断付き難いのならば
コピペして両方に投下するって手も、
何はともあれwktk

41:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 16:12:08 EebrLcGF
>>40
いや、それやるとマルチ扱いになっちゃうだろ。
とりあえず、こっちでいいと思う。

42:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 19:02:03 jgnHWwHB
まぁこのゴタゴタが冷めたら投下するよ

43:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 19:29:18 FdnCe3Sx
>>42
むしろごたごたしてるとこに投下して
流れを変えてみては?

44:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 19:38:48 Tbb3r502
ここは否定意見禁止のスレだから、虐待でもノーマルでも
自作に厳しい批評批判を望むなら、あっちに落とせばいいと思う。

批評批判が好みじゃないとか、スレのためにならないって考えなら
ノーマル作品はこっち、エロ作品はエロスレに投下すればいい。

スレのゴタゴタは、書き手は気にしないほうがいい。

45:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 20:32:31 l7Uu/jNY
自分なりに一生懸命書いたSSだったけど
こういうスレに投下すれば、あんなにボロクソ言われずにすんだのかな…

何はともあれ皆さんGJ!


46:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 23:01:13 27i7SnI9
向こうは荒らしと批判厨の巣窟になってるからねぇ……。

47:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/24 23:50:58 ukrOinq3
>>45
今一度、自分の欲するSSを語ってみません?

因みにオイラは、現在大戦中に出会った水銀燈と神父の話を構想中。
神父ったってアンデルセンじゃないよ。近々どっちかに投下予定です。
そろそろおいらもコテ名乗ろうかなァ
しかし、何で大戦のエピソードには、誰も先鞭を付けないのだろう(w

48:1
06/03/25 10:58:50 tJT26cTT
このスレ立てた者ですが、私の不手際で混乱させたようですみません。
このスレは私が強引に立てたようなものなので、ここが立っても、むこうの総合スレは今までと同じです。
ノーマルなSSならどちらでも投下できます。

>>26
レス忘れていました。ごめんなさい。
もちろん感想は大丈夫ですよ。
ただ、職人やスレ住人を不快にさせるような感想は控えてください。それがこのスレのルールです。
感想は職人さんが喜びますので、どんどん書いてあげてください。
感想が多ければスレも活性化しますしね。

49:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/25 21:19:52 j2F8foVN
しっかし下らん理由で分けたもんだな

50:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 00:49:59 DZKKQBWA
>>47
ひょっとしてもう書きましたか?
向こうのSS板で同じような構想の物語見つけたものですから・・

51:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 09:44:07 b10qtyJK
>>50
ええ、まぁ、あれがそうです。
あれであっちの流れが好転すれば良いのですが、
それでもダメならおいらにゃどうにもならんですね。


52:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 12:16:44 wt+kMwSZ
甘めのお話をこっそり投下

53:ケットシー
06/03/26 12:17:46 wt+kMwSZ
お小遣い


 平日の昼間から、学生のはずのジュンは机でパソコンのモニターと睨めっこをしている。
 ネット通販にはまっている彼は、暇さえあればパソコンの相手をしているのだ。
 今、彼の家には三人の―こう呼んだ方が自然だろう―人形達が暇をもて余しているというのに、彼はひたすら独りで過ごそうとする。
 人形達の中で割りと大人な真紅は、それに文句を言ったりしない。彼女も独りでいるのが好きなのか、黙って読書やテレビ観賞を勤しむ時間が多い。
 しかし、雛苺は違う。行動と考え方が幼稚園児並みの彼女は、とにかく人の気を引こうとする。
 幼い彼女は寂しさに耐えられないのだろう。ジュンはしょっちゅう雛苺に付きまとわれ、嫌々ながらも遊び相手をしていた。
 もう一人の人形翠星石は微妙な立場だった。彼女も他のドールと同じようにマスターのジュンが大好きだ。
 できるなら、一緒にお茶を飲んでお話もしたい。だが、出会ってからずっと馬鹿にしてきたツケもあり、彼の前ではなかなか素直になれないでいた。
 そんな彼女は、ジュンと楽しそうに戯れる雛苺を見ると羨ましく思い、同時に苛立ちも感じてしまう。それが元でジュンと雛苺にイジワルをする事もしばしばだ。



54:ケットシー
06/03/26 12:18:55 wt+kMwSZ
 今、ジュンは独りでネット通販に没頭している。
 雛苺の相手を真紅に押し付けてきた翠星石は、彼の部屋でその後ろ姿を眺めていた。

「なになに、伝説の都アトランティスを破滅に陥れた呪術アイテムか。誇大広告もいい加減にしろって感じだな。買い、と」

 ブツブツと呟いて品定めをしながら、マウスをクリックする。新しいページが開かれ、違う商品の物色が始まる。くだらない買い物は終わる気配を見せない。

 そんな駄目人間のお手本のような姿を飽きもせず眺めていた時、彼女はふと思いついた。そして、すぐに実行に移す。

「おい、チビ人間。おまえだけ好きに買い物できるなんてズルイですっ」
「なんだ、急に……」

 至福の一時を邪魔され、ジュンは不機嫌な顔を背後に向ける。
 そこには、両手を腰に置いて怒ったポーズをする翠星石の姿があった。

「翠星石にも欲しい物があるです。マスターなら、かわいいドールに少しのお小遣いでもくれやがれです」

 彼女は小遣いが欲しいと言い出した。それを聞いたジュンの眉が不満で震える。

「あのなぁ……忘れてもらっちゃ困るんだけど、おまえらは居候中の大食い迷惑呪い人形なわけだ。どの口でそんな事が言える? まったく、こっちが黙ってれば調子に乗って……」

 頼み事をするならタイミングは非常に重要だ。
 子供の時にお母さんによく物をねだった者なら解るだろう。
 相手の機嫌がいいのを見計らってお願いするのが、この世界では鉄則。
 翠星石は見事にタイミングを外していた。
 もっとも、迷える思春期少年ジュンの機嫌を窺うのは並大抵ではないが……。

 ぐちぐちと嫌味たっぷりで却下され、お願いした翠星石の怒りメーターも急上昇。普段から悪い口が更に毒を増す。
「まぁったく、どーしようもないチビ人間ですぅ。体の大きさだけじゃなく、心の広さもミニマムサイズこの上ないとは。はぁ……」
 そう言って、溜め息を吐きながらオーバーに残念な表情をする。
 このふてぶてしい態度にジュンも当然ヒートアップする。
「なんだとっ!?」
「本当の事を言ったまでですぅ。悔しかったら、小遣いの一つでもあげてみろです」
「誰がおまえみたいな性悪人形にやるか!」
「やぁっぱり、正真正銘のチビ人間です。それでも男かです」
「どーせ僕は小さい男だよ! わかったから、もう部屋から出てけッ!!」
 ひと際大きな怒声を最後に、翠星石は文字通り部屋から放り出された。
 ドアが勢いよく閉まる音で床が振動し、炸裂音の後には後味悪い静けさが広がった。



55:ケットシー
06/03/26 12:21:14 wt+kMwSZ
 追い出された翠星石は階段を踏み鳴らして一階に下りる。
 すると、階段の下にもう二体の人形が待ち構えていた。
 真紅は何があったのか聞きたげにし、雛苺は怯えて真紅の袖を握っている。話してもまた腹が立つだけなので、翠星石は無視してリビングに向かう。

 ソファーの前で小さく跳びはね、どかりと腰を下ろす。
 少なからず悪いことをしたと思っている翠星石は、まずは落ち着いて反省しようとする。しかし、それもままならない。

「翠星石、またジュンと喧嘩したの?」
「ジュン怒ってるのぉ」

 階段下からついてきた真紅と雛苺がソファーの上を見上げる。その視線が冷静になろうとする翠星石の邪魔をする。ふつふつと怒りが湧き上がり、つい思ってもないことを言葉にしてしまう。

「う~、あのチビ人間の小ささには呆れるしかねーです。ちょ~っとお小遣いをせびっただけであのありさまです」
「お小遣い?」

 ポンと出た言葉に二人が揃って反応する。
 興味を持ったのを見て翠星石は思いついた。二人を引き込めば何とかなるかもしれない。こういう事には頭の回転が速いのだ。

「そうです。お金があれば、ジュンみたいに欲しい物が買えるです」
「それなら、のりに頼めばいいわ。お金なんか無くても、欲しい物を言えば買ってきてくれるじゃないの」
「そうなのそうなのぅ。のりが買ってくれるの」
「うっ……」

 もっともなツッコミが入り、翠星石の言葉が詰まる。真紅の言うように、のりにお願いすれば大抵の物は手に入った。
 しかし、ここは負けず嫌いの翠星石。ムリヤリにでも理由を搾り出して反論する。

「解ってないですねぇ」
「何を?」
「お小遣いの素晴らしさですぅ」
「どう素晴らしいの?」
「仕方ないから、翠星石が教えてやるです。ねえ、雛苺」
「うゆ?」
「大きくてまぁるいケーキを、一人で全部食べたいと思わないですか?」

