08/12/22 19:30:01 wI+/FK8u0
柔らかな香りに目を覚ます。
カーテンの外は明るい。
首をめぐらせて、香りの源へ顔を向ける。
彼女が枕元で膝を折り、私の顔を覗き込んでいた。
彼女の髪が私の頬をくすぐっている。
真逆。
私は、確かめるために恐る恐る手を伸ばした。
手から逃げるように彼女が身を引く直前に、私の指はその頬に触れた。
怯えた様に揺れる瞳で、彼女は差し伸ばしたままの私の手を眺めていた。
今度は彼女が、恐る恐る細い指を私の手の甲に重ねる。
少しだけ冷たく、柔らかな感触。
彼女の頬が、徐々に紅潮していく。
私は静かに微笑みかけた。
何時かまた、離さなければならなくなるかもしれません。
だから、それまではずっと、手をつないでいて下さい。
私が最後に描いた彼女の絵。
それに何時の間にか、彼女が文を添えていた。
額に納められたその絵の前で、私達はお互いの手を握り直した。
その感触を、存在を確かめる様に。