09/04/13 01:06:55 t3spbC3L0
12 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/16(月) 21:14:08 ID:8SM5XBnN0
友人の話。
彼女ら姉妹の部屋であれだけ頻繁に起こっていた怪事が、サッと鳴りを潜めた。
丁度夏に入る頃だったという。
世間話がてらご近所に聞いたところ、彼らの家でも静まったらしい。
「誰かお払いでもしたのかな?」
何にせよ、騒ぎが起こらないに越したことはない。
それから少しの間は、ごく平穏な日常を過ごせたのだそうだ。
暑さが日に日に辛くなってきた頃。
夜中にふと目が覚めた。何か物音が聞こえたような・・・。
手元灯を点けてみたが、部屋にいるのは自分と姉だけだ。
ぐっすり眠っている姉を確認し、明かりを消そうとした時。
部屋の隅から何か出てきて、目の前を横切った。
白い足型の物体。草履の底みたいに見えるもの。
それがトストスと軽い音を立てて、壁の中へ消えていった。
見なかったことにして明かりを消し、眠りについたのだという。
603:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:07:28 t3spbC3L0
13 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/16(月) 21:15:00 ID:8SM5XBnN0
その夜から、毎日のようにそれが枕元を通り抜けるようになった。
決まっているかのように、現れるのはいつも深夜一時過ぎ。
日に一度だけ枕元を通り過ぎる。
それが出るようになって五日目、渋る姉を何とか説得して、一緒に目撃してもらう
ことにした。息を殺して時間を待つ。
時間通り、その日もそれは現れた。
壁に溶けて消えた時点で、姉に「見たでしょ!アレ一体何だろ?」と話を向ける。
しかし姉は奇妙な顔をしてこう答えた。
「音は確かに聞こえたけど、私には何も見えなかったよー?」
「どういうことなんだろねー?」
これまでは同じモノが見えていた筈なのに。
二人で首を傾げたそうだ。
この話を聞かされて、私は嫌な感じを覚えた。
マンションに出る何かが、ターゲットを友人一人に絞ったかのような、そんな気が
して仕方なかった。口に出しては言わなかったが。
604:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:08:05 t3spbC3L0
14 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/16(月) 21:15:41 ID:8SM5XBnN0
それから少し後、友人から連絡があった。
「一時十分のアレね、だんだんはっきりと見えてきたよー。
少しずつ厚さが増してきてね、今では白い足袋になったん。
そう、着物の時に足に履くやつ。
足首から下だけが相変わらずトストスと歩いてる」
前から散々言ってるけどさ、直ぐにでも引っ越してそこ出ろよ。
手伝うからさ。よく知らないけど取り憑かれてからじゃ遅いぞ。
そう進言したところ、彼女の目が急に泳いで、遠くを見るような表情になる。
「んー、考えとく」とそれだけ口にして、別の話題を始めた。
別の場所で、姉にも引越しを進めてみたが、妹と似たような表情でかわされた。
・・・あー、これはもう憑かれてるんかな・・・。
ふとそう思ったが、所詮は他人だ。どうすることも出来ない。
オカルトっていうのは、実際どこにも相談する機関が無いのが厄介だと実感した。
何かあったら連絡くれ。それだけを念押ししておくのが関の山だった。
605:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:09:19 t3spbC3L0
22 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/18(水) 20:26:36 ID:bm7imf4m0
それからもちょくちょく、友人から報告があった。
「今ね、膝まで見えてるん」
「昨晩は背中まで現れてた。帯止め可愛かったよー」
「肩まで出てきた。もう少しで全部見えるかも・・・」
総じて考えると、白い着物姿の少女の姿が、足元から徐々に積み上がって
いっているようだ。
小学校の低学年くらいの背丈らしい。髪は腰の少し上まである。
お前怖くないのか? 聞いてるこちらは気持ち悪くてどうしようもないんだが。
「んー、あまり。そう言えば何でだろうね、以前はすごく怖かったのに」
嫌な感じだけが、夜毎夜毎に増えていった。
606:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:09:45 t3spbC3L0
23 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/18(水) 20:27:58 ID:bm7imf4m0
そんなある晩、寝ていたところを携帯の着信音で起こされた。
見れば友人からの電話だ。
寝惚け眼で、どうした?と聞いてみた。
「今ね、さっきね、ついに全身が現れたん!」
興奮した声が耳元で響く。
何故だろう、急に目が冴え、嫌な汗が噴出した。
「それでね、いつものようにトストス歩いて過ぎたんだけど。
今日は何故か、少し進んだ所でピタッと立ち止まって。
これまでなかった行動だから、ビックリして動けないでいると、
いきなりその子が振り向いたんよ!」
「そしたらね、顔がね、顔だけが、皺くちゃのお婆ちゃんだったの!
