【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】 - 暇つぶし2ch150:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 00:58:13 38rWFL7f
まああんまり期待はしないでくれ
大戦ものは最近書き始めたばかりだし

151:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 01:42:25 38rWFL7f
緑の草原の中にぽつんと点在する農村。
家が数件立ち並び、庭には色とりどりに咲く花。畑を耕す老人。まさに平和そのものである。
その長閑な雰囲気を煉瓦造りの家の一階の窓から楽しそうに眺める翠星石。
『・・・けてくれ』
「え?」
ベランダの下から声が聞こえたかと思うと、次の瞬間、翠星石の目の前にヘルメットを被り、土で汚れた男の顔が飛び込んできた。
「きゃあ!」
翠星石は驚いてその場に伏せてしまった。
「開けてくれ!頼む!鍵を開けてくれ!」
その男は随分と慌てていた。
元々人見知りの激しい翠星石にとって、このように唐突に助けを乞う人間に対してどう対応すれば良いのかわからなかった。
だが男の疲労に満ちた目を見ると、このまま何もしないわけはいかないと思い、翠星石は意を決して家の鍵を開けた。
男は鍵の外れる音を聞くと、急いで家の中に駆け込んだ。
家の中に入るなり、壁に張り付きながら、何かから隠れるように慎重に顔を窓の方へ近づけ外を覗きこんだ。
翠星石は奥の部屋の壁からそっと顔を出し、そんな彼を見ている。
音が監視していると、窓越しにたくさんの兵士と戦車が列を組んで道を行進しているのが見えた。
「ジェリー(ドイツ人の蔑称、スラング)め!こんな村を通るなんてまったくついてない!」
男の表情には悔しさが見えた。今にも彼らに突っ込もうかというくらいの気迫だったが、その感情を押し殺し、今は相手の動きだけを真剣に観察している。
「パンター四台にタイガー二台、兵力は八十人ほど・・・」
男は窓から見える相手の兵力をぶつぶつと声に出して暗記する。
そうしているうちに、やがて兵隊達は村を通り去り、男もその場に力が抜けたように座り込んだ。
俯いたまま力なくはぁとため息を漏らす。
よほど疲れていたのだろう。
そんな男の目の前に小さな手とハンカチが入った。
「あ、あの、これ・・・」
顔を上げると、恥ずかしそうにハンカチを差し出す翠星石の姿があった。
「ありがとう、嬢ちゃん」
ありがたくその行為を受け取った男はそれで汗を拭った。
「嬢ちゃん、この家に一人で住んでいるのかい?」
どうやら男には彼女が人形ということには気づかないようだ。
「妹が一人いるですぅ。それとマスターも」
「マスター?」
「あ、いや、親みたいなもんです!」
翠星石は慌てて誤魔化した。
「まあ事情はなんであれ嬢ちゃん一人だけだと心配だったからな」
「嬢ちゃんという言い方はやめやがれですぅ!翠星石という名前があるですぅ!」
「悪い悪い。翠星石。でも変わった名前だな。この辺りじゃそういう名前が流行か?」
「知るかですぅ!」
気さくに笑い、軽い感じの男に、翠星石はすっかり馴染んでいた。
翠星石は名前のことで外方を向いていたが、しばらくして何も言ってこなくなったので心配になって振り返った。
「人間?」
翠星石が男の顔を覗き込むと、彼はスースーと眠っていた。よほど疲れていたのだろう。

152:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 01:43:12 38rWFL7f
どのくらい眠ったのだろうか。
目を瞑り、気づいたら小鳥の囀りが聞こえてくる。
その囀りで男ははっと目を覚ました。
ふと気づくと、体には毛布がかけられていた。おそらくあの少女がかけてくれたのだろう。
「おーい、嬢ちゃん!どこ行ったんだい?」
大声で呼ぶと、奥の部屋から足音が聞こえてきた。
「もう行くのですか?」
男は立ち上がって、トンプソンM1A1短機関銃を両手に持った。
「ああ。ここから中継地点の無線機を借りればあの機甲部隊の情報は伝えられる」
「そうですか」
翠星石は寂しそうな顔をして言った。
「心配しなさんなって。ここからならそう遠くはない。それに長居して迷惑かけるわけにもいかんからな」
そう言って男はドアの方へ振り向いた。
その時、翠星石は男の右腕から血が出ているのに気がついた。
「あ、人間!血が!」
「ん?ああ、俺も全然気づかなかったぜ。多分銃弾が霞めたんだろう。大丈夫さ」
激しい戦闘状態では、耳や目といった気管が麻痺することもある。銃声によって精神異常を来たすということもあるくらいだ。
この男の場合もそういった部分に該当するのだろう。
「大丈夫じゃねえです!早くこっち来るです!」
翠星石は男の腕を強引に引っ張った。
「おいおい、いいって!」
「いいから来るです!」
そのまま男は椅子に座らされた。
そこへ翠星石が包帯を持ってやってきた。
「ほら、腕を見せるです!」
「あ、ああ(世話焼きな子なのか?)」
男は翠星石の強引な言い草に従い、上着を脱いで腕を見せた。
血が出ているところに翠星石は小さな手で包帯を巻いていく。
それをかわいい子だな、と思いつつ見つめる男。
「嬢ちゃん、綺麗な目してるな」
「え?」
翠星石は赤面して目線を逸らす。
「俺も嬢ちゃんみたいな子をカミさんにしたいぜ」
「ええ!?そ、それは・・・」
さらに赤面して慌てる翠星石。
「はは、冗談だよ。ま、国帰ってから見つけるとするか」
「か、からかうなですぅ!ほら、これで大丈夫ですよ」
「ありがとうな。面倒かけちまって」
包帯を巻き終わると、男は服を着て、荷物を提げ、いよいよ家を出る準備をした。
ドアの前まで見送りにくる翠星石に、男はポケットからお菓子を渡した。
「お礼と言っちゃなんだが、このチョコレートをやるよ。じゃあな」
「怪我しないように気をつけるですよ!」
「世話焼きな子だなあ。心配しなくても死なない限りいつでも包帯巻かれにやってくるよ!」
男はジョークを言いながら家を出て行った。向かう先は生死を賭けた戦場。
全速力で走っていく男の姿がだんだんと粒のようになって見えなくなっていく。
翠星石にとってはたった数時間の劇的な出会いであったが、気の会ういい人に会えたという気持ちのほうが強かった。

それから数日が経った。
翠星石はいつもの様に窓から外の風景を眺めていた。
すると遠くから戦車や兵士達が列を成してやってくるのが見えた。
それが翠星石の家の近くを通った時のことだった。
一人の男が手を挙げている。それは紛れもない、この前出会った男だった。
翠星石は嬉しくなってその男に見えているかはわからないが、笑って返すのだった。



153:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 02:45:57 /7VFbX0k
>>151
乙!
ドールズは大戦がよく似合いますね。

154:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 02:55:43 KnV04yYz
>>151
乙。
てっきり死亡ENDかと思ってたから嬉しい誤算だ(ノ∀`)

155:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 03:13:34 bvC54T5J
ええ話やん

156:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 16:26:38 cHAXcGJa
>>151
GJ!!
んじゃ次はこれ書いてホスィww

つ「ベルリン戦」

157:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 19:34:36 6WZNaNIN

ジュン「・・・58万6千時間前の君たち、一体、どこで、誰の下で、どんな風に生きてたんだ?」
真紅「ジュン・・・ダメよ・・・ドールに決して過去を聞いてはならない・・・開けてはいけない箱もあるのよ・・・」
ジュン「ゴ・・ゴメン水銀燈!もし辛い話なら話さなくても・・・」
水銀燈「いいの・・・話させて・・・聞いてくれる人が居るだけで・・・わたし・・嬉しいわ」

小一時間後

水銀燈「・・・瓦礫の影から音も無く現れたのはポルシェ博士の戦車!しかし神戦車T-33は一歩も退かず
    ウラー!の叫びと共に赤い旗を翻し、プリンツ・アルブレヒト通りを蹂躙していく!
    そこへ割って入ったわたしの97式軽戦車!ティガーだろうがシャーマンだろうがちぎっては投げ・・・」

ジュン「コレ・・・いつまで続くんだ?」
真紅「今が『ダウンフォール編・黒いチハ車の奇跡』だから、この後オデッサ編、南極編と続くのよ・・・
   わたしがこの話を何回聞かされたか・・・アンタがいらん事聞くから・・・」
ジュン「すまんかった」
   
小5時間後

水銀燈「そしてわたしは、ある元オイルマンの作家に会い、すべてを打ち明け・・・って皆、起きなさぁい!」
 

158:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 20:53:18 G9oXrugI
チハタンワロタwwwww

159:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 22:08:32 3pMQzae1
フォーサイスとか落合とか出てきそうな勢いだ。

160:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/30 22:58:37 38rWFL7f
>>156
とりあえずその手のゲーム持ってるんで、雰囲気掴んでからなんとか書いてみます。

161:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 09:23:54 3uyVfM8H
>>160
ベルリン戦の様子を掴みたいのだったら、
迷わず「ヒトラー最期の12日間」をレンタルだね。

162:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 09:51:48 mdaSRsne
>>160
「ベルリンの戦い」ってやつか?ペーペーシュで戦車破壊できるクソゲー

163:ケットシー
06/03/31 18:28:57 JpUxYEDC
>>137

 日差しが穏やかな昼下がり、桜田家のリビングから陽気な歌声が聞こえてくる。

「おっこづかい~、おっこづかい~っなのぉ」

 雛苺が上機嫌で歌いながらポシェットの中を何度も覗く。お小遣いが貰えたのがよほど嬉しいのか、朝からこの調子だ。
 遊びに来ていた蒼星石が、楽しそうな姿につられて微笑む。
「ポシェットに何か入ってるの?」
 聞かれた雛苺は、自慢したかったのか、得意げになって教える。
「うぃっ、おこづかいが入ってるの!」
「へぇ、お小遣いが貰えたんだ~」
「そうなのっ。蒼星石にも見せてあげるなのぉ」
「ほんとに?」
「うぃっ」
 雛苺がポシェットへと手を突っ込み、小さな小銭入れを出す。そして、それを嬉しそうに蒼星石に見せる。

「これね、ジュンが作ってくれたの! ヒナ初めてのお財布なのよ」
「いいなぁ」

 ファスナーが付いた四角い小銭入れ。
 これを作ったのは裁縫が得意なジュンだった。
 誰でも簡単に作れる単調なデザインだが、仕事が丁寧で良い品に見えた。
 蒼星石が羨ましがったのは、本心からだった。

164:ケットシー
06/03/31 18:30:02 JpUxYEDC
 雛苺は小銭入れの口を開いて逆さまにする。すると、一枚の硬貨が絨毯の上を転がった。
「あ、五十円玉だ」
「うん、おこづかいは一日五十円なの」
 のりが決めたお小遣いの額は、一日五十円。毎日、五十円玉を一枚ずつ三人にあげることになった。
 相変わらず、ちょっとした物ならのりが買ってくれるので、お小遣いの大半は貯金になるだろう。

「チビ苺、お金を床にぶちまけるなです! 無くして泣いても知らないですよ」

 雛苺が見せびらかしている所へ、翠星石がお金の扱いを注意しながら現れた。
 同じようにお小遣いを貰っていても、蒼星石相手に自慢している雛苺が気に障るようだ。

「無くさないもん!」
「それはどーだか。第一、チビチビが無くさなくても、誰かに盗られる可能性があるですぅ」
「そんなことを考えるのは、翠星石だけだと思うよ」
「蒼星石はもっとお金の大切さを知るべきですぅ。お金には人を惑わす魔力があるのですよ」
「そうなんだ。それで、翠星石もお小遣いを貰ってるの?」
「当たり前ですぅ。貰ったお金はジュン特製の財布に入れて、肌身離さず持ち歩いてるですよ」

 待ってましたとばかりに翠星石は懐から小銭入れを取り出し、それに愛しげに頬擦りする。
 彼女もジュンにお願いして―強要とも言う―作ってもらったのだ。もちろん、真紅のも作らされた。
 チラチラと蒼星石の反応を窺う彼女も、自慢したいだけなのかもしれない。
 そして、その背後からジュンが来ているのに、まだ彼女は気付いていない。

165:ケットシー
06/03/31 18:30:54 JpUxYEDC

「大事にするのはいいけど、おまえらは店で買ったりしないんだろ? 財布は持ち歩かずに仕舞っておけよ。落として無くすぞ」
「なっ!? チビ人間っ、誰もおまえなんぞの作った財布なんて大事にしてないですよ! 無くして泣いたりしないですよ!」

 おもしろいように狼狽する翠星石。それを見ながら蒼星石は「無くしたら泣くんだね」と姉の本心を代弁する。
 恥ずかしくて言葉も出なくなった彼女は、リビングから逃げ出て行った。

「人に作らせといて、なんだよ、まったく……」

 本心を見抜けなかったジュンは憤慨し、蒼星石はそんなすれ違う二人を溜め息混じりで見ていた。
 リビングに来ていきなり腹を立てたジュンだが、ここに来た目的を思い出して幾分か冷静になる。
「蒼星石、これ」
 ジュンが差し出した手には、みんなと同じ小銭入れがあった。
「これを僕に?」
「どうせバカ姉がおまえにも小遣いをやるだろうから。それだけだからな」
 押し付けるように渡したジュンは、すぐに背を向けて廊下に出た。

「よかったね。蒼星石もヒナと同じお財布なのっ」
「あっ、ジュン君―」
 嬉しさのあまり夢見心地だった蒼星石は、雛苺の声ではっとなってジュンの後を追う。
 そして、階段で追いついた彼女は、急いでお礼の言葉を送る。

「ジュン君、ありがとう。大切にするよ」

 ジュンは一瞬足を踏み止めるだけで、振り返りもしないで二階に向かった。
 それでも、彼女には解っていた。感謝の気持ちが、彼にしっかりと届いたことを。
 蒼星石はもう一度小銭入れをよく見た後、両手で包むようにして小さな胸に押し当てた。