 翠星石が両腕をいっぱい使って大きな円を描く。
 そう聞かれて想像した雛苺は、とたんに大量のよだれを溢れさせる。

「食べたいのっ。ヒナ、大きな大きなイチゴのケーキ食べたいのぉっ」


56:ケットシー
06/03/26 12:22:41 wt+kMwSZ
 大興奮する雛苺に確かな感触を掴む。したり顔を見られないよう横を見た後、悲しそうな表情を作って続ける。

「でもね、雛苺。今のままではゼーッタイに食べられないのですぅ」
「ええ―ッ!?」
「考えてもみなさい。のりが大きなケーキを買ってきたとするですよ。それを全部、雛苺に独り占めさせると思う?」
「させないわね」

 即、真紅が的確に答える。
 それに対して、全部食べたい雛苺は判っていても答えられない。欲望と事実のジレンマに泣きそうになる。仮定の話で泣けるのだから、相当に無邪気な子だ。

 頃合を見計らい、翠星石は満を持してその解決法を教える。

「そこでお小遣いの出番ですぅ。もし、そのケーキが雛苺のお小遣いで買ったケーキなら、雛苺がどう食おうと誰も文句を言えない。一人で食べたい放題やりたい放題なのですぅっ!!」
「すごいすごーい! ヒナもおこづかい欲し~いっ!」
「素晴らしいわ」

 大喜びする雛苺の横で、真紅も目を輝かせて賛同する。彼女も食べ物の誘惑には弱かった。
 こうして一致団結した姉妹達は決意を胸にジュンの待つ戦場へと向かったのだった。


 意気揚々と二階に向かった彼女達だが、三分も経たないうちに元のリビングに戻ってきていた。
 結果は惨敗。
 部屋に入って「おこづかい」と言っただけで、三人まとめて部屋から放り出された。取り付く島もないとはこの事だ。翠星石が一度失敗した直後の強行軍なので、結果は見えていたのかもしれない。

「ジュンは私の下僕よ? なのにあの態度は何? この真紅の話を聞こうともしないなんて、許せないわ」
「くぅ~、あのチビ。まだ根に持ってやがったです」
「うわぁ~~んッ、おこづかいもらえないよぉ~」

 リビングに三匹の負け犬の遠吠えが木霊する。プライドの高い真紅は怒りに震え、翠星石は逆恨みを倍化させ、雛苺は物をねだる子供みたいに泣き喚く。
 その声は二階にまで届き、ジュンは痛くなりそうな頭を指で押さえた。



つづく

57:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 13:01:21 1pqIsS44
GJ!
ほのぼのしますね~

58:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 16:47:04 5faDjUq/
乙!!
翠星石らしくっていいな!

59:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 17:29:51 H2HVOLk+

ところであの続きはもう書かないの?

60:sage
06/03/26 17:48:21 e20bRmCs
今北
このスレって本編にストーリーが全然そって無くても
年齢指定さえなければ全然OK?
OKなら何か考えてみる

61:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 20:25:55 ZHBnsZxU
>>60
OKだと思う
..戦隊ものって既出?

62:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 20:26:43 Efg7hplr
というかスレが別れててどっちに投稿すればいいのかわからんのだが。
こっちが隔離スレか?

63:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 20:32:07 KNQqQJ6+
むしろ避難所

64:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 20:35:13 Efg7hplr
つまり、批評関係でのゴタゴタが収まるまでと?

65:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:05:09 ZHBnsZxU
>>64
無理じゃない?
あっちは悲惨な感じ。いっそのこと分けてしまえば・・・

66:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:14:37 KNQqQJ6+
別けて上手く行くならこのままでいいし、
向こうが平常運転?に戻れば再度合流でも良し。


67:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:23:10 Efg7hplr
よくわからんが、とりあえず批評に関して云々言うのが収まるのを待つか

68:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:28:12 7Luz5ohB
>53
グッジョブ!
・・・金の価値を知ったドールってのは嫌ですねぇw
続き期待してますー


69:sage
06/03/26 21:42:51 e20bRmCs
>>61
IFシリーズとかは?

70:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:48:20 KNQqQJ6+
>>69
いい加減きちんとsageれ

71:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:52:38 e20bRmCs
>>70
ミスってたかログすまソ

72:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:53:51 rovfG3kr
どうせ批判なしなら虐待もありにすれば良いんじゃね?
自治が沸いて五月蝿くなりそうだけど。

73:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:56:53 ZHBnsZxU
>>72
個人的にはやめてほしい
向こうと区別がつかなくなってしまう

74:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 21:58:31 7Luz5ohB
>>72
それは正気で言ってるの?
それを"五月蝿い"と捉えられちゃたまらないね

75:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 22:01:07 dknRSNIy
書きもしないで文句ばっかりだからそう感じるのもやむなし・・・

76:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 22:01:57 rovfG3kr
いや、あっちの争点は虐待ではなく批判についてでしょ?
それ虐待スレから派生したものだし。

77:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 22:03:50 KNQqQJ6+
>>72
>>1には虐待禁止と書いてある。
スレ違いだ。

78:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 22:14:10 Efg7hplr
そもそも>>1が二つもスレ立ててややこしくしたんじゃないか?
個別のほうにもスレ立ててそれ気に食わないのかどうかわからないが、こっちにもスレ立てて。
その辺責任者としてきっちりしてもらいたい。

79:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/26 22:20:39 7Luz5ohB
>78
まるで>>1が悪者の様に言うねぇ
言い争いは総合でやればいいじゃない
ここは、その総合で決まった路線に沿って
ただ何時もの様に書き手が作品投下をして、それを読み手が感想を述べて
そう言う所だと思う、そこまで言い争いたきゃ総合いっトイレ

80:sage
06/03/27 00:07:37 98EAmK0w
小説できましたがうpしていいですか?

81:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 00:25:35 QMy++xPV
・・・・・来い!

82:デュード ◆Postal2.YE
06/03/27 00:27:04 t4Tl4igi
なるほどねえ。
俺でも投下できる条件があるわけか。

83:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 00:27:24 98EAmK0w
了解した…多分途中で飽きられると思うけど…
もしもシリーズ…もし水銀燈が優しかったら

AM11時00分IN桜田家

ジュン「ふぁーぁもう昼か…そろそろ起きて飯でも食うか」
そして1階にピンポーンとチャイムの音が鳴る
ジュン「ん、だれだ?真紅たちは…くんくんでも見てるだろうし…ああそういえば糊は部活だったっけ」
再度急かす様にピンポーンとチャイムが鳴る
ジュン「ああ少し待っててください!」
と下のリビングに降りていくと呪い人形たちの挨拶(?)が聞こえる
真紅「早くでるのだわ、音が五月蝿くてくんくんが聞こえないのだわ。」
起きて来た人間に言う第一声がそれか
翠星石「まーったく、チビ人間はこれだから使えないですぅ。」
お ま え も か
蒼星石「おはよう、ジュン君それと翠星石それは言い過ぎだよ、あとジュン君お客さんのようだよ。」
やっとまともな発言がきたなぁ
雛苺「お客さんなのー!トゥモエだといいなぁ」
まぁ巴なら多分今日は部活でこんな時間には来ないだろう…
ジュン(それより、何時までこんな生活が続くんだろう…少しイヤになってきた…)
それより先は考えずに玄関に出る不幸(?)少年ジュン
ジュン「はーいどちらさ…ま…」
が辺りを見回してみるとそこには、
???「すみません、此処は桜田さんのお宅でしょうか?」
一見普通の小学生くらいの少女だろうか、一人ぽつんと玄関に立って居た。
なぜ言葉が止まってしまったかと言うと、着ている服が俗に言うゴスロリなので、
ジュン(へ?誰?こいつ?こんな悪趣味の奴なんて知らn)
ジュンが等と考えていると
???「どうかいたしましたか?」
ジュンはこの言葉でふと我に返る
ジュン「あ、ああそうですけど、家に何か?」
???「ああ、すみません名乗るのが遅れてしまいましたね、私はローゼンメイデンの第一ドール水銀燈と言うものです」
ジュン「へ?ああ!それが僕に何のようですか?」
水銀燈「すみません、用が有るのは貴方ではなく、真紅と言う人形達の方なんですが…」
ジュン「へ?あの呪い人形たちに?」
水銀燈「え、ええそうです」

84:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 00:28:18 98EAmK0w
取り合えず真紅達に用が有るようなので家の中に入れることにしたジュン。

ジュン「おーい真紅ーお前に用事があるって水銀燈って言う人形が…!!お前らは何してんじゃあぁ!!」
切れるのも、この部屋の悲惨な状態を見れば頷けると思う。
部屋にお菓子が散乱しカーテンは裂け床は捲れ…これ直すのかと思うと頭が痛くなる状態であった。
なお蒼星石はあはははと奇声をあげて暴れ回っていた。
そして蒼星石の首に一発入れて気絶させた後、翠星石と雛苺を問い詰めもう二度としないと言わせたのは、別の話。

