じわじわ来る怖い話23じわ目at OCCULT
じわじわ来る怖い話23じわ目 - 暇つぶし2ch822:本当にあった怖い名無し
09/05/03 22:48:06 fOzFu7MgO
夕暮れの薄闇の中、俺は得体の知れない胸騒ぎを覚えながら、いつものように一人で高校からの帰り道を歩いていた。

俺の通う高校は小高い山の頂上付近を切り開いた場所にあって、しかもバス停まで山道をかなり歩かなければならない。
あたりは静かだ。―しかし何だろう、この妙な気持ちは……
ふと思い出した。そうだ。最近このあたりに〈切り裂き魔〉と呼ばれる変質者が出没しているのだ。
全身黒ずくめでフードをすっぽり被り、マスクで顔を隠した大柄な男。右手にカッターナイフを持っている。
帰りが遅くなったうちの高校の生徒を狙って山道の影に潜み、奇声を上げながらいきなり襲ってくるという。
すでに五人もが遭遇している。幸い怪我を負わされた生徒はいないが、その内の二人はショックで今も入院中らしい。
警察の捜査も捗らず、当面は決して一人では下校しないようにと、全校生に学校側がくどいほど注意していた……
ジャリ。突然背後で足音が聞こえ、俺は飛び上がった。反射的に振り向く。
「―なんだ、竹田か」クラスメイトの顔を認め、安堵のあまり溜め息がこぼれた。竹田。校内でほぼ唯一俺と口を利いてくれる男。
さっきまでのもやもやとした不安が急速に晴れていく。竹田がいれば安心だ。
「おまえ……何やってんだよ……こんなところまで出てきて」竹田は俺の顔を見るなり聞いてきた。
「何って、おまえと同じで一人で帰ってただけだぜ?」
「“帰ってた”って、こっちは……」竹田の様子がどこかおかしい。心なしか声が震えている。まるで怯えているみたいな。まさか―
竹田、俺を疑っているのか? クラスの大半から「アブない奴」扱いを受けている俺が、じつは〈切り裂き魔〉だったと―
ああ、何てことだ。動揺のあまり左手が疼く。とうとう竹田までがそういう眼で俺を。
「ち、違うんだ竹田。誤解だ、俺は〈切り裂き魔〉なんかじゃ―」
「まだわからないのか。そういうことじゃないんだ」やりきれないという風に頭を振り、竹田は沈んだ声で、
「その左手の傷……いいか、〈切り裂き魔〉なんて、もう―」左手の傷?
「……まあいいさ。所詮同じだもんな」竹田は再び頭を振ると言った。「一緒に戻ろうぜ。正門まで」

その瞬間―「正門」という言葉を聞いたとたん―、なぜだろう、俺はたまらなく哀しくなってしまった。



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