つづく

166:ケットシー
06/03/31 18:31:55 JpUxYEDC
次で終わる予定
長々とスマソ

167:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 18:58:45 eeDWIH0o
GJです。
ほのぼのしました。

168:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 20:05:22 XRn7K9ZX
>>165
> 「なっ!? チビ人間っ、誰もおまえなんぞの作った財布なんて大事にしてないですよ! 無くして泣いたりしないですよ!」
これはいいツンデレですね

169:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/31 22:48:40 g3xoGqqi
あっちの前スレ561のおまけです。ま、あれこれ悩んでも切りがないので投下します。


 ほどなく、3つのコーヒーカップは空になった。
「ふぅ、ごちそうさまでした、ですぅ♪」
「美味しかったの~♪」
「……紅茶党の私が、このようなものを気に入るなんて……」
 満足そうに元気良く言葉を発した翠星石と雛苺とは対照的に、真紅は複雑な表情でぶつ
ぶつと呟いた。翠星石が怪訝そうに真紅の顔を窺った。
「どうしたですか、真紅?」
「美味しくなかったの?」
「……不味くはなかったのだわ」
 翠星石と雛苺の問いかけに、真紅はほんの少しムッとしながら答えた。
「なるほど。つまり、美味しかったという事ですね?」
「……紅茶よりは数段劣るのだわ」
「『ジュンの淹れた』が抜けてるですよ?」
 やや意地悪な翠星石のツッコミを、真紅は聞こえないふりをして無視した。翠星石が、
ふと何かを思い出したような顔をした。
「そういえば、真紅はコーヒーを飲まないですねぇ……?」
「泥水みたいな、ただ苦いだけの液体を、好んで飲む気は起こらなくてよ」
「このストロベリーカフェモカみたいな、あまあまのコーヒーなら飲めるということです
か……真紅はお子ちゃまですぅ♪」
「す、翠星せ―きゃあっ!」
 からかう翠星石に抗議しようとした真紅だったが、最後まで言い終える代わりに悲鳴を
上げた。
 真紅の口の端に付いたミルクの泡を、翠星石が舐め取ったからだ。
 突然の出来事に口をパクパクする真紅を見て、翠星石は悪戯っぽく笑った。
「お口に泡をくっつけちゃって……やっぱり、真紅はお子ちゃまです、ウフフッ」
「真紅、お子ちゃまなの~」
「~~~~っ!」
 真紅は翠星石と雛苺をキッと睨みつけると、顔を真っ赤にしてリビングを飛び出した。
階段を駆け上がり、ジュンの部屋に飛び込むと、リビングでの出来事などお構いなしとい
った風に、眼鏡をかけたままベッドで熟睡するジュンがいた。
 その無邪気な寝顔に無性に腹が立った真紅は、足早に彼の元へ歩み寄った。真紅のお下
げに不穏な気配が宿る。
「ジュン! 今すぐ起きなさいっ!」
「……真紅……」
 ジュンの頬にツインテール往復ビンタをお見舞いする体勢に入った真紅だったが、突然
のジュンの言葉に、気を殺がれた。それに呼応するように、怒りのはけ口を失ったお下げ
が力なく垂れ下がる。真紅は恐る恐るジュンに囁きかけた。
「ジュン、どうしたの?」
「……すぅ」
「ジュン?」
 返事は無い。どうやら寝言だったようだ。
「まったく……眼鏡くらい外しなさい、お行儀の悪い」
 真紅は紅葉のように小さな手を、ジュンの眼鏡に差し伸べた。
 眼鏡に触れた瞬間、ジュンの意識が真紅に流れ込んできた。
 ジュンは、今度は紅茶でストロベリーカフェモカもどきを作るつもりらしい。
「……せめてロシアンティーに、蒸気で泡立てた苺ミルクとホイップクリームを載せるだ
けにして頂戴。チョコレートシロップは要らないわ」
 真紅は微笑みながらそう呟くと、そっとジュンの眼鏡を外した。
「ストロベリーカフェモカ、美味しかったわよ……ジュン、ごちそうさま」
 静かな寝息をたてるジュンの頬にそっと口づけをし、真紅はそそくさと部屋を後にした。
 ドアが閉まる音に、一瞬まぶたをピクッとさせたジュンだったが、目を覚ます事は無か
った。安らかな寝息を立てるジュンを優しく包み込むように、苺の甘い香りが、部屋の中
をいつまでも漂っていた。

過去作いじりはここまで。

170:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:09:24 lyptTkli
>>124
無理があるというか、ハインツの設定が無茶すぎ
終わり方も中途半端だし

171:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:12:31 6oimPwXI
>>1

172:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:31:30 6oimPwXI
あ・・・あれ?日付が・・・

173:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:42:19 28L2WMhe
>>172
気にするな。どこでも同じことになっている。

ちと余談。
SS総合の方がだいぶ落ち着いた感じがする。

174:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:47:38 subpozm7
でもまぁ、あっちで同じ様な構想投下最中だと書き辛い事もあるので
使い分けできて便利便利。
と言う訳で久々に投下です。

175:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:48:41 subpozm7
それは気持ちの良い初夏の昼下がり。
翠星石は、桜田家の庭に群生しているシロツメクサで花冠を作っていた。
「完成したらチビ人間にあげるです。あの部屋には緑が無くていけねーです。ふふふ」
そんな事を考えながらも、とても静かで穏やかで、あまりの心地好さに
彼女は誘われるままにいつしか縁側で眠りに落ちていった。
まぁ、そこまではごく平和な日常の光景。

日にあたりながら縁側ですやすや眠る翠星石。だがその格好はあまりにも無防備。
更にはそよ風でスカートがめくれてパンツ丸見え状態で眠りこけている。
乙女としては、かなり痛い格好。
そこに雛苺がやって来た。何か探し物をしているらしい。
あられも無い姿で眠る翠星石を見つけた彼女は、
ちょっと声をかける事をためらったものの、彼女の体をゆすって自分の探し物を尋ねる事にした。
「翠星石ぃ~ひなのうにゅーがないのぉ、一緒に探して欲しいの~」
「う~ん…知らないです、そんなの自分で探すです…翠星石は忙しいです…」
「だってだって…」
「あー…もう、チビ苺のうにゅーなら翠星石が食ってやったです…だからあっち行けです」
面倒くさそうに寝ぼけながら答える翠星石。
その言葉にショックを受けた雛苺は、半泣き状態で部屋の中にかけ戻っていった。
「翠星石の、いやしんぼーーーーーっ!!」
やがて戻ってきた雛苺の右手にあるのは油性マジック。
「翠星石なんか、こうしてやるのっ!」
悔し紛れに雛苺は翠星石の顔にドジョウヒゲを書き込んだ。
しかも先をくるくるカールしたヒゲである。
それはまさしくフランス風、例えて言うならピエールとでも形容するのだろうか。
いや、ピエールが誰かは知らないけど。


176:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:50:25 subpozm7
何も知らない翠星石は、そのまま大股開いて幸せそうに眠っている。
その光景を双眼鏡で覗いていた金糸雀が、チャンス到来とばかりにやって来た。
「うわっ、なんて大胆な格好なのかしら~、でもこんなチャンス滅多にないかしら、ふっふっふ…」
そう言うと、金糸雀は翠星石の股の間に100円均の象ジョーロを挟み込み、
右手にでんでん太鼓、左手に万国旗を持たせてポーズを付け、
それから近くに落ちていたマジックを見つけると、風に髪が乱れている翠星石のおでこに
「肉」にしようか「米」にしようか「中」にしようかと迷った挙句、やっぱり「肉」と書き込んで、
そそくさとヤラセ写真を撮りだした。
かなりおばかな格好なのだが、当の翠星石はいい気持ちで眠っている。
「うはぁ~すっごいかしら~、みっちゃん喜ぶかしら~」
一通り写真を撮り終ると、金糸雀は喜び勇んで帰っていった。
白い肌着から緑の象さんがにょっきり生えている状態で喜ぶとしたら、みっちゃんもかなりのアレである。
いや、アレが何かは特定しないけど。


177:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:51:35 subpozm7
蒼星石は全てを見ていた。何て説明したら良いのだろうと悩みながら、とりあえず姉の身なりを整えて、翠星石を起こす事にした。
「翠星石…そろそろおきなよ…」
「う…ん、あぁ…蒼星石」
さわやかな気分で眠りから目覚めた翠星石の心は安らぎに満たされていた。
「あのさ、…聞いて欲しいんだけど…」
「あ、そうだ、花冠…蒼星石はちょっと待ってるです」
「あ、いや、あの…ちょっと…」
こうして翠星石は話も聞かず、ジュンに会うために階段を登っていったのだった。


「チビ人間―!庭の草花で冠を作ってみたですぅ」
季節を感じさせる花冠を被りながら、翠星石はジュンの部屋に入っていった。
ジュンと真紅はしばらく呆然と翠星石の顔を凝視し、やがてハモりながら返事をする。
『…トレビヤ~ン』
…やはりマジックでドジョウヒゲのイメージはピエールなのか。
いや、ピエールとマジックは関係なくもないんだけど、雛苺がフランス帰りって事で、解る人だけ解ってください。
その返事を言葉通り受けとめた翠星石は、顔をほころばせながら嬉しそうにはしゃいでいる。
「そんな…おだてたって何もでねーですよ、でもこれはジュンにあげるです」
もともとその為に作ったものだ。
「……」
珍しく素直に嬉しさを表現している翠星石を、ジュンは何か言いたそうな顔をして見つめている。
その視線に気付いて、少し照れながらうつむいて小さな声でささやくのだった。
「…チビ人間、そんなに見つめるなーですぅ…」
二の句が続かないジュンを、真紅が傍から肘で突っつく。
我に返ったジュンは、翠星石の頭をなでながら労わりの言葉をかける。
「…もし、何か困った事とか悩みがあれば、いつでも相談に乗るからな」
思いがけない優しい言葉に、つい赤面する翠星石。
「じゃ、チビ人間は勉強がんばるです、翠星石は応援してるです」
そう言い残して、嬉しいような恥ずかしいようなそんな心を悟られないように、翠星石はジュンの部屋を後にする。

翠星石が去った後、ジュンは真紅に問うのだった。
「あいつ…何か悲しい事でもあったのか?」
「さぁ…知らないわ」
翠星石、嗚呼…哀れ。


178:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 00:52:32 subpozm7
階下で蒼星背石が待っていた。
「蒼星石―!ジュンが翠星石の花冠をトレビヤンって言ったですぅ!しゃーねーから花冠はくれてやったですぅ!」
うきうきはしゃぐ姉に、蒼星石はもう何も言えなかった。
「あのさ…鏡持ってきたから…」
「へっへーん、鏡を見せて何をしようって言うです?この妹は…」

そう言って上機嫌で鏡を覗き込む翠星石。 そして笑顔で固まった。

「………うふ…ふふ・・ふ」
「あの…だいじょうぶ?」
「…うふ、くふ、ふふふふふふ…!!!」
状況を理解した翠星石は、不気味に笑い続けたと言う。
その時の姉は野獣の様だった、と蒼星石は述懐している。
そしてその後、翠星石は泣きながら1日中家の中で暴れたという…。
因みに、翠星石の知らない間に撮られた写真は、みっちゃんのお気に入りとして、
彼女の部屋に四つ切サイズで飾られているらしい。

おしまい

179:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 02:01:37 28L2WMhe
ワロタwww


180:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 09:37:10 OGrSdk8w
翠星石テラカワイソスwww

181:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 09:49:45 UWIRv+ZI
ワロタwwwwww
かなりのアレ→かなりアレ  にしてほしかった

182:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 16:25:15 subpozm7
うーん確かに。
前レスでピエールと形容?してるから
「の」を入れてアレを名詞扱いにするより
入れないほうが韻を踏んでるかも。

183:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 17:18:15 FYE46TXf
全く同じ感想なので引用

翠星石テラカワイソスwww



184:ケットシー
06/03/32 18:41:32 umAZEE6D
>>165

 ある夜、ジュンは静かな自室でネットを楽しんでいた。
 人形の夜は早い。彼女達は午後九時前には、ベッド代わりの鞄で眠りに就く。
 彼女達がそれぞれの愛用の鞄に入ってからが、ジュンにとっては貴重な落ち着ける時間なのだ。

 そのジュン以外に起きているはずの無い時間、背後からゴソゴソと物音が聞こえてきた。
 邪魔されたような気分になったジュンは、気にせず無視することにする。
 彼女達の誰かが起きたのは確かなようだ。わずかな足音がそろそろと椅子に近づいてくる。
 そして、足音はジュンの真後ろで止まる。

 時間にして何分は無視し続けただろうか。
 後ろの彼女は黙ったまま動かない。彼女は起きてから、一言も声を出していない。
 これには、ジュンも少し気味が悪くなってきた。次第に落ち着きがなくなり、意地を張るのも辛くなってくる。
 とうとう、彼は我慢できずに後ろを振り向く。

185:ケットシー
06/03/32 18:42:24 umAZEE6D
「……翠星石か」

 天井の蛍光灯は消してある。
 勉強机の灯りに浮かび上がったのは、彼女の白い肌と特徴的な翡翠色の左目だった。
 雰囲気のある登場の仕方に、ジュンはゾクリと寒気を覚える。
 それは恐怖からなのか、はたまた幻想的な美しさからなのか、当の本人には判別できなかった。
 正体が分かって安心したのも束の間、今度は脅かされた事に少しばかり腹が立ってきた。

「脅かすなよ、性悪人形。寝る前に本は読んでやっただろ。さっさと寝ろよ」

 やや口悪く追い払おうとするジュン。
 しかし、彼女は少しも怒らない。あの怒りっぽい彼女がだ。それどころか、潤んだ瞳を彼に返す。
 さすがに異常を感じたジュンは、視線に怯みながらも彼女を心配する。

「ちょっと、どうしたんだ? 何かあったのか?」
「あの……あ……」

 優しい声を掛けられた彼女は、ようやく声を出して何かを伝えようとする。
 だが、それもうまく言葉にならない。息が詰まったように口だけ動く。
 声を出すのを諦めた彼女は、トコトコと俯きながらジュンに向かって歩き出す。
 ジュンの横まで辿り着いた翠星石は、手に持っていた何かを彼の膝上に叩き付ける。
 そして、こう叫ぶ。

