09/03/18 20:33:44 bm7imf4m0
知り合いの話。
彼はかつて漢方薬の買い付けの為、中国の奥地に入り込んでいたことがあるという。
その時に何度か不思議なことを見聞きしたらしい。
ある寒村に停泊した夜、不気味な声を聞いてしまった。
若い女が、悲痛な叫びを延々ひしり上げている。
泣いているような、笑っているような、何とも言えず不気味な声音。
あれは何だろうと世話になっている家人に聞いてみたが、黙り込んで首を振るばかり。
詮索はしない方がよい類のモノかと思い、しつこくは問わなかった。
夜も更けてきたので、寝る前に用を足しておこうと、庭の隅に作られた便所へ向かう。
いきなり、間近であの叫び声が響いた。
ギョッとして屋根を見上げると、白い毛玉の塊みたいなモノがそこにいた。
仰天して動けないでいる内、それはバッと綿塊のように見える物を拡げて消えた。
飛び去ったのか。いやそれにしては、突然姿が掻き消えたようにも見えたが・・・。
サッサと用事を済ませ、転がるように屋内へと戻る。
彼の話を聞いた家人は、険しい顔をして戸締まりを確認し始めた。
『お前さんが見たのは子獲りの化け物だ。くそ、家の孫を狙っているのか』
彼は妖怪にもそれなりに造詣があるそうで、姑獲鳥という妖怪を連想したそうだ。