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宮崎駿の短編アニメ「On Your Mark」解説
主人公たちが大量の遺体の中で、亡くなった少女の衣服をつかむ場面があるが、
陰惨な現状を直視できない2人にはこの衣服が羽に見えてしまう。
画面手前を探索する2人の警官がいるが、これは主人公たちではない。
亡くなった少女は2人の所属組織に対立する宗教団体の者で、銃撃戦で射殺されたと見られる。
その証拠に警官は、武器を持つのに無抵抗の相手を容赦なく殺戮しており、
部屋の中を確認もせず銃を乱射、爆弾を投げる描写がある。
少女を施設から運び出す時に頭まで布で覆われているのも死亡しているからである。
何度も少女に近づくシーンを繰り返すが、よく見ると2人はフェードインするように画面に入ってくる。
これは少女を救出するシーンのほとんどが空想であることを意味する。途中で花束が出てくるが、
汚染された空気で植物は育たないことがそれを暗示している。
居酒屋のメニューからは生物が自然界に生息できないことや、
登場する警官が誰もマスクを外していないことから、空気汚染が進み、
マスクを外したら危険なことがわかる。しかし、正常な精神を保てない主人公らはマスクを外してしまう。
後半、車が無残にも墜落していった後に、最初のシーンまで戻るのは、
空想が誤った方向に向かってしまったからで、2人は最初からやり直して
地上の世界へ逃げ出すことに成功する。だが、街に人影が見えないことや、
看板の文字、道路標識から放射能汚染が確認できる。
ラストで、走行していた車が道を逸れて停車しなければならなかったのは、
2人が汚染された空気と放射能で息絶えたからだと推測できる。
羽の生えた少女が見せる最後の微笑みは、自由を手にした喜びではなく、赦しの微笑みともとれる。