08/06/03 00:59:47 TJkx6x5YO
駅名に憧れで2月の初旬に奥津軽へ一人で旅に出た。
奥津軽の駅前に降り立つと、駅の外は深い積雪に埋もれ、道は全く見当たらなかった。
年老いた駅員に「この辺に宿はありますか」、と聞くか、強い津軽訛りで話が通じず困った。
どうやら4㌔ほど先に1軒の小さな民宿があるらしいが、営業しているか否かは駅員にも分からないらしい。
その老駅員から輪カンジキと藁蓑、藁靴。防寒の油紙と唐辛子を借用し、雪上の竹棒に付けられた赤布を頼りに深雪を泳ぐ様にもがきながら民宿を目指した。
幸い宿には泊まる事が出来たが、早い夕食は赤いキツネとインスタント味噌汁のみであった。客は私一人だけだ。
部屋の片隅には、どこから吹き込んだのか雪が積もっていた。夜八時には部屋の暗い裸電球を消された。宿の女が仏壇用のロウソクを部屋に置き、無言で部屋を出ていった。