09/11/19 17:55:28 発信元:122.16.219.31
俺はハゲてなんかいない。もちろん、歳をとるごとにだんだんと薄くなってはきているが、それでもハゲてはいない。頭頂部の地肌が数え切れないほどの髪の毛の間からちょっと見えるだけだ。
それなのになんなのだ、これは。俺はただコンビニに行って夜に食べる弁当を買い、日本人らしくマナーを守って、起臥するボロアパートへと向かっている善良な一市民だというのに、そこらじゅうから突き刺さる視線、視線、視線。
あまりにも酷い。人間とはここまで無礼になれるものなのか。
近頃はハゲを『治療』できるというが、そうなるとハゲは病気ということになる。だがしかし俺はハゲですらない。それともなにか、薄毛はハゲの兆候だから早期治療すべきだとでもいうのか。
冗談じゃない! 断固拒否する。ハゲは病気じゃない。そんなくだらないことに金を使う馬鹿があるか。そして、言うまでもないが、俺はハゲてなんかいない。
と、後ろから声がした。「あー、そこのあなた。ちょっと止まりなさい」
振り返る。自転車に乗った中年の警官だった。顔立ちから見て、若い頃はおそらくそうとうモテただろう。死ね。
「なんすか」
「あー、君だよねえ、変質者って」
「は?」