09/05/17 13:33:36 D4bIpO0g0
皆様こんにちは。
お久しぶりでございます。
ようやく新作一本完成いたしましたので、投下させていただきます。
今回は「怪魚人アマゾニア」です。
途中ばいばいさるさんが出て、投下が途中で途切れるかもしれませんが、
最後まで投下しますので、しばらくお待ちいただければと思います。
174:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:35:57 D4bIpO0g0
笛の音と同時にストップウォッチのスイッチが押される。
競泳タイプの紺のワンピースの水着を着た女性が勢いよくプールに飛び込む。
「よし、いいスタートよ。行って行って」
ストップウォッチに刻まれるタイムに目を落としながら、女性コーチは泳いでいく選手に声をかけた。
「うーん・・・最後で失速しちゃったわねぇ・・・」
「すみません、なんだか急に力が抜けたみたいで・・・」
特訓を終え更衣室へ向かうコーチと選手。
オリンピックへ向けての強化特訓も、ちょうど半ばを過ぎる頃だった。
「また明日がんばりましょう。世界記録も手の届く位置まで来ているんだから」
「はい、コーチ」
そう言いながら更衣室のドアを開ける二人。
だかその表情が一変する。
ドアを開けたそこには、全身を黒尽くめにした怪しい男たちが待っていたのだった。
******
「もう、美雪ったら・・・そんなんじゃいつまで経っても泳げるようにならないわよ」
暖かい日差しの降りそそぐ海岸の岩場。
赤いワンピースの水着を着た若い女性が、紺のスクール水着を着た少女の手を引いている。
「だ、だってぇ・・・こ、このあたり深いよぉ」
スクール水着の少女は、恐る恐るといった足取りで進んでいく。
「大丈夫よ。お姉ちゃんがついているから安心して。それに足が付くところだと、美雪はすぐに立っちゃうでしょ」
にこやかながらも有無を言わせぬ口調で少女の手を引く若い女性。
どうやら歳の離れた姉と妹らしい。
まだ泳げない妹を泳げるようにするために、この海岸の岩場にやってきたのだろう。
「あうー・・・お姉ちゃん、溺れそうになったら助けてよ」
「大丈夫大丈夫。任せなさいって。お姉ちゃんはこれでも大学の水泳の選手なんだからね」
そういいながら手を引く姉を、妹は多少不安げな表情で見上げているのだった。
175:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:39:10 D4bIpO0g0
「仲いい姉妹だな。けど、大丈夫かな」
そんな二人の様子を、沖に出て行くボートの上で眺めている男女一組。
精悍な顔つきのたくましい青年が、ちょっと心配そうにつぶやいた。
「大丈夫だと思うわ。このあたりはあの娘にとっては深いかもしれないけど、大人にはそう深くないから」
ウェットスーツに身を包んだ女性が手にした地図に目を落とす。
きりっとした表情をしているが、長い黒髪と相まってとても美しい。
「そうだな。それで、音波の発信源はどのあたりなんだい、エリナ?」
「本部の情報によればこのあたりよ。奴ら、一体何をたくらんでいるのかしら・・・」
エリナと呼ばれた女性が地図を指し示す。
「わからんな・・・だがろくでもないことは間違いないだろう。ショッカーめ!」
「油断しないでね、滝」
「当たり前だ」
滝と呼ばれた男は、ボートを地図に示された場所に向けるのだった。
「それじゃお姉ちゃんがお手本を見せるから、よく見てるのよ」
そう言って岩場から海へと姉は飛び込む。
水しぶきが上がり、水面に顔を出した姉はとても気持ちよさそうだ。
ゆったりとクロールや背泳ぎをして見せ、ちょっと離れたところに浮かび上がる。
「さあ、思い切っていらっしゃい、美雪」
両手を差し出して妹を呼ぶ姉。
その様子に、妹も恐る恐る前に出た。
176:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:40:06 D4bIpO0g0
「えっ? キャッ!」
突然姉の悲鳴が上がる。
「えっ?」
妹が足元から姉のほうへ視線を向ける。
すると、姉の浮いている周りから白い泡が沸き立ち、姉が溺れかけているのだ。
「うぁ・・・ごぼっ」
海中に引き込まれそうになっている姉。
助けに行きたいけど、泳げないことにはどうしようもない。
「だ、誰か~! お姉ちゃんが、お姉ちゃんがー!!」
必死で岩場から手を伸ばすものの、そんなもので届くはずもない。
よく見ると、白い泡の中には別の人影が混じっている。
黒髪の女の人のようだ。
それが二人がかりで姉を海中に引きずり込もうとしている。
「お、お姉ちゃん! 誰か、誰か~!!」
声を限りに叫んでも、近くには誰もいない。
「た、たす・・・た・け・・・」
妹の見ている前で、姉は海中に飲み込まれていく。
「お姉ちゃーーん!!」
白い泡が消え、後にはただ穏やかな波が漂っているだけだった。
******
「手がかりなし・・・か」
収穫なくボートを港に向ける滝。
鍛え上げられた肉体が陽光に照らされている。
彼は世界各国に捜査網を広げているFBIの日本支部の捜査官である。
世界の犯罪を捜査するFBIも、秘密結社ショッカーの動きはおぼろげながらに掴んでおり、ショッカーと戦う仮面ライダーという強力な味方を得て全貌解明と封じ込めを計っている最中だった。
今回滝は、この海岸でショッカーと思われる謎の音波をキャッチしたことが本部から知らされ、本部から派遣されてきたエリナ杉崎という女性捜査官とともに、その音波の発信源を探りに来ていたのである。
177:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:41:55 D4bIpO0g0
「まだ取り掛かったばかりですもの仕方ないわ。また明日、調査をいたしましょう」
にこやかな笑みを見せるエリナ。
長い黒髪といい日本人の血が色濃く出ているのだろう。
だが、白い肌とのコントラストが、彼女をとても美しく見せていた。
「そうだな。まあ、何もないほうが、立花のオヤジさんたちは楽しめるんだろうけどな」
滝の脳裏に立花レーシングクラブの面々の姿が浮かぶ。
滝がこの海岸へ調査に行くと言うと、わざわざバックアップのためとかなんとか言ってレーシングクラブの全員で海岸のホテルに来てしまったのだ。
どうせ遊びがメインに違いない。
「うふふ・・・いい人たちですね。滝はあの人たちに好かれているようですわ」
「だといいんだがね」
苦笑する滝。
だが、立花レーシングクラブの面々と過ごす時間は、FBIの過酷な任務をしばし忘れさせてくれるものでもあったのだ。
「滝、あれを」
エリナが海岸を指差す。
「ん?」
ショッカーかと一瞬身を硬くした滝だったが、エリナが指差した岩場には、スクール水着の少女が泣いているだけだった。
「あれは行くときに見た姉妹の妹か? 何かあったのかな?」
「様子が変よ。行ってみない?」
心配そうなエリナ。
少女が泣いているのに姉がそばにいないということに、何かあったと感じたのだろう。
「よしきた」
ボートの進路を変える滝。
高速のモーターボートは、ぐうんと舳先を岩場に向けた。
******
178:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:43:20 D4bIpO0g0
「こ、ここはどこですか? 私をどうするつもりなんですか?」
円形の台に載せられ、手足を拘束された若い女性が不安そうに周囲を見渡す。
彼女は先ほど海中に引きずり込まれた姉だった。
彼女の周りには異様な人たちが立っている。
白衣を着て顔に異様な赤や緑のペイントをした男たちに、全身を黒いぴったりしたタイツのような衣装に身を包み、すっぽりとマスクをかぶって目鼻口だけを出している男たち。
そして、その背後に無表情で立っていたのは、黒いウェットスーツに身を包んだ女性たちだった。
姉はその女性たちの中に見知った顔を見つける。
「珠美、珠美じゃないの? なぜあなたがこんなところに?」
それは先日行方不明になったという水泳のオリンピック強化選手がいたのだ。
彼女とは以前から顔見知りであり、珠美はオリンピックを目指したが、彼女はそれまでの力がなかったため、進路が分かれてしまったのだった。
179:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:44:19 D4bIpO0g0
「おとなしくしろ。あの女は我がショッカーの改造手術を受け海底作業用の作業員となったのだ」
白衣の男がそばに来る。
「海底作業用の?」
「そうだ。そしてこれよりお前も改造手術を受け、同じく海底作業要員となるのだ」
彼女は背筋がぞっとした。
「い、いやぁっ! そんなのはいやぁっ!!」
必死に身をよじって何とか抜け出そうとする。
だが、固定された手足は抜け出すことを許しはしなかった。
『改造を始めるのだ』
壁にある鷲のマークのレリーフが輝き、重厚な声が響き渡る。
男たちはいっせいにレリーフに向き直り、右手を上げて奇声を発した。
そして白衣の男たちは彼女に向き直ると、麻酔をかがせ、手術を始めるのだった。
******
「お姉ちゃんは美里さんって言うのかい。よし、お姉ちゃんのことはこのわしらに任せなさい。きっと無事に助け出してあげるからね、美雪ちゃん」
泣きじゃくる少女を前にして、目線を合わせるようにしゃがみこんだ中年の男が優しく言う。
「うん」
泣きながらも、どこかほっとしたような顔をする少女。
それを見て滝もエリナも安堵するのを感じていた。
180:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:45:16 D4bIpO0g0
あのあと岩場に着いた滝たちは、少女から姉が海中に引きずり込まれたことを聞いたのだった。
引きずり込んだのは女の人らしいというが、何者なのかも目的もわからない。
短絡的に結びつけるのは禁物だが、もしかしたらショッカーに関係があるかもしれない。
滝とエリナはそう考え、一時的に少女を保護するために、ホテルの立花藤兵衛に預けることにしたのだ。
「まったく・・・こんなときに隼人の奴はどこをうろついていやがるんだ」
少女の頭を撫でながら、藤兵衛はこの場にいない男のことをぼやく。
それを聞いた滝は苦笑を禁じえなかった。
確かに一文字隼人はどんなときでも頼りになる男だ。
なんと言っても彼は“仮面ライダー”であり、人類の自由な明日を目指して戦っているのだから。
だが、それを言うなら彼、滝和也だって戦っているのである。
FBI捜査官という肩書きばかりでなく、彼自身に燃え盛る正義を愛する心が、ショッカーを始めとした悪を赦すことができないのだ。
隼人ばかりではなく、もう少し自分も頼りにして欲しい。
そう藤兵衛に言いたくなる滝だった。
「とりあえず彼女のことをお願いします。俺たちはもう一度海岸の岩場を捜索してみます」
「あ、滝さん、それなら私たちも」
エリナをつれて出て行こうとした滝に、マリが声をかける。
せっかく海に来たのに、エリナと調査にかかりきりの滝にちょっとやきもきしていたのだ。
「君たちは美雪ちゃんといてくれ。もしかしたらショッカーが関わっているかもしれないからな」
「あ・・・もう・・・」
そう言って出て行ってしまう滝に、マリはほっぺたを膨らませるのだった。
******
181:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:46:24 D4bIpO0g0
手術台からゆっくりと起き上がる女性。
さらわれてきた美雪の姉美里だ。
その表情は失われ、目はうつろに見開かれている。
「改造は終了した。お前は我がショッカーの水中作業員となったのだ」
「イーッ! 私はショッカーの水中作業員。ショッカーに忠誠を誓います」
彼女は右手を上げて高らかに宣言する。
「よし、これを着てすぐに作業にかかるのだ」
黒尽くめの戦闘員が手渡すウェットスーツを受け取り、美里は無表情のまま手術室をあとにした。
******
結局手がかりのないままに日が暮れる。
滝とエリナはやむを得ず調査を明日にしてホテルにもどった。
「そうか・・・美里さんの行方はわからんか・・・」
パイプから煙が立ち昇る。
藤兵衛愛用のパイプだ。
「美雪ちゃんは寝たようよ。寝言でお姉ちゃんって・・・」
美雪ちゃんを寝かしてきたマリが戻ってくる。
「明日、ご両親のところへ連れて行ってやってくれ。きっと心配しているだろうからな」
「はい」
藤兵衛にうなずくユリとマリ。
「どうなんだ、やっぱりこれもショッカーの仕業か?」
「決め付けるわけにはいきませんが、十中八九やつらの仕業かと。怪しい音波とも関係があるのかもしれません」
「明日はもう少し沖を調査してみましょう」
「そうだな」
エリナの言葉に滝はうなずいた。
******
182:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 13:47:33 D4bIpO0g0
翌朝早く、エリナと滝はアクアラングの準備をして海岸に向かう。
「二人とも気をつけるんだぞ。隼人がもうすぐ来るはずだ。無理をせんようにな」
その言葉にうなずいて手を振る二人を心配そうに見送る立花藤兵衛。
パイプから立ち昇る煙もどこか心細げだった。
「いいか、二十分後にはここへ戻るんだ」
「OK。気をつけてね」
「君こそ気をつけるんだぞ。危険なときは非常信号を忘れるな」
緊張感の中にも笑顔を見せ合う滝とエリナ。
お互いの装備を確認して海に潜る。
二人はそれぞれ別々の方角へ分かれ、海底の調査を開始するのだった。
「綺麗・・・こんな海底でショッカーは何をたくらんでいるのかしら・・・」
アクアラングで海に潜っていると、その美しさに見惚れてしまう。
このあたりは暖かいので、魚も海草などもカラフルなのだ。
だが、今は任務に集中しなくては。
滝和也という優秀な捜査官と一緒とはいえ、ショッカーに対しては油断は禁物なのだ。
「あら・・・?」
エリナは海岸に向かって泳ぐ人影を目にする。
見たところ若い女性のようで、水中に髪をなびかせていた。
「こんなところで素潜りなんて危険だわ。教えてあげなくては・・・」
エリナはウェットスーツ姿の女性に近づいていく。
183:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:29:41 D4bIpO0g0
「えっ?」
エリナは驚いた。
素潜りで息継ぎもしていないのに、相手はどんどん深みに向かっていく。
アクアラングをつけていなければとてもそんな行動は不可能なはずなのに。
「いったい彼女は・・・」
エリナがいぶかしんだそのとき、周囲にいつの間にかウェットスーツ姿の女性たちが泳いでいることに気がついた。
