08/10/13 22:27:15 uro36wK/
「普通がいい」という病
最も参考になったカスタマーレビュー
11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
講談社現代新書にまた一冊好著が加わった, 2006/10/24
By ゴットフリート (神奈川県) - レビューをすべて見る
日々の暮らしの中で何かしらの違和感を抱えたまま生きている人は多くい
ると思います。勿論、自分とは異なる多くの人が集まる社会に身をおいて生
きている以上、全て自分の思い通りに行くなんてことはありませんが、そう
した意味においてではなく、周囲とも折り合いをうまくつけ、何の過不足も
なく表面上は幸せこの上ないような暮らしを送っていても打ち消せない「違
和感」に多くの人は多かれ少なかれ苛まれているのではないでしょうか。
ポルトガルの詩人、フェルナンド・ペソアは言います。「世界はなにも
感じない連中のものだ。実践的な人間であるための本質的条件は感受性の
欠如であり、生き抜いていくための重要な長所は、行動を導くもの、つま
り意志だ。行動を妨げるものが二つある。感受性と分析的思考だ。そして
分析的思考とは結局のところ感受性を備えた思考に他ならない。」(沢田
直 訳「不穏の書」より)
感受性を備えた思考、もしくは意識に立ち現れる前のそうした思考の萌芽
が「普通」と「飼いならされた個性」を求める世間での行き辛さを感じさせ
るのかもしれません。本書は、そんな違和感を覚えている全ての人に読んで
もらいたい本です。本来の自分とは何かを見つめ直すきっかけやヒントが散
りばめられています。全てを盲信(頭だけで理解し依存)するのではなく、
自分の心と身体に耳を澄まし、自分の力で「感受性を備えた思考」を行うた
めのガイドとして格好の本だと思います。また先人の様々な珠玉の言葉が引
用されており、思考の端緒を得るためのブックガイドとしても最適です。