09/05/26 13:05:46 fwrmHhxF0
みんなまったり行こうぜー。
というわけで、嫁が通ってた小学校であったという話。
そこでは6年生が林間学校と称し、観光地とは程遠いド田舎に行かされる。
その日の日程では、昼間は登山、夜はお約束の肝試しが組まれていた。
小学生が教師に連れられ山を登っていると、
道のわきにある岩に一人の老人が座っている。
体は道の反対を向き、顔だけを道の方に向けて、にこにこと子供達を見つめている。
その笑顔は翁の能面に似ていて、とても優しそうだった。
礼儀正しい生徒がその横を通り抜ける際、
「こんにちは。」と挨拶したが、老人は返事せずただにこにこしてるだけ。
訝しく思ってよく見ると、老人の脚が膝下までしかはっきり見えないことに気づく。
その先はぼやけており、向こう側の景色が透けて見えた。
だが昼間であるし、周りに級友もたくさんいたことから、
気がついた数人の生徒は口をつぐみ、あるいは気のせいだと自分を納得させ、
その時は大きな混乱にならなかったという。
そして夜。
肝試しと言っても小学生の事だから大したものは行わず、
先生に連れられて宿舎周辺の暗い道を散歩する程度のものだった。
それでも都会とは違い、伸ばした手の先も見えないほどの暗闇に、
生徒達は十分怖がっていた。
一通りめぐって宿舎まであと少しという頃、
畑の向こうの方にぼんやりと光っている何かが見える。
「あれなんだろうね?」と皆で首をかしげて見つめていると、
その光がゆっくりとした平行移動で滑るように近づいてくる。
ある程度まで距離が縮んだ時、誰かが叫んだ。
「さっきのお爺さんだ!」
先ほどの老人がぼうっとした光を放ちながら、
透けた脚を動かすことなく、文字通り滑るようにすーっとこちらに来るのだ。
顔には相変わらず笑顔を浮かべたままで。