「プレゼントですぅ!!」

 彼女は一目散に逃げ出し、寝床の鞄に飛び込んだ。
 全ての鞄は固く閉じられ、再び静かな夜が訪れる。
 ジュンはただただ、驚きで鞄の一つを眺めるだけだった。





186:ケットシー
06/03/32 18:43:26 umAZEE6D
 翌日のジュンと翠星石の関係は、とてもぎこちないものになっていた。
 二人は顔を合わせるたびに目線を外し合い、揃って口篭る。夕食を食べ終わっても、今日は口喧嘩の一つもしてない。
 のりと雛苺は、喧嘩をしたのではと二人を心配した。だが、真紅にそういう素振りは見えなかった。彼女は事情が解っているらしかった。

 夕食後、ジュンは部屋で考え事をしていた。
 机に置いてあるのは昨晩、翠星石から貰ったプレゼント。それは、この部屋にもたくさん飾ってあるミニカーだった。
 車種はトヨタ2000GT。言わずと知れた名車である。このミニカーの値段をネットで調べたら、千円そこそこだった。
 別に高価な代物ではないのだが、彼女達のお小遣いを思うと、そうも言ってられない。一日たったの五十円なのだから、十日貯めても五百円にしかならない。
 夜中にこっそりと渡しに来たのだから、彼女のお小遣いで買った物と考えるのが妥当だろう。

 そこまで思い至ったジュンは、さらに込み入った可能性まで推測してしまう。
 お小遣いが欲しいと言い出したのは翠星石だ。もしかしたら彼女は、最初からこのためにお金が欲しいと言い出したのかもしれない。
 そう思うと、彼女に悪いことをした気がしてならない。
 どんな顔をして会えばいいのか分からなくなるのも仕方がなかった。



187:ケットシー
06/03/32 18:44:24 umAZEE6D
「おやすみなの~」
「おやすみなさい、ジュン」
 夜の九時が近くなり、人形達は各々の鞄に帰っていく。
 翠星石だけは鞄の前に立ち、物言いたげに部屋のあちこちを見る。
 ジュンも今日中に何かを言わなければならないと思い、彼女の周りに視線を彷徨わせる。

「おやすみです……」

 翠星石が寂しそうに鞄を開ける。
 最後の最後になって、ようやく声を掛ける勇気がジュンに湧いた。

「ま……待てよっ。寝る前の読書がまだだろ」

 翠星石がジュンに振り向く。その顔が、みるみる明るくなる。

「そうですっ。本を読んでもらってないですぅ」

 鞄を閉じ、本を読んでもらうためにベッドの上に駆け上がる。
「早くするです!」
「はいはい」
 急かされたジュンにも自然と笑みが浮かぶ。
 息苦しい空気はすでに吹き払われていた。


 翠星石の胸は高鳴りっぱなしだった。
 ベッドに腰を下ろしたジュンが本を朗読し、翠星石はその膝の上で耳を傾ける。
 しかし、彼女はただ本の内容に耳を傾けるだけではない。あーだこーだとはやし立てては、疑問に思ったらすぐ質問する。
 今夜の彼女は、いつにも増して口数が多い。はしゃいでいるのか、はたまた、心の内を悟らせないためなのか。どちらにせよ、彼女は胸躍る楽しい一時を過ごしている事に違いはない。

「プレゼント、ありがとな……」

 本を読んでいる最中、ジュンが唐突に言った。
 騒がしかった翠星石も黙り、急に部屋が静寂に包まれる。
 変な雰囲気になる前に、ジュンが慌てて言い訳のように続ける。

「その、まだお礼言ってなかったから。言わなきゃと思って……」

 しどろもどろになる彼を見て、翠星石にも余裕が出てくる。
「べ、べつに礼なんかどーでもいいですぅ」
「でも、一応な、ありがとう」
 二人とも慣れない事で顔が真っ赤になる。
 本を見ているおかげで、お互いの顔を見なくて済むのが、せめてもの救いだった。
 再び沈黙が広がるが、今度のは少しも不快ではない。とても暖かい気持ちになれた。

188:ケットシー
06/03/32 18:45:10 umAZEE6D

「感謝してるなら、お礼に私のお願いを聞いてほしいです」

 調子に乗った翠星石が、こんな事を言い出した。
「お礼はどうでもいいんじゃなかったのか?」
「さっきのは取り消し。いーから聞けよですぅ」
「勝手なヤツ……。で、なんだよ」
 何をお願いされるのか分かったものではないので、ジュンはわずかに嫌な顔をする。それでも、普段の彼からは考えられないような優しい対応だ。
 翠星石はぐっと恥ずかしさと不安を抑えてお願いする。

「これからもずっと、翠星石に本を読んで欲しいですぅ」

 思っていたよりも普通の願いだと思ったジュンは小さく笑う。
「そんなの今と変わらないじゃないか」
 そのジュンの様子が気に入らなかった翠星石は頬を膨らませる。

「ずっとなのですよ、ずっと! ここが大事なのですぅ!」

 繰り返し「ずっと」を強調する翠星石。それほどまでに、この願いには彼女の想いが詰まっていた。

「いつでも読んでやるよ」
「今の言葉、忘れるなです。約束したですよ!」

 そう言い残し、彼女はのしのしという足取りで鞄に帰っていった。
 最後は喧嘩みたいになってしまったが、鞄の中で翠星石は微笑みながら目を閉じる。
 この夜、翠星石は顔がにやけて、なかなか寝付けなかった。



おわり

189:ケットシー
06/03/32 18:46:30 umAZEE6D
ピエールカワイソスな翠星石を救済w

ミニカーの車種に深い意味はないっすw
アニメのジュンの部屋には古い自動車の模型が多く置いてあるんだけど、あまり車に詳しくないんだよねぇ。
そこで唐突に思い出したのがトヨタの古いスポーツカー。
小学校の社会見学でトヨタの自動車工場に行った時、トヨタから土産としてプラモデルが生徒全員に配られたんだ。
それが2000GTだったってだけですw(遠い思い出

190:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 19:00:46 f7GAZYsl
ピエールって聞くと某ゲームの殺し屋思い出す

191:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 19:08:50 I5Ps3DD7
俺はスライムナイトを思い出す。


>>184-188
幸せっぷりに読んでる方も顔がニヤけちまったぜチクショー

192:名無しさん@お腹いっぱい。
06/03/32 20:50:34 YsDSF6QG
ま、まさかこんな落ちが待っていようとは・・・
けど翠派には、とてもいいSSでしたw
GJ!次回作期待していますー


193:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 00:46:53 bDamb2q/
翠星石……(⊃Д`)
ジュンが羨ましく、そして微笑ましいですなぁ。
幸せな気分で眠れそうです。

>>190
漏れはドラクエ5小説のピエールですね。

194:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 02:53:33 G+HAT7G2
ケットシー氏の作品と大戦もの翠星石編は俺的に良かった

195:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 14:31:17 zDt6f9gU
こっちのスレあっちと違って少し活気がないような
気のせい?

196:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 18:42:54 HQuLW3qf
もっと職人褒めなきゃ、あっちと違ってここはそういうスレなんだから。

197:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 19:04:06 BPpy2uUP
投下の流れの早い遅いも、他スレとの比較も、余り過敏になる必要はない。
関連の他スレに活気があるのはいい事、荒れれば必ずここに波及する。
既にここは充分な作品投下があって、いい書き手と住人がいい流れを作ってる。

俺も今書いてるSSは、完成し次第ここに投下するって決めてる。

198:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 19:24:40 r6mcpME8
>>197
wktk!

199:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 19:27:39 G+HAT7G2
本当はつまんねーとか思ってても無理矢理褒めたりしてってことはないよな

200:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 19:44:53 r6mcpME8
>199
頭悪いな、

201:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 19:50:17 e/WbAAdO
両スレ活気があってよろしい
向こう側もかなり元通りになってるし。

202:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 19:52:40 G+HAT7G2
>>200
いや、多少なりアンチとかいたりするでしょ。
皮肉る意味でそうやっている人もいるのではないかと。

203:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 19:57:55 H276NQvj
頭悪いとか中傷的な発言をするのも禁止だというのに

204:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 21:03:26 /tctxtZM
>>199
>SSを投下してくれる職人は神様です。文句があってもぐっとこらえ、笑顔でスルーしましょう

頭の悪い子ね
これを踏まえての社交辞令が、偽りの民主主義では必要なのよ?

205:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 21:17:42 H276NQvj
荒らしにマジレスも春か

206:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 22:42:23 bDamb2q/
翠星石がジュンと遊んでばかりなので、
蒼星石が寂しく荒らしている光景を想像してしまった……。

207:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 23:19:16 YXIsJwhs
>>206
それでSS書けるかもナ・・・
しかし暗い蒼は見たくないと思うのは漏れだけだろうか?

208:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 23:24:56 WSxGjcRI
先生、狂気な蒼星石のSSが読みたいです。

209:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/02 23:47:39 /nihGPXh
口から糞たれる前にGJと言え
ここはそういうスレだ

210:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 00:21:00 kHzANEA5
雛苺から失敬したうにゅーの隠し所に困った翠星石は
家の玄関に置いてあった蒼星石のカバンの中に、とりあえずうにゅーを忍ばせておいた。
「ここならちび苺なんかに見つかりっこないですぅ~」

1時間後、蒼星石が帰ろうとしてカバンを開けたのだが
目の中に飛び込んできたのは、もぞもぞと動く恐怖の黒い山。
そこは、こんもりと出来ていた蟻の黒集りで大変な状態に。

そして悲鳴が響き渡る。
「ギャーーー!ウワァーーー!!ウヲォーーー!!!」

そして夜がやってきた。
蟻に体を這いずりまわれる錯覚がよぎり、綺麗に掃除したカバンに入る事が出来ず、
蒼星石は翠星石のカバンで一緒に寝るのでした。
「フフフ…蒼星石はあまえんぼさんでしゃーねぇです」
いや、オマエが一番の原因だろうが!


…ていう甘甘狂気な蒼星石SSじゃダメ?

211:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 00:49:12 JmbldD2y
もう全然OK

212:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 01:28:18 DGSpQ49x
いいんじゃないですか~www

213:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 01:40:46 WM6sGYeo
うはwwwww翠星石反省汁!!
そこが可愛いともいえますが。

214:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 02:05:47 X5/DBHQ9
GJ!

215:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 02:19:42 etoKgyoi
次回作期待
wktkです

216:熊のブーさん
06/04/03 02:25:30 DGSpQ49x
作ってみたので投下

 日曜日の昼下がり、桜田邸は今日も騒がしかった。
「ジュン~、ヒナと遊んで欲しいの~」
「うるさいですぅチビ苺! ジュンは翠星石と遊ぶのですぅ」
「いいかげんにしろよな、おまえら・・・」
 ここ最近、これといった事件も無く平和そのもの。しいてあげれば、庭の茂みが毎日のようにガサガサと動いているぐらいであろう。
「・・・ジュン君、うちの茂み、何かいるのかしら・・・」
「知るかよ、そんなこと」
2体の人形にじゃれつかれて、ジュンは機嫌が悪かった。
 のりも別に深く考えようとはしていない。猫か何かだろうと思っていた。
「ジュン。お茶の時間よ」
「へいへい」

この毎日繰り返される光景も、少しずつ違っているものだ。
しかし、ずっと同じことをしている存在が一つ。そいつは今日も本を読んでいた。
蒼星石である。

(ジュンとお話したいけれど・・・)

 蒼星石だって姉や雛苺と一緒にジュンにじゃれ付きたかった。騒ぎたかった。
 だが、彼女には楽しそうにしている三人(?)に割り込んでいく勇気は無かった。
「はぁ・・・」
 ため息を合図に、本を閉じた。
 平和な毎日。変わらない日常。良いことだと分かってはいるのに蒼星石はそこはかとない疎外感に苦しんでいた。
 気分を変えるために部屋を出て、ジュンの部屋に行くことにした。
 部屋の面々は蒼星石が部屋を出たことに気付かない。


217:熊のブーさん
06/04/03 02:26:55 DGSpQ49x
 ジュンの部屋に来た蒼星石は何をするわけでもなく本を片手にぼぅっとしていた。
「暇だなぁ」
 辺りを見回してみる。
 ふと目に付いたのはジュンのノートパソコン。電源は付けっ放しだった。
「・・・ちょっとぐらいならいいよね」
 蒼星石はパソコンの扱い方について一通りの知識は持っていた。
 インターネットに接続し、お気に入りを見る。
 適当にクリックしてみた。ジャンプした先は
「えーと、《Ⅲチャンネル》?」


「蒼星石ーどこにいるのですぅー?お茶にするから出てきやがれですぅー」 
「ああ、行かなくちゃ」
蒼星石は下に降りていった。


「ん、なんだこれ?」
お茶を飲み終り、部屋に戻ってきたジュンは自分のノートパソコンの画面を見た。
「“くんくんについて語るスレ”? こんなとこにつないでたかな?」
 


218:熊のブーさん
06/04/03 02:27:53 DGSpQ49x
 水曜日、その日は朝から雨だった。
 ジュンは図書館に入り浸り、のりは学校に行っている。今日の桜田邸は比較的静かだった。
 人形達はテレビを見ている。しかしその中には蒼星石の姿は無かった。
 蒼星石はジュンの部屋でパソコンをいじっていた。《Ⅲチャンネル》をやっていたのである。スレはもちろん“くんくんについて語るスレ”だ。
書き込まれたスレを見つつ、ときおり書き込みながら蒼星石は呟いた。
「面白いなぁ」
 すっかりはまっていた。