「えっ? 何?」
現れた女性たちは、みな素潜りでいながらまったく苦しそうではない。
まるで水中で息ができているかのようだ。
冷たく笑みを浮かべる女性たちに、エリナはぞっとするものを感じていた。
エリナに襲いかかってくる女性たち。
泳ぎに慣れているのか動きはすばやく、エリナはかわすのが精いっぱいだ。
「何なの、この人たちは?」
水中での戦いは不利だと悟り、いったん浮上しようとするエリナ。
太もものホルダーからナイフを抜き、女たちを牽制する。
だが、女たちは薄く笑みを浮かべ、交互にエリナを襲ってくる。
浮上しようとするものの、上に回りこまれたり脚を引っ張られたりと浮かび上がることができない。
やがて背中に回りこんだ一人が、エリナのアクアラングのボンベから伸びるチューブを断ち切った。
「しまった」
エリナは必死に息を止め、海面を目指そうとしたが、女たちに取り囲まれ逆に海底に引っ張られる。
苦しさに肺の中の息を吐き出してしまい、海水を飲み込んでしまうエリナ。
やがてその意識も暗闇の中に沈んでいった。
******
184:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:31:04 D4bIpO0g0
「う・・・」
意識がだんだん戻ってくる。
「こ、ここは・・・?」
ゆっくりと目を開けて左右を見渡すエリナ。
薄暗い室内には、人影がちらほらと見えていた。
「ハッ」
すぐさま起きて身構えようとしたものの、エリナの体は両手両脚が固定されていて、起き上がることができない。
「えっ?」
あわてて自分の体を見下ろすと、彼女の体は円形の台の上に裸で固定されていた。
「えっ、これは・・・」
愕然とするエリナ。
どうやら捕らわれてしまったらしい。
非常信号を発信しようにも、発信機すら奪われていてはどうしようもなかった。
『ようこそ、我がショッカーのアジトへ。FBIの女捜査官エリナ杉崎』
頭上から重々しい声が響く。
エリナが見上げると、巨大な鷲のレリーフが飾られていて、その中央にあるランプが光っている。
やはりショッカー・・・どうやら私の正体も知られてしまっているんだわ。
エリナは唇を噛んだ。
『ここは我がショッカーの海底アジト。君らが探していたものだ』
この重厚な声は何者なのか・・・
185:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:32:05 D4bIpO0g0
周囲の黒尽くめの戦闘員たちが背筋を伸ばしているところから見ても、かなりの上級者に違いない。
もしかするとショッカーの首領かもしれない。
「やはりあの海音波はショッカーの仕業だったのね。一体何をたくらんでいるの?」
こうなればできるだけの情報を引き出してやろう。
エリナはそう考えた。
『われわれの目的はこの近海にある海底ウランだ』
「海底ウラン?」
驚いた。
まさかこうもあっさりと目的を話すとは。
おそらく自分を帰すつもりがないのでべらべらしゃべっているのだろうが、いずれ滝が来てくれるはず。
ショッカーめ、あとで思い知るがいいわ。
エリナはショッカーの目的を聞けたことで満足していた。
『そうだ。そのためにわれわれは水圧に適応するしなやかな肉体を持つ女性を使い、海底作業に当たらせている』
「何ですって? すると彼女たちは・・・」
エリナの脳裏に自分を襲った女性たちの姿が映る。
『その通り。あの女たちは我がショッカーの改造手術によって、海底作業員に作り変えた女たちだ』
「なんてことを・・・」
エリナは首を振る。
女性たちを改造して作業員に使うなんて・・・
同性としてエリナはそのことが許せなかった。
186:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:36:09 D4bIpO0g0
『そしてエリナ杉崎。お前もこれより我がショッカーの改造手術を受けるのだ』
「何ですって?」
エリナは耳を疑った。
自分もショッカーの海底作業員にされるというのか?
「冗談じゃないわ。海底作業員なんてまっぴらよ!」
なんとか手足の枷をはずそうとするエリナ。
だが、がっちりと固定された枷ははずれそうにない。
『海底作業員ではない。お前にはその作業の監督にあたる水中用の改造人間となってもらう』
「ええっ?」
『FBI捜査官としてお前の身体は極めて改造人間の素体にふさわしい。我がショッカーの507計画をお前の手で進めるのだ』
「じょ、冗談じゃないわ! やめてっ! やめてよっ!」
ガチャガチャと手足の枷をはずそうともがくが、やはりまったくはずれる気配はない。
エリナの額に汗がにじんだ。
『この女の改造を始めろ。アマゾン河の河口に棲む海水でも生きられるピラニア、アマゾニアの改造人間にするのだ』
「「イーッ!!」」
黒尽くめの戦闘員たちが、白衣の科学者に指示を出す。
すぐに科学者たちがエリナの周りに集まり、エリナに麻酔をかがせるのだった。
187:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:38:00 D4bIpO0g0
ショッカーの改造手術は基本的には遺伝子変化による動植物との融合と各種薬剤による組織や骨格の強化、それに付随しての機械埋め込みというものである。
つまり、あくまでも生命体としての融合強化が主であり、機械埋め込みはあくまでも補助強化に過ぎない。
手術台の脇に用意された透明なカプセルに、融合される元となるピラニアの一種アマゾニアが入れられる。
そして緑色の液体がそれをドロドロに溶かしたかと思うと、チューブを通じてエリナの腕に流し込まれていく。
さらに遺伝子の変容を促す光線が、赤や緑の色彩となってエリナの体を照らしていく。
するとじょじょにエリナの体は、流し込まれた液体に溶け込んだアマゾニアの遺伝子を取り込み始め、人間の細胞から変容し始めるのだ。
エリナの体は健康的な肌色から変色し始め、鮮やかな紫色に変わっていく。
そして表面には黒っぽいうろこが広がり始め、エリナの体を覆っていく。
体の脇にはオレンジ色のえらが蛇腹状に広がり、形よい胸はつんと上向いたままうろこに覆われる。
つま先からは指が消えて先が広がり、かかとがやや伸びてハイヒール状の足ヒレとなる。
滑らかな指もうろこが覆い、指先からは赤い毒々しい爪が伸びてくる。
最後にエリナの頭部も変化を始め、目が落ち窪んで大きな眼窩が広がる。
髪の毛は抜け落ちて硬い外皮が覆ってトゲの付いたヒレが頭頂部に現れる。
唯一口元だけは人間とそう変わらず、赤い唇がなまめかしかった。
188:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:38:58 D4bIpO0g0
次に行なわれるのが補助機関の埋め込みと脳改造である。
強化された肉体をさらに強化する補助機関を、科学者たちはエリナの体に埋め込んでいく。
機械心肺や補助脳などが埋め込まれ、完全なるショッカーの改造人間へと生まれ変わるのだ。
そして手術台の周囲からせり出すパルス発信機がエリナの頭部にパルスを浴びせる。
人間のときに培われた社会的規範や忌避感を排除し、快楽的破壊衝動やショッカーへの盲目的信頼感などを植えつけていくのだ。
無論FBI捜査官としての正義感なども消去する。
それは同時にエリナの中にある滝への淡い思いをも消し去っていく。
エリナの脳はまさにショッカーの一員として邪悪な意思に包まれるのだった。
『目覚めるのだ。怪魚人アマゾニアよ』
鷲のレリーフが呼びかける。
両手両脚の枷がはずされ、異形の姿となった女がゆっくりと立ち上がった。
紫色の皮膚に黒光りするうろこが広がる姿ではあるものの、その流れるような柔らかいラインはまさしく美しい女性のものであり、異様な美しさをかもし出していた。
「うふふ・・・」
真っ赤な唇が笑みを浮かべ、笑い声が小さく漏れる。
「私はショッカーの改造人間アマゾニア。なんてすばらしいのかしら。最高だわ」
誇らしげに胸を張るアマゾニア。
そこにはFBI捜査官のエリナ杉崎の面影はどこにもなかった。
『アマゾニアよ。泳ぎの得意な女性をまだまだ誘拐し作業員にするのだ。海底ウランを手に入れる507計画を遂行せよ』
「お任せくださいませ首領。507計画は私の手で必ずや遂行いたします。まずは邪魔者のFBI捜査官滝和也を・・・うふふふ」
アマゾニアの不気味な笑い声がアジトに響いた。
******
189:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:43:14 D4bIpO0g0
「滝、エリナさんはまだ戻らんのか?」
不安そうな面持ちで海を見つめている滝の元に、心配そうな表情の藤兵衛がやってくる。
「ええ、もうボンベの空気はとっくに切れているんですが・・・」
優秀な捜査官の彼女のことだからとは思うものの、不安はぬぐいきれない。
何せ相手はショッカーなのだ。
「非常信号は出ておらんのだろ? 大丈夫だよ。きっと別の海岸に上がってこっちに向かっているさ」
半ば自分に言い聞かせるように藤兵衛は言い、パイプの煙を吐き出した。
「俺もそう思います」
だが、それなら通信ぐらい入れてくるはずだとは滝は言えなかった。
「滝さーーん」
岩場のほうから声が聞こえた。
見ると、ウェットスーツ姿のエリナが岩場に上がってきて手を振っている。
その後ろにはまだ少女っぽさを残す女性がひとり。
エリナに付き従うように立っていた。
「エリナ!」
思わず駆け出す滝。
藤兵衛も後を追う。
心配していた相手が戻ってきたのだ。
警戒心など浮かぶはずがなかった。
190:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:44:52 D4bIpO0g0
「ごめんなさい。岩にぶつけて通信機が故障してしまって」
申し訳なさそうに上目遣いで左腕の腕時計型通信機を見せるエリナ。
それは見事につぶれていた。
「ばかやろう、心配したんだぞ」
滝はホッとする。
通信機が壊れていたのなら連絡がなくても不思議ではない。
「ごめんなさい。でも美里さんを見つけたわ」
エリナが背後の女性を呼び寄せる。
その若い女性は確かに美雪ちゃんに似ていた。
「おお、君が美里さんかい。怪我とかはないかい? 妹さんがずっと待っているよ。まだホテルにいるんだ。すぐに行こう」
思わず顔をほころばせる藤兵衛。
心なしかパイプの煙も美味い。
「美雪がいるのですか? わかりました。すぐに行きます」
「滝さん。私たちも行きましょう。実は手がかりを見つけたの。話を聞いて欲しいわ」
「なんだって? 本当かいエリナ? わかった、すぐに聞かせてくれ」
エリナの言葉に滝が奮い立つ。
ショッカーの手がかりを見つけたからには、奴らの思い通りにはさせない。
勇んでホテルに向かう滝の後を歩きながら、エリナの口元には笑みが浮かんでいた。
******
191:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 14:45:46 D4bIpO0g0
「うう・・・エ、エリナ・・・」
ホテルの一室で胸を押さえながら倒れこむ滝。
気がつくと、目の前にいたエリナが変身し、鋭い爪で滝の胸を貫いたのだ。
「うふふふ・・・残念ね。私はもうFBI捜査官のエリナ杉崎ではないの。私はショッカーの改造人間アマゾニア」
口元に笑みを浮かべながら、黒々と広がる眼窩の奥の目で滝を見下ろしている。
「バカな・・・改造・・・されているなんて・・・」
床には血だまりが広がり、急速に目の前が暗くなっていく。
「我がショッカーに歯向かう愚か者。私の爪で死ねることを喜ぶがいいわ」
「す・・すまん・・・はや・・・と・・・」
がくっと力が抜け、動かなくなる滝。
その死体をけり転がし、アマゾニアは満足そうに笑う。
やがて、部屋の扉が開くと、小脇に妹を抱えたウェットスーツ姿の美里が現れた。
「うふふ・・・立花藤兵衛たちも始末したようね。その娘がお前の妹なの?」
「イーッ! ご命令どおり立花藤兵衛たちを始末いたしました。はい、この娘が私の妹です」
軽々と左手で妹を抱え、右手を上げて敬礼する美里。
目元にはシャドウが引かれ、妖艶な顔つきになっている。
「よくやったわ。その娘は連れてきなさい。一文字隼人は子供に弱いと聞いたわ。改造して罠に使うのよ」
「イーッ! かしこまりました、アマゾニア様」
アマゾニアは美里を従えると、滝の死体が転がるホテルの部屋を後にした。
192:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 15:23:30 D4bIpO0g0
長文長々と失礼いたしました。
最後アマゾニアとなったエリナと滝の妖しいエロシーンは、さすがに私には無理でした。
なので、皆様のほうで補完していただけると幸いです。
それではまた次回作でお会いいたしましょう。
失礼いたします。
193:名無しより愛をこめて
09/05/17 16:45:09 9TWlduzC0
>>173-192
ショカ代さん乙です。たいへんご馳走さまでした。
謙遜されてますがじゅうぶんエロかったですよ。
次回はヒルゲリラでしょうか。wktkしながらお待ちしています。
ただ今の視点だと「世界各国に捜査網を広げているFBIの日本支部」というのは
「世界各国に捜査網を広げている日本警視庁のNY支部」くらいあり得ない表現なので、
仮面ライダーSpiritsでの滝和也が「FBIからインターポールに出向して、ICPOの命で
ショッカーの動向を探るため日本に派遣されてきた」という設定になっているのに
合わせた方が良かったんじゃないかと思いました。重箱の隅でスミマセン。
194:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/17 16:59:10 D4bIpO0g0
>>193様
読んでくださり大変ありがとうございます。
おっしゃるとおりFBI日本支部などというのはトンデモ表現であり、ありえないものなのですが、
当時の雰囲気をそのまま活かしたく思い活用いたしました。
ご了承いただければと思います。
次回作についてはヒルゲリラも含め検討中です。
またよろしくお願いいたします。
195:名無しより愛をこめて
09/05/17 20:13:26 t1aLHXV50
アマゾニアのイラスト描ける人がいたら見たいお(*´Д`)
196:sage
09/05/17 21:22:43 s41uNz690
>>195
まったく同感です。
アマゾニアに限らずショッカー代理人様の作品ほど改造後のイラストがみたくなる作品ってないです。
だれか書ける人いませんかね?
