09/09/19 03:00:55 QyoOjifg0
「よーっし、三雲(みくも)ーっ、運び上げてくれー!」
「うぃーっす!」
架け替え用の極太の超高圧電線を肩に担いで、三雲綾女(あやめ)は鉄塔を上り始める。
並みの作業員は彼女ほど早く鉄塔を上り下りできないし、電線自体も重いので手間のかかる作業になる。
それを綾女に任せることで、時間も労力も随分と楽になったという。
ここは山奥の超高圧送電路。
その保守現場で働く綾女は、改造人間―蜘蛛娘だ。
ヘルメットの下のショートの髪と、まだ十代のあどけなさの残る顔は、生身のままとさほど変わらない。
タンクトップ姿でむき出しの腕も、よく日焼けしているけど見た目は生身と大差ない。
しかし改造手術で並みの(というか生身の)男の作業員を遥かに上回る筋力が、その腕には備わっている。
ちなみに胸の大きさは、それなりにある。
大胸筋は強化手術を受けたが脂肪の塊である乳房は生身の状態なので、ちゃんと柔らかい。
綾女が鉄塔を上る動きに応じて、たぷんたぷんと揺れている。
そして生身と決定的に違うのは腰から下だ。
それは明らかに蜘蛛の形状で、八本の脚が備わっていた。全体は黒く、繊毛に覆われている。
綾女は、その八本の脚を器用に使って鉄塔を上っているのだった。
ちなみに下半身には下着を含めて衣服は着けていない。蜘蛛の身体で着られる服などないからだ。
臍の下の繊毛を掻き分ければ女の子の機能も備わっているが、普通にしていれば見えることはない。
そこだけ前張りでもして隠そうとすれば、かえってイヤらしいだろう。だから何も隠さない。
運び上げた電線を、鉄塔の上で待っていた仲間の作業員たちに託し、綾女は鉄塔を下りていく。
下りるときは頭を下にするが、べつに怖くない。蜘蛛娘になって、上下逆さの行動にも慣れた。
綾女は早く鉄塔の上の作業も任せてほしいと思っているが、それには資格が足りないらしい。
工業高校在学中に電工二種を取ったけど、超高圧を扱うには別の資格が必要なのだそうな。
べつに人間じゃないんだし改造人間だし、そのへんは大目に見てくれてもいいんじゃね? と思うけど。
超高圧に感電しても、たぶん死なないし。