――次のくんくんはどうなるんだろうね?――
――お隣さんちで事件が起こるんだよw――
――たいしたことじゃないさ、きっと――
――かずきィーーー!!――

「あはは・・・あは・・あははははは」
そんな蒼星石をドアの隙間から翠星石が覗いていた。
「これは引きこもりの予兆なのかですぅ・・・」
 雨はまだやみそうに無い。


219:熊のブーさん
06/04/03 02:29:09 DGSpQ49x
 次の日も雨だった。
 昨日より幾分雨脚が強くなっているため、ジュンは家にいた。一階で雛苺と遊んでいる。
 ジュンは昔のようにずっと部屋に引きこもることは少なくなった。
 本人曰く「遊んでくれって雛苺や翠星石がうるさいから仕方なくやってんだ」と主張しているが
 「最近ジュン君よく笑うようになったわねぇ」と、のりの一言が全てを物語る。
 だが、一方でみんなの前で笑わなくなっていた者もいた。
 今日もパソコンに向かっている蒼星石である。
 まったく笑わないわけではないが、
「うふふ・・・あはははは・・・・あははァ!」
 とてもじゃないが健全な笑い方とは言えなかった。
 
「さて、今日はどんな書き込みがあるかな~」
 慣れた手つきでマウスを動かす。目的地は《Ⅲチャンネル》だ。すぐに到着。
 しばらくして、マウスを動かす手が止まった。

――人形って儚いよね――

3日で新スレになる“くんくんについて語るスレ”は今日も賑わっていた。
そこでは「名探偵くんくん」の突然の放送中止の話題でもちきりだった。
真紅が怒っていたから蒼星石の記憶にも新しい。
 
――なんで放送中止~!?――
――またやるだろ。充電中さ――
――出来はよかったのに――
――いくらよく出来ててもなぁorz――
――所詮は人形劇ってことか・・・――
――このまま皆から忘れ去られたりして――

 蒼星石はそこで見るのをやめてしまった。
 どうしても「人形」である自分と重ね合わせてしまい、見ていられなくなったのだ。
「そんな・・・嫌だ・・・僕は・・・僕は・・・あぁあああァ!!」
頭を抱えて錯乱すること10分。
「蒼星石~・・・どうしたですか!?顔色真っ青ですぅ!」
「あ・・・あぁ、なんでもないよ翠星石。ちょっと眩暈がしただけだから・・・」
「さっき聞こえた奇声といい、本当に大丈夫かですぅ?」
「大丈夫、大丈夫・・・」
 蒼星石はまるで自分に言い聞かせるかのように呟いた。
 その時、蒼星石の脳裏にある考えが浮かんだ。
(アリスになりさえすれば・・・お父様からも愛してもらえる・・・
 アリスになりさえすれば・・・ジュンと・・・)
 蒼星石の目に一瞬、狂気の光が宿った。
 しかし、翠星石はそんなことには気付かない。
「下に行って、ソファで休むですぅ」
「・・・・・・そうするよ」
 雨はまだ降り続く。いつまでも、いつまでも。
 蒼星石が「アリスを目指す宣言」をする七日前のことだった。

                おわり


220:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 07:47:27 rFuzUKq+
>219 熊のブーさん
そんな理由でw
笑いました。ナイスです

221:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 09:07:29 WM6sGYeo
こんな理由でアリスゲームが始まったのかぁあああ!!
恐ろしい、恐ろしい真実だ……!!

222:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 09:45:28 X5/DBHQ9
>>219
やっべーGJ!

223:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 12:20:14 iZr7GxC6
>219
壊れる蒼星石に吹いてしまった
GJ

224:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 14:32:07 CDm/D3vN
物語はリアルタイムで進行する
これは、午後7時から8時の間に起きた出来事である・・・

やべ、書いてて飽きた

225:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 14:43:04 JmbldD2y
はや!

226:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 16:29:14 OtmeK4/u
>「うるさいですぅチビ苺! ジュンは翠星石と遊ぶのですぅ」
ここに心をグッと掴まれました・・・翠派の必然ですね

蒼の壊れて行く裏事情
よかったですー


227:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 18:38:43 /+hwmj32

やい、お前達、一体ローゼン・メイデンをなんだと思ってたんだ?
仏様とでも思ってたか ああ?
笑わしちゃいけねえや。ローゼンメイデンぐらい悪ずれした生き物はねんだぜ。
オッパイ出せって言や、無え。マソコ出せって言や、無え。何もかも無えって言うんだ。
ふん、ところがあるんだ。何だってあるんだ。
ドレスひっぺがして掘ってみな。そこに無かったらドロワースの奥だ。
出てくる、出てくる、球体関節とょぅι゛ょ の体だあ。
ケツの割れ目の間へ行ってみろ。そこには隠し穴だあ。
正直面して、ペコペコ頭下げて嘘をつく。なんでもごまかす。
どっかにアリスゲームでもありゃ、すぐ人工精霊使ってローザミスティカ狩りだい。
よく聞きな。ローゼンメイデンってのはな、けちんぼで、ずるくて、泣き虫で、意地悪で、間抜けで、人殺しだあ。
ちくしょう。おかしくって涙が出らあ。
だがな、こんなケダモノ作りやがったのは一体誰だ?
おめえ達だよ。人間だってんだよ。
ばかやろう。ちくしょう。
ネジ巻かれるたびに犯される、虐待される、人間化される、フタナリ化に淫乱化、手向かえばカバンに封印
一体ローゼンメイデンはどうすりゃいいんだ。ローゼンメイデンはどうすりゃいいんだよ。くそー。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう


228:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 19:59:48 CDm/D3vN
真紅=ジャック
翠星石=トニー
蒼星石=ミッシェル
水銀燈=ニーナ

似合ってね?

229:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 20:36:19 Wu8iv618
>>227
どうコメントしていいやら。


230:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/03 21:58:05 kHzANEA5
>>228
似合ってるといえば、やっぱり

蒼星石=死神の蒼
翠星石=射的屋の翠
真 紅=トドメの真紅
水銀燈=月見の銀

で、ケルベロスものがたりですかねぇ…あー、解る人だけ判ってください。

231:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/04 03:50:33 hUDvzhc/
>>227
最後の一文にちょっとワロタ

232:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/04 08:41:57 Lg8ejP7K
>227
七人の薔薇乙女

真紅が志村喬、水銀燈が三船かw

233:sage
06/04/04 21:03:38 G+eh/sBs
保守

234:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/04 22:10:10 D/f+SGBB
>>233
sageはメール欄に入れよう、な。

235:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/04 22:47:43 yDaL3NUJ
sage

236:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/05 00:47:10 tCFqWFXh
>>235
sageは本文に入れないように、な。

237:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/05 04:25:43 dtEEe2QN
フィルコリンズとかけてhage

238:ケットシー
06/04/05 20:10:05 Xz9OOSZ4
あべこべろーぜんめいでん


 本棚に囲まれた自室で、真紅は黙々と分厚い本を読み耽っている。
 本棚に並ぶ書籍のジャンルは多岐に渡り、恋愛小説から、果ては医学書のような専門書まで見える。文字も日本語だけではなく、英語やらドイツ語やらが見える。彼女は本を読む事が余程好きなようだ。
 彼女は現役の女子中学生なのだが、学校も行かずに朝から晩までこの部屋で本を読む毎日を過ごしていた。いわゆる、不登校児の引き篭もりである。
 当然、家族や学校の先生から登校を勧められるのだが、その度に彼女はこう言い返す。

「学校ってつまらないんですもの。家で本を読んでいた方が有意義なのだわ。学業のことならご心配なく。学校の教科書なら、全て暗記できますので」

 だそうである。
 実際、彼女の学力は半端ではなく、知識だけなら、すでに大学生レベルを超えていた。一度、学校の担任が期末テストの用紙を持ってきて真紅にやらせたのだが、全教科が満点かそれに近い点数で学年トップの成績を叩き出した。
 なので、家族も教師も真紅には強く出れず、彼女は悠々自適な読書ライフを満喫していた。



239:ケットシー
06/04/05 20:11:00 Xz9OOSZ4
 今日も真紅は相も変わらず読書に勤しんでいた。窓辺で椅子に座り、紅茶の入ったポットとカップを手の届くテーブルに用意するのが、彼女の決まった読書スタイルだ。
 今、彼女が読んでいるのは、ドイツ語で書かれた古い本。タイトルは「RozenMaiden」とある。
 何ページ目かをめくった時、本に挟まっていた何かが彼女の膝の上に落ちた。
「しおりかしら……」
 真紅は手に取ってそれを確かめる。それは薔薇の刻印で封をされた手紙だった。
 封筒は表も裏も真っ白で、宛名も何も書かれていない。
 未開封で宛先不明の手紙があったら確かめてみたくなるのが人の性。真紅は盗み見は悪いと思いながらも、ペーパーナイフを取りに行こうと腰を上げた。

 真紅は若干わくわくしながら、封筒の端にナイフを入れる。何が出てくるか分からないので、ちょっとした冒険気分だ。
 手紙を取り出して広げた真紅は、一目で興醒めした。
 手紙の出だしはこうだ。

 おめでとうございます。真紅様!!

 これは詐欺行為の常套文句だ。腹が立った真紅は、衝動的に手紙を破り捨てる所だった。
 しかし、彼女は思いとどまった。おかしな点に気が付いたのだ。
 そう、封筒は真っ白だったのだ。この郵便物は、どうやって真紅の所まで郵送されたのか。何故、古い本の間から見つかったのか。不審な点は尽きない。

「きっと、誰かのいたずらね」

 身内の者の悪戯と結論付けた彼女は、手紙に一通り目を通すことにした。どこかに犯人の手掛かりがあるかもしれない。

「まきますか、まきませんか……人工精霊ホーリエが異次元より回収に参ります」

 読み終えた真紅はペンを取り、手紙の「まきますか」という文字を丸で囲む。そして、手紙を本に挟み、元あった本棚に戻した。彼女は「人工精霊ホーリエ」と名乗る犯人を捕まえる気なのだ。
 これが、これから起こる騒動の始まりになるとは、彼女は思いもしなかった。



240:ケットシー
06/04/05 20:12:18 Xz9OOSZ4
 真紅は窓辺で読書をしながら、テーブルのティーカップに手を伸ばす。
 その時、彼女の視界の隅に見慣れない物が入った。

「何かしら……。あんな物を置いた覚えはないし、誰もこの部屋には来てないと思うし……」

 いつの間に置かれたのか、床の上には見慣れない鞄があった。
 不審な手紙の事もあり、真紅は人の出入りに気を回していたつもりだった。
 それでも、そこに覚えのない鞄が置いてあるのだから、誰かが部屋に来たのだろう。
 二度目の悪戯にやや気分を害した真紅は、パタンと音を立てて本を閉じた。

 鞄を開けた真紅は、中に入っていた物を見て驚いた。

「人形? それにしても大きいわね……」

 それは、まるで眠っているようだった。
 黒髪に黒縁メガネに黒い学生服を来た男の子が、鞄の中で丸くなっていた。身長は五十センチはある。
 その人形は細部まで異常なほど作り込まれ、今にも目を覚ましそうだ。
 真紅は恐々と人形へと手を伸ばす。本当に動き出したら堪らない。真紅の指が人形の頬に触れた。
「柔らかい……」
 人の肌と変わらない感触が指先に伝わる。その感触が気持ちよくて、何度も指先で突付く。
 段々、怖くなくなってきた真紅は、人形を鞄から出して抱き上げた。
「本当によくできてるわね」
 真紅はまじまじと人形を観察しながら、その作りの良さに唸る。見れば見るほど、人間と区別がつかない。
 空っぽになった鞄を見た真紅は、ネジ巻きを見つけた。
「これがあるということは、ネジを巻く穴があるはずだわ」
 彼女はそう言って、ネジ穴を探す。
 しかし、なかなか見つからない。仕舞いには、両足を持って逆さまにしたが、やっぱり見つからない。
 こうなったら、最後の手段をとるしかない。

241:ケットシー
06/04/05 20:13:30 Xz9OOSZ4

「人形だし、いいわよね」

 真紅は誰にでもなく言い訳をしてから、学生服のボタンを摘む。その顔は、少し赤くなっていた。
 学生服の下にはシャツまで着させられていた。本当にいい仕事をされた人形だ。
 真紅は荒くなりそうな息を抑えながら、シャツの小さなボタンを外す。
 上半身を裸にして、ようやくネジ穴の場所が判明した。ネジ穴は背中の腰に近い所にあった。
 早速、真紅はネジ巻きを穴に挿し込み、巻き上げる。
 すると、人形の全身が震えるように動き出した。

「な、何っ……!?」

 気味の悪い動きに、真紅は思わず人形を手放した。
 床に崩れ落ちた人形は、重力を無視した動きで浮き上がるように自立する。
 そして、人形が目を開いた。

「お前がネジを巻いたのか―って、裸ッ?!」

 しゃべり始めた奇妙な人形は、服が脱がされていることに気付いて青ざめた。そして、体を隠すように自分を抱き締めて真紅を睨み付ける。

「寝ている僕を襲ったな! この変質者! ケダモノ! アバズレ! 男の敵!」

 思いつく限りの罵声を浴びせる人形の男の子。
 動いたばかりでなく会話までこなす人形に驚いていた真紅だが、延々と止まない罵声だけはしっかりと聞こえていた。彼女の額に血管が浮かぶ。

「―レイプ魔! 人形フェチ! バカ! アホ! えーと……おたんこなす!」
「黙りなさい!!」
「へぶしっ!!」

 真紅の鉄拳が顔面に炸裂し、吹っ飛んだ男の子は本棚に激突して沈黙した。その上から大量の本が衝撃で崩れ落ち、男の子は見事に埋まってしまった。

242:ケットシー
06/04/05 20:14:35 Xz9OOSZ4

「まったく、こんなに酷く言われたのは生まれて初めてだわ」

 真紅は助けようともしないで本の山を一瞥する。彼女の中では、失礼な人形よりも本が傷まなかったのかが心配だった。
 誰も助けてくれないので、男の子は自力で本の山から這い出る。頑丈な人形である。