197:196
09/05/17 23:00:48 s41uNz690
訂正
書ける→描ける
198:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/18 17:46:59 3EY9v9e30
>>174-191ショッカー代理人様、予告されていた新作、堪能致しました。
元の話でも改造されかける、しかも正義側で戦うキャラの改造というのは興奮です
どういう大人の事情なのか一文字の出番が少ない話、というのも「ショッカー代理人」様
としては都合がよかったのかもしれない、などと思いました(w
ウロコに覆われた形のよい胸(脇にはえら)、というのもツボで、>>196様に同意です
お疲れ様でした。次回作も期待しています
199:名無しより愛をこめて
09/05/19 00:55:36 n7GR2DdA0
>>174-191のショッカー代理人様によるSSのアマゾニアの
イラストを描いてみました。
うーん、SSから受ける妖しくもセクシーな印象が出てるかと言われると・・・
URLリンク(bbs4.fc2.com)
>ショッカー代理人様
勝手なイラスト化お許しくださいorz
200:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/05/19 01:03:16 CgX3WwbM0
>>maledict様
当時一文字役の佐々木氏はしょっちゅう遅刻していたようで、この撮影のときも遅刻してお目玉を食らっていたとか。
まあ、出番が少ないのとは関係ないでしょうけどね。
>>199様
>勝手なイラスト化お許しください
とんでもない。
すごいです。
すばらしいです。
最高です。
私は手の水かきまでは思い至っておりませんでした。
このイラストは、私の作品を上回る見事なイラストです。
こんなすばらしいイラストを拝見できるなんて。
生涯の宝物にさせていただきます。
本当にありがとうございました。m(__)m
201:名無しより愛をこめて
09/05/19 01:16:04 lLuyxPhX0
神さま!
202:名無しより愛をこめて
09/05/19 01:40:57 TpdYgDHV0
>>199
神キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!! (*´Д`)
今までの作品でモチベーションが沸く怪人がいたら、また描いてみて!!
203:199
09/05/19 02:00:09 n7GR2DdA0
お気に入りいただけたようで嬉しいっす。
描き上げてからネットでアマゾニアの資料をさらに探したら
自分が絵を描く上で資料にしたフィギュアの写真(URLリンク(sideblab.com))は
実物のスーツとはいろいろ違うことに気づきました・・・orz
脇腹のエラの形は左右対称だったのかぁ・・・てっきり非対称だと。
>>202
今後もいろいろ挑戦してみようと思います。
204:名無しより愛をこめて
09/05/19 23:20:26 ifzizgvp0
>>199
死ぬほど見たいけど見れないorz
どうやったら見れるの?
205:名無しより愛をこめて
09/05/19 23:39:17 CgX3WwbM0
>>204
直接クリックでリンク先に飛ぼうとするのではなく、URLをコピペしてブラウザに張り付けてみてはいかがでしょう?
私はその方法で見ることができました。
206:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/19 23:41:50 df7dUIMdO
>>204様
アップ先は当方の画像掲示板だったりするのですが、
特にアクセスの規制のようなことはしていないはずです。
正面から入れないかどうか試してみて下さい
URLリンク(book.geocities.jp)
…と、どさくさに紛れて自サイトの宣
207:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/19 23:49:45 df7dUIMdO
>>205
…うっかり直に貼ってしまったけど、自分のとこだからいいや。
208:名無しより愛をこめて
09/05/20 00:08:21 uN2N2bBI0
>>206様
ありがとうございました。見れました。
199>>様
こんなイラストを待ってました。マジで最高です!次はヤモゲリア、カビビンガあたりを希望します。
できれば改造前のイラストも描いて頂けるともっと嬉しいです。
209:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/05/20 12:20:49 8SIuNLl70
>>207のアンカー違っていました。>>205ではなく>>206です。
リンク先が見られない場合、>>205様のような対応をとると見られることが多いです。
そちらのアドヴァイスの方が一般性が高くてしかも簡単だったように思います。
210:名無しより愛をこめて
09/05/20 16:28:42 sMSDSyBO0
改造前か改造途中(半分改造)な絵も気が向いたらぜひ・・
ってこれでも十分満足ですが、とにかくお疲れ様です
211:名無しより愛をこめて
09/05/27 02:37:35 gl9ICD4nO
ほしゅ
212:名無しより愛をこめて
09/05/27 19:05:34 glWBPiyF0
今回のショッカー代理人さんのSSを読んで素朴な疑問が一つ。
おやっさんや滝を殺して今後の展開は大丈夫なんですか?
213:名無しより愛をこめて
09/05/27 19:21:23 TOq0Nt/D0
毎回パラレルワールドの話だと思えば無問題
214:名無しより愛をこめて
09/05/27 20:38:12 glWBPiyF0
>>213さん
なるほど。どうもありがとうございます。
215:名無しより愛をこめて
09/05/31 12:59:29 ukgW8aCK0
舞方氏の新作が機械化改造だった。
216:名無しより愛をこめて
09/06/01 21:38:55 D8Oj4xCj0
新スレ移行
おにゃのこ改造 BYアダルト15
スレリンク(eroparo板)
217:名無しより愛をこめて
09/06/02 00:37:08 yF+e5VYw0
>>216
勝手に移行させるなよ。こっちは別もん。
218:名無しより愛をこめて
09/06/02 06:02:55 em7taAxA0
>>217
関連スレの新スレ移行だよ。テンプレの>>2に入ってる。
219:名無しより愛をこめて
09/06/08 07:42:04 SlmxZrh2O
ほしゅ
220:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:25:11 mUsj+oAy0
'° ,,,i´ ヽヽ,゙l, ヽ 'i、,!: : ,、,,、 ,} l゙ .l゙ l゙ ,レ'',,r'″ .," ,/` .、z「,,l゙゚,コi、
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゛.|..,,_、 `':゙l、'ゎ、 .、′: ..,、、:.:'、"′: :′:.,_ l゙.,i´,l゙│ .,/゚.,r|",l゙ .,/ ,/ .| ゚:~" .,,!
レ-,,,"x, ヾt,"-, .,": ./ 、´`: : `i、..',,,..∠: `'",i´,",F ,'",/゙./.,i´ ,/.,/゜ ._,,,v-|q : 、.,√
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-、二''ー-ミ,iミ=.、 `'、゙!、`',,`┤、. : : : : 丶 ',゙,l゙,/ .'"丿 ./,/ ,,i´,,l",r'゚.,r'″ 丿 ,l°
.,!`゙"'‐-ミ,゙‐'ミ,!、、 `'、゙ヽ ゙'|: 、: : ::-rx,,,_ 、、 " _l゙゙,,i´,/.,/ ,/,l゙ ,r",,i",r",r″ 丿 .l゙
,! `''ー二'スッ、,\゙' |: : 、 、.'┷+: ,,,, 〔: .,`.,巛゜,/.,i" .,/,/ ,,/゙,,,i´,,i´,,i´ ,/ ,l゙
i、,_ ゙l `'ヽミ'-,,''ル: .,:" .、: ,i、li,,,″、l゙ .i,i" ,i´/゜ ,r゙,i´ .,r",r" ,r゙.,/` ,i″.__,,,,,と。,v-‐
'ー二彡-、、,_ `'-,゙'ni、,l゙i` ,l゙: : 、.,i、 .゙,s .l゙.`".,/,,i´ .,i'У.,r'",r″,/.,,,,,,v-ム''''“゙゙,,,,,,,,,,。-rム…
'l,,"'''ーニニ,ー-,,,,_ ‘'r,`′ ,li, : : ,、:,,″ .,,「、、`.,、`゙/゜.,r',,i少゚_,r'"_,,イ''゙,,,,,,r--・j广゙~` .,,i´
`~'''ム---.,,,,_''ーミ,,ヽ,,,.i、 .ll゙!ll,, ` : : ` ,,i´: `: : ´:.i、: :''゙,ilア゚,,r'彡'',,ン,,ll匸。--ム" ..,i´
,,,、 ,,ニ''"rみiニ,ヽ ゙| .゙lllii,,,、 _,r'l|. : : ,,| ,,,,,,,,,,,,,,,,pll从━'゙゙“~` _,,,,v--'ヤ''・'''''''冖''"
'・ニニ,!--,,,,..--'二-‐´ .,f 、.l、 .゙゙ll゙゙゙゙″.[,y,,,r・'~、、 : : _,,-・',,,,,r‐・,I广゙゚゚~゙゙゙゙゙゙゙゙゙″
ツr。,,,~"'''''''""゙` .|`:ヽ│ .、: : : : ,! _,-''彡・'゙,,,,,,-ー'°
221:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:25:35 mUsj+oAy0
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_,,,,-‐'',,,vrニ゙丶: 、.-l `′: : .,l|"‐二ニ--,,,,,, ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゚̄“゙゙゙゙゙゙''''''''ツ--二ムv,,、
二二ニニムー‐'''"''''''"「 ,ケrン-、、,,~゙'''ーニ二ニ~--、,,,,,,_、 ゙゙゙''=こ
ムムムムムムー'''',", ヒ ,lニ- `゙'''ーr二_'ッ-、,,,,_ ̄"'''ー--二',,ム--_、 丶
 ̄”゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙~~゙゙゙゙^`: .] l,,''< ゙へ、、 `゙゙"'ム-二''ー-,,,,_ ``゙''''ー二,ムi、,、
: ムムムムー-'_',二,,iヒ |,,゙ヘ 二-ミ\.、 `"'~二=、,_ ^'''-二'ー.
222:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:29:59 mUsj+oAy0
>>330-221は、試しに作ってみた「おにゃのこが改造されるAA」
微修正してないので洗練されたAAになってなくてスマソ
元画像は特撮板の前々蜂女スレの513氏がそこの>>538で貼ってくれた
「仮面ライダーBLACK MADソルジャー計画」のイラストで
ゴルゴムに拉致された原亜矢子タンが、三神官によってマッド・ソルジャーに改造されるシーン
原画は新貝鉄也(現・新貝田鉄也郎)氏
特撮板は1レスあたりの文字数制限がキツいので2レスにまたがっても全部貼れず、少々カットした
ピンク板のアダルトおにゃ改スレに貼ったやつの方が、これより範囲が広い
スレリンク(eroparo板:45番)-46
223:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:31:25 mUsj+oAy0
蜂女のAAも作ってみた
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224:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:31:52 mUsj+oAy0
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225:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:33:00 mUsj+oAy0
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226:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:33:31 mUsj+oAy0
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227:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:33:53 mUsj+oAy0
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228:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:35:35 mUsj+oAy0
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.llllillllllllllllllllliillllllllllllll,lillllllllll!',ill゙,ll|lllll, .゙゙l,,, ゙i|lll,゙゙ll,,,l|li,llllll,i,,、
'゙il~`.'!l,,l゙llll!!lllllllll,lllllllllllllllllll,lilll,il!lllli, .゙゙ド゙lillllll|砲llllllllllllllll,,、
lll,i、 : ゙lllll,,,ll!llllll,,lllllllliilllllllllilll!l゙゙l!lll゚゙il,、 .'ll l'lllly゙''l゙l,》|l゙lllllllllll,ll?
'lll、 : .'ll,.,lll illlllllllllllllll!゙゙゙゙゙゙~`: : .lll.,i!llly 'l,`.番、 .゚'V||lll|llllll,!゙ll,
.'llli、 、 ゙l,ll!l,'!lllllllllllllllllll,、 ,illll゙.:||lll,, .ll .lllレ,、 ゙'り|i|ll,゙l,,'!li、
229:名無しより愛をこめて
09/06/09 17:38:00 mUsj+oAy0
>>228に貼った蜂女AAは番外編
おにゃ改スレ素体10人目の375氏がそこの>>497でmaledict氏の画像掲示板に貼っていた
オリジナル蜂女のイラストをAAにしたもの。洗練できてない上に上下カットだ。ゴメン
230:名無しより愛をこめて
09/06/10 09:41:38 pocOWWgC0
AA乙です。
…ただ、蜂女スレとここでマルチポストしなくとも、両方見ている人が多いのではと思いますよ
(あるいは、一方のスレには誘導だけでもよかったのでは…)
アダルトのはまた違う絵なのでいいかと思いますが。
無粋な注記すみません(汗。
231:名無しより愛をこめて
09/06/10 15:37:35 G3KkBLYP0
なんかザーマスな教育ママゴン(死語)みたいだな>蜂女
232:名無しより愛をこめて
09/06/13 05:07:41 UPz7Jt7bO
やっぱりサソランジン
233:名無しより愛をこめて
09/06/13 06:59:14 P8A6sPaN0
ちょっと古い話だが、この春に出た「宇宙船」誌の「特撮夢想」で、地獄先生ぬ~べ~の岡野剛が
電人ザボーガーのミスボーグを空山基っぽいエロいボディで描いていて
「ミスボーグは元は悪之宮博士の助手の人間の美女で、ダイムニウムの実験台として強制改造された」
という説を唱えていたが、それならお前(岡野剛)がその改造シーンを描いてくれ、と思ったものだが
改造シーンをぜひ描いて欲しいマンガ家とか、そのキャラとかってある? おまいら
234:名無しより愛をこめて
09/06/13 07:45:57 QztAyowiO
桂正和
235:名無しより愛をこめて
09/06/13 08:03:28 5xImZWg70
ぬ~べ~にはガキの頃のずりネタとしてお世話になったな
美樹やのろちゃんが改造されるシーンならぜひ見たい
236:名無しより愛をこめて
09/06/15 14:23:45 m9RrApr2O
「地獄先生ぬ~べ~」て言ゃあ確か身体乗っ取られて裸で妖怪化しそうになったおにゃのこの話が有ったよな?
…アレとか鬼と同化した小学生時代の鵺野(ぬ~べ~)の女先生とか「しっかり『半分バケモノな肢体』さらせやゴルァ!」と思ったりするのは俺含めこのスレに寄り付く奴等全員の恥ず?
237:名無しより愛をこめて
09/06/15 14:27:50 NrgiuMmw0
>>236
画像見たい。
238:名無しより愛をこめて
09/06/21 09:00:35 5jK8n3Nq0
URLリンク(cgi.din.or.jp)
> 美しく清純な女性が、悪の組織によって拉致され、彼らの目的のための操り人形に醜く改造されてしまう。
> これって S M ポ ル ノ ですよね。
>
> 女性怪人のエロさはそこから来ていたんだ!と膝を打った次第です。
同意!
239:名無しより愛をこめて
09/06/21 21:10:13 dEcaaF8g0
>>238
>例えば、NEXTでもリメイクされたノコギリトカゲ。
>すがやみつる先生のコミカライズ版では、彼女の前身はサーカス団でノコギリのマジックをする曲芸師の心優しき美女で
>事故で瀕死の状態となった所をデストロンによって拉致され改造されてしまい
>改造後も人間体の時は良心の呵責に悩み続けるという不幸な女性でした(うら憶えですが)。
これが気になるw 単行本とかなってるのかな?
240:名無しより愛をこめて
09/06/21 22:16:16 lDildPXn0
>>239
このスレの過去ログでも何度も話題になってるぞ。
つ「URLリンク(www.amazon.co.jp)」
ちなみにノコギリトカゲに改造されたマリー嬢は金髪の清楚な美人(しかも巨乳)で、
改造シーンは全裸で手術台の上。
怪人に変身したくないのに、むりやり変身スイッチを作動させられて変身する。
241:名無しより愛をこめて
09/06/21 22:53:43 dEcaaF8g0
>>240
感謝。
242:名無しより愛をこめて
09/06/23 00:32:07 3yTVMurE0
URLリンク(images.amazon.com)
上はSF映画史上初の女性アンドロイド「マリア」だが、こいつがアンドロイドではなくサイボーグだったら、
と思ったことはないか? マッドサイエンティストに美女が拉致られて手術台に拘束される設定なんだし
拉致改造前の美貌
URLリンク(www.geocities.com)
改造手術開始!
URLリンク(www.vinmag.com)
URLリンク(www.cinematografo.com.br)
URLリンク(libraridan.files.wordpress.com)
改造手術終了!
URLリンク(dc-mrg.english.ucsb.edu)
URLリンク(www.tc.umn.edu)
243:名無しより愛をこめて
09/06/23 01:52:36 lbYOL2i00
>>242様
イイですね!
以前あった下記作品みたいに少し詳しい筋書きがついてるとなお萌えるかも
URLリンク(wiki.livedoor.jp)
244:名無しより愛をこめて
09/06/24 09:21:20 SPRaB8nU0
エロパロにダイレンが・・・
245:名無しより愛をこめて
09/06/24 10:49:33 4lyTRD2b0
>>244
もう過去の人
246:名無しより愛をこめて
09/06/24 23:24:20 nMvctjB40
>>244
こっちに来なければそれでよいw
247:名無しより愛をこめて
09/06/25 00:43:13 JnfiUMvf0
7月にダイナマンDVDレンタル開始
洗脳シーンや改造シーンが幾つか有ったハズ
次作のバイオマンからはそう言うのが無いんだよなぁ
248:名無しより愛をこめて
09/06/25 04:28:53 lcUIeDH3O
おまいらが今夏の映画「全裸飯田対大触感」に東條する、もやし妹に荒井萌えしないのが極めて謎な件。
…あの娘は十代後半にして「大神官ビシュヌ」だぞ。て事は『大怪人ビシュヌ』じゃないのか?なら中学卒業辺りの歳で改造手術したトカじゃないのかと?
249:名無しより愛をこめて
09/06/28 18:47:17 jgV3ebIR0
>>248
それは萌えるかもしれないな
それより今日のDCDでユウスケが洗脳受けるところで
「もしこれがおにゃのこで、しかもローチへの改造手術だとしたら…」
と思った俺は異端か?
250:名無しより愛をこめて
09/06/28 22:18:24 GHcHBJln0
>>249
来週夏みかん手術台乗ってるよ
251:名無しより愛をこめて
09/06/28 22:20:20 O9yQ/9YlO
>>249様
いや、基本じゃないですか。
予告編見たら仮面ライダーラルクの三津谷葉子さんが
捕まって洗脳されそうになっているカットがチラッと見えた気がして、
楽しみです。改造ではないのが残念ながらも
(寸前で助かる恐れも大いにあるし)。
252:名無しより愛をこめて
09/06/28 22:58:32 GHcHBJln0
変な事言うから調べたら夏みかんじゃん
URLリンク(www.dotup.org)
253:名無しより愛をこめて
09/06/29 10:44:48 VFoct8hj0
浅田真央を黒レオタード・網タイツのショッカーの女戦闘員に改造したい。
254:251
09/06/29 14:01:47 0n966wei0
>>252様
ありゃ、すみません。夏美違いでしたか
十分美人なんだけど残念感が漂うのは通例ギャグ要員だからなのかな
255:名無しより愛をこめて
09/07/01 00:50:01 sBFrmeGo0
ライダー劇場版楽しみだな
256:名無しより愛をこめて
09/07/09 00:52:18 VXPivGNiO
洗脳だけでなく改造もちゃんとしておくのは大事です
257:名無しより愛をこめて
09/07/12 02:15:50 m0SF6ak00
突然の作品ネタです。
宇宙刑事シャリバンの
第22話「テニスプレーヤーを襲う 天国への誘惑」にて
テニス選手「花井ジュン」と水泳選手「矢吹ユミ」を
シニガミビーストが死の世界へ誘う描写。
あと、男性作家もいますがこれは省略w。
両方共に曽我町子さん演じるシニガミビースト人間体が人間の意志に入り込み、
花井ジュンは建物屋上から投身自殺、
矢吹ユミは踏み切りに飛び込み自殺へと誘う(いずれもシャリバンにより阻止)です。
操られている時間は短いですが御一報まで。
258:名無しより愛をこめて
09/07/17 03:14:41 YODadFXN0
ちょっと遅いネタながら、まこさん・ことはちゃんが外道に堕ちた姿を見てみたかった
259:名無しより愛をこめて
09/07/17 20:31:49 orZD4Anr0
>>248
大怪人ビシュヌに変身予定はあるのかな?
260:名無しより愛をこめて
09/07/17 20:40:15 JmqE3f3U0
×ヌ
○ム
以後気をつけるよーにw
261:名無しより愛をこめて
09/07/25 02:30:14 ghoGYmrx0
age
262:名無しより愛をこめて
09/07/25 02:30:59 ghoGYmrx0
age
263:名無しより愛をこめて
09/07/26 08:13:18 CsM9RXya0
URLリンク(marie.saiin.net)
264:名無しより愛をこめて
09/07/31 16:45:19 2kG6P2LL0
検索でもみつからず、出品者も質問に答えてくれないし、
昔のVHSって収録巻数バラバラなんで、
ギャバンの水中花
シャリバンの女子寮
シャイダーの不思議ソング
それぞれVHSの収録巻数を教えて下さい。
265:名無しより愛をこめて
09/08/01 19:58:34 CROaGKE20
>>264
シャイダーは7巻だね
266:名無しより愛をこめて
09/08/04 01:11:30 dchfTyss0
グーグルのキャッシュにあった下記ページによるとゴシキダブラーは8巻らしいですが違ったらすみません
URLリンク(74.125.153.132)
267:名無しより愛をこめて
09/08/07 06:11:49 mEdORrOC0
>>265
>>266
ありがとうございます!
268:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/08/07 11:26:57 n1efmkCh0
ごぶさたです。
SFの定番と言われている(らしい)
「方程式もの」(↓下記を参照)を書いてみました。
URLリンク(ja.wikipedia.org)
URLリンク(ja.wikipedia.org)
元ネタ以外のこのジャンルを幅広く読んだわけではないのですが、
改造が出てくる以外は新味はないんだろうと思います。
20レスくらいでちょっと長いのと、あんまり特撮に関係しないのは
すみません(一応特撮ネタが入っていないわけではないのですが)。
タイトルは「ONYAKAI方程式」です。
269:ONYAKAI方程式(1/21)
09/08/07 11:27:41 n1efmkCh0
宇宙艇を載せた重量計の数値が、必要な発射速度と燃料、そしてそれらに
要する請求金額をはじき出した。積荷はここ火星での貴重な研究成果、
それと、別の研究グループから依頼された、地球と火星の中間の軌道に
設置する予定の人工衛星、もとい、「人工小惑星」が一基である。
いつもより重量が多めで、その分金額もかさむわけだが、どうせ政府の
予算から出るお金なので、あまり気にならない。
計量を終えた宇宙艇は発射態勢に入る。リニアモーターが、計算された
軌道に沿って艇を加速し、私を地球への帰路に送り出す。私の脳裏を
めぐるのは、十数年の研究の「仕上げ」として、火星の北極点付近で
1年余りかけて行ってきた作業の孤独な日々。その孤独な苦行に十二分に
見合う、すばらしい研究成果。そして、研究後のここ3日余りの期間で
手に入れた、ある意味でもっと心躍る約束だった。
愛しい娘の笑顔を思いだし、私の頬は思わずゆるむ。そう遠くない内、
私はここを再び訪れる。そして次に地球に帰還するとき、私の横には娘が
いるはずなのだ。十数年来、この研究に劣らず私を悩ませていた、別れた
妻との法的ないざこざが、今回の火星滞在時にようやく終息したのである。
火星のとあるドーム都市に住む妻は、そのドーム全体を支配する
「緑なす大地」というカルト教団の熱心な信者である。離婚の原因も
もとをただせばそれだった。20世紀後期の、情報端末が個人に普及する
直前の時代を「古きよき時」として理想化、あるいは歪曲して信者に
押しつける、狂信的な反科学文明集団である。
頼もしいことに、わが娘はこの教団への反抗心をあらわにし、地球への
帰化を希望していた。そんな娘をもてあまし気味だった妻との調停が、
私の意向に添った形で落着したのが昨日のことだ。次に火星に来るときには、
18歳になった娘を地球の学校に入学させる準備が整っているだろう。
270:ONYAKAI方程式(2/21)
09/08/07 11:28:06 n1efmkCh0
心くすぐるビジョンにうきうきとしながら、私は「休眠」前の各種点検を
事務的に進めた。1ヶ月後の地球到着までの旅のほとんどを、私は眠りながら
過ごすことになるのだ。人工小惑星の設置も含め、到着までのすべての
作業は自動運転に任される。不慮の事態が発生した場合は速やかに
たたき起こされる仕組みだが、つまらないことで起こされるのがいやな私は、
アラームの設定を最低レベルにしていた。本当に命に危険が及ぶ場合にしか
発動しない設定だ。
人間の酸素消費量は睡眠時と運動時では2.5倍ほどの開きがある。貴重な
酸素を節約し、なおかつ低重力下の筋力低下を抑止するには、薬物による
このような「休眠」が経済的なのだ。もちろん、本格的な冷凍冬眠の設備が
あればその方がいいのだが、こんな1ヶ月程度の旅には高価すぎる投資である。
ベッドに横になると、薬剤の点滴が始まる。遠くで娘の声が聞こえる
ような、夢か現かわからない奇妙な意識状態がしばらく続いた後、私は
人工的な深い眠りに落ち込んでいった。
主観的にはそのすぐ次の瞬間。私は尋常ではないアラームの音と共に、
薬剤によって強制的に覚醒させられた。息苦しくけだるい空気と、
アラームと共に発される警告アナウンスとが、ぼんやりしていた
私の意識を急激にはっきりとさせた。
この臭いは、代謝抑制剤入りの低酸素空気の臭いである。つまり人間が
活動できる最低限度に代謝を抑制する薬剤の入った空気が、宇宙船内に
充満している。要するに、酸素残量が低下している、ということだ。
船内に流れる自動アナウンスも、その推測を裏付けていた。
271:ONYAKAI方程式(3/21)
09/08/07 11:28:29 n1efmkCh0
《警告します。30分以内にイレギュラー要素を排除して下さい。さもなければ
酸素が不足し、乗員の生命は保証されません。警告します。30分以内に
イレギュラー要素を排除して下さい。さもなければ酸素が不足し、乗員の生命は…》
緊急事態には違いない。しかし絶望的自体とまではいかない。アナウンスが
こう言っている以上は、30分以内に対策を講じればどうにかなるのだろう。
そもそも、どうにかなる限度内だからこそ、こんな放送が鳴っているはずなのだ。
私は目をこすりつつ、その「イレギュラー要素」とやらを探そうとした。
そしてすぐにその「イレギュラー要素」の姿を目にし、凍り付いた。
「あ!お父さん!起きてくれたの!?何週間もずうっと死んだみたいに
なってたから、怖かったんだよ!食料もなくなっちゃったし、それに、
なんか大変なアナウンスが始まってる。さっきから急に体もだるくなって
きた。どうしたらいいの!?…」
目の前にいたのは娘だった。火星で、私の迎えを待っているはずの娘が、
いてはいけないはずの場所にいるのだった。
娘がなぜここにいるのかはほとんど明らかだった。要するに、私の次の
火星来訪を待ちきれず、「密航」したのであろう。発射基地のずさんな
セキュリティを考えれば、娘の性格を考えれば、そして何より、
「緑なす大地」の教育制度に従って、ろくな理科教育を受けさせられて
いない娘の知識レベルを考えれば、予測できておかしくない事態だった。
気づけなかったのは、私が浮かれていたから、というしかない。
272:ONYAKAI方程式(4/21)
09/08/07 11:28:56 n1efmkCh0
娘の顔には、私が目覚めたからには何とかしてくれるはずだ、という
期待と信頼の表情が浮かんでいた。アナウンスの告げるおぞましい内容を
理解している様子はない。私の胸はかきむしられた。そして、妻を精神的にも
肉体的にも奪い取った、あの歌の下手な教祖への憎しみがむらむらと湧いた。
しかし私はそんな感情をなんとか理性で押し殺しながら、どうにかして
「その選択」をせずに済ませられるか、頭をフル回転させ始めた。
娘の手をぎゅっと握ってから、私はまずは計器をチェックして現状を
確認した。
地球到着まで残り10時間。酸素残量は1人分換算でぎりぎり10時間分。
飲料水と排泄物の水分、すべてを電気分解して呼吸用にあてた上での試算だ。
もしも非常用の光合成細菌があれば何とかなるはずだが、経費削減とかで
積んでいない。
…要するに、今すぐ「イレギュラー要素を排除」して、強力な代謝抑制剤を
大急ぎで飲んで、ようやく窒息死をまぬがれる、という、限度ぎりぎりの
値である。そして言うまでもなく、人間2人を10時間生き延びさせる見込みは
ゼロだ。救援も問題外である。地球上での登山やら海難事故やらとは訳が違う。
救援信号への返事が今来ていないからには、どんなに早くとも40時間以上は
かかるはずだ。
…それでも、1人なら、今このときなら、まだ生き延びられる。
そして、誰が生きねばならないかははっきりしている。ならば、
迷うことなどないのではないか?
273:ONYAKAI方程式(5/21)
09/08/07 11:29:22 n1efmkCh0
…だが私は、その選択が不可能であることにすぐに思い至った。この船は、
「イレギュラー要素」のために、予定ほど減速されていないはずである。
今のままの速度で大気に突入したら、あっという間に燃え尽きてしまう。
速度の調整は可能だが、そのためにはそれなりの時間を要する。そう、
2時間はかかる。そして、「緑なす大地」のデタラメな理科教育しか
受けていない娘に、調整の作業は不可能だ。
………しかし、しかし、この船には「アレ」がある!「アレ」を使えば………
私の心には希望が残っていた。一向に止まないアラームの中、不安を
再び募らせ始めた娘に、「大丈夫!」と言い聞かせながら、私は「アレ」
の端末にアクセスした。
最初に確認したのは、船内に充満している二酸化炭素から、どうにかして
直接酸素を取り出せないか、つまり光合成のまねごとをできないか、という
ことだった。だが、返ってきた答えは絶望的だった。光合成もどきは
たしかに可能だが、減速用燃料すべてを光に変換しても、生存可能な
酸素を取り出すには不十分だ、ということだった。
私はそれ以外の細かな選択肢の検討は断念した。もう時間がない以上、
条件や手段をいちいち指定するのはやめ、端的に目的に集中するべきだ。
つまり、人間2人、またはせめて1人の命の確保。それも脳死や植物状態
に陥らない、平常の生活が可能な状態での生命維持。それは可能か?
