09/05/04 14:09:54 OdFMjR5t0
捜査本部にて。
俺は昨日、貧乏暮らしから解放されたばかりで有頂天だったというのに、部下が陰気な事件の話をぶり返してきた。
「警部、例の焼死事件ですが、これは不幸な事故ってことでよろしいですか?」
「例の焼死? 何の事件のことだよ。ちょっと説明してみろ。」
「ほら、先日の焼死事件ですよ。公園のベンチに座っていた金融会社の若社長が焼け死んだって事件。」
そう、それは余りにも不幸な偶然の重なった事故だった。
犠牲者の男性は、テレクラで知り合った女子大生との待ち合わせの為、街角の公園前に向かった。
その途中、アイスクリームを持っていた女子高生とぶつかって服が汚れてしまったので、急いで丁度目の前にあった洋服店に寄り、店員がしきりにお勧めした綿のTシャツを買った。
彼は公園前のベンチに座って待っていたのだが、その時地面は真っ黒だった。昨日、ベンチの背後にある公園のゴミ捨て場に書道家が大量の墨汁を捨てて行った。
今朝公園でキャッチボールをしていた青年二人の内、一人がボールを投げる際に手元が狂って墨汁の瓶を倒し、地面に墨汁をぶちまけてしまっていたのである。
彼が待ち合わせ場所で中々来ない女子大生をイライラしながら待っていると、ゴミ捨て場に主婦がサラダ油の瓶を捨てにやってきた。
その後、チンピラ風の不良がやってきて、傍の植込みやゴミ箱に当たり散らした。彼はサラダ油の瓶も蹴り倒す。地面に、油が零れた。ベンチにもそれが掛った。
最後に、学生風の男が、水の入ったペットボトルを持ってやってきた。彼は近所に住む苦学生で、猫の鳴き声がうるさかったから避けようとした、と後で供述している。