「暴力まで振るうなんて……。こんな酷い人間は初めてだ」

 真紅はまだ減らず口を叩く人形の前にズンと立ち、迫力のある目で見下ろす。

「貴方が悪いのよ。人を一方的に悪者にして。私はネジ穴を探しただけよ。勘違いもいい加減にしてほしいわ」

 真紅の言い訳を聞いた男の子は、黙り込んでしまった。冷静になって考えれば、勝手に決め付けてしまった自分が悪いと思ったからだ。
 真紅は脱がした服を拾い、男の子の前に放った。
「服を着なさい」
 男の子は黙ったまま学生服の袖に腕を通す。

「手を上げたのは謝るわ。ごめんなさい」

 真紅がぶっきらぼうに殴った事を詫びた。人形相手に謝るなんて馬鹿みたいだが、彼女はこの男の子が可哀想に思えたのだ。

「僕の方こそ、ごめん」

 服を着終えた男の子も、顔を上げないでぶっきらぼうに謝る。
 二人の心が初めて繋がった瞬間だった。



つづくと思う

243:ケットシー
06/04/05 20:15:52 Xz9OOSZ4
あはは、かなり無茶苦茶やってますな。
思いつきだけで書いちゃったので、当然終わりは見えてません。
適当に流し読みでもしちゃってくださいw

244:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/05 20:17:05 TXO0DlaQ
素直に面白い。是非続けて頂きたく思います。

245:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/05 21:15:48 ZfnyAQWp
>>243
面白かった・・・ってこのネタが今までなかったのが不思議だ

246:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/05 22:11:40 dtEEe2QN
なんかワロタよ

247:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 00:49:27 uPvk1wrN
GJ
でもこのまま行くと蒼星石(人間)のドールはじじぃか…




うわぁ。。。

248:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 00:57:38 7o8YUrkP
引きこもりドールに痴呆ドール、コスプレドールに自壊ドールが揃うんですね?
…単純に剣道ドールが最強ダガナ(´・ω・`)

249:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 01:29:56 fSxFH4qW
ケンドール(剣ドール)か

250:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 03:44:06 JakRcthF
>>243
>>245のいうとうり、なんで今までこのネタが無かったのかが不思議だ。

今まで色々なローゼンの小説を読んできたが、性転換、逆行、クロス、立場の入れ替えなんかはほぼなかった。
上に挙げたネタでなんか書けないかな。
まあ、逆行は原作がまだ完結してないから無理っぽいんだろうけど・・・


251:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 11:15:57 FTukinwK
>>243
乙です。
いつかやろうと思っていたネタでしたが、俺が書くよりケットシー氏が書かれた方が良いので単純に嬉しいですw

>>250
上で挙げられた全てのジャンルは長編でこそ面白味を増す設定であるから、
このスレに投稿されるほぼ全てのssがショートショート以下の長さであることを考えれば
今までそれらのジャンルが出なかったのはある意味必然かもしれんね。

252:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 11:38:53 1Froh9Zw
>>243
これは女性受けしそうな作品ですねw
乙ですー


253:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 11:44:09 fSxFH4qW
こういうSS書いてる人って文系大学で国語でも専攻してんのか?

254:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 22:49:17 FTukinwK
>>253
それはいくらなんでも現代文学を専攻している世の大学生に失礼だと思うが。

255:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 23:07:47 3q5N/Nt5
それが何か?

256:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/06 23:52:53 ZUTyL1Q0
>>253は褒め言葉、
>>254は誰でも慣れれば書けるはずだガンバレ


で脳内変換した

257:以前SS書きました
06/04/07 17:02:12 11PC7pk+
>>253
気持ちさえあれば意外と書けますよ。
表現は文庫から学べますしw


258:ケットシー
06/04/07 20:14:56 gIQASey8
私も見よう見まねで書いてます。
だから、それなりの文しか書けないんですがw
国語の勉強はあまり真剣にやってなかったです。
SS書いてる今では、真面目にやっておくべきだったと反省してたり。
なので、根気さえあれば誰でもそれなりのSSは書けますよ。
文章を書くには慣れも重要かなと思う、勉強嫌いな私です。

>>251
ネタは早い者勝ちということで、恨みっこなしでw

では、投下いきます

259:ケットシー
06/04/07 20:16:16 gIQASey8
>>242

「僕はローゼンメイデン第五ドール桜田ジュン」
「私は真紅。それ以上は何も聞かないで」

 騒々しい出会いが一段落した所で自己紹介を始める二人。
 人形の自己紹介を聞いても、真紅はそれほど混乱しなかった。彼女はローゼンメイデンに関する書籍を読んでいてジュンと出会ったのだ。わずかでも予備知識があった分、冷静に対応できた。
 真紅の自己紹介については、深く考えないでおいてほしい。真紅は真紅。それでいいではありませんか。

 自己紹介が終わった所で、ジュンは大切な交渉を持ち掛ける。これを成すために真紅が選ばれたのだ。

「ローゼンメイデンはアリスゲームで争っているんだけど、それにはミーディアムの協力が必要なんだ」
「アリスゲーム? ミーディアム?」
「そう、アリスゲーム。アリスを生み出すための戦い。僕にとっては非情に迷惑な戦いなんだけど、狙われているから戦うしかないんだ」
「それで、ミーディアムは?」
「ミーディアムは、僕達ローゼンメイデンに力を送ってくれる人間を指す言葉。今から真紅がそれになるんだ」
「は? どうして?」

 ミーディアムになれと言われ、真紅が見るからに嫌そうな顔をする。戦いに巻き込まれるのだから、それが常識的な反応だろう。
 こうまで露骨に嫌な顔をされるとは思っていなかったジュンは、一瞬怯みながらも説得する。

「ホーリエがお前を選んだからだよ。人工精霊は、ドールに見合うミーディアムを選ぶ事ができる」
「それはいいけど、私に見返りはあるのかしら」
「見返り?」
「当然でしょ。得る物も無いのに戦うなんてごめんなのだわ」

 交渉はここでストップしてしまう。歳に似合わず、やけに現実主義な真紅の主張に、ジュンは何も言い返せなかった。アリスゲームに報酬など期待できない。

260:ケットシー
06/04/07 20:17:10 gIQASey8
 ジュンがこの場は諦めようとした時、二人の頭上から黒い羽が数本落ちてきた。ここは屋内。野鳥の可能性は無い。

「もう来たのか!」

 ジュンが張り詰めた表情で周囲を見回して警戒する。
「来たって、何が?」
「敵だよ、敵。他のローゼンメイデンが来たんだよ!」
 敵襲と聞いて真紅も表情を硬くする。すでに彼女も逃げられない所まで来ていたのだ。
 二人が背中合わせに警戒する中、敵は静かに現れた。

「ジュン、やっと会えた……」

 外から入ってきたのか、黒い翼を持った人形が窓ガラスを通り抜けてきた。
 その人形は長い黒髪に真っ白な肌で、まるで幽霊のようだった。何故か、その服装はパジャマにカーディガンの姿だった。

「第一ドール柿崎めぐ……!!」

 ジュンが黒い翼のドールの名を呼ぶ。彼女は第一ドールの柿崎めぐだった。
 ジュンはめぐを見て恐れおののいた。その様子は、蛇に睨まれた蛙さながらだ。
 だが、めぐの様子は正反対だった。儚げに微笑むと、両頬に涙の筋を作らせる。

「何十年もあなたを探したわ。今度こそ、あなたを逃がさない……」

 めぐは両腕を広げ、浮遊したまま無音でジュンに近寄っていく。
 ジュンは逃げたかったのだが、金縛りにあったように体が動かない。
 とうとう、めぐはジュンの身体を捕まえ、両腕でひしと抱き締めた。

「ジュン、大好きよ。だから、おとなしくしててね」

 そう言った後、めぐはジュンを強引に押し倒した。ジュンは必死にもがいて助けを呼ぶ。

「真紅っ、助け……」


261:ケットシー
06/04/07 20:18:23 gIQASey8
 真紅は助けを求められても、何もする気が起きなかった。どこから見ても、ただの惚気だ。
 だが、傍観していられるのも最初だけだった。
 なんと、めぐがジュンに跨ったままパジャマを脱ぎ始めたのだ。上着を脱ぎ、ズボンに指を差し込んだ時、さすがに真紅も黙っていられなくなった。

「ちょ、ちょっと貴女、何をしてるの!?」
「見て判らないの? 服を脱いでいるの」
「そんなの判ってるわっ。だから、どうして脱ぐ必要があるのかと聞いているのだわ」
「だって、服を着てたらできないでしょ」
「できないって、何が」
「子作り」

 真紅の時間がたっぷり十秒は止まった。
 人形が子作り? 子作りって、やっぱりアレのこと? ちょっと待って。そもそも人形にできるの?
 真紅の思考が同じ疑問で何周もループする。
 その間にめぐはズボンを脱ぎ、下着も脱ごうとしていた。
 固まっている真紅をどうにか呼び戻そうとジュンが声を掛ける。

「真紅、これがアリスゲームなんだ! だから、早くミーディアムの契約を……!!」

 この呼び掛けで真紅は溺れかけていた思考の海から生還した。この部屋で男女の情事をおっぱじめられては堪ったものではない。

「契約はどうすればいいの?」
「この指輪に誓いの口付けを……」


262:ケットシー
06/04/07 20:19:13 gIQASey8
 伸ばしたジュンの左手薬指に薔薇の指輪が具現化する。
 めぐはジュンのズボンを脱がすことに夢中で、そのやりとりには気付いていない。
 真紅の唇が指輪に触れた瞬間、ジュンの身体は自由になった。
「きゃっ」
 めぐが突き飛ばされて床に仰向けになる。
 真紅の左手にも指輪が具現化し、赤く光って熱を持つ。彼女を通して力が送られている証だ。

「指輪が熱い……」
「ミーディアムの力を使ったからだ。おかげで助かったよ」

 ジュンがズボンのベルトを締めながら説明する。そんな姿で感謝されても誠意は半分も伝わらないが……。
 あられもない姿で倒れていためぐが、むっくりと上半身を起こす。

「ジュン、どうして拒むの……?」
「こんなの間違ってるよ。だから……」
「私のこと、嫌い?」
「そんなんじゃない。でも、ごめん」

 正面から拒絶されためぐは居たたまれなくなって、脱ぎ散らかしたパジャマや下着を急いで掻き集める。
 そして、今度は窓ガラスを破って外へと出て行った。その目尻には、光るものが見えた。





263:ケットシー
06/04/07 20:20:37 gIQASey8
「ねえ、アリスゲームって何なの?」

 めぐが去った後、真紅がアリスゲームの詳細をジュンに尋ねた。ミーディアムになった以上、知らなかったでは済まされない事が起こるかもしれないし、知る権利もあるはずだ。

「その話は少し長くなるから、紅茶でも飲みながらにしよう。窓ガラスも元に戻さなきゃいけないし」
「当然、ジュンが淹れてくれるわよね? 私は協力してあげる立場なのだから」
「かしこまりました」

 ティータイムを提案したジュンに、すかさず真紅が注文を入れる。彼女の露骨だが正しい意見に、ジュンは必要以上に改まってささやかな反撃をした。
 早くも真紅に使われるジュンだった。

 お茶にする前に、ジュンは風通りがよすぎる窓を直すことにした。
「ホーリエ、頼む」
 赤い光の精霊が現れ、窓の前で踊る。
 すると、ばらばらになったガラスの破片が、どこからともなく集まってきた。
 窓ガラスが時間が巻き戻るように元通りになるのを、真紅は呆然と眺めていた。魔法としか言いようのない奇跡に、驚嘆の声も出なかった。
 次は崩れた本棚をてきぱきと整理し、ジュンは電気ポットのお湯で紅茶を淹れにかかった。



264:ケットシー
06/04/07 20:21:52 gIQASey8
「なかなかの腕前ね。もう少し熱い方が好みなのだけど」
「覚えておきます、お姫様」
 ジュンが淹れた紅茶を彼女なりに褒め、ジュンは思いっきり皮肉混じりに受け答える。
 それでも、真紅はお姫様と呼ばれて悪い気はしなかったようだ。彼女は涼しい顔で紅茶を啜る。
 ジュンも紅茶で喉を潤しながら、アリスゲームの話を始めた。

「ローゼンメイデンは全部で七体。その中で男として作られたのは僕だけなんだ」
「どうして貴方だけ男なの?」
「それはアリスゲームのためさ。僕を巡って残りのドールズがしのぎを削る。何のためかは、めぐに聞いただろ?」
「まさか、本当に子作りのために?」
「その「まさか」だよ。僕との間の子が、アリスとして誕生するらしい。お父様も信じられない事をしてくれるよ……」

 人形の子供がアリスとして生まれる。そんな馬鹿げた話に真紅は眩暈を起こしそうになった。それにはジュンも同感で、彼も頭を抱えて塞ぎ込んでいた。
 話は解っても、当然湧いてくる疑問がある。好奇心に負けた真紅は、恥ずかしげもなくそれを尋ねる。

「貴方、子供が作れるの?」
「僕はローゼンメイデンだぞ。不可能は無い!」
「そうね……」

 ジュンの自信たっぷりな返答に、真紅は疲れを感じずにはいられなかった。



つづく

265:ケットシー
06/04/07 20:25:01 gIQASey8
暴走しまくりのケットシーです。
ついでなのでアリスゲームも改変しちゃいました。
血生臭くないローゼンメイデンがあってもいいですよね?
別の方向で生臭いですがw

266:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 20:33:25 8cfWYspL
子作りてwwwwwwなんかほのぼのしてていいですね。



267:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 20:47:19 MPpCAmhk
>>265
ちょwww
いろいろツッコミたいが黙って続きをwktk

268:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 20:50:49 W8kH6UeS
ちょwwwめぐがズボンかwww

269:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 21:00:58 HoFp2zxO
人形とセックスかいな

270:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/07 22:08:35 PG6IrWHv
他のドールが誰なのか気になりますwww

271:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 00:17:04 l7tc2cCg
ジュンは薔薇男児だったんだなw

272:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 01:24:41 jCgJDA/c
トゥモエとみっちゃんと韓国海苔は確実に出てくるだろうなw
後は大穴で由奈か。

273:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 01:29:54 +ak0TTE1
マツ・・・

274:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 01:34:01 i7FXG8OO
>>273
……ジュンに子作りを強要する姿を想像してしまった。
鬱だSNOW

275:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 03:48:06 aOJ62lvA
>>273
・・・え?7人?ふむ
けど主要人物の人間の女って5人しかいないよね?
だから数合わせに翠星石が起用されるのだとしたら・・・
JUMに△×を強要する翠・・・JUMに○□を強要する翠・・・
うわぁぁ、俺の思考がぁぁーードカーンッ

276:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 03:52:27 Yjz7QKSq
巴の母いるでしょ

277:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 04:30:08 J+sfz08S
そこで最凶メンヘラーオディールさんですよ

278:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 04:52:22 GBuukZBu
コリンヌもな

279:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/08 08:25:00 7bbP47bi
里芋ドール、加藤さんを忘れてないか?

280:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 01:17:57 XSYVmWPZ
アナゴは?

281:吝嗇 ◆NbRB5BoUN6
06/04/09 16:31:05 F9Ea18CB
では、一本投下します
渋いお茶など煎れてご笑読下さい
歯にしみるような甘口のお話なので


282:魔法の言葉 (1)
06/04/09 16:32:16 F9Ea18CB

大学病院の一室、心地よい5月の風が病院の薬臭い瘴気まで流し去ってくれるような、そんな穏やかな時間

病室には一人の少女と、一体のドールが居た

不治の病の少女の病室だった、他の姉妹をすべてブッ壊す使命を負った、命宿る人形がそこに居た
その少女の生命を食い物にするために媒介の契約をしたドールは、最近は戦う以外の時間を
少女の病室で過ごす事が多かった、喋るでもなく触れ合うでもない時間、ただ、少女の歌が好きだった

「水銀燈・・・いいこと考えたの♪」
「めぐ・・・アンタのその顔、怖いわよぉ」

窓枠に腰掛けていた水銀燈は体をひねってめぐの顔を見た、めぐの笑顔を見て自分の顔をひん曲げた
めぐの瞳がクリクリと動き、イタズラっぽく光る、めぐは水銀燈と出会うまではこんな顔をしなかった
水銀燈はめぐのその目がキライだった、こういう目をする時、めぐは突拍子も無い事を言い出す
この間こんな目をした時、めぐは真顔で「水銀燈、キスをしましょう」と言い出した
水銀燈はメグのその目が嫌いだった、嫌いすぎて胸の鼓動が不安定になる、キライすぎて目が離せない
キライで・・・キライで・・・目が離せなくて・・・胸がドキドキして・・・動けなかった・・・そして受け入れた

「わたしの・・・お嫁さんになりなさい!」

水銀燈は腰掛けていた窓枠から落っこちそうになった、普段は蒼白な顔を真っ赤にして、めぐに毒づく
「バ・・・バ・・・バカじゃないの?あんたイカレてるわぁ!この私に白いウエディングドレスを
着ろですって?イヤよ!バカじゃないの?何で二人してバカ面並べて、あんたらがありがたがる
『キョーカイ』とか『シンプ』の前で、『生涯愛する事を誓いますか』なんて・・・イヤよ!絶対イヤ!」

水銀燈は絶対イヤだった、めぐはひどいと思った、とても意地悪でイヤな奴だと思った、絶対に無理
ドールの自分に、罪を重ねた自分に、そんなママゴト遊びのような真似なんて、そんな、幸せなんて・・・

「・・・・めぐ・・・・・イヤだからね・・・バカよ・・・めぐはバカよ・・・こんなジャンクのわたしを・・・貰ってくれるなんて
誓うから・・・何でも誓うから・・・幸せにしてくんなきゃ・・・・・イヤだからね・・・・・わたし・・・・う・・・う・・・」

水銀燈の震える背中を見つめるめぐは、もういちど目をクリクリとさせて笑った

その笑顔は・・・水銀燈の心を奪った笑顔



283:魔法の言葉 (2)
06/04/09 16:33:14 F9Ea18CB

「めぐのプロポーズ作戦、大成功♪」
「・・・・・・・・バカぁ・・・・・ドールとじゃ、女のコ同士じゃ、結婚できないじゃない・・・」
「いいこと考えたの♪」
「めぐゥ・・・アンタのその顔、怖いわよぉ」

めぐはベッドの上で身軽に転がった、1年の保証すらないメグの病は、精神的な変化でほんの少し好転した
それが「容態の急変」で瞬の間に消えてしまう命だとしても、めぐは今を楽しんでいた
ベッドの手すりに引っ掛けていたコード、その端のボタン、あまり使わなかったナースコールを押した

ポーン

スピーカーから声が流れる、水銀燈は嫌いだった、距離を隔てて声が届く現象、摂理に反してると思う
めぐの部屋にそんなものがあると、自分の声とめぐの囁きに割り込む物があると、その・・・ジャマになる

「ハーイ、柿崎さん、どうかしましたか?」
「あ、婦長さん?ちょうどよかった、わたしロンドンに転院しま~す♪、今すぐ!」
「え?ロンドンって?ちょっと柿崎さ(ブツッ)」

めぐは二人の邪魔をする無粋なコードを引き千切った、水銀燈の不満を一瞬で解決、そしてまた笑った
水銀燈は不安だった、何だかワケのわからない展開、ひどい目に遭う予感じゃない、逆の不安

「ろんどんって、どんなオトギの国よぉ?わたしたちが結婚できるの?」
「ねぇ水銀燈・・・エルトン・ジョンって知ってる?ジョージ・マイケルは?」
「?」 

英国が採択した新法案で、同性のパートナーとの事実上の結婚を果たしたアーティストの名を、
水銀燈は知らなかった、めぐは知っていた、病室の青春、ラジオが友達だった時期がとても長かった

水銀燈は再び俯く、やっぱりこのミーディアムはダメだ、わたしの黒い体まで何だか赤っぽくなるようだ
それが「幸せの前の不安」だなんて信じられなかった、まさかあの「何とかブルー」とかいう物だなんて

「ダメよ・・・やっぱりダメ・・・だってあんたら人間が遠くに行く時は
『ヒコウキ』に乗らなきゃいけないんでしょ?めぐ、そんな体で長旅なんて無理よぉ、死んじゃうわよぉ」
「いいの」
「よくないわぁ!だ、だって、アンタが死ぬと困るのよ!バカでもアンタ、ミーディアムだからね!」
「だって・・・『愛は命がけ』って言うじゃない」

水銀燈は・・・・・何も言えず・・・・ただ・・・・・・・・・・・・・・黒い体を真っ赤の染めて・・・

「あらあら、わたしの天使さんは泣き虫さんね、これじゃ『本番』が思いやられるわ」
「バカぁ!・・・バカぁ!・・・・めぐのバカぁ・・・・びぇえぇぇん!・・・・」


284:魔法の言葉 (3)
06/04/09 16:34:36 F9Ea18CB
MEGU YOU HAVE TAKEN SUIGINTOU TO BE YOUR WIFE. WILL YOU LOVE HER, COMFORT HER,
HONOR AND KEEP HER, IN SICKNESS AND IN HEALTH, IN GOOD TIMES AND IN BAD, AND BE FAITHFUL TO HER
AS LONG AS YOU BOTH SHALL LIVE?”」


「I WILL!」


「SUIGINTOU YOU HAVE TAKEN MEGU TO BE YOUR WIFE. WILL YOU LOVE HER, COMFORT HER,
HONOR AND KEEP HER, IN SICKNESS AND IN HEALTH, IN GOOD TIMES AND IN BAD, AND BE FAITHFUL TO HER
AS LONG AS YOU BOTH SHALL LIVE?”」


「・・・・・・I WILL」



「 MEGU AND SUIGINTOU HAVE DECLARED BEFORE ALL OF US
THAT THEY WILL CONTINUE TO LIVE TOGETHER IN MARRIAGE. THEY HAVE MADE SPECIAL PROMISES
TO EACH OTHER. THEY HAVE SYMBOLIZED IT, BY THE JOINING OF HANDS, THE TAKING OF VOWS
AND EXCHANGING OF RINGS.”
“SO THEREFORE IT GIVES ME GREAT PLEASURE TO REAFFIRM YOU AS WIFE AND WIFE.” 」


「“YOU MAY KISS THE BRIDE.”」



285:魔法の言葉 (3) 邦訳
06/04/09 16:35:36 F9Ea18CB

「めぐ、汝は 水銀燈を妻とし、水銀燈を愛し、敬い、慰め、助け、
病める時も健やかなる時も、良き時も悪しき時も、
どんな時でも命ある限り誠実に尽くすことを誓いますか? 」

「誓います!」

「水銀燈、汝は めぐを妻とし、めぐを愛し、敬い、慰め、助け、
病める時も健やかなる時も、良き時も悪しき時も、
どんな時でも命ある限り誠実に尽くすことを誓いますか? 」

「・・・・・・誓います」

「本日、めぐと水銀燈は結婚し生涯を共にするという誓約を明らかにされました。
それは、両手を取り合い、愛を誓い、指輪を交換したことにより象徴されています。
それ故に、お二人を正式に妻と妻として宣言いたします。 」

「それでは、誓いの口づけをどうぞ! 」



286:魔法の言葉 (4) 邦訳
06/04/09 16:37:06 F9Ea18CB

大学病院の一室、湿っぽい6月の風を乾かすような、暖かく甘い雰囲気の病室、そんな幸せな時間

病室には、一組の・・・・・



コリント人への手紙-第13章

愛は寛容であり、親切です。
また愛は人を妬みません。
愛は自慢せず、高慢になりません。
愛は礼儀に反することをせず、
自分の利益を求めず、怒らず、
人を恨まず、不正を喜ばずに真実を喜びます。
全てを耐え、全てを信じ、
全てを望み、全てを忍びます。
どのようなことが起ころうとも、
真実の愛は決して終わることはありません。


魔法の言葉(完)

287:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/04/09 16:46:36 F9Ea18CB
この作品のタイトルは Do As Infinityの名曲
『魔法の言葉~Would you marry me?~」から頂きました

毎回甘々でも飽きるので、次あたりはスパイスの効いた作品など投下したいと思います

では

追伸
(4)のケツについてる「邦訳」は無しって事でお願いします、投下ミスです

288:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 16:49:01 mrB3nWtk
>>287
あま~~~~~~~~い!!!
GJ

289:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 17:10:18 Dw8A197F
金糸雀「イェア!ファッキンエイリアンをぶちのめすぜ!」
翠星石「フゥーハッハ!弾はいくらでもあるぜ!」

290:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 17:12:50 ncLW0sPl
>>287
いいよ。
俺はピアノマン派なんで次回はビリー・ジョエルきぼんぬ。

291:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 18:40:33 K4r9QSjY
甘すぎて糖尿病になった

292:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 18:44:35 KQqs1V/R
>>289
タイミングおせーよ

293:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 19:04:25 Dw8A197F
あー、タイミング見誤っちゃったよ。

294:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 20:05:13 l5cQehsB
>>287
その極まった甘さに乾杯
結婚までしてしまうとは思わなかったw
甘いのもいいですね、GJ

295:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/09 21:52:18 5NzhajOX
後日談があればなお良かったかもしれません。
でもとてもいい感じです。GJ!

296:放蕩作家
06/04/10 03:00:20 HCT/k/Om
初投下。
温かい目で読んでやってください。

297:放蕩作家
06/04/10 03:02:18 HCT/k/Om
>>296
なんか消えた・・・。
すみません。暫く待ってください。

298:放蕩作家
06/04/10 04:10:11 HCT/k/Om
ローゼンメイデンの秘密


 ジュンは復学に向けて図書館で勉強をしていた。
「ふ~・・・。一段落着いたし、ちょっと休むか」
 そう言いながら立ち上がり、体を伸ばす。
「そういえばこの図書館の奥の方って行ったこと無かったな・・・。少し覗いてみるか」
 ジュンは彼のまだ見知らぬ処女地へと足を向けた。


「・・・図書館の奥なんてみんなこんな感じか」
 人気が感じられず、どこか暗い感じがする図書館の奥には、一度も触れられた事が無いような本が、本棚を隙間無く
埋めていた。
 世界には自分しかいないのではないか。そう錯覚しそうなほど辺りは静まり帰っていた。
 そんななかジュンは、本棚と本棚に挟まれてできた通路を、本のタイトルを流し読みしながら歩いていた。
暫く足を進めていると、ふとある本のタイトルに目を留め、次の瞬間、石のように固まった。
 その本のタイトルは・・・

『ローゼンメイデンの秘密』

 ジュンは硬直した。するしかなかった。
 何だこれ?とか、何でこんな所にとか、誰よ書いたのとか、ありとあらゆる思考が彼の脳内を駆け巡り、それが飽和
状態に達した時・・・。
「は、はいーーーーーー!!!!???」
 彼は絶叫した。
 それはもう壁に貼ってある『館内ではお静かに』という壁紙に真正面から喧嘩売るような大声で。
 その後ジュンは、館内の隅々まで響いた大声を聞いた職員が、駆けつけるまでその場で唖然としていた。

 事務室まで連行されたジュンが、職員に大目玉を喰らったのはまた別の話。
 その日以来、ジュンが図書館に入るたびに、ドライアイスよりも冷たい目で見られるようになったのも、やっぱり別
の話。

(たぶん)続きます

299:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 04:48:08 hFYaBhp2
wktk

300:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 05:03:22 u9WiF+Q0
>>297
メモ帳等にこまめに保存しながら書くといい。
期待。

301:ケットシー
06/04/10 20:24:27 GPhT6aES
>>264

 真紅とジュンの奇妙な共同生活が始まった夜。普段はテレビの音もしない静かな部屋が、またまた騒がしい事になっていた。
 今度の騒ぎの元凶は、真紅の姉だった。彼女がこの部屋に乗り込んできた所まで時間は遡る。


「真紅! 今日という今日は許さないわよ」

 ノックもしないで部屋に入ってきたのは、銀髪と赤い瞳が印象的なきれいな女性だった。その肌の白さは異常で、めぐにも勝る。この女性の白さは本当に病気なのかもしれない。
 読書に耽っていた真紅は、別段驚きもせずに本から顔を上げる。