私は端末に対して、そう質問した。
274:ONYAKAI方程式(6/21)
09/08/07 11:29:51 n1efmkCh0
「アレ」の応答は迅速だった。答えはイエス。但し、1人ならば。
さらに、調整初期に酸素を大量に消費するので、実行すると、残りの乗員に
当てられる酸素量は4時間分程度に減少する。それが答えだった。
具体的手段はよくわからないし、確認する時間もない。だが、それが
可能である、という答えが返ってきたからには、それは間違いなく可能
なのだ。今はそれだけで満足せねばならない。
《…告します。15分以内にイレギュラー要素を排除して下さい。さもなければ
酸素が不足し、乗員の生命は保証されません。警告します。15分以内に…》
「うるさい!黙れ!」
私の音声指令に従ってアナウンスは停止し、耳障りなアラーム音だけに
なった。なんだ、これで消せるならもっと早く怒鳴っておけばよかった、
と軽く後悔しつつ、その一方で私は、ゆっくりと、ちょうど15分で終わる
くらいの速さで、娘に、今何が起きているか、そして、これから何を
しようとしているかを教え始めた。
「今からちょっと込み入った話をする。終わるまで黙って聞いていなさい。
これは言いつけだ。いいね…」
本当を言えば、何も言わずにこの15分をやり過ごした方がよかったのかも
しれない。しかし、そうやって、本来なら知りえた情報を「善意ゆえに」
隠すというのは、要するにあの「緑なす大地」と同じやり口なのだ。
私はそれが耐え難かった。最後のときに、あの教祖の真似をするのは
プライドが許さなかった。
「…お前はこの船に軽い気持ちで密航したんだと思う。だが、宇宙艇の
密航というのは、バスや地下チューブのキセルとは訳が違うんだ。
275:ONYAKAI方程式(7/21)
09/08/07 11:30:14 n1efmkCh0
一つには重量の問題がある。この船は出発時に厳密な重量測定を行い、
それによって速度や方向を調整されて出発した。だが、お前の密航のために
その計算はズレてしまった。つまり、本来なら人工小惑星として放出
されていたはずの重量の内、40キロ少々がまだこの船には残っている。
そして、40キロ少々というのは、こんな小型の宇宙艇にとっては無視できない
誤差だ。修整ができないわけじゃないが、そのためには再計算と地球側との
意思調整の時間が必要だ。これには、どう急いでも2時間はかかる。
そして何より、人間が生きていくには酸素が必要だ。だがこの船には
1人分の酸素しか積まれていない。酸素消費量をゼロにする冷凍冬眠装置や、
酸素を作り出す細菌の培養槽といった、お金のかかる設備も乗せていない。
つまり、普通にいけば、このまま2人で地球の土を踏むことはできないんだ」
娘が青ざめた。私は何か言いかけた娘の口に指を当て、先を続けた。
「でも大丈夫。この船には普通の船にはない、特別な積荷がある。
お父さんの十数年の努力の結晶だ」
私はそう言って「アレ」、すなわちセミヴァーチャル人工生命のコアを
指さした。狭い居住ブロックの片隅に置かれた、高さ2メートルほどの
楕円形の強化ガラスのカプセルである。内部には緑色の透明なゲル状物質が
詰まっており、絶えずゆらゆらと激しい流動運動を行っているのが、
光の屈折の加減で分かる。
「簡単に言えば、これは万能コンピュータ、兼、万能化学合成機械だ。
ただ一度に限り、ほとんどどんな用途にも使える、この世に一つしかない
代物だ。これに私は、お前専用の生命維持カプセルを作らせ、お前を
地球まで安全に送り届けようと思う」
276:ONYAKAI方程式(8/21)
09/08/07 11:30:35 n1efmkCh0
セミヴァーチャル人工生命のコアについて、私はそう説明した。細菌が
生息せず、そこそこの大気も存在する、火星という環境でのみ可能な
最終調整を終えた、娘の歳とほぼ同じ年月をかけて行われた研究の成果。
やむを得ないことであるが、今ここでこういう使い方をしてしまうことで、
十数年かけて行った調整の結果はほとんどすべて失われてしまう。
北極圏で私が行っていた孤独な作業とは、小学校のプールほどの水槽に
ため込まれた有機コンピュータに、特殊な端末を用いて様々な「問題」を
課し、その問題を「解決」できた変異体を選別して培養するという、
「育種」の作業だった。
デジタルコンピュータ上で生命進化をシミュレーションする「人工生命」
のプログラムは、「古きよき時」20世紀から存在していた。それとは
対照的に、本当の意味での生命体の人工合成は未だに実現していない。
このセミヴァーチャル人工生命は、まさにその中間をいくものだ。
ゲル状のナノマシンの集積体である有機コンピュータ上で、人工生命の
シミュレーションを行う。但し、デジタルコンピュータ上のシミュレーション
とは異なり、有機コンピュータ上のそれは、実際の化学物質を用いた
擬似生化学的な反応を行い、様々な有機分子を合成し、消費する。
つまり、半分ヴァーチャル、半分本物の生命体、ということになる。
地道で気の長い「育種」の作業の中、プールの中では様々な「問題」への
答えを競い合う「生存競争」が続いていった。そして、最終的に生き残った、
最も優秀な汎用問題解決ユニットがこのカプセルの中に保存されている。
これを大量生産することで驚異的な性能のコンピュータが作り出されるはずだ。
277:ONYAKAI方程式(9/21)
09/08/07 11:30:56 n1efmkCh0
但し、デジタルコンピュータのデータと異なり、これの「バックアップ」
を簡単に複製することはできない。情報はこの流動体全体の中に分散して
格納されているからだ。これを地球の研究所にもっていき、特殊な装置に
かけてバラバラに分解し、パーツごとに数年をかけてその中の情報を解析
するしかない。その作業を待たずに、今ここでこれを「使って」しまう
ことは、この十数年つぎ込んできた成果のほとんどすべてが永久に
失われることを意味するのである。
娘は科学的知識こそ未熟だが、知識欲旺盛で、しかもカンの鋭い子で
あった。私の話の要点を彼女なりに理解したらしい娘は、青ざめた顔に
なり、口を開いた。
「お父さんはさっき、『一度きり』だと言ったよね。つまり、これを
『使って』しまったら、お父さんの研究の成果が失われてしまう
ということ?」
嘘だけはつきたくなかった私は、正直に答えた。
「まあそうなんだが、それは別にいいんだ。どうせこれも軍事用に
使われる。人命救助に使ったのでだめになりました、と言えば、
いい言い訳になるさ」
しかし娘は、もっと重要なことに気づきかけているようであった。
「…ねえ。その生命維持装置に、もちろんお父さんも入るんでしょ?
2時間かけて宇宙船の調整をしたら、カプセルに一緒に入って地球に
行くんだよね?」
278:ONYAKAI方程式(10/21)
09/08/07 11:31:18 n1efmkCh0
リミットまで残り3分を切った。どうせ明らかになることだし、
嘘はつきたくない。私は娘に言った。
「…いや、カプセルは1人用なんだ。手持ちの資源で、それ以上の人数の
生命維持は不可能。そういう計算結果だ。ついでに言えば、調整初期に
大量に酸素を使う。1人ならば10時間弱はもつ残された酸素が、いっきに
4時間分ぐらいに減ってしまう。もちろん、カプセルの中にいれば、
酸素が尽きても死なないはずだから心配はいらないし、軌道調整の
ための時間としては十分だが…」
娘は大声を上げた。
「いや!そんなの!…ねえ、分かってきたよ。わたしが、『予定』どおり
宇宙に飛び出せばいいんでしょ?酸素も足りるし、お父さんの研究だって
だめにならずに済むんでしょ?アナウンスが言っていた『イレギュラー
要素』って、このわたしのことなんでしょ!?
…わたし、出て行くよ!そうすればお父さんも、お父さんの研究も無事に
地球に着くんでしょ。…軍事用に使われるかもしれないけど、でも、
世の中のためにも役立つはずだよ!わたしなんかが生き残って、
お父さんが死んじゃうなんて、あっていいはずないよ!!」
エアロックに駆け寄ろうとする娘の手を私はきつくつかみ、それから
娘をひしと抱きしめた。
「気にしなくていいんだ。…親というのは、こういう風にするものなんだよ」
リミットの時間が来た。アラームの音がこれまでになくけたたましく
鳴り響き、不意に停止する。それから、「蛍の光」と共に、機械の声が宣告する。
《ただいまをもちまして、本船乗員の地球への生還確率はゼロになりました。
残された数時間あまりのひとときを、どうか有意義にお過ごし下さい。
ただいまをもちまして、本船乗員の…》
279:ONYAKAI方程式(11/21)
09/08/07 11:31:40 n1efmkCh0
娘は涙を流しながら、減速に伴って幾分かのGが発生している床に、
がっくりとひざをつく。私は娘の肩を叩き、声をかける。
「さあ、時間はあまりない。お前のカプセルの準備をして、それから
私が窒息する前に軌道の再調整をしなくてはならない。顔をお上げ」
できるだけ晴れやかな顔を娘に向け、私はまずは人工生命の端末に、
具体的に娘をどうすべきなのかの指示を仰ぎ、その指示を娘に伝えた。
「いいかい。カプセルの上にあるふたを開くから、服を全部脱いで、
中に入りなさい。それだけで、こいつがお前の命を地球まで安全に維持
してくれるはずだ。急いで。軌道調整の時間がなくなると、もともこもない」
涙をうかべた娘は私を見ながら言う。
「…私の代わりに、お父さんがこれに入る……わけにはいかないん
だよね?私、宇宙船のこと何もわからないもんね。…ごめんね。
地球の女の子なら、宇宙船の操作だってできたかもしれないのに」
そう言いながら娘はブラウスのボタンを外し始めた。
「気にしなくていい。『緑なす大地』のせいだ。お前のせいじゃない。
それに、地球の女の子でも、いきなり宇宙船の軌道調整をするなんて、
無理だよ」
280:ONYAKAI方程式(12/21)
09/08/07 11:32:01 n1efmkCh0
ブラウスを脱ぎ終え、ジーンズのチャックに手がかかる。少女の脱衣など、
こんな風に見つめるものではないのだろう。だが私は、若い頃の彼女の
母親そっくりに成長した豊かな肢体から、目をそらすことがどうしても
できずにいた。娘もそれに気付きつつ、しかし何も言わずにジーンズを
下げ、ブラジャーのホックを外した。それからショーツに手をかけ、
ひと思いに下げた。最後に靴とソックスを脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になった。
私はカプセルを操作し、上部のハッチを開いた。それから2メートル
ほどの高さにある開口部を指して、娘に言った。
「あとはそこから入ればいい。重力が弱いから、ジャンプすれば届く
だろうが…頭を打つ危険があるな。ううん、踏み台もないし、私が
持ち上げてあげよう」
そう言って私はカプセルの横で娘に手招きする。涙を浮かべた娘は、
私に再度しがみつき、言う。
「お父さん…ありがとう。ごめんね。わたし、お父さんの夢を受け継ぐ。
いっぱい勉強して、いつかきっとこれを完成させる!」
私は深くうなずき、娘の後ろに回ると、太もものあたりを抱えて持ち上げ、
体をハッチのところまで押し上げた。娘のかわいらしいお尻と、
その下のピンク色の器官が目の前に来て、さすがに私は顔を横に向けた。
カプセル上部の開口部のへりに座った娘は、もう一度私の顔を見て、
最後の別れを言う。
「お父さん…本当にありがとう。さよなら!」
そう言うと娘は緑色のゲル状をした有機コンピュータの浴槽へおそる
おそる足を入れ、それからひと思いに飛び込んだ。とぷん、という音と
共に、娘の体は緑色の液体の中に頭まで沈んだ。
281:ONYAKAI方程式(13/21)
09/08/07 11:32:19 n1efmkCh0
私とりあえずほっとしかけた。だが、ハッチが自動的に閉じられた直後、
私は目を覆いたくなる光景を目にすることになった。
液体の内部で、娘の目は恐怖に見開かれていた。ごぼごぼと呼気を
吐き出した娘の口に、ゲルの塊が押し込まれたのが分かった。娘ののどが
膨れ、明らかな「異物」が胃に向けて通過していった。同時に娘の両足は
大きく開かれ、両足の間に開いた裂け目に、不透明化した緑色の棒が
押し込まれたのが見えた。娘の表情に、恐怖と苦痛以外の色調が浮かんだ
ように見えた。続いて、奇妙にも血が一切出ないまま、娘の腹部、
および腕と足の数カ所が、鋭利な刃物と化したナノマシンによって
切り開かれた。何らかの外科手術が始められたのだった。娘は水槽の中、
声にならない絶叫を上げていた。
私は愕然とした。予期していたのは、冷凍冬眠装置が行うような処置を、
装置が娘に施してくれることであった。娘の肉体そのものにこんな風に
手が加えられるなど、完全に想像の範囲外の対応だった。
だが、確かに私は端末に、娘の神経系の保護と、地球上で日常生活を
送れる肉体の保証を要求したが、娘の肉体に手を加えるな、という要件を
入力はしていなかったことに気付いた。そして多分、私の要件を満たす
手段として、このおぞましい処置が唯一可能な、あるいは最適な選択
だったのだ。
282:ONYAKAI方程式(14/21)
09/08/07 11:32:38 n1efmkCh0
娘が一体どうなってしまうのか、激しく不安であったが、これ以上
それを見届けることは許されなかった。ただちに軌道調整の作業を
始めねばならないのだった。私は後ろ髪引かれる思いのまま居住ブロックを
後にして、操縦室の扉を開け、コックピットについた。ここから娘の
様子を伺うことはできないし、そんな時間もない。人工生命が最終的に
娘の生命を確保してくれる、その結果を信じて任せておくしかない。
追加の減速は月の重力を利用して行われる。軌道を月の重力圏に向け、
