09/08/17 18:15:52 WnJspB/Q0
Sさんは戦前より、クマ獲り名人として誰もが認める人だった。
折に触れ「クマを決して下から攻めてはいけない」と、
その理由や過去の出来事を話してくれた。
つまりクマは弾が急所に当たっても絶命までの何秒かの
間に、向かってこようとする猛獣で、その際、上に上って
くるのは体力が必要なので来難いが、下にいる敵に対しては
容易にいけるので襲撃してくる。
Sさんはシカ狩りをするつもりで、ハンター4人と犬1頭で
近くの山に入った。
そこには大きなヒグマの足跡がついていた。
なれた猟師が見て、今行ったばかりの跡だと判断された。
ヒグマは沢の右手斜面を上へ向け登っていた。
そしてかなり登ってから、南斜面を右へと進んでいた。
そこでSさんは跡を付けるから、他のものは山の上方に
行くようにと銘じた。
ここを行くクマは大抵あの山へ行く。
親子で獲って他の者には肉を少しやればいい、という考えが浮かんだ。
ヒグマは南斜面を過ぎ、東斜面へと向かっていた。
そこを300mほど追跡したところで、繋いでいた犬が
縄を引っ張りだしたので放した。
犬は笹薮の中を100mほど走って、熊笹の中で
ワンワンと激しく吠え立てた。
息子のRくんは若さにものをいわせ、笹を押分けて近寄った。
30mくらいに寄ったとき、突然ヒグマが飛び出した。
それを息子は4発撃ったが、クマは倒れず、再び近くの
笹に潜り込んだ。