(数分後落ち着いた頃になって)
真紅「568796時間と37分ぶりね、それで何の用かしら?」
落ち着き払った様子で真紅が言う
水銀燈「実は二つ聞きたいことが有って、貴女はこのアリスゲームに乗るか反るかそれを聞きに来たのが一つ。」
水銀燈「もう一つは、出来れば桜田さんのミーディアムにして頂けないか、と言うのがもう一つです」
ジュン(こういう感じの人形なら喜んでミーディアムにするのになぁ)
真紅「1つ目はそれが運命ならそれに従うのだわ」
真紅「2つ目は決めるのは私だけではないのだわ」
水銀燈「私だけでないと言うと?」
真紅は気絶していた蒼星石の方を向くと
真紅「皆、水銀燈を入れても良いと思う?」
蒼星石「うーん、僕は良いと思うけど…姉さんは?」
とてもさっき暴れていた人…いや人形とは思えない発言だった
翠星石「私は蒼星石が良いならいいですよ」
雛苺「水銀灯は優しいから好きぃ!!」
真紅「決まりのようね」
水銀燈「有難う…皆…」
水銀燈の目から涙が零れた
蒼星石「あたりまえじゃないか僕等は姉妹何だから」
翠星石「そうですよ水銀燈このハンカチで涙を拭くですぅ」
水銀燈「有難う…本当に有難う…」
ジュン(あれ?僕に決定権なし?つーか僕は無視ですか?そうですか)


85:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 00:31:46 98EAmK0w
夜になって…
海苔「みんなぁ元気にしてた?ってまた新しいお人形さん?」
水銀燈「水銀燈と申しますこれからしばらくの間お世話になります」
と言うと深々と水銀燈礼をした
海苔「気にしないでね?何かジュン君が真紅ちゃんが来てから元気になって来た所だから」
ジュン(さわがしくなっただk)
真紅「何か言った?ジュン?」
ジュン「いいえ何でもありません…」
真紅たちが来てから座禅を始めたのは内緒だ
水銀燈「ジュンさんって優しいですね」
真紅「けどあれは私の下僕だから勝手なことしないでちょうだいなのだわ」
水銀燈「けど、ジュンさんは諦めませんよ真紅」

その2日後ジュンが体力作りに励みだしたのはまたの機会に話しましょう…

86:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 00:34:00 98EAmK0w
>>83>>84>>85
取り合えず初投稿でしたので。
良くなかったら良くなかった所を指摘してもらって結構です

87:デュード ◆Postal2.YE
06/03/27 00:41:15 t4Tl4igi
虐待といってもエロがなければバトルもの扱いでノーマルになるんだよな。
俺はそういう方針でバトルものを描かせてもらうぜ。
まあそれにおいて戦闘の悲惨さを伝えるためにデティールはしっかり描かせてもらうけどな。

88:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 00:47:01 7FFAECpz
こんな状態でSS書いて投下したとしても
誰かさんの二の舞で間抜けになるだけだなぁ…

89:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 00:56:18 8n3EXYD+
デュードはタフだからそういうことにはならないんじゃないの。
それよりバトルもの描くなら期待。

90:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 01:05:07 Co9YSpaG
今思ったんだけど残虐要素も18禁に入んじゃね?

91:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 01:09:18 wS1+fKUB
>>87
>虐待といってもエロがなければバトルもの扱いでノーマルになるんだよな

普通にならないと思う。とりあえずあなたの作風だと根本的に書くこと全てを変えない限り
虐待物というかこのスレのルールに反するものになると思う

92:デュード ◆Postal2.YE
06/03/27 01:12:15 t4Tl4igi
いや俺はそう認識しているから止めても無駄だぜ
そもそもバトルで腕もげなかったりするのがおかしな話だ
まあ所詮人形だしな

93:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 01:23:05 CsLaRVeA
どうせ避難所なんだからエロだけ禁止にすればよかったのに。
というかあっちのスレももう批評云々言う人間いないんだし、再利用しても良いのでは。

94:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 01:37:38 wS1+fKUB
>>92
そういう認識だとこのスレのルールを破ることになるし元のスレで投下するべきかと

95:デュード ◆Postal2.YE
06/03/27 01:43:46 t4Tl4igi
おいおい、俺は虐待を描くなんていってないぜ?
戦闘だよ、ウォーズやバトルだよ
その辺履き違えるなよ

96:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 01:49:20 8n3EXYD+
元虐待スレなんだから許可してやれば。
エロと同列に語られるのは遺憾だな。

97:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 01:52:35 Co9YSpaG
>>95
わざわざここに投下しないで元のスレに投下すればいいんじゃね

98:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 01:54:35 nli0pY4D
また雑談スレにするつもりか?

99:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 02:00:24 wS1+fKUB
>戦闘の悲惨さを伝えるためにデティールはしっかり描かせてもらうけどな
この辺が言い方をかえているだけで虐待の要素とイコールなのでその辺さえ削除すれば
もともと文章はうまいしこのスレのルールも破らないし問題ないとは思いますけど

四肢や体、精神等にひどい損傷を負わせたりするのはあなた個人の考えがどうであっても
虐待の要素に含まれるので、どうしても含まれてしまうのならば元のスレもありますし
荒らし目的でないのなら向こうに投下しておいたほうがよろしいかと
(できれば虐待系の専門スレのほうがいいとは思いますが)

100:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 02:02:25 wS1+fKUB
>>98
すいません、文章自体はうまい方なのでどうしてももったいなく思えてしまいまして
やりすぎました。これで終わりにして私は書き込むのやめようと思います

101:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 02:13:42 8n3EXYD+
>>1の気ままで立てられて、個別板のほうは好きにやれって考えが気に食わない。
そもそも議論が長いってだけでスレ新しくスレ立てってのが間違ってる。
しばらくすれば治まるのにね。

102:デュード ◆Postal2.YE
06/03/27 02:23:11 t4Tl4igi
ここで愚痴っても始まらねえ
とにかく描いて証明してやるよ
虐待だけじゃないってことをな

103:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 05:21:09 frwo9GSE
確かに虐待とバトル中の負傷の基準は人それぞれだから難しいな。
でもスレを分けたのは正解だと思う。
個人的に虐待モノは読みたくなかったし、そういう人多かったみたいだから。

104:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 07:30:12 joXInyyE
虐待は、
個人が自分の満足を得るために相手を痛めつけること、
とすれば区別つくと思うな。


105:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 08:54:47 ucbXcG2h
コテハンのデュードって人間の個人主張スレだったんだなここは。

ここ以外にSS書いてUPできるような所ってもう無いのか?

106:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 12:28:24 /7dsOcJi
何だこの流れは

107:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 12:29:06 8n3EXYD+
SS自体がそんなもんだろ

108:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 12:41:59 CbvChWal
おいらは、もう様子見しますんで…トホホ

109:1
06/03/27 13:39:19 oqdxjuW1
>>101
新スレを立てた理由は、それだけではないんですよね。
今荒れているのを見ればわかるとおもいますが、虐待や虐殺との共存が無理だと前々から思っていたからです。
虐待に限らず、元ネタのキャラが不当に酷い目に遭うSSはヘイトSSと呼ばれるんですが、この類のSSは世間一般的には大変嫌われています。
それで、そのヘイトという危うい部分の隔離も兼ねてこのスレを立てたんです。
この考えは総合スレを少なからず否定することになりますので、できる限り穏便に済ませようと、このスレを立てる時には何も言わなかったのです。

デュード氏が書いてきたSSは、まさにヘイトに当てはまります。
バトル物を書くなら、戦いになるまでの過程を丁寧に書かなければ、読者はただの殺し合いにしか思えません。
腕が飛ぶような殺し合いだけを純粋に楽しめる人は極一部だと思います。
その殺し合いをしているのが好きなアニメのキャラなら、余計に不快になっても当然ですよね。
デュード氏がここに投稿するのは自由ですが、その際には上で言った事を考慮して下さるとありがたいです。
できるなら、荒れる要素は極力少ない方がいいので、総合の方に投稿してもらえると助かるのですが。すでにデュード氏が原因で荒れてますし…

110:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 14:08:08 ILDOWmZQ
>>109
異存はございません

せっかく総合と一般とを分けたのに
どちらのスレでも同じ話題で言い争って
いい加減、馬鹿じゃないの?総合でやってよ総合でぇ

111:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 15:05:33 5qDYiL9m
小ネタ投下

