09/06/07 09:35:55 DEkddP0p
カウンセリング辞典 国分康孝編 誠信書房 1990 16刷1999
p.405 転移 transference Ubertragung transfert
転移は、ひとりの人の問題が、想像の中で他の人に移される状態で、心理療法の途中で
起こりやすい。フロイト派では、特にある人の幼児期の両親のイメージが心理療法家の上に
投げかけられて、そこで子ども時代の問題を再演し、これを是正するということで治療を進める
という。しかし、ユング派では、ちょうど「王様の耳はロバの耳」という御伽話で、自分の問題を
穴の中に投げ捨てることで、自分のものを相手に移すように、自分の問題点を話しているうちに、
心の深層の集合的な元型を通して、治療者も次第に巻き込まれ、問題が治療者に移って
しまうことを意味する。フロイト派の場合は、転移は一方的に依頼者から治療者に投げかけられる
べきで、その反対の場合を逆転移といって、治療に悪影響があると考える。しかしユング派では、
依頼者の問題が人に共通な元型を通して影響して、それによって問題が転移して、治療者も
依頼者も共に苦しみ、協力してその問題の解決にあたるのである。本項ではユング派の説明
を主とした。フロイト派の説明は別項「感情転移」参照のこと。→感情転移
(秋山 さと子)
p.363 対抗感情転移 counter transference Gegenubertragung
逆転移と訳す人がいる。心理療法において患者から陽性転移を向けられると治療者は何となく良い
気持ちになり、陰性転移を向けられると不快で嫌な感じがする。このような患者からの感情転移に対応
して治療者が抱く感情態度を対抗感情転移という。異性の陽性転移に対し治療者が分別を忘れて
のぼせて治療の枠を逸脱すれば思わぬ危険に陥る。また陰性転移に対し怒りを爆発させたりすること
も治療関係を台無しにする。治療者は対抗感情転移に意識的に対処できねばならない。
(細木照敏)