10/01/18 19:15:02 rs/zHIC+0
仕事仲間の話。
遠い山間での住宅改装を請け負った彼は、毎日のように山中の峠道を越えていた。
きちんと整備された道路も造られているのだが、回り道の上に信号が多く、渋滞に
巻き込まれる率が高いので、舗装もされていない寂しい峠を通っていたそうだ。
ある日、仕事が押してすっかり遅くなってしまった晩のこと。
突然、車体後部で破裂音がして、まともに運転が出来ないほど激しく震動し始めた。
車を止めて確認すると、右後輪がバーストを起こしている。
溜息を一つ吐き、スペアタイヤの交換に入った。
運悪く室内灯が切れていた。手元が暗いため、非常用の工具が中々取り出せない。
と、後方より明かりが差し込まれた。通り掛かった誰かが助けてくれた様子だ。
「これはこれは、どうもありがとう」
目当てのレンチを手にして、礼を述べながら振り返る。
そこには、古めかしい提灯を手にした着物姿の小さい人影が、ぽつねんと立っていた。