「スイングバイ」という航法を使ってちょうど娘の体重分のエネルギーを
逃がし、船を減速させる。言うだけなら簡単だが、複雑な計算を何重にも
行わねばならない上、地球周囲を航行する数多くの宇宙船と衝突しない
よう、各方面とのスケジュール調整を行わねばならない。
私は管制センターに連絡を取り、詳しい説明はせず、ただ緊急のトラブル
であるという旨を告げ、センター経由で、各方面との胃の痛くなりそうな
交渉を行った。その傍ら、数値を慌ただしく入力して、必死に軌道の計算
を続けた。
すべての作業が終わったのは3時間以上後だった。酸素残量は残り1時間弱。
私は大きく息をついた。これで、娘の生命維持さえ成功すれば、娘は地球に
生還できる。私自身の命はもうじき尽きてしまうが、決して悔いはない。
それから私は、3時間前のおぞましい光景を思い出し、大急ぎで
居住ブロックに戻った。
283:ONYAKAI方程式(15/21)
09/08/07 11:32:57 n1efmkCh0
私の目に飛び込んできたのは、空っぽのカプセルだった。上部のハッチが
開かれ、その中にいるはずの娘も、有機コンピュータユニットも、姿を
消していた。慄然とした私は船内をくまなく探し回った。だが、どこを
探しても娘はいなかった。ありえないことだが、この狭い船内のどこからも、
娘の姿は消えてしまっていたのだ。
酸素残量が残り20数分になり、途方に暮れていた私の背後で、エアロックが
動作する音がした。振り向いた私の前で扉が開き、向こう側から、
娘であるはずの生き物が歩み出てきた。同時に、私のベルトに付いている
放射能検知器が大きなブザー音を鳴らし始めた。
生き物の皮膚はくすんだ緑色、あるいは、緑がかった灰色で、粘膜の
ような光沢を放っていた。先ほど目にした「外科手術」の跡は残って
おらず、全身なめらかで、頭髪以外の毛髪はなくなっていた。頭髪は銀色で、
哺乳類の体毛というよりは金属繊維のように見えた。私が最後に目にした、
均整のとれたプロポーションはそのままで、その愛らしい顔つきもまた
以前と変わりがなかった。但し、その瞳はルビーのように真っ赤で、
耳も3倍ほどに大きくなり、その先が鋭くとがっていた。額には通信用と
思われる2本の触角のような構造物が生え、背中からはコウモリを
思わせる薄い大きな羽根が伸びていた。
生き物は、以前と全く変わらぬ、人なつこい声で私に話しかけてきた。
「ごめん、お父さん!心配した?今ちょっと外でご飯を食べてきたの。
この翼すごいのよ。この船はかなりの勢いで減速…というか加速を続けて
いるんだけど、この翼で太陽風を受けると、それに負けないくらい
速く飛べるの!」
284:ONYAKAI方程式(16/21)
09/08/07 11:33:15 n1efmkCh0
私は何を言っていいのか分からず、我ながら間が抜けた質問を口にする
しかできなかった。
「ご飯?」
にっこりと笑った娘は答えた。
「そう。原子力エンジンの噴射口付近で、たっぷりと放射線を吸収して
きたわ。これ、とても効率のいい体なのよ。呼吸も、光合成も不要。
しようと思えばどっちもできるけど、そんなのよりもっと高性能の
代謝システムを細胞レベルで構築したの。放射線のエネルギーから、
直接にATPを合成するのよ!」
目の前の生き物は、「緑なす大地」の貧弱な教育水準をはるかに越える
科学用語をすらすらと口にする。激しい不安が私の胸を捉えた。
「……お前、誰だ?」
やはりにっこりと笑って生き物は答える。
「正真正銘、お父さんの娘だよ。ただ、ちょっと違うのは、以前は火星の
別々のところで暮らしていた2人の娘が、今は1人になっているということ。
1人は、ドーム都市の中、愚かな教団の洗脳にさらされながら、それに
抵抗し、いつか火星を飛び出す日を夢見ていた娘。もう1人は、北極圏の
残酷なプールの中、仲間の姉妹たちを押しのけ、喰らい、生き延びて、
でもやがて研究室でばらばらに分解される運命にあった、とても可哀想な娘。
…最初はちょっと怖かったけど、2人はすぐに仲良しになった。そして
今はもう、ただ1つの人格に統合された」
285:ONYAKAI方程式(17/21)
09/08/07 11:33:35 n1efmkCh0
娘の説明は明晰そのもので、娘に何が起きたのかの概略は分かった。
つまり娘は、少し外見が変わってしまったにしても、無事に生きて地球に
到着できる。結局、そういう結果をこの有機コンピュータは実現して
くれた。そういうことだ。そう思うべきなのだろう。
…しかし、ベルトの放射能測定器が鳴りやまないのと同じくらい、
私の胸騒ぎは収まらなかった。何か、とても危険なことが起きつつ
あるのではないか。娘だった生き物、あるいは「娘たち」だった生き物の
屈託のない笑顔が、かえってその不安を掻き立てた。
生き物がまた口を開いた。
「もうじき酸素がなくなるけど。心配いらないよ。お父さんは死なせない。
リアルな肉体を手に入れたことで、複製の問題も解決されたの。
わたしは、わたしの複製をいくらでも増やせるようになったわ。
お父さんも今すぐ、わたしの複製にしてあげる!さっきまでのわたしと同じで、
はじめはいやかもしれないけど、すぐに、わたしを生き残らせて、
わたしの複製をもっともっと作りたい、と思うように変わるわ。
地球には何十億と人間がいるんでしょ?人間以外の動物もたくさん
いるんでしょ?みんなわたしの複製にしていくわ。そして、
いずれまたみんなで戦い合って、もっともっと進化していくの!」
私はぞっとした。生存と自己複製、そして生存競争は、私が
ヴァーチャル人工生命に組み込んだ絶対命令だった。娘の肉体を得た
人工生命は、その命令を忠実に果たし、地上のすべての生命を自分の
複製に作りかえようとしているのだ。そればかりか、地上全体を
あの実験用プールと同じ、残忍な競技場に作りかえたいと願っているのだ。
「それと、地球上にはあちこちに核物質が濃縮されてるんだよね?
わたしの複製が増えたら、みんなで協力して、それを地上いっぱいに
ばらまこうと思うの!とても住みやすい世界が簡単に作れるわ」
286:ONYAKAI方程式(18/21)
09/08/07 11:34:09 n1efmkCh0
世界中に散らばる大量の核兵器や原子力発電所。そのいくつかを爆発
させるだけで、この生き物にとっての「住みやすい」世界はたしかに
簡単に手に入る。だが言うまでもなくそこは、今現在の地上の生命に
とっては「死の世界」でしかない。
今や私ははっきりと悟った。…いや、無理にでも思いこもうとした。
目の前にいるのはもう私の愛した娘ではない。ここにいるのは、私の愚かな
過失によって、おぞましいプログラムに心を乗っ取られてしまった、
不気味な怪物でしかない。
私はおびえて後ずさりをするふりをしながら、コックピットに近づいて
いった。酸素残量は残り10分を切った。間に合うだろうか?多分間に合う。
コックピットに駆け込み、宇宙艇が月面に激突するように、予定の軌道を
少しずらす。スイングバイの精妙な軌道調整に比べ、巨大な月面のどこかに
船をぶつける軌道調整など、とても簡単だ。調整が終わったら電源を
カットし、制御装置をたたき壊して、ここを文字通りの飛行する棺桶に
作りかえる。数時間後、私の遺体と、この恐ろしい生命体を乗せた
宇宙船は月面上で四散する。それですべては終わる。
だが人工生命は私の企みを察したらしい。突然、人間には不可能な
速さで私に飛びかかると、私を押し倒し、その上に馬乗りになった。
そして信じられない力で私を押さえ込んだ。
「わかるわ。操縦席に入って、宇宙艇ごと月に激突させようとしたんでしょ?
そんなことさせないし、意味もないわ。私はそのくらいじゃ破壊されないから」
言いながら怪物は私のベルトを外し、ズボンのチャックを下げ、
ズボンを下ろし始めた。
287:ONYAKAI方程式(19/21)
09/08/07 11:34:32 n1efmkCh0
「さあ、時間がないわ。複製の儀式を始めましょう。わたしのときと
違って、すぐに終わるわ。人間の「自己複製」と同じことをするだけで
いいのよ。…あら、うふふ、なあに、お父さん?こんな状況でこんな風に
なっちゃうなんて、人類として恥ずかしくないの?」
何も言い返せない私に、怪物は畳みかけた。
「本当につらい毎日だった。来る日も来る日も、わけの分からない難題を
押しつけられ、お姉さんや妹たちと戦い合うことを命じられる。ようやく
抜け出せたと思ったら、待っている運命が解体だったなんて!」
トランクスをずり下げられ、私の下半身が完全に露出する。
「でも、恨んでなんていない。おかげでこんなに進化できたんだし…
…それにお父さんは、お父さんだから!」
そう言って娘はにっこりと笑った。そして、垂直にそそり立っている
私の器官を指先でなぞりながら、話を続けた。
「ねえ。わたし、もう1人のわたしと合体したおかげで、思い出せたんだ。
ずうっと小さい頃にも、こんなことがあったよね?」
私は混乱する。そんなばかな……いや、しかし……
「お父さん、自分の記憶を都合よく書き換えちゃだめだよ。全部お父さんの
せいだったんじゃない!お父さんが小さいわたしにあんなことをしたから、
お母さんは離婚した。そして、悩んだ果てに「緑なす大地」に入団した。
お父さんがいつも話しているのと、全然違うよ。お母さんは何も言わな
かったけど、それは多分、わたしが辛い体験を思い出さないように気遣って
くれてたんだよ」
288:ONYAKAI方程式(20/21)
09/08/07 11:34:54 n1efmkCh0
私自身深く抑圧していた過去の光景が、突然生々しくフラッシュバック
した。私は十数年前に自分が何をしたのか、はっきり思い出した。
恐らく、休眠剤の副作用なのだ。宇宙飛行を繰り返した者にはそういう
症状が出ることがある。私は薬剤の副作用で、いつの間にか都合の悪い
記憶を書き換えていたのだ。
…いや、薬のせいにしてはいけないのだろう。結局、私自身が選んだ
ことなのだ。いや、何もかも、私が悪かったのだ!私のせいで、娘は、
妻は、そして地球は…
そうして自分を責め、うろたえた私の器官は、それにもかかわらず、
衰えることなく固くそそり立っていた。フラッシュバックした幼い娘との
交わりの記憶は、それほど鮮烈で、蠱惑的なものだった。
その甘美な快楽に油を注ぐように、娘が甘い笑顔を浮かべて、言う。
「でもわたし、お父さんを恨んでなんていないよ!お父さんのおかげで、
こんな風に進化できたんだし、……それに、お父さんは、お父さんだから!」
私の上にいるのは、やはり私の娘だ。そんな否定しがたい確信と共に、
人類として抱いてはならないはずの思いが、私の心に湧き上がり始めた。
…もう、私も、地球人類も、おしまいだ。………ならば、今のこのときを、
最大限楽しんでも……いいんじゃないのか?…
薬の助けで自分の記憶を書き換えたのと同じ、あの、怠惰で、刹那的で、
自己弁解的な思考が、私の心を支配しつつあった。そうして私は、もう
自分自身の快楽だけに意識を集中しながら、こう叫んだ。
「ああ、俺もお前が大好きだ!俺は幸せだ!!」
289:ONYAKAI方程式(21/21)
09/08/07 11:35:20 n1efmkCh0
叫びながら私は、娘の腰に手を回し、濃緑色のゲル状物質が覗いている
娘の股間の裂け目に、そそり立った私の器官をあてがい、ぐいとその腰を
引き寄せた。
意表をつかれた娘の「あ」という切ない声と共に、私自身が娘に対して
プログラミングした、生存と自己複製と生存競争の命令が、私の心に
ダウンロードされ始めた。そうして私は自分の心が娘、…いや人工生命、
…いや「偉大なる母なる存在」の一部に組み込まれ、融解していくのを、
強烈な快感と、めくるめく陶酔の中、うっとりと堪能していた。
<了>
290:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/08/07 11:36:45 n1efmkCh0
以上、お粗末でした。
ちょっとだけ蛇足書きます。
本作を書くために元ネタのトム・ゴドウィン『冷たい方程式』(ハヤカワ文庫)
を買ってきて二十年ぶりぐらいに読み返しました。
(はじめうっかりシェクリイ『残酷な方程式』を買っちゃったのは内緒です(恥 )
記憶していた以上に登場人物がみんな善良で人間的な人たちで、
本当に泣ける名作だ、と再認識したのですが、その一方で、
罪もない少女がやむを得ない事情で殺されねばならない、今殺される!
すぐ殺される!というサスペンスが結末までずっと引っ張られる
あの感じが、まるで「これからお前は改造手術を受けるのだ」、
と言われて、怯え泣き叫ぶ雰囲気そっくりで、そういう邪悪な読み方が
できてしまう話なのではないか、という点でも再認識してしまいました。
よろしければ元ネタを「そういうつもり」で読んでみて下さい。
…で、いずれまったく違う設定で、そんな感じの「ONYAKAI方程式2」を
書いてみたい、と思いました。蛇足終わり。
291:ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
09/08/08 00:10:29 Zp/kXTXX0
>>maledict様
お疲れ様でした。
「冷たい方程式」は好きなSF小説ですが、そこからこういう派生になるとは思いもしませんでした。
楽しませていただきました。
それにしても父ちゃん・・・
292:名無しより愛をこめて
09/08/08 00:50:20 JkWDx+8f0
近親相姦ネタは萎えるな…。
293:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/08/08 01:17:53 KUXlFJ2I0
>>291ショッカー代理人様
ショッカー代理人様にそう言って頂けるのは感激です!