薔薇乙女誕生の真相

偉大なる人形師ローゼンは、究極の少女「アリス」を作るため日夜作業に没頭していた。
まずは一体目、水銀燈の製作に取り掛かったローゼン。
ロ「と、意気込んでみたものの、やっぱりめんどいな~
  まぁ腹のパーツが無くてもどうにかなるだろ、服で見えないしw」
こうして完成した水銀燈。しかし、納得のいかない様子。
二体目、金糸雀の製作に取り掛かる。
ロ「サイズを小さくすればそんなに面倒じゃないし、すぐに完成するだろうw」
こうして完成した金糸雀。しかし、またもや納得のいかない様子。
三体目、四体目の翠星石、蒼星石の製作に取り掛かる。
ロ「同じパーツにすれば量産が可能!ビバ、近代化!w」
こうして完成した翠星石と蒼星石。しかし、納得がいかない。
五体目、真紅の製作に取り掛かる。
ロ「やっぱり真面目にやらなくちゃいかんなw
  でもちょっとめんどいかも…」
こうして完成した真紅。だが、まだ納得のいかない様子。
六体目、雛苺の製作に取り掛かる。
ロ「やっぱり小型にした方が楽だなw」
こうして完成した雛苺。ここまでしてもまだ納得のいかない様子。
七体目、雪華綺晶の製作に取り掛かる、が。
ロ「あー!もうめんどい!」
こうして実体なしで完成した雪華綺晶。ここでついにローゼンの堪忍袋の緒が切れる。
ロ「もうやめだやめだ!こんなんやってられんわ!」
こうしてローゼンは失意の中、行方をくらますのであった。

おしまい

なお、槐が丹精込めて作った薔薇水晶に、ドールズが敗れる事となるのはまた別のお話。

112:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 19:31:10 J4bUNTqt
>>111
それだと、伝説の人形師ローゼンが
伝説の人形師(自称) と品が下がってしまう恐れがあるので
ご注意下さいw

面白かったですー

113:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 19:51:28 SU02Xf9i
>>111
まさに「小ネタ」ですねw
ローゼンが納得のいかない理由が欲しかったです

114:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 20:02:47 y5ioIVH9
グッジョブ!

小ネタってだけにローゼンの声が小枝師匠の声に変換されてしまった

ローゼン「やってきました薔薇庭園♪まさにパラダイスですぅ~♪」


115:111
06/03/27 22:04:58 5qDYiL9m
感想ありがとうございます

>>113
確かに足りなかったですね
つーわけで理由も投下

ラプラス「なぜ彼女たちに満足しなかったのですか?」
ロ「そうだな~、やっぱり一つのローザミスティカを分けたのがいかんかったのかな?
  水銀燈はなんかグレてる、何でああなったのか未だにわからん。
  金糸雀は間抜け過ぎる、ドジっ子どころの話じゃない。
  翠星石は性格に問題がある、少女らしからぬ言動が多すぎだ。
  蒼星石は少女と言うよりは少年、自分のことを僕って言ってるし。
  真紅は高飛車過ぎる、おまけに紅茶中毒だし。
  雛苺は少女と言うよりは幼女、あれじゃただの子供。
  雪華綺晶はなんか変、何考えてるのかさっぱりわからん」
ラ「だからアリスゲームを…」
ロ「そう、もしかしたら良い感じにミックスされてアリスになるんじゃないかなーって思ってさ♪」
ラ「……」

116:111
06/03/27 23:11:35 5qDYiL9m
>>115
今更自分で読み直してなんか足りんなって思ったので
最後の行の後に

ロ「しかし、どうしてあんな風になっちゃたんだろうか…、私はアリスを求めているのに…」
ラ「……(いろいろ言いたい事あるけど言えない…)」

を追加

ラプラスが何を言いたいのかはご想像にお任せしますw

117:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/27 23:51:45 8SUU1RmZ
>>115
備考として、蒼星石の一人称が「僕」なのは女性性を引き立たせる効果があると思われます
断じて少年っぽいから「僕」を使っているのでは無いでしょう

まぁアリスが「僕」という言葉を使ってたらそれはそれで楽しいですけどwww

118:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 00:13:56 JxidoB1i
アニメあんまり見てなくて漫画派だけど、大戦もののif書いてもいい?

119:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 00:25:19 qFXEbJ9c
書いたもん勝ちですよ。たいてい。
>>1の決まりが守れて、かつ「あの御方」が出てこなければ
             

120:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 00:38:23 JxidoB1i
あー、殺戮とかじゃなくて一兵士とのふれあいを書こうかなと。
こういうのはダメ?

121:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 00:39:33 BR2ufRNz
いいんじゃない
wktkって待ってるよ

122:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 01:45:06 JxidoB1i
水銀燈は煉瓦でできた部屋の窓から外を眺めていた。
何を考えているかはわからないが、誰かを待っているという感じだった。
後ろの方からドアが開く音がした。
「今日は遅かったのね」
彼女は窓に映った初老に入ろうとかといった感じの男だったに声をかける。
「悪かったな。こっちも報告書を書かなくちゃいけないからな」
「それで」
顔を男の方へ向けて
「今日はどうだったの?」
「十一人殺しだ。特務曹長四人に、兵士二人に・・・」
男が殺した人間について話し始めると、水銀橙は飽きれた顔をする。
「もういいわ。そんなこと聞いてもわからないもの」

男との出会いは数日前に遡る。
「あなたがネジを巻いたのぉ?」
机に置かれた鞄の上に立つ人形。
「なんだ貴様は?スパイか?」
その人形を見て男は威嚇するような目線で睨みつけた。
「スパイ?失礼ねぇ。私はローゼンメイデンのドール、水銀燈よ。それにしてもあなた、見たところ兵隊さんのようねぇ」
水銀燈は男をまじまじと見つめた。
「今は戦争中だ。奇妙な鞄が置かれていれば爆弾か何かと勘違いするのも仕方ない。それよりも人形とはどういうことだ?」
「まああなたには話しても無駄でしょうけど、一応教えるわ」
水銀燈は自らについてや契約のこと、アリスゲームのことなどを大雑把に伝えた。
男は意外と物分りが良いのか、すんなりと理解し、いろいろと質問までしてきた。
「なるほど。君達人形同士の戦いに私は巻き込まれたというわけか」
「そういうことねぇ。わかったら早くこの指輪にキスして契約してくれる?」
男はしばし考えた結果、次のような返事をした。
「そうだな。戦争が終わったら考えよう。それまで待ってくれるか?」
「私の気はそんなに長くないわよ。まあこの時代に他の姉妹が目覚めているかどうかすらわからないんだし、しばらくは待ってあげてもいいわ。ところであなた、名前は?」
「ハインツだ。偉大なる我がドイツ帝国軍狙撃手だ」
そして今に至るのだった。

夕方になって、ハインツは食事を取っていた。
薄暗い部屋に豆電球が一つ寂しい明かりを照らすだけで、明るいとはいえない。
「ねえ、あなた、どうやって人を殺しているの?」
水銀燈のその言葉にパンを掴んでるハインツの手が止まった。
「知りたいか?」
ハインツは興味深そうに水銀燈に迫る。
「別に。ただ気になっただけよ」
するとハインツは立ち上がり、壁に掛けていた細長い布製の袋を、食事をどけて置いた。
ハインツはその袋にを縛る紐を解き、袋を取った。そこからは一丁のライフルが出てきた。
水銀燈は興味深そうにそのライフルを見る。
「これが私の愛銃、モーゼルKAR98だ。他人にこういうものを見せるのはあまり好きじゃないが、今回は特別だ」
「このレンズはなに?」
ライフルのボルトの部分に取り付けられたスコープを前方部分から覗き込んで言った。
「これはスコープといってな。相手をより正確に狙うためのものだ」
ハインツは立ち上がり、銃をアイアンサイトで構える。
「こうやって構え、スコープの中心に敵が入ってきた瞬間、息を止め引き金を引く」
スコープを覗き込み、引き金に手を掛けた。
「すると相手は動かなくなる。肝心なのは頭を狙うことだ」
「ふぅん。なんだかあっけないかんじぃ」
熱く語るハインツに冷めたような言葉を返す水銀燈。
「さて、明日の早いので私はもう寝るとする。君も早く寝たまえ」
そう言ってハインツはベッドに入った。
水銀燈はその後外を眺めていたが、しばらくして鞄の中に入り眠った。

123:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 01:47:16 JxidoB1i
夜中になり、彼女は苦しそうな顔をしている。
「ここは?夢の中?」
水銀燈は荒廃し、炎の燃え上がる街中にいた。
目の前には大量の死体が転がっている。
その死体の中で一人だけ微かに息をし、苦しそうに這いずる兵士がいた。
「あれは・・・ハインツ!?」
その兵士の顔を良く見ると、それは水銀燈を養ってくれているハインツではないか。
彼の方へに飛んでいく水銀燈。
その時だった、目の前に建つ、巨大な塔からレンズの反射する光が見えた。
水銀燈はとっさにハインツが教えてくれたライフルを思い出す。
良く目を凝らして凝視すると、そこにいるのはスナイパーだった。
そしてそのスナイパーは引き金を引いた。一発の銃声が鳴り響く。
水銀橙はハインツのほうを見ると、彼の頭からは大量が血が流れていた。
「そんな!嘘よ!」
そこで水銀燈は目を覚ました。
興奮した状態でハインツはいないかとベッドを見いやるが、彼はいなかった。
あれは夢ではなかったのだろうか。そう思うとよりいっそう不安になる。
水銀燈はそんな不安な気持ちの中、また窓から外を眺めていた。
正直なところ、彼女にはあの男はそれほど気になるわけでもなかったが―心配になるということは気づかないうちにそういった感情が芽生えてきたのかもしれない。
そうしているうちに外は暗くなり、夜になった。
ハインツはまだ帰ってこない。
「遅い」
そう言ったと時、ドアが開いた。
水銀燈は慌ててドアの方を振り向く。そこに立っていたのは待ちわびていた人、ハインツだった。
「まったく、おそいわねぇ。死んだかと思っちゃったわぁ」
いつものように振舞う水銀燈。だが内心は安堵の気持ちで満ち溢れていた。
「すまんな。また報告書を書いていたんだ。今日はいつも以上に多かったなあ」
「また殺したの?」
「ああ。今日は二十五人だ。内容は、准尉一人に・・・」
「それはもう聞き飽きたわ」
と、いつものような会話が続くのだった。
そして食事の時間。
「ねえ。今日あなたが死ぬ夢を見たわ。頭を銃で撃ちぬかれて。本当に人が死ぬさまってあっけないのねぇ」
その言葉にハインツは真剣な顔になる。
「そうだな。そして私もいつそうなるかわからない。いや、明日にでも無残な死体となり、カラスの餌になってるかもな」
「カラスの餌?あっけなぁい」
水銀燈はケラケラと笑った。
「確かにそれで死んだら笑いもんだな。二度も約束破ることになっちまう」
「二度?」
ハインツはポケットから一枚の写真を出して水銀燈に見せた。
そこには妻と思われる女性と年は十歳くらい少女の姿があった。
「これは?」
「私の妻子だ。今年中には娘に顔を見せてやるって約束したんだが無理みたいだ。ダメなオヤジだよな・・・」
それを聞いて水銀燈は表情を濁らせた。
「だから、せめて君と契約するという約束くらい果たそうかと思ってな。そして娘に会う。それが叶うまで私は死ねないんだ」
「そう。あなたも必死なのね」
「必死だよ。私のように人を殺すしか脳のない人間でも迎えてくれる人がいるんだ。君のようにな。さ、もう遅い。寝よう」
ハインツはベッドに横たわると、すぐに寝てしまった。
水銀燈は鞄の中に入って、ハインツと娘のことを思い浮かべた。
戦いが始まる前はきっと暖かい家庭を持っていたに違いないと。
「お父様・・・」
そう思うと彼の娘が羨ましく思えた。

124:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 02:13:38 JxidoB1i
朝になると、外がやけに慌しい。
水銀燈が目を覚ますと、ハインツもすでに軍服を着込み、出かける準備をしていた。
「どうしたの?そんなに慌てて」
「戦況が慌しくなってきた。しばらくは帰ってこれそうにない」
「そう」
水銀燈は少し悲しそうな顔をした。
「安心しろ。毎日手紙を書くさ。実は娘にも書いていてな。君にも書くよ。文字は読めるだろ?」
「馬鹿にしないで。文字くらい読めるわ」
「そうか。なら安心だ。それじゃ行ってくる」
そしてハインツは最後になるかもしれない会話を交わして部屋を出て行った。

それからというもの、ハインツの部屋には彼からの手紙が毎日のように届いた。
誰もいないはずだが、彼の権限で毎日手紙が届けられる。
水銀燈は手紙を開き、読んでみる。
『元気にしているか?私は今東部戦線最前線の狙撃部隊体長を勤めている。今日もまた十八人の指揮官を殺した。内容は、、、書かないほうが良いだろう。君のためにも必ず帰ってくる。それでは』
このような手紙が毎日届けられた。
水銀燈はそれを欠かさず読んだ。
十日ほど経っただろうか、ハインツからの手紙の内容が日に日に重苦しくなってきた。
『我々もだんだんと押され気味になってきた。だが負けるわけにはいかない。この山場を乗り切れば帰ることができる。もう少し待っていてくれ ハインツ・ソルバルト』
それを読んで水銀燈は不安になった。もしかしたら今頃死んでいるかもしれないと。
明日手紙は来るのだろうか。そう考えると、また彼の帰りを心配するような気持ちになった。
「私が彼を心配?馬鹿馬鹿しい」
そう言って水銀燈は眠りについた。
次の日の朝、また手紙は届いた。
『まずいことになった。日に日に押されている。このスターリングラード戦線もいつまで持ちこたえられるか・・・。明日は決死の守衛に出る。私も死ぬかもしれない。だからこの写真は君に預けておくよ。大切な妻子の写真をロシア兵に踏みにじられるのは御免だからな』
水銀燈は封筒の中を漁ると、この前ハインツが見せてくれた彼の妻子の写真があった。
その写真の裏には文字が書かれていた。
『結局約束を破ることになりそうだ。すまない。』
写真と手紙を封筒に戻し、棚の引き出しにしまう。
「最低ね。ハインツ」
そして鞄の中に入り、また明日の手紙を待ちつつ水銀燈は眠った。
だが、次の日も、その次の日も手紙が来ることはなかった。
話し相手もおらず、何もすることがない水銀燈はずっと鞄の中にいた。
そして夜になって眠りだす。
それはいつ目覚めるかわからない、深い眠りであった。



すまん、かなりヘタクソだが・・・

125:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 02:36:21 v3QwyWDL
スターリングラードって映画見たことあるからじんわり来た(´・ω;`)

126:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 03:08:27 bfJYqIcf
想いを寄せる人の死・・・
それなのに彼女は涙しないとは、んまぁ陰で哀しんではいるんでしょうけどね
それもまた水銀燈らしく、文面でも大変彼女と言うキャラを描写出来ていると思います。
内容も解りやすく、すぐ頭に入ってきました。

大変シリアスで面白かったです。深夜にありがとうございましたw
次回作期待してすますーw

127:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 03:12:01 J0GlTAMf
なんか…変な雰囲気のスレだな…

128:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 08:39:19 EWYq/Uo2
いずれ元に戻るよ、虐待残虐スレに…
そういうのがOKな総合SSスレを選ばず、わざわざこっちを狙って投下しようと
画策してる自己中なのが潜んでるからね…

129:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 10:31:51 HfXIOf+H
現代より遥か未来のSFチックなローゼンメイデンってのもあり?

130:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 10:49:30 nqhtQYMl
>>122-124
ハインツさんの印象が水銀燈以上だw

>>129
虐待とか18禁以外なら未来でも過去でもおk

131:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 14:18:02 rlvAQa1R
グッジョブ!
水銀燈と狙撃猟兵、荒んで心を忘れた二人は一刻、ほんの少し・・・それで充分だと思う

15禁くらいの微エロってここでもいいのかな?
一緒にお風呂(H無し)とか、H済みっぽい二人の何気ない会話とか
どうにもエロ成分が薄くて、エロ板に落とすに気が引けるブツがいくつかある

132:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 16:32:04 YHT7HO9J
はっきりとした状況描写が無ければここでいいと思うよ。

133:ケットシー
06/03/28 19:04:52 1sbeSkle
微エロと判断できたものなら大丈夫だと思うよ

>>125
戦争時はこの水銀燈のような思いをする人が多かったんだろうなぁ
GJです

投下いきまーす

134:ケットシー
06/03/28 19:05:53 1sbeSkle
>>56

「ジュン君、ただいま~」

 夕方になり、のりが学校から帰ってきた。両手には買い物袋が提げられており、まずは荷物を片付けに台所へ向かう。

 その後を追う三つの影。
 彼女達が狙っているのは買い物袋の中身ではない。
 今日は財布の中身を狙っているのだ。
 そう、彼女達はまだお小遣いを諦めてなかったのだ。

 ジュンが駄目でもこの家の家計を取り仕切るのりが居る。
 この家のボスはのり。
 彼女達の考えは正しかった。


「あら、おなか空いてるのぅ? もう少し待ってね。急いで夕飯にするから」

 ピッタリとマークされているのに気付いたのりは、流し台で手を洗って学生服の上からエプロンを着ける。
 このまま勘違いが続くと話を切り出し辛くなるのを察し、真紅が口を開く。ここ一番では彼女が最も頼りになった。

「のり、話があるの」
「おこづかいちょーだいなのぉっ!」
「え?」

 雛苺が先走って大変元気な声でお願いする。しかし、あまりに唐突過ぎて肝心な内容がうまくのりに伝わらない。
 出だしで挫いてしまっては始まらない。翠星石は歯噛みしながら話を引き継ぐ。
「チビ苺は黙ってろです」
「どーして?」
「いーから後は翠星石に任せろです」
「うぃー」
 渋々引っ込んだのを見てから、のりに満面の営業スマイルを向ける翠星石。薔薇乙女の中で最も世渡り上手なのは彼女かもしれない。

