09/09/14 23:30:18 XnqD6c1D0
「そんな告白、何の意味もないわ。アタシの記憶にある限り、真琴という人間に同性愛の趣味はないもの」
「そうだとしても真琴は断らなかった筈だし、私の恋人として振舞う努力もしてくれたと思う。
転校して来て三日目で、いきなりラブレターを寄越した智花よりも、私は真琴と、ずっと長いつき合いだもの。
私を傷つけるような返事は、真琴はしなかった……できなかった筈。そうじゃない?」
「くだらない。たとえその通りになったとしても、真琴という人間はアナタを愛してるわけじゃないでしょ?」
「それでもよかった。真琴を他の誰かに奪われちゃうくらいなら」
笑顔のままで答えた理恵に、海蠍女は再び口をつぐんで―
しばらくしてから、海蠍女はテンニョに向き直った。
「……プリンセス。アタシには、人間を忠実な下僕……海蠍兵に変える能力が備わっている筈です」
「そうね、そういう風に改造してあげたわ」
にこにこしながら答えて言うテンニョに、海蠍女は頭を下げ、
「いまここで、その力をテストしてよろしいでしょうか?」
「存分になさい。アナタに自分で考えろと言ったのはアタクシだもの。止める理由はなくてよ」
「ありがとうございます」
海蠍女はもう一度、テンニョに頭を下げると、理恵を車椅子に拘束していたロープを鋏で断ち切った。
「……真琴?」
怪訝な顔をする理恵に、海蠍女は告げた。
「逃げてもいいわよ。アナタに……理恵に、まだそのつもりがあるならね。アタシを置いて逃げるつもりが」
「でも、あなたはもう真琴ではないんでしょう?」
理恵が訊き返すと、海蠍女は、ニィッと口元に笑みを浮かべ、
「アタシを真琴という人間と重ね合わせて見てるのは、アナタ自身じゃないの?」
「逃げなかったら、どうなるの?」
「実験を受けてもらうわ。アタシが受けたのと同じような実験を」
「それを聞かされても私が逃げないと、あなたは思ってるんだ?」
「だから逃げてもいいと言った筈だけど?」