09/03/20 19:42:51 DCoyMAHJ0
友人の住むマンションのエレベーターは、奥が鏡張りになっている。
家に遊びに行った時、その友人が俺にこんな話をした。
「エレベーターって入口の方を向いて乗るじゃん、そうすると鏡が背後でしょ」
ま、確かに。普通はそうやって乗るね。
「でね、乗ってる時になんだか背後に視線を感じる時があるんだよね・・・」
え?おいおいまさか・・・。
「だけどよーく考えたらさ、背後の鏡に映ってる自分の視線なんだよねw」
やっぱりそう来たか。そりゃお前、勘違いってヤツだぞ。
背後の鏡に映ってる自分は背中を向けた自分。視線など感じるわけがない。
俺がその理論を述べると、友人は「あはは、そっかーw」と笑っていた。
夜も更け、友人宅をおいとました俺は件のエレベーターに乗る。
ん?・・・なんだか背後に視線を感じる?
そんな馬鹿な話あるわけない。さっき理論的に解明したばかりじゃないか。
気になり、背中を向けたまま手鏡で覗いてみる。もちろん映るのは俺の背中。
ふと振り返ると、鏡に映るのは眼鏡をかけた俺の顔。・・・当たり前の事だ。
馬鹿馬鹿しい、何やってんだ俺はw
自嘲の笑いが込み上げて来た瞬間、突然グラッと大きな揺れを感じる。
地震だった。
エレベーターは止まり、白い蛍光灯が消え、代わりに薄暗い電球が灯った。
非常停止状態らしい。咄嗟の事にうろたえる俺が鏡に映っている。
が、すぐにまた蛍光灯がつき、エレベーターも何事なく再び動き出した。
1階に着き、駐車場へ向かう。ちょっと焦ったせいか鼓動が少し早い。
車に乗った俺は「あれ、エレベーターに眼鏡忘れたかな?」と思った。
だが、眼鏡はちゃんとかけてあった。なんだ・・・動揺して気が変になったか。
それにしてもなぜ眼鏡忘れたなんて思ったんだろう。なんか違和感があるな。