「あら、水銀燈姉さん」

 赤い瞳の女性は、真紅の姉だった。彼女の名は水銀燈といい、ここの長女である。年齢は……高校生とだけ言っておこう。ちなみに、この家は七姉妹という大家族で、真紅は五女だ。

 真紅のすました顔が水銀燈の虫の居所を悪くさせる。彼女は真紅という問題児に昔から手を焼かされているのだ。長女として生まれてしまったからには、妹の面倒を看る責任がある。その妹の中でも、真紅は群を抜いて厄介な存在だった。
 真紅の引き篭もりは今に始まった事ではない。小学校に上がる前から、今と同じような、本に囲まれた生活を送ってきたのだ。小学校へは、一年生の初めに何日か登校しただけだ。どれだけ周りに心配をかけたか、想像に難くない。


302:ケットシー
06/04/10 20:25:23 GPhT6aES
 部屋に入った水銀燈は早速、見慣れない鞄と人形を発見する。ジュンは絨毯に寝そべって何かの本を読んでいた。
 水銀燈はジュンに近付いて、本を読む人形を上からしばらく観察する。そして、いきなり学生服の襟を摘んで、猫を扱うようにひょいと持ち上げた。
「わわっ!」
 急に持ち上げられたジュンは、驚いて手足をじたばたさせる。
 水銀燈はジュンをこっちに向かせ、顔をじっくりと拝見する。

「貴方がジュンね。でも、少しガッカリ。もっといい男かと思ってたのにぃ」

 初対面で名前を当てられ、ジュンと真紅はぎょっとする。そして、この人形慣れしている態度に嫌な予感がしてならなかった。

「水銀燈姉さん、ジュンを知って……?」
「よぉく知ってるわよぉ。この子の事は毎日のように聞かされているからぁ。私のめぐにね」

 それを聞いた真紅は、咄嗟に水銀燈の左手を見た。薬指に薔薇の指輪がはめられている。彼女もミーディアムだったのだ。それも、よりによって第一ドールの……。
 ジュンにとっては最悪の事態だ。あの柿崎めぐが、同じ屋根の下の住人をマスターに選んでいたのだ。めぐもこの家で暮らしていると考えた方が自然だ。ジュンの顔色がみるみる悪くなる。

「めぐの知り合いですか?」
「私はめぐのミーディアムよぉ。今日はあの子を泣かせてくれたそうじゃないの。今も私の部屋で泣いてるんだからぁ」

 水銀燈はめぐから直接、今日の出来事を聞いていた。彼女が立腹してここへ来たのは、そのためだ。彼女はめぐを可愛がっていた。
 めぐは今も傷心中らしい。そのめぐを慰める手っ取り早い方法は一つ。水銀燈は、ジュンを持ったまま部屋を出ようとする。
 それを真紅が見逃すはずも無く、慌てて椅子から腰を上げて引き止める。

「姉さんっ、ジュンをどうするつもり!?」
「めぐにあげるのよ。彼女、この子を欲しがってたから」


303:ケットシー
06/04/10 20:26:22 GPhT6aES
 水銀燈が事も無げにこう答えた。
 それはまずい。まずすぎる。確実にジュンが殺られる。というか、犯られる。 
 人形がどうなろと真紅にとっては関係ない話だったが、このまま見捨てるのも寝覚めが悪くなる。

「ジュンは私の人形よ。勝手に持ち出さないで」
「あらぁ、貴女が本以外に執着するなんて初めてじゃないの?」

 水銀燈が驚いた顔で真紅を見る。その表情から、彼女が言っていることが本当なのだと解る。それだけ、真紅は本の虜になっていたのだ。

「執着なんてしてないわ。ただ、ジュンがかわいそうだと思っただけよ」
「人形相手に?」
 真紅がジュンを人形だと言ったので、意地悪くそこにつけこむ。真紅はむっとなって声を張り上げる。
「気まぐれよっ。気まぐれ!」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるぅ」

 水銀燈は真紅の喜ばしい変化に微笑みながら、ジュンを床に下ろして開放する。
「妹をよろしくおねがいね、ジュン」
 水銀燈はウィンクをしながら小声でそう言うと、部屋を出て行った。その柔らかい表情に素直に引き込まれたジュンは、彼女が出て行った後も、しばらく惚けていた。

 好きなだけ惚けたジュンは、真紅のおかげで危機を脱したことにようやく気が付いた。水銀燈の言葉も思い出し、真紅の足下までトコトコと歩く。

「また助けられたね。ありがとう」

 真紅は黙って椅子に座り、本を開いた。

「気まぐれだと言ったはずよ」

 真紅は意地になって、助けた事を認めようとしない。彼女が素直になれるまで、まだまだ時間が掛かりそうだ。



つづく

304:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 20:45:53 NdjuKwuD
銀様ハァハァハァハァハァハァハァ

305:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 21:06:18 LxCgNI6k
銀様の「柔らかい表情」ってw
是非とも見てみたい!!GJ

306:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 23:06:29 Mq9vj4ku
 復学に向けて勉強をしている最中、真紅が背後から僕を呼んだ。
「ジュン、何か面白い本はないかしら?」
「物置にあるだろ? 探してくればいいじゃないか」
「全部読み終えてしまったのだわ」
「……ほら」
 今の僕にとっての最優先事項は、参考書と柏葉から借りたノートとのにらめっこだ。煩
わしさも手伝って、僕は机の上にあった広辞苑を、無造作に後ろに放った。背後でバサッ
と大きな音がしたのと同時に、真紅の怒鳴り声が聞こえた。
「危ないじゃないの! 私が潰れたり壊れたりしたらどうするの!」
「せいせいする」
 もちろん冗談だったが、真紅を怒らせるには十分過ぎる一言だった。

 ヒュッ……ガスッ!

 延髄に激痛が走った。「いってえぇぇぇっ!」と喚く事が出来れば、どんなに良かった
だろう。一言も発する事が出来ず、僕は床に倒れた。僕の目の前に、さっき投げた広辞苑
が転がっていた。広辞苑の更にその先、ベッドの上で、真紅が顔を真っ赤にして仁王立ち
していた。
「……ど、どうやって投げたんだ、そんな重い本を……?」
「火事場のクソ……じゃなくて、馬鹿力なのだわっ!」
 真紅の赤い顔が更に赤くなったようだ。それはそうと、僕の目が霞む。意識が朦朧とし
てきた。真紅を睨みつけたいところだが、もはやそれさえも叶わない。真紅がベッドから
飛び降り、床の広辞苑をいかにも大儀そうに両手で抱え上げた。
「随分と分厚くて重い本ね……まぁ、せっかくだから読ませてもらうわ」
「ど、どういうつもり、だよ……真紅……?」
 僕の力ない抗議を無視して、真紅はよたよたと部屋のドアに向かう。僕は重ねて尋ねた。
「こ……答えろよ、真紅……僕が……こ、このまま……起き上がらなくなったら……」
 僕の問い掛けに、真紅は澄ました顔をしながら言った。
「せいせいするわね」
「――!」
「大丈夫よ。力は加減しているから、死ぬような事はないわ。もっとも、半日ばかり悪夢
にうなされる事になるだろうけど」
 動けない僕を冷たく一瞥すると、真紅は一旦広辞苑を床に置き、ステッキでドアを開け
た。僕の横をすれ違いながら、真紅は止めの一言を口にした。
「ジュン。私は、あなたが私に言ったのと同じ事を言っただけよ?」

 キィ……パタン

 閉まったドアの向こうから、段々と遠ざかっていく真紅の足音が聞こえる。
 消えかける意識の中、僕はただ一言『ごめん、真紅』と言ったような気がした。




 なんか、初めて短い話を書いた気がする。

307:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 23:44:09 6w70HHHN
結構ピュアな真紅だね

308:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/10 23:56:20 9BdMt8FQ
短編SF

水銀燈「諸君、今回が我々ライノスクワッドの最初の任務だ。心してかかるように」
金糸雀「ハッハ!乗ってきたぜ!」
翠星石「ド派手にファッキンエイリアンをぶち殺そうぜ!」
~地上到着
水銀燈「ゴー!ゴー!カムン!」
金糸雀「イェア!ぶちかましてこようぜ!」
水銀燈「待て金糸雀!突っ込みすぎると死ぬぞ!」
金糸雀「もう待ちきれねえ!ヒャッフォー!」
翠星石「さすが切り込み隊長!俺も続くぜ!」
水銀燈「おい!無茶しすぎだ!そんなに突っ込むと俺も我慢できなくなってくるぜ!行け!突っ込め!ファッキンエイリアンをキルしろ!」
真紅「俺たち衛生兵がいつでもバックについてるぜ!さあ行ってきな!」
そして突っ込みすぎて囲まれた金糸雀、翠星石
敵は大量、弾は少量
金糸雀「アスホール!ファッキンビッチ!」
翠星石「隊長おせえぜ!俺たちだけで全員殺せそうだぜ!」
わらわらと沸いてくるエイリアン
金糸雀「イェア!ファッキンエイリアンをぶちのめすぜ!」
翠星石「フゥーハッハ!弾はいくらでもあるぜ!」

309:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:17:29 6x5XO0J4
向こうでウケたからって・・・

310:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:25:28 TbLloiqA
309が非常にいいこと言った

311:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:31:20 odL3bKVL
批判禁止だから何もいえない

312:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 00:40:52 TbLloiqA
向こうは批判禁止でないが無関心というもっと酷い状態だな。
批判でも、反応あれば書き手は喜ぶだろうに・・・

313:熊のブーさん
06/04/11 00:58:13 lQ9QqjB/
なんか流れ悪いから投下。パクリだけど・・・

《ターミネーター翠~プロローグ~》

「……なぁ」
「何ですか?ジュン」
「嘘だろう……」
「何度も言わせるんじゃねえですぅ。嘘なら翠星石はこんなところになんか来てないですぅ」

「ありえねぇぇぇーーー!!」
桜田家に絶叫が響き渡った。

事の始まりは今朝のことだった。
桜田家ドールズとのりは一昨日から二泊三日の温泉旅行だ。商店街の福引で当たったのである。
しかし我らがジュンは風邪を引いており留守番。泣く泣く旅行を諦めたジュンだったが不幸にも翌日にはすっかり完治していた。余談だがジュンの枠には巴が入ったとのこと。
家でおとなしくDVDを見ていたジュンはだらけていた。そこに響き渡るチャイム音。
ピンポーンピンポーン。
不機嫌なジュンはもちろん無視した。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン。
高橋名人もびっくりな見事な連打だった。ジュンも流石に腰を上げる。
「はいはいどなた?」
扉をけだるそうに開け……凍りついた。
そこにはダンボールを体に巻いた女性が立っていた。
「ど、どちらさまで!?」
「ふ、服を貸してくれですぅ!!」
悲壮な叫びだった。しかもその顔はジュンの良く知る顔だった。
「翠星石?」
「どうでもいいから早く中に入れやがれですぅ!!」
温泉に行ったはずの翠星石がそこに立っていた。


314:熊のブーさん
06/04/11 00:59:30 lQ9QqjB/
「助かったのですぅ……」
のりの服を勝手に使うわけにもいかないのでジュンは自分の服を着せていた。ジーンズにワイシャツというなんともラフな服装だが致し方ない。
ジュンはじろじろと翠星石を眺めた。なんか怪しい。髪の色、顔つき、左右の瞳の色、口癖、ぱっと見は翠星石だがドールの特徴とも言える球体関節が無かったような気がする。しかも目の前の翠星石は身長がどう見積もっても一八〇近くある。本物はこんなに大きいはずが無い。
「お前は何者だ?」
「翠星石ですぅ」
(いや、そうなんだろうけどさ。こんな翠星石は存在しないって言うかなんと言うか)
「えーと、正確には〔量産型翠星石試作機0001〕ですぅ」
ジュンはなんかすごいことを聞いたような気がした。
「手短に話すですぅ」

「桜田ジュン。貴方は命を狙われているのですぅ。そして私は貴方を守るために未来からやってきた人造人間ですぅ」


315:熊のブーさん
06/04/11 01:04:04 lQ9QqjB/
ジュンは開いた口が塞がらなかった。おもむろに電話帳を引っ張り出す。
「えーと、この街の精神病院っと」
「信じてないですね。チビ人間」
「当たり前じゃ! なんだ人造人間って。お前は…本物の翠星石は人形だろ!」
「人の話を聞かないチビ人間には論より証拠ですぅ。スィドリーム!」
どこからか人工精霊がやってきて、四角い機械のようなものを出した。翠星石はおもむろにスイッチらしきものを入れる。半透明の映像が浮かび上がった。
「ホログラムか?これ……」

しばらくジュンは翠星石のナレーションを交えながら映し出される映像を見た。
映し出されるのはどうやら未来の世界。だが廃墟と骨、使い捨てられた兵器ばかりだった。
翠星石が言うには近い将来世界規模の戦争が起こるらしい。ロボット工学の進化と人工知能の開発、発達により体が機械ということ以外はほとんど人間と言えるロボット達が反乱を起こしたためだ。人間VS機械である。

初めは人間側が優勢だったが次第に苦しくなってきた。そこで持ち上がった計画が人間側も人造人間を作って数で一気に押し返す計画である。
その計画の中心にいたのがジュンの子孫だった。先祖が研究したという人形の資料をベースにしてついにローザミスティカの劣化版が完成した。
劣化版といっても機能的にはほとんど同じである。ただし、半永久的には使ずnのフィールドにも入れないことが難点だが兵力としてはそれで十分な出来だった。特殊能力ドールズの活躍によって戦況は人間側に大きく傾いた。
「ここからが問題なのですぅ」

機械側も黙ってはいない。打開策としてドールズの発明を無かったことにしようとした。
そう、時間軸への干渉である。すでに理論上完成はしているが何が起こるか分からないとして禁忌とされてきたがついに決行された。
一方で人間側もスパイによってその情報を得ていたため、同時期に一体ずつ試験的に過去に送られた。対象は桜田ジュンである。
「なんか某映画と同じシュチュエーションなんですが」
「まさにそうなのですぅ。いい加減自分のおかれた状況を理解するのですぅ」

桜田家に絶叫が響き渡った。

          つづく?