135:ケットシー
06/03/28 19:07:54 1sbeSkle

「おほほほほほ、えーっとですね。実は折り入ってお願いしたいことがあったりするのですぅ」
「何かしら~」

 普通の人ならここで警戒するのだろうが、のりは違う。どんな頼みでも真剣に聞こうとする彼女は、裏のないにこやかな笑顔で応えようとする。
 翠星石は何かに負けそうになるが、ここで倒れたら笑い者にもならない。負けないように正面から頼み込む。

「ちょっと話し辛いことですけど、お金のことですの。たくさんくれとは言わないです。少なくてもいいですから、私達にも決まったお小遣いを作って欲しいのですぅ。もちろん、多いに越したことはないですよ」
「ヒナもたくさん欲しい~」

 最後に一言付けるのがかわいらしくて、のりの頬が緩み切りそうになる。

「あ! お小遣いの事だったのね。でも、欲しい物なら私が買ってあげるわよぅ?」

 この反撃は予想できたが、明確な受け答えは用意できなかった。
 及び腰になる二人を差し置いて、無鉄砲野郎の雛苺が嬉々として答える。

「ヒナはおっきなケーキを買うのっ。それで、いっぱいいっぱい食べるのっ」
「あらあら、ケーキならいつでも買ってきてあげるわ」
「ちがうのぉ! 丸くて大きなヒナだけのケーキなのっ」
「雛ちゃんだけの―ああ、バースデーケーキね。それなら今度、雛ちゃんだけの大きなケーキ、買ってきてあげる」
「ほんとにっ!?」

 早くも雛苺に脱落の色が見え始める。
 物に釣られやすい彼女は、仲間にするのは簡単だが、使い物にもならなかったようだ。
 ここで仲間の一人が落とされるとなると、のりに勢いがつくことになり、戦いは非情に不利になる。それだけは阻止せねばならない。

 翠星石は雛苺の不甲斐なさに腹を立たせる。
 そして、危機を悟った真紅は、とにかく流れを変えようと待ったをかける。

「待って、のり。私たちが欲しいのは違うの」
「え? 他っていうと、誕生日プレゼントとかパーティーグッズとか? 大丈夫、買ってあげるから、そっちの心配もいらないわ」
 あくまで誕生パーティーに固執するのりに、真紅と翠星石は苦戦を強いられる。
「だから、違うと言ってるのだわ」
「私が欲しいのは……ぶっちゃけると自分の好きに使えるお金ですぅ。のりに頼みにくい買い物だってあるのです」
「それって……」
 翠星石の本音を聞き、のりは黙って考えを巡らす。
 そして、何を妄想したのかしらないが、急に顔を上気させて慌てふためく。

136:ケットシー
06/03/28 19:10:38 1sbeSkle

「そ、そうよね。あなたたちも立派な女だものね。エッチな下着とか欲しくなるわよねっ!」
「な、何を想像してやがりますかッ! んなわけねーだろですぅッ!!」

 のりが変態妄想をぶちかまし、翠星石も真っ赤になって絶叫する。
 相変わらずのりの思考は常人と何処かズレている。しかも、一度火の点いた妄想は簡単には止まらない。

「でも、そんな下着をどうして―ま、まさか! あなたたち、ジュン君を色香で惑わすためにっ?!」
「ちったぁ人の話を聞きやがれですぅ!!」
「ダメよ! ジュン君はまだ中学生だもの。それに、そういう話はお姉ちゃんの私を通してくれないと……!!」

 のりの見苦しいまでの妄言連発に、ついに真紅の我慢も限界を突破する。
 長く垂れた髪を鞭のように撓らせて横っ面を叩く。「フギャ」と気の抜けそうな叫びを上げて、ようやく騒ぎが収拾する。

「慎みが足りないわよ、のり」
「ひ~ん、ごめんなさ~い」
「それで、お小遣いをくれるの? くれないの? はっきりなさい」

 叱られて半泣きののりに高圧的な態度で決断を迫る真紅。どっちが頼み事をしているのかわかったものではない。
 人形達はのりの次の言葉を固唾を呑んで待つ。

 そして、審判が下されようとのりが息を吸った時、絶妙のタイミングで邪魔が入った。

「やる必要ないぞ」

 全員が一斉にキッチンと繋がったリビングの方を見る。
 そこには、いつの間にやら二階から下りてきていたジュンが立っていた。
 あれだけ騒げば感付かれても仕方がない。

「くっ……チビ人間は二階でひきこもってろですぅ!」

 今の彼女達と彼は敵同士。厄介者の干渉を嫌い、翠星石が追い払おうとする。さらりと酷いことを言う。
 だが当然、そんな事でジュンは退散しない。

「居候のこいつらに小遣いなんかやるなよ。大体、こいつらのおやつ代やら食費やらも馬鹿にならないんだろ?」
「失礼ね。まるで私が大飯喰らいみたいなのだわ」


137:ケットシー
06/03/28 19:12:20 1sbeSkle
 自称淑女の真紅が、真っ先にジュンの言い分に異論を唱える。それを聞いたジュンは、嘲笑で口元を緩めずにはいられなかった。

「違うのか?」
「違うわ」
「違わない」
「違うわ」
「違わない」

 一歩も退かないジュンを見て、真紅は無言で彼の前に歩み出る。
 足下まで来られて恐怖を感じずにはいられないジュンだが、ここで逃げては様にならない。
 わずかな間―ジュンにとってはかなり長く感じられる間―の後、この家では聞き慣れた悲鳴が上がる。弁慶の泣き所に人形靴のつま先が突き刺さったのだ。
 床を転げ回って悶える彼をよそに、のりが出した答えを言い渡す。

「いいわよぅ。おこづかいをあげる」
「やったぁっ。のり、ありがとなの~」
「感謝するわ」
「チビ人間、どうだ見たかですぅ」
「おい! そんなの許さないぞ!」

 歓喜する姉妹達に対し、床に転がって涙目で不満を訴える少年。
 ここで勝者と敗者がくっきり分かれた。
 一緒になって喜んでいるのりが、薔薇乙女達にさりげなくお願いする。

「だから、これからもジュン君と仲良くしてあげてね。あと、私のお手伝いとかしてくれると助かるかなぁ?」
「ヒナ、もっとジュンと仲良くする~。おてつだいもする~っ」
「小遣いのためならしゃーねーです。翠星石も仲良くしてやるですぅ」
「ジュンの躾なら任せなさい。私に相応しい大人にしてみせるわ」

 雛苺は床のジュンの体に飛び乗り、翠星石はあんなことを言いながら赤くなり、真紅はなにげに独占欲を見せる。
 ああ見えて、ジュンはみんなから好かれていた。



つづく

138:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 20:02:52 ZOZ518d0
グッジョブ

真紅の立場を弁えない言い様には吹きましたw

139:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/28 21:14:54 PII44z8R
GJ!

結局JUMは陥落しちゃいましたかw
続き楽しみにしてます

140:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 00:32:48 PSmfjeAS
>>137
イイ!続きを待つ

141:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 08:26:52 MVwqifCI
また大戦ものを翠星石で思案中だけど、なかなかネタ思いつきにくいもんですね・・・

142:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 12:34:49 5u5L3cOx
国はどこ?
イメージからすると森深き国って感じだけど。

143:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 18:08:37 1Rawec2Z
翠星石は疎開先でひもじい思いをしてそうなイメージ

「あの頃はイモのしっぽしか食べられなくて、ホッカホカの銀シャリが夢にまで出てきたですぅ・・・」
「・・・・・・・・その手に持ってるジョウロは飾りか?」



144:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 18:11:56 MnpezGT9
なんとなくオランダ

145:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 18:41:43 ET2h8ZIg
アルデンヌの森とかどうかな
で、ドイツ軍が侵攻してくると


146:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 21:12:05 e1d9Cj7Y
フィンランド

147:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 22:35:09 MVwqifCI
どっちかといえばカランタンとかフォイみたいな農村で考えてるんだけど、マーケットガーデン作戦系は激しすぎるのでやめた。

148:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/29 22:36:35 5u5L3cOx
なんとなく考えてみる。
戦雲の広がる森深き国
兵士を夢見るやさしい少年と翠星石の物語。
兵士として未来の活躍を夢見ながら、友達と一緒に離れて行く少年を見送る翠星石が
つぶやくずっと言えなかった言葉「活躍する日なんて来なくてもいいです…」
彼女がツンデレになった理由とは、さよならしても傷つく事が怖かったから。
っていう話…かな??

149:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 00:35:35 0fNFHgAa
うわぁぁぁああ!!