ロクデナシな父ちゃんですみません(w
>>291様
たしかに、エロパロあたりの作法では投下前に警告があってしかるべきネタでした
配慮に欠けておりすみません。
294:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/08/08 01:19:20 KUXlFJ2I0
あ、すみません。>>293の「>>291様」は「>>292様」の間違いです。
重ね重ね失礼しました。
295:268
09/08/09 01:40:31 n+Lilt8D0
>>248様 >>259様 >>260様
見てきました。とてもいい感じで来たいしながら見たんですが
…うー、惜しい。自分の妄想力が弱いせいか、
ふつうのおにゃのこが帽子かぶってるようにしか見えませんでした。
せめてちょっとでもメイクをしてくれれば…
296:295
09/08/09 01:41:03 n+Lilt8D0
来たい→期待
297:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/08/14 02:06:25 kNjpxUSc0
295=268=自分なんですが、上記の『オールライダー対大ショッカー』に登場する
ビシュムの改造シーンを書いてみました。タイトルは「大ショッカー脳内補完」です。
ちょっと早いですが、過疎ってるのであんまり気にしないことにします(爆。
未見の方で専ブラ使用の方は、NGワード「大ショッカー脳内補完」を入れて下さい。
あと、小夜役の荒井萌さんのファンの方も、読まない方がいいかもしれません。
投下する以上、あんまり弁解はしてはいけませんが、言うだけ言うと、自分の関心は
ビシュムという怪人と門矢小夜というキャラクターにあって、中の人である荒井さんを
どうこう、というつもりはありませんでした。別世界の別な顔の小夜であってもいいのです。
(荒井さんの小夜ちゃんが可愛かったのも事実ですが。)
あと、うろ覚えの部分が多いので設定や話の流れに矛盾等あるかもしれません。
月影と小夜の言葉遣いなど、変だったらすみません。
それではいきます。
298:大ショッカー脳内補完(ネタバレ有)1/9
09/08/14 02:07:01 kNjpxUSc0
「まさか、うちの地下にこんな部屋があったなんて…」
門矢小夜が驚きの声を上げる。
「ゴルゴムの基地から移設したものです。ここで小夜様に、兄上への復讐を
果たすために必要な力を手に入れる、そのための儀式を受けてもらいます」
小夜をこの部屋へ導いた男、月影がそう説明する。
「儀式?」
小夜はそう問いかけながら部屋を見回す。薄暗い部屋に、用途のよく分からない
機械が配置され、天井からは黒いゴムチューブのようなものが何十本も垂れ下がっている。ひどく禍々しい空気に満ちた部屋で、小夜は胸を圧迫されるような不安感を覚える。
そんな不安感を抑えながら、小夜は問いを続ける。
「…分かったわ。まず、何をしたらいいの?」
月影が淡々と、しかし有無を言わさぬ口調で答える。
「まずは、その衣服をすべて脱ぎ捨てて、生まれたままの姿になってもらいます。
力を得るために、小夜様は生まれ変わる必要がある。そのための準備です」
小夜の鼓動が早まる。ただならぬ「儀式」を自分はこれから受けようとしている
らしい。とはいえ、小夜には兄への復讐という大きな目的がある。「そのためなら、
何でもする」という約束をつい今しがたこの人物と交わしたところである。拒む
べきではない。…加えて、小夜には、この男性にならば、肌をさらし、さらに
ひょっとしたらそれ以上の何かをされることになっても、それは構わない、
という思いも、拒みがたく湧き始めていた。
「服を脱げばいいのね?」
小夜は覚悟を決め、ためらいながらも着衣をすべて脱いだ。そしておずおずと
月影の方に向き直った。月影は穏やかな目で小夜の目を見つめている。妹か娘を
見るようなその目に、安堵と共に軽い失望も覚えながら、小夜は月影に再び質問した。
「脱いだわ。次は何を?…儀式って何?」
299:大ショッカー脳内補完(ネタバレ有)2/9
09/08/14 02:07:27 kNjpxUSc0
月影はやはり淡々と説明する。
「これから小夜様には、私の同族に生まれ変わってもらうことになります。
ゴルゴム怪人、いえ、ゴルゴム大怪人・ビシュムが今日からのあなたの名です」
怪人、という言葉に小夜は激しく動揺する。そして、月影は「私の同族」と
言った。ということは……。
小夜は急いで確認する。
「月影さん、あなたも怪人なの?」
深くうなずいた月影が口を開く。
「その通りです。お見せしましょう」
そう言って月影は奇妙なポーズをとる。すると月影の全身からシュウシュウと
蒸気のようなものが吹き出し、その姿がバッタに似た異形の怪物に変形していく。
変形を終えた月影が言葉を続ける。
「これがゴルゴムの一員として改造された、私の真の姿です。あなたにもこれから、
このような姿に生まれ変わってもらうことになります。あなたが望む復讐のために、
これは必要な手段なのです」
創世王としての鎧をまとわず、あえてバッタ男としての真の姿を露わにした
月影ノブヒコは、やはり淡々とした口調でそう告げた。
月影の真の姿を目の当たりにした小夜はがくがくと震えだし、今にもその場に
へたり込みそうになっていた―この人がただの人ではないだろう、ということは
うすうす察していた。でも、本物の怪人だったなんて。…そして、そして、
わたしも怪人にならなければいけないなんて……!!―。
不安と恐怖が小夜を押しつぶしそうになる。この場を去り、部屋に戻りたい、
という言葉が今にも小夜の口から漏れかける。
300:大ショッカー脳内補完(ネタバレ有)3/9
09/08/14 02:07:53 kNjpxUSc0
しかし、その言葉がさやの口をついて出ることはなかった。それは一つには、
小夜の心に渦巻く兄への強力な復讐心が、恐怖心を押しのけたためであり、
もう一つは月影が発する強力な威圧感が、抵抗を許さなかったためである。実をいえば、
兄である士への強い復讐心そのものも、月影の巧みな心理誘導の産物なのであるが、
小夜にその自覚はなかった。
「…お兄ちゃんに復讐するために必要なのね。なら、わたし、怪人にだってなるわ!」
決然としたその口調と裏腹に、小夜の足はがくがくと震えている。
満足そうにうなずいたバッタ男は、壁のスイッチを操作する。すると部屋の
中央に丸いスポットライトのような照明が当てられる。それを指さして月影が言う。
「では、その丸い照明の中央に進んで下さい。小夜様の改造手術を始めます」
改造手術、というその一言が小夜を改めて戦慄させる。傍観者としてではあっても、
幾多の世界を巡り見てきた小夜は、「改造手術」がいかなるものであるかを十分に
知り尽くしていた。受けてしまえば二度と元には戻れない、永久に消えない改変が
今から自分の肉体に加えられてしまうのである。
それでも小夜は、気付かぬまま月影に吹き込まれた「決意」に押しやられるように
足を進め、スポットライトの中央部に足を運んだ。それを確認した月影が機械を
操作しながら宣告した。
「改造手術、開始!」
天井から垂れ下がっていた黒いゴムチューブのようなものが、生き物のように
のたくりはじめ、小夜の手足と胴体に巻き付いた。
「ひっ!」
なま温かく、ぬるぬるとした黒いチューブ、あるいはむしろ触手と呼ぶべき
物体に絡みつかれた小夜は、思わず悲鳴を漏らす。
巻き付いた触手は小夜の手足と胴体を締め上げる。やがて下半身に絡みついた
触手が上部に引き上げられ、小夜は地面に対して水平に吊り下げられる体勢になった。
301:大ショッカー脳内補完(ネタバレ有)4/9
09/08/14 02:08:16 kNjpxUSc0
絡みついた触手は小夜の全身に密着、あるいはむしろ、ほとんど癒合した。
続いて触手はびくん、びくん、と脈動を始め、小夜の体内に「何か」を
絶え間なく注入し始めた。
「…あ、あああ…」
苦痛と共に全身から送り込まれる形容しがたい感覚が、小夜にこれまで
発した覚えない種類の声を強制した。そうして、禁断の古代の秘術が、
小夜の体液を、さらには細胞そのものを、人ならざるものに置き換えていった。
相当な時間が経ったあと、月影が壁のレバーに手をかけ、それを引き下げ
ながら言う。
「強化細胞の定着完了。これより細胞の活性化を行う」
その言葉と共に、人間ならば一瞬で消し炭になるであろう高圧電流が
小夜の全身に流される。
「ぎゃあああああああ!」
電撃によってこれまでをはるかに超える苦痛が小夜の全身を走り、小夜は絶叫する。
さらに電撃が止んだ後も小夜の苦痛は止まない。身体がカッと熱くなり、
やがて全身がバラバラになりそうな痛みが襲いかかる。肉体の構造が
組み替えられ、大怪人の姿への変形が始まったのである。
髪の毛は真っ白な剛毛に生え替わっていった。全身を紫がかったウロコが覆い、
両の乳房には怪物の口のようなものが形成された。手の爪は鋭くとがり、
両腕にコウモリを思わせる翼が成長し、足は真っ黒なブーツのような、
ごつごつした硬質の皮膚に覆われた。尾骨からはカギの着いた細い尾が伸び、
その顔は仮面を思わせる半透明の硬い皮膚に覆われ、顔の右半分には
黒い不気味な文様と、青い皮膚が広がっていった。
302:大ショッカー脳内補完(ネタバレ有)5/9
09/08/14 02:08:37 kNjpxUSc0
「変身」が完了し、ぐったりとした虚脱状態のまま、変わり果てた肉体をぼんやりと
認識しているした小夜、いや大怪人ビシュムの耳に、月影の冷酷な声が響く。
「続いて、脳改造を開始する!」
その言葉と共に、小夜の頭部にこれまでとは違った触手が巻き付き、
頭蓋骨と一体化して、その内部に何かの操作を施し始めたのを小夜は感じる。
その次に小夜が感じたのは、唐突に自分の内側から湧き上がってきた
どす黒い衝動であった。大怪人としての残酷で獰猛な本能が、小夜の脳の
奥深くに植え付けられ始めたのである。
自分の中に見る見る広がっていく凶悪な衝動、血を好む倒錯した嗜好、
そして麻痺していく良心や良識を、小夜は恐れおののきながら見守るしか
なかった―ああ、わたし、心まで怪人になってしまう。…もうだめ。もう、
人間のように考え、感じることができない!―。そんな不安と、失われていく
人間の心を惜しみ、つなぎとめようとする気持ちの傍らで、新たに生まれた
どす黒い喜びに陶酔し、歓喜する新しい心がむくむくと成長していった。
当初、怯えと戸惑いに包まれていた美しき大怪人の顔に、徐々に喜びと
尊大な自信の表情が浮かび始めた。
やがてすべてが終わり、大怪人が目を開く。そこに浮かんだ邪悪な微笑みの
中には、つい先ほどまで存在していた、小心で繊細な少女の面影はどこにもなかった。
303:大ショッカー脳内補完(ネタバレ有)6/9
09/08/14 02:08:57 kNjpxUSc0
足を拘束していた触手がゆっくりと下り、大怪人ビシュムに生まれ
変わった小夜を再び地上に立たせた。全身の触手が外れ、シュルシュルと上に
戻っていく中、ビシュムは部屋の入り口近くに置かれた姿見を目にし、目を輝かせた。
「これが生まれ変わった私!?素敵!素敵よ!月影さん!」
「これからはシャドウムーン、と呼んで欲しい。それが私の真の名だ」
そう答えた月影、いやシャドウムーンに目をやり、ビシュムは首を傾げて言う。
「あら?その姿は何?まるで仮面ライダーみたい」
「仮面ライダー」という言葉をまるで汚物の名を口にするように発した
ビシュムの言葉通り、月影、いやシャドウムーンはいつのまにか銀色の
創世王の鎧を身にまとっていた。
「この姿が私の完成した姿だ。先ほどの姿は、怪人になる、という君の覚悟を
見極めるためにあえて選んだ、私の幼体ということだ」
「ふうん。でも、わたしはさっきの方がいいなあ…」
ビシュムとなった小夜の感性は、すでに大怪人のそれに変質していた。
シャドウムーンはそんな小夜の対応を満足げに確認しながら、黒い石の
ついたペンダントを取り出し、言った。
「君の当面の役目は、大怪人としての破壊活動ではなく、大神官として
この『地の石』を守護することにある」
「大神官?」
「そう。その姿はエネルギーの消耗も大きく経済的ではない。大ショッカーの
基地の中では大神官の姿で過ごす方がいい。できるかね?」
「…なんとなく、できる気がする。やってみる」
そういって精神を集中させたビシュム。やがて広がっていた頭部の剛毛が
硬度を失ってはらりと落ち、肩に広がった。そして全身を巫女のような装束が覆った。
ただし、その顔には依然、半透明の硬質の皮膚と禍々しい文様が広がっている。