09/07/16 18:40:50 0
平野啓一郎さん(34)が、初めての新聞小説「かたちだけの愛」を22日夕刊(夕刊のない地域は23日朝刊)から
スタートさせる。京大在学中の1998年に「日蝕」で鮮烈にデビューし、同作で芥川賞を射止めた平野さん。新連載
が始まるのは、くしくも日蝕の日だ。(山内則史)
「バルザックもドストエフスキーも、新聞小説を書いた。近代文学への関心から出発した僕としては、いよいよそれ
に挑戦できる、それがモチベーション(動機付け)になるという気持ちはありますね」
「かたちだけの愛」は、ある事故で一方の脚を失う若い女性と、彼女を愛する男性との揺れ動く関係を軸に、大きな
喪失からの回復を描く現代小説。「これまでの小説の中でも、恋愛をいろんな形で扱ってきましたが、ストレートに恋
愛だけを描いたことはなかった。この作品では、恋愛を中心に描きたい」という。
「形にこだわり、形こそが本質という考えと、内実がなければ『形だけ』と軽視されることと、日本の文化には正反対
の二つの方向がある」。そのことへの興味から、題名を発想した。「連載を読み終えた時に、読者の方がタイトルの
二重の意味、逆説的な意味にたどりつき、意味がクルッと一回転することになれば」ともくろんでいる。
書き下ろし小説『ドーン』(講談社)を先日刊行したばかり。2033年の近未来を描いた。デビュー作『日蝕』で中世、
ドラクロワとショパンを主人公にした『葬送』では近代、芸術選奨文部科学大臣新人賞を今春受けた『決壊』では現代
のネット社会に内在する悪の問題を掘り下げた作家にとって、未来を描くことは「自然な流れ」だった。火星に向かう
宇宙船で起きたある出来事から、物語は展開していく。
(>>2以降へ続く)
■ソース:YOMIURI ONLINE 2009年7月16日 読売新聞
URLリンク(www.yomiuri.co.jp)