期待大

150:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 00:58:13 38rWFL7f
まああんまり期待はしないでくれ
大戦ものは最近書き始めたばかりだし

151:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 01:42:25 38rWFL7f
緑の草原の中にぽつんと点在する農村。
家が数件立ち並び、庭には色とりどりに咲く花。畑を耕す老人。まさに平和そのものである。
その長閑な雰囲気を煉瓦造りの家の一階の窓から楽しそうに眺める翠星石。
『・・・けてくれ』
「え?」
ベランダの下から声が聞こえたかと思うと、次の瞬間、翠星石の目の前にヘルメットを被り、土で汚れた男の顔が飛び込んできた。
「きゃあ!」
翠星石は驚いてその場に伏せてしまった。
「開けてくれ!頼む!鍵を開けてくれ!」
その男は随分と慌てていた。
元々人見知りの激しい翠星石にとって、このように唐突に助けを乞う人間に対してどう対応すれば良いのかわからなかった。
だが男の疲労に満ちた目を見ると、このまま何もしないわけはいかないと思い、翠星石は意を決して家の鍵を開けた。
男は鍵の外れる音を聞くと、急いで家の中に駆け込んだ。
家の中に入るなり、壁に張り付きながら、何かから隠れるように慎重に顔を窓の方へ近づけ外を覗きこんだ。
翠星石は奥の部屋の壁からそっと顔を出し、そんな彼を見ている。
音が監視していると、窓越しにたくさんの兵士と戦車が列を組んで道を行進しているのが見えた。
「ジェリー(ドイツ人の蔑称、スラング)め!こんな村を通るなんてまったくついてない!」
男の表情には悔しさが見えた。今にも彼らに突っ込もうかというくらいの気迫だったが、その感情を押し殺し、今は相手の動きだけを真剣に観察している。
「パンター四台にタイガー二台、兵力は八十人ほど・・・」
男は窓から見える相手の兵力をぶつぶつと声に出して暗記する。
そうしているうちに、やがて兵隊達は村を通り去り、男もその場に力が抜けたように座り込んだ。
俯いたまま力なくはぁとため息を漏らす。
よほど疲れていたのだろう。
そんな男の目の前に小さな手とハンカチが入った。
「あ、あの、これ・・・」
顔を上げると、恥ずかしそうにハンカチを差し出す翠星石の姿があった。
「ありがとう、嬢ちゃん」
ありがたくその行為を受け取った男はそれで汗を拭った。
「嬢ちゃん、この家に一人で住んでいるのかい?」
どうやら男には彼女が人形ということには気づかないようだ。
「妹が一人いるですぅ。それとマスターも」
「マスター?」
「あ、いや、親みたいなもんです!」
翠星石は慌てて誤魔化した。
「まあ事情はなんであれ嬢ちゃん一人だけだと心配だったからな」
「嬢ちゃんという言い方はやめやがれですぅ!翠星石という名前があるですぅ!」
「悪い悪い。翠星石。でも変わった名前だな。この辺りじゃそういう名前が流行か?」
「知るかですぅ!」
気さくに笑い、軽い感じの男に、翠星石はすっかり馴染んでいた。
翠星石は名前のことで外方を向いていたが、しばらくして何も言ってこなくなったので心配になって振り返った。
「人間?」
翠星石が男の顔を覗き込むと、彼はスースーと眠っていた。よほど疲れていたのだろう。

152:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 01:43:12 38rWFL7f
どのくらい眠ったのだろうか。
目を瞑り、気づいたら小鳥の囀りが聞こえてくる。
その囀りで男ははっと目を覚ました。
ふと気づくと、体には毛布がかけられていた。おそらくあの少女がかけてくれたのだろう。
「おーい、嬢ちゃん!どこ行ったんだい?」
大声で呼ぶと、奥の部屋から足音が聞こえてきた。
「もう行くのですか?」
男は立ち上がって、トンプソンM1A1短機関銃を両手に持った。
「ああ。ここから中継地点の無線機を借りればあの機甲部隊の情報は伝えられる」
「そうですか」
翠星石は寂しそうな顔をして言った。
「心配しなさんなって。ここからならそう遠くはない。それに長居して迷惑かけるわけにもいかんからな」
そう言って男はドアの方へ振り向いた。
その時、翠星石は男の右腕から血が出ているのに気がついた。
「あ、人間!血が!」
「ん?ああ、俺も全然気づかなかったぜ。多分銃弾が霞めたんだろう。大丈夫さ」
激しい戦闘状態では、耳や目といった気管が麻痺することもある。銃声によって精神異常を来たすということもあるくらいだ。
この男の場合もそういった部分に該当するのだろう。
「大丈夫じゃねえです!早くこっち来るです!」
翠星石は男の腕を強引に引っ張った。
「おいおい、いいって!」
「いいから来るです!」
そのまま男は椅子に座らされた。
そこへ翠星石が包帯を持ってやってきた。
「ほら、腕を見せるです!」
「あ、ああ(世話焼きな子なのか?)」
男は翠星石の強引な言い草に従い、上着を脱いで腕を見せた。
血が出ているところに翠星石は小さな手で包帯を巻いていく。
それをかわいい子だな、と思いつつ見つめる男。
「嬢ちゃん、綺麗な目してるな」
「え?」
翠星石は赤面して目線を逸らす。
「俺も嬢ちゃんみたいな子をカミさんにしたいぜ」
「ええ!?そ、それは・・・」
さらに赤面して慌てる翠星石。
「はは、冗談だよ。ま、国帰ってから見つけるとするか」
「か、からかうなですぅ!ほら、これで大丈夫ですよ」
「ありがとうな。面倒かけちまって」
包帯を巻き終わると、男は服を着て、荷物を提げ、いよいよ家を出る準備をした。
ドアの前まで見送りにくる翠星石に、男はポケットからお菓子を渡した。
「お礼と言っちゃなんだが、このチョコレートをやるよ。じゃあな」
「怪我しないように気をつけるですよ!」
「世話焼きな子だなあ。心配しなくても死なない限りいつでも包帯巻かれにやってくるよ!」
男はジョークを言いながら家を出て行った。向かう先は生死を賭けた戦場。
全速力で走っていく男の姿がだんだんと粒のようになって見えなくなっていく。
翠星石にとってはたった数時間の劇的な出会いであったが、気の会ういい人に会えたという気持ちのほうが強かった。

それから数日が経った。
翠星石はいつもの様に窓から外の風景を眺めていた。
すると遠くから戦車や兵士達が列を成してやってくるのが見えた。
それが翠星石の家の近くを通った時のことだった。
一人の男が手を挙げている。それは紛れもない、この前出会った男だった。
翠星石は嬉しくなってその男に見えているかはわからないが、笑って返すのだった。



153:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 02:45:57 /7VFbX0k
>>151
乙!
ドールズは大戦がよく似合いますね。

154:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 02:55:43 KnV04yYz
>>151
乙。
てっきり死亡ENDかと思ってたから嬉しい誤算だ(ノ∀`)

155:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 03:13:34 bvC54T5J
ええ話やん

156:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 16:26:38 cHAXcGJa
>>151
GJ!!
んじゃ次はこれ書いてホスィww

つ「ベルリン戦」

157:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 19:34:36 6WZNaNIN

ジュン「・・・58万6千時間前の君たち、一体、どこで、誰の下で、どんな風に生きてたんだ?」
真紅「ジュン・・・ダメよ・・・ドールに決して過去を聞いてはならない・・・開けてはいけない箱もあるのよ・・・」
ジュン「ゴ・・ゴメン水銀燈!もし辛い話なら話さなくても・・・」
水銀燈「いいの・・・話させて・・・聞いてくれる人が居るだけで・・・わたし・・嬉しいわ」

小一時間後

水銀燈「・・・瓦礫の影から音も無く現れたのはポルシェ博士の戦車!しかし神戦車T-33は一歩も退かず
    ウラー!の叫びと共に赤い旗を翻し、プリンツ・アルブレヒト通りを蹂躙していく!
    そこへ割って入ったわたしの97式軽戦車!ティガーだろうがシャーマンだろうがちぎっては投げ・・・」

ジュン「コレ・・・いつまで続くんだ?」
真紅「今が『ダウンフォール編・黒いチハ車の奇跡』だから、この後オデッサ編、南極編と続くのよ・・・
   わたしがこの話を何回聞かされたか・・・アンタがいらん事聞くから・・・」
ジュン「すまんかった」
   
小5時間後

水銀燈「そしてわたしは、ある元オイルマンの作家に会い、すべてを打ち明け・・・って皆、起きなさぁい!」
 

158:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 20:53:18 G9oXrugI
チハタンワロタwwwww

159:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 22:08:32 3pMQzae1
フォーサイスとか落合とか出てきそうな勢いだ。

160:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 22:58:37 38rWFL7f
>>156
とりあえずその手のゲーム持ってるんで、雰囲気掴んでからなんとか書いてみます。

161:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 09:23:54 3uyVfM8H
>>160
ベルリン戦の様子を掴みたいのだったら、
迷わず「ヒトラー最期の12日間」をレンタルだね。

162:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 09:51:48 mdaSRsne
>>160
「ベルリンの戦い」ってやつか?ペーペーシュで戦車破壊できるクソゲー

