09/07/03 08:17:07 ME/D0RRX0
アンナとデーヴィッドは恋人同士だった。
アンナはカトリック教徒、デーヴィッドはユダヤ人だったが、そんなことは恋する二人には関係がなかった。
二人の交際はそれぞれの家族に反対された。親たちは、あの手この手を使って別れさせようとした。
ふたりは、変わらぬ愛を誓うために、それぞれの右腕に、刺青を入れた。
「我、永遠にアンナを愛す」
「我、永遠にデーヴィッドを愛す」
生涯、消えることのない愛の言葉。それを見て、それぞれの家族も二人に干渉するのを諦めた。
しかしふたりは結局、結ばれることは無かった。
ドイツ軍が国境を越えて、ふたりが済んでいたワルシャワの町を攻撃したからである。
それから6年、ポーランドはドイツに占領された。
デーヴィッドはユダヤ人だったので、その家族もろともどこかへ連れ去られた。
戦後、アンナはデーヴィッドにゆくえを必死になって調べたが、手がかりはなにも無かった。
ある日、古書店で、アンナはたまたまある本を手に取った。
立派な皮の装丁。その表紙をじっくり見ていた時、アンナは気づいた。
アンナはその場に崩れ落ち、号泣した。