316:熊のブーさん
06/04/11 01:10:52 lQ9QqjB/
ローゼンスレで出てきた話題をSSにしてみました。
続きは考えてありますが…

いかんせん某映画のパロディ+スレで出た案の引用なので不快に思われる方もいるかと思います。
「嫌だ」という声が多いのならば続きは書きません。どうすべきかご意見おねがいします。





317:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:13:38 4yz1JkjG
個人的にはノープロブレムなんだけど、翠が180cm越えは勘弁して欲しい('A`)

318:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:16:25 I6pxeyAF
映画ならマイノリティーリポート風きぼんぬ

319:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:17:42 TajsWL/u
>>316
トロスレでターミネーターの話題を切り出した者です。
wktkしてます!続きを!

320:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:21:20 aVhVZ2C6
せめて160cmくらいだなw

321:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:32:27 odL3bKVL
久々に書こうと思ったけどネタないね

322:DEATH NOTE  1/6
06/04/11 01:35:30 LTjhAEnw
桜田家、ジュンの部屋。 下の階ではいつもの人形たちがいつもの通りに騒いでいる。
しかし、彼、桜田ジュンの現在の心境は「いつもの通り」とは程遠いものだった。

漆黒。 彼の手に収まった一冊の黒いノート。
……ごくり。 ……ごくり。 渇く。 渇く。 …もう何度、唾液を嚥下しただろう。
かすれかけた声で、ゆっくり、確かめるように。 ジュンはノートの表題を読み上げた。

「…………デス・ノート」



週刊少年ジャンプ。 日本に住む男子なら、10人中10人は読んでること請け合いのキング・オブ・少年誌だ。
当然僕だって読んでる。 まして「デス・ノート」ときちゃあ、知らないワケがない。

名前を書いただけで人を殺してしまえるノートなんて、とんでもない設定だよな。
ありえないし、悪趣味だし、心臓に悪い。 だけど…面白いんだよなぁ、これが。
絶対うちのクラスにも「桜田ジュン 自殺」なんて悪ふざけをしてる奴がいるに決まってる。 くそっ。


でもまぁ、そんなのなら別にいいんだ。 
そんな田中何某やら、鈴木Aくんやらのノートに名前を書かれたからって、僕が死ぬわけない。 当たり前だけど。
そいつが自分の幼稚さと馬鹿さ加減を周囲にアッピールするだけで、ハイ終~了~、だ。

問題は、僕の部屋にあるこのノート。 「いつの間にか」僕の部屋に「現れた」このノート。
これがどうも「本物のような気がする」ってこと………。

323:DEATH NOTE  2/6
06/04/11 01:36:37 LTjhAEnw
自慢じゃないが、僕はクーリングオフの達人だ。 その商品がどれくらい「インチキ」かなんて、直感で大体分かってしまう。
で、僕はなるべく「インチキそうなもの」を買う。 だって、まともなもの買ったってつまんないじゃん。

…………だから。 僕が「これ」を買うはずはない。 ありえないんだ。
自慢じゃないが、僕はクーリングオフの達人だ。 そのせいなのか……一目で分かった。

「やばい。」

乾く。 渇く。 手に持っているだけで汗が出る。 喉が渇く。
エアコンは今日も絶好調。 なにせ、真紅たちにせがまれてこないだ新調したばっかりの新品だ。
室温は快適、湿度も最適。 なのに。 後から後から訳の分からない汗が吹き出て、一向に止まってくれない。

「開けちゃ駄目だ…」

頭の中で、正しく理性が警告を向ける。 やばい。
これを開けたら、開けてしまったら……? たとえ偽物でも。 きっと、確実に、僕の中の「何か」が壊れてしまう。

ハッと我に帰って、愕然とした。 僕の指が、知らない内に、1ページ目にかかっている…?
開けるな! …頭では分かってる。 でも、頭と、体が、なぜかちっとも……繋がってくれていない。

もちろんありえない。 馬鹿げてる。 ノートに名前を書いただけで、人が死ぬなんて。
……でも。 もし「できたら」? 本当に人が殺せたら?

………………あいつらの居ない世界が、本当に創れたら………………?


「桜田ぁー、俺の姉ちゃん、お前の姉ちゃんと友達でさぁー……」
中西。

「桜田の席もちゃあんと空けておいたんだぞ!」
梅岡。

「……………………………………」
……桑田、由奈。

324:DEATH NOTE  3/6
06/04/11 01:38:22 LTjhAEnw
緩やかに、緩やかに、僕の心が誘惑に負けていくのが分かる。
それはとてもいけないこと。 分かっている。

……でも。 いけないから、何だってんだ?

どうしてだよ? なんで僕なんだよ?
あの時、ノートの落書きさえ消してれば。 いや、あの提出したノートにさえ書いていなければ。
…そもそも、あいつらが余計な事さえしなければ。

どうしてだよ!! なんで僕なんだよ!!!!

うつろだった。 僕の頭は考えることをやめて。
僕の目はただ、僕の指がゆっくりとページを開く光景を映していた。
ページの端を空しくなぞっていた指が、やがてページとページの隙間に入って……

「ジュン」


……………「心臓が口から飛び出る」とは、まさにこの事を言うんだろうな。
100のお小言より、1000の体罰よりずっとずっと効果的。
その小さな赤い人影のたった一言で、僕はすっかりバッチリ現実に戻ってきた。

「のりが呼んでるわ。 夕食よ。」
「……先に行ってろよ。 すぐ行くから。」

背を向けたまま答えて、真紅が立ち去るのを待つ。
なんだか後ろめたくって、真紅の顔をまともに見られなかった。
いま真紅と目を合わせたら、あの凛とした視線に、心の奥底まで見透かされてしまいそうで。

今か今か…真紅がいなくなる気配をうかがう間も、僕の心は安堵と息苦しさでミキサー状態だった。
1分……2分……不思議に思って振り返る。 真紅はまだそこにいた。 柔らかに微笑んで。

「いい子ね、ジュン」

325:DEATH NOTE  4/6
06/04/11 01:40:39 LTjhAEnw
「な、な、な!? なんだよ唐突に!?」

もう焦りまくってしまって、全然口が回らない。 僕と真紅の心は繋がっている。
早い話、さっきまで僕を支配していた仄暗い考えが、真紅にバレてしまったのかと思ったのだ。

「別に。 あなたの頬……泣いていたようだから。」
「え?」

頬に手をやると、確かに濡れている。 全然気付かなかったが、僕は泣いていた…らしい。
泣いてるところを見られた気恥ずかしさやら何やらで。 できるならもう何処かに消えてしまいたかった。

でも、真紅は言った。
「顔をあげなさい、ジュン。」
「それは貴方が自分の弱さと向き合って勝った証。 貴方の誇り。 ……私の、誇り。」

……こいつは。 僕は、今にもノートを開いてしまうところだった。
楽になれる気がしたから。 もう苦しい思いをしなくても済むと思ったから。
戻ってこれたのは。 声を掛けてくれたから。 ……こいつが。

「……僕は」
「ジュン」
「うわっ!」

気が付くと真紅の顔が大接近していた。 心拍数が激増したのが嫌なくらい分かる。
落ち着け僕! 人形じゃないか! 平常心…平常心…
真紅の手の平が僕の手を包む。 平常心! 平常心!

……と。 いつの間にか真紅の手にデス・ノートが握られている。 あ、そういう事……。

「ジュン。 このノートが貴方を苦しめていたのね。」
パラリ。

「うわあああああああああ!!!???」
ここここいつ! あっさり開きやがった!

326:DEATH NOTE  5/6
06/04/11 01:42:05 LTjhAEnw
なんだよ! なんなんだよ!
さっきまでの僕の逡巡はなんだったんだよぉーーー!

あんまりな展開にノリ突っ込みしようとした矢先。 真紅の険しい顔に気が付いた。

「ジュン…………あなた、このノートを開いたの?」
「え? い、いや。 開こうとしたらお前に声掛けられてさ……」
「そう……」

真紅はノートを閉じると僕に告げた。 声が心なしか固い。

「いいこと、ジュン。 世の中には沢山の扉がある。 でも、無闇やたらに開いては駄目。」
「扉の中にいるものは、必ず貴方を見返してくる。 それは、魅入られてはならないものかもしれないのに。」
「ジュン。 貴方は開けてはいけない扉を開こうとしたのよ。」

なんだ、この剣幕は。 静かだけど、確かに怒気を含んでいる。
……まさか。 さっきまでの震えがブリ返してくる。

……本物だったのか。
僕は。 取り返しのつかないことをするところだったのか。


「………………………………ごめん。」

言葉を選んでも、適当なのが見つからなくて。 結局僕の口から出たのはありきたりな「ごめん」だった。
あぁ、そうだ。 真紅は言った。
気付こうとしなければ分からない。 自分が想われているということ、自分を想ってくれるひと。
それを、その気持ちを、僕は裏切るところだったのだ。

昔の僕ならどう思ったかは分からない。 でも、今の僕は。
そんなの嫌だと、確かに思った。
そんな僕の心を知ってか知らずか。 真紅はもう一度……今度は僕の耳元で囁いた。

「いい子ね、ジュン」

327:DEATH NOTE  6/6
06/04/11 01:45:38 LTjhAEnw
「ジュン、夕食に行きなさい。 そこに貴方を待っている人たちがいるわ。」
「……いちいち大袈裟なんだよ。」

照れ臭くてしょうがないから、憎まれ口。 まぁ、バレバレだけど。
まったく、たかが一冊のノートのために何だか随分疲れさせられたもんだ。

でも……真紅たちのような「生きた人形」がいるんだ。
僕がデス・ノートを信じかけてしまったのも、無理はない……よな?
他ならぬコイツ等に、世の中何でもアリな所を見せ付けられてきたんだから。

「ほら…………抱っこだろ。 下まで運んでやるよ。」
「私は後から行くのだわ。 『これ』をどうにかしなきゃいけないし。」

そっか。 デス・ノートの処分。 餅は餅屋というか、怪奇現象は怪奇現象に任せるのが一番いいのかもしれない。

「そんじゃ、任せた。 ……あ、死神が出てきたら僕を呼べよ? お前、怖がりなんだから。」

一言残して、僕は階段を降りていった。

328:DEATH NOTE  EP
06/04/11 01:46:39 LTjhAEnw
「……………危なかったのだわ。」

ジュンが去った後、ノートをパラパラとめくる真紅。 その表情は先程よりも一層険しい。


【○月×日 晴れ】
今日のジュンはいつもより何だか…ちょっとだけ凛々しかったです。
もちろんチビ人間にしてはですけど。
ジュンがソファに腰掛ける時、いつも左側に私の分のスペースを空けてくれてる事に、今日急に気付いてしまったです。
おかげでテレビの内容を全く覚えてないです…………覚えてる……のは……。


【○月△日 晴れ】
雛苺と金糸雀が今日もおチビ同士じゃれ合っているです。 騒がしい奴らですが、まぁ許してやるです。
……でも、二人を見ていると、どうしても私と蒼星石を重ねてしまうです。
蒼星石。 蒼星石に会いたい……。 人前でこんなこと言って、みんなを心配させたくないです。
でも、やっぱり顔に出ているんですね。 今日流れ込んできたジュンの意識は……私の傷を包もうとしてくれていたから。
きっと、ジュン自身も気付いてないですけど……。


「……………危なかったのだわ。 色々な意味でギリギリだったのだわ………」

私は何も見なかった事にして、翠星石の鞄の中にそっとノートをしまった。
私は誇り高きローゼンメイデンの第五ドール・真紅。 この物語の正ヒロインなのだわ……。



「ですぅノート・完」

329:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:52:32 CbMkq8Up
まぁオチは読めたけど面白かった
GJ




最後の真紅の必死さがツボwww

330:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 01:54:00 lQ9QqjB/
ワロタwww
そうきましたかw

331:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 05:12:22 UFzO3RAM
もうちょっとで、翠星石がヒロインに成り上がれたのに・・・w

次回作wktkですー

332:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 05:20:46 6x5XO0J4
真紅必死だなw


333:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 17:40:25 80MLGtOT
>>300
ご助言ありがとうございます。考え付かなかった自分が情けない(-_-;)

>>322
そんな展開でくるとはw
次回作期待

334:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/11 22:13:26 gfQimYBY
GJ
どこでもジャンプネタ多いな。やっぱ週刊漫画紙で一番売れてるのか。

335:熊のブーさん
06/04/11 22:49:07 7QUxIRDh
お久しぶりです。前回の続きを投下。

《ターミネーター翠~第1部~》

「最近なんかすごい不幸だ…新学期シーズンで頻繁に梅岡は来るし…風邪ひくし…命狙われるし…」
「激しく鬱モードに入ってないでシャキッとしやがれですぅ」
一人と一体はテンションがまったく逆だった。
「とにかく、翠星石が来たからには安心ですぅ。チビ人間をしっかり守ってやるですぅ」
「どうだかなぁ」
「でも、一応翠星石はお客さんですぅ。お茶くらい出しても…」

ピーンポーン

「お客だお客」
「こらぁチビ人間!!逃げるんじゃねえですぅ!!」
ジュンは一刻も早く扉を開けようとした。
たとえ梅岡でもかまわない。現実味のある話がしたかった。正直、梅岡と世間話は嫌だがしかたない。あぁ、平穏な現実へのドアノブに今、手をかけて……
「待つですぅ」
肩を掴まれ止められた。ジュンは恨めしそうに振り返る。
「なんだよお前。僕はこれからめくるめく現実への第一歩を……」
その先が言えなかった。一八〇の巨漢は険しい顔でショットガンを持っている。
「なぁ、銃刀法って知ってるかな。ってゆーかお前どこからそんなもんもってきた!!」
「静かにするですぅ。刺客かも知れないのですよ?」
ジュンの血の気が引いた。
「もしかして…もう来ちゃってたりするわけ?」
「可能性は特大ですぅ」
ジュンはゆっくりと慎重に覗き穴から様子を伺った。梅岡だ。



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