163:ケットシー
06/03/31 18:28:57 JpUxYEDC
>>137

 日差しが穏やかな昼下がり、桜田家のリビングから陽気な歌声が聞こえてくる。

「おっこづかい~、おっこづかい~っなのぉ」

 雛苺が上機嫌で歌いながらポシェットの中を何度も覗く。お小遣いが貰えたのがよほど嬉しいのか、朝からこの調子だ。
 遊びに来ていた蒼星石が、楽しそうな姿につられて微笑む。
「ポシェットに何か入ってるの?」
 聞かれた雛苺は、自慢したかったのか、得意げになって教える。
「うぃっ、おこづかいが入ってるの!」
「へぇ、お小遣いが貰えたんだ~」
「そうなのっ。蒼星石にも見せてあげるなのぉ」
「ほんとに?」
「うぃっ」
 雛苺がポシェットへと手を突っ込み、小さな小銭入れを出す。そして、それを嬉しそうに蒼星石に見せる。

「これね、ジュンが作ってくれたの! ヒナ初めてのお財布なのよ」
「いいなぁ」

 ファスナーが付いた四角い小銭入れ。
 これを作ったのは裁縫が得意なジュンだった。
 誰でも簡単に作れる単調なデザインだが、仕事が丁寧で良い品に見えた。
 蒼星石が羨ましがったのは、本心からだった。

164:ケットシー
06/03/31 18:30:02 JpUxYEDC
 雛苺は小銭入れの口を開いて逆さまにする。すると、一枚の硬貨が絨毯の上を転がった。
「あ、五十円玉だ」
「うん、おこづかいは一日五十円なの」
 のりが決めたお小遣いの額は、一日五十円。毎日、五十円玉を一枚ずつ三人にあげることになった。
 相変わらず、ちょっとした物ならのりが買ってくれるので、お小遣いの大半は貯金になるだろう。

「チビ苺、お金を床にぶちまけるなです! 無くして泣いても知らないですよ」

 雛苺が見せびらかしている所へ、翠星石がお金の扱いを注意しながら現れた。
 同じようにお小遣いを貰っていても、蒼星石相手に自慢している雛苺が気に障るようだ。

「無くさないもん!」
「それはどーだか。第一、チビチビが無くさなくても、誰かに盗られる可能性があるですぅ」
「そんなことを考えるのは、翠星石だけだと思うよ」
「蒼星石はもっとお金の大切さを知るべきですぅ。お金には人を惑わす魔力があるのですよ」
「そうなんだ。それで、翠星石もお小遣いを貰ってるの?」
「当たり前ですぅ。貰ったお金はジュン特製の財布に入れて、肌身離さず持ち歩いてるですよ」

 待ってましたとばかりに翠星石は懐から小銭入れを取り出し、それに愛しげに頬擦りする。
 彼女もジュンにお願いして―強要とも言う―作ってもらったのだ。もちろん、真紅のも作らされた。
 チラチラと蒼星石の反応を窺う彼女も、自慢したいだけなのかもしれない。
 そして、その背後からジュンが来ているのに、まだ彼女は気付いていない。

165:ケットシー
06/03/31 18:30:54 JpUxYEDC

「大事にするのはいいけど、おまえらは店で買ったりしないんだろ? 財布は持ち歩かずに仕舞っておけよ。落として無くすぞ」
「なっ!? チビ人間っ、誰もおまえなんぞの作った財布なんて大事にしてないですよ! 無くして泣いたりしないですよ!」

 おもしろいように狼狽する翠星石。それを見ながら蒼星石は「無くしたら泣くんだね」と姉の本心を代弁する。
 恥ずかしくて言葉も出なくなった彼女は、リビングから逃げ出て行った。

「人に作らせといて、なんだよ、まったく……」

 本心を見抜けなかったジュンは憤慨し、蒼星石はそんなすれ違う二人を溜め息混じりで見ていた。
 リビングに来ていきなり腹を立てたジュンだが、ここに来た目的を思い出して幾分か冷静になる。
「蒼星石、これ」
 ジュンが差し出した手には、みんなと同じ小銭入れがあった。
「これを僕に?」
「どうせバカ姉がおまえにも小遣いをやるだろうから。それだけだからな」
 押し付けるように渡したジュンは、すぐに背を向けて廊下に出た。

「よかったね。蒼星石もヒナと同じお財布なのっ」
「あっ、ジュン君―」
 嬉しさのあまり夢見心地だった蒼星石は、雛苺の声ではっとなってジュンの後を追う。
 そして、階段で追いついた彼女は、急いでお礼の言葉を送る。

「ジュン君、ありがとう。大切にするよ」

 ジュンは一瞬足を踏み止めるだけで、振り返りもしないで二階に向かった。
 それでも、彼女には解っていた。感謝の気持ちが、彼にしっかりと届いたことを。
 蒼星石はもう一度小銭入れをよく見た後、両手で包むようにして小さな胸に押し当てた。



つづく

166:ケットシー
06/03/31 18:31:55 JpUxYEDC
次で終わる予定
長々とスマソ

167:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 18:58:45 eeDWIH0o
GJです。
ほのぼのしました。

168:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 20:05:22 XRn7K9ZX
>>165
> 「なっ!? チビ人間っ、誰もおまえなんぞの作った財布なんて大事にしてないですよ! 無くして泣いたりしないですよ!」
これはいいツンデレですね

169:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 22:48:40 g3xoGqqi
あっちの前スレ561のおまけです。ま、あれこれ悩んでも切りがないので投下します。


 ほどなく、3つのコーヒーカップは空になった。
「ふぅ、ごちそうさまでした、ですぅ♪」
「美味しかったの~♪」
「……紅茶党の私が、このようなものを気に入るなんて……」
 満足そうに元気良く言葉を発した翠星石と雛苺とは対照的に、真紅は複雑な表情でぶつ
ぶつと呟いた。翠星石が怪訝そうに真紅の顔を窺った。
「どうしたですか、真紅?」
「美味しくなかったの?」
「……不味くはなかったのだわ」
 翠星石と雛苺の問いかけに、真紅はほんの少しムッとしながら答えた。
「なるほど。つまり、美味しかったという事ですね?」
「……紅茶よりは数段劣るのだわ」
「『ジュンの淹れた』が抜けてるですよ?」
 やや意地悪な翠星石のツッコミを、真紅は聞こえないふりをして無視した。翠星石が、
ふと何かを思い出したような顔をした。
「そういえば、真紅はコーヒーを飲まないですねぇ……?」
「泥水みたいな、ただ苦いだけの液体を、好んで飲む気は起こらなくてよ」
「このストロベリーカフェモカみたいな、あまあまのコーヒーなら飲めるということです
か……真紅はお子ちゃまですぅ♪」
「す、翠星せ―きゃあっ!」
 からかう翠星石に抗議しようとした真紅だったが、最後まで言い終える代わりに悲鳴を
上げた。
 真紅の口の端に付いたミルクの泡を、翠星石が舐め取ったからだ。
 突然の出来事に口をパクパクする真紅を見て、翠星石は悪戯っぽく笑った。
「お口に泡をくっつけちゃって……やっぱり、真紅はお子ちゃまです、ウフフッ」
「真紅、お子ちゃまなの~」
「~~~~っ!」
 真紅は翠星石と雛苺をキッと睨みつけると、顔を真っ赤にしてリビングを飛び出した。
階段を駆け上がり、ジュンの部屋に飛び込むと、リビングでの出来事などお構いなしとい
った風に、眼鏡をかけたままベッドで熟睡するジュンがいた。
 その無邪気な寝顔に無性に腹が立った真紅は、足早に彼の元へ歩み寄った。真紅のお下
げに不穏な気配が宿る。
「ジュン! 今すぐ起きなさいっ!」
「……真紅……」
 ジュンの頬にツインテール往復ビンタをお見舞いする体勢に入った真紅だったが、突然
のジュンの言葉に、気を殺がれた。それに呼応するように、怒りのはけ口を失ったお下げ
が力なく垂れ下がる。真紅は恐る恐るジュンに囁きかけた。
「ジュン、どうしたの?」
「……すぅ」
「ジュン?」
 返事は無い。どうやら寝言だったようだ。
「まったく……眼鏡くらい外しなさい、お行儀の悪い」
 真紅は紅葉のように小さな手を、ジュンの眼鏡に差し伸べた。
 眼鏡に触れた瞬間、ジュンの意識が真紅に流れ込んできた。
 ジュンは、今度は紅茶でストロベリーカフェモカもどきを作るつもりらしい。
「……せめてロシアンティーに、蒸気で泡立てた苺ミルクとホイップクリームを載せるだ
けにして頂戴。チョコレートシロップは要らないわ」
 真紅は微笑みながらそう呟くと、そっとジュンの眼鏡を外した。
「ストロベリーカフェモカ、美味しかったわよ……ジュン、ごちそうさま」
 静かな寝息をたてるジュンの頬にそっと口づけをし、真紅はそそくさと部屋を後にした。
 ドアが閉まる音に、一瞬まぶたをピクッとさせたジュンだったが、目を覚ます事は無か
った。安らかな寝息を立てるジュンを優しく包み込むように、苺の甘い香りが、部屋の中
をいつまでも漂っていた。

過去作いじりはここまで。


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