背格好は子供なのに。
ニヤァって気持ち悪い笑み浮かべて、そこでパッと消えちゃった。
うー、気持ち悪いよー!」
その後も彼女は何か大声で訴えていたが、詳しくは覚えていない。
ただただ、嫌な感じだけが私の背中を這い登ってきた。
とにかく早く会話を終わらせて、その電話を切りたかった。
607:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:10:14 t3spbC3L0
24 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/18(水) 20:29:58 ID:bm7imf4m0
それからも定時になると、着物姿は枕元を通り過ぎていたという。
全身が見えるようになってはいたが、それ以外は何も変化がなかったらしい。
直に彼女も無視して構わなくなっていた。
一週間ほど経って、再び奇妙な夜の電話があった。
「あのね、あの顔だけがお婆ちゃんの幽霊がね、変なの。
上から下まで髪以外は真っ白だったんだけど、それが足の先から、
段々と色が着いてきてるみたいなの。
今はほぼ足首から下が真っ赤な状態だよ。
これって何かの前触れなのかな?」
こちらに相談されてもわかる訳がない。
しかし赤色というのが気になった。
聞けばその赤は血の色にそっくりで、何となく嫌な雰囲気なのだそうだ。
老女が腰まで朱に染まったという電話を最後に、友人からの夜の電話は途絶える。
何となく、こちらから連絡するのは躊躇われた。
姉から緊急の連絡があったのは、それから四日後だった。
608:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:11:30 t3spbC3L0
42 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/21(土) 15:47:35 ID:OlDPaXD80
妹が緊急入院したのだという。
職場で貧血を起こし、そのまま意識を失って倒れたのだと。
慌てて病院に駆け付けると、憔悴した様子の姉が迎えてくれた。
妹の方はベットで点滴を受けていた。
つい先程意識を取り戻し、今はまた眠っているのだそうだ。
「命に別状はないみたいなんだけど・・・」
そう言った姉は不安そうに言葉を続けた。
「お医者さんに調べてもらっても、理由がわからないっていうの。
鉄分の欠乏による貧血じゃないかって言われた。
血液中のヘモグロビンとかが異常に減少しているみたいで・・・。
でも、いきなりなのよ。
健康診断の結果でもいつも健康体だって、あの子太鼓判押されていたのに。
取り敢えず増血剤の投与で小康状態になったから、しばらく様子を見ましょう、
そう言われて・・・」
姉は途方にくれたような顔でそう告げた。
話を聞いて、嫌なイメージが頭に浮かぶ。
顔だけ老婆の着物姿が、彼女の上にのし掛かって、血を啜るイメージ。
609:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:11:56 t3spbC3L0
43 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/21(土) 15:51:19 ID:OlDPaXD80
(続き)
何とかその想像を追い払い、元気づけようと口を出した。
いや、単なる貧血だろ。
女性には実際、多いっていうじゃないか。
最近オカルト事に振り回されてて、食生活でも乱れてたんじゃないのか。
姉はじっと私を見つめてきた。
「…本当にそう思う?」
思わなかった。
姉妹二人とも料理が達者で、味だけでなく栄養計算までしっかりとこなしている。
特に妹はそちら関係の資格まで持っていた筈だ。
またどちらも健康オタクの気があり、部屋にはサプリメントの類が山とある。
貧血の知識にしても、私などより余程詳しいだろう。
溜息を深く吐くと、一つ姉に確認することにした。
知ってるか、夜中に変な老婆が出てたって。
「いや、聞いてるけど、私には全然見えないし。
あの子もここ数日は口にも出していないよ」
あの老婆な、色が変わってたんだって。
真っ白だったのが、日を追う毎に、真っ赤に染まっていってたんだと。
血でも吸われてるんじゃないか、妹のやつ。
610:コピーペ ◆RO5mhaMslY
09/04/13 01:12:32 t3spbC3L0
44 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ sage 2009/03/21(土) 15:54:29 ID:OlDPaXD80
(続き)
姉は色のことは知らなかったらしい。
私から事の顛末を聞いて、顔が蒼白になる。
まぁ、流石に吸血鬼みたいなモノが存在してるとは信じてないけど…。
でも何か関係あると思うぞ、絶対。
今直ぐにあの部屋を出ろって。
幸い今、妹の症状は落ち着いているんだろ。
今から部屋に戻って必要なものだけ取って、今夜からあそこで過ごすなって。
これまでになく強い調子で忠告した。
例の遠くを見るような表情はもう見られず、以外に素直に姉は同意してくれた。
どうやら妹が危機に陥ったことで、姉の憑き物は落ちたようだ。
「わかったそうする。でも怖いから着いてきて」
・・・あ。俺、失敗したかも。俺も行かなきゃダメ?
しかしここは自分の忠告である。
仕方なく姉を連れて、あのマンションへと車を走らせた。
言い出しっぺは自分だが、堪らなく嫌だった。
611:本当にあった怖い名無し
09/04/13 01:13:00 rim/Rbt/O
日曜の夜になるとウニを待っている自分がいる
だから何って話だけど