09/06/16 18:00:17 0
◇生誕200周年エドガー・アラン・ポーの魅力
米作家、エドガー・アラン・ポーの生誕200周年を記念して業績や幅広い影響力などを集大成した
『エドガー・アラン・ポーの世紀』(研究社)が出版された。この本の編者の一人で、『黒猫・アッシャ
ー家の崩壊』『モルグ街の殺人・黄金虫』(新潮文庫)の新訳を出した巽孝之・慶応大学教授(54)に、
時代を超えて読み継がれている天才作家、ポーの魅力を聞いた。【佐藤由紀】
◇多彩な作品に緻密さ、独創性 時代や国境超え新しさ
『モルグ街の殺人』(1841年)は、19世紀のパリを舞台に、不可解な密室殺人の謎を分析力に優
れた青年、オーギュスト・デュパンが解く物語。証言や証拠などから「オランウータン犯行説」を導き、
新聞広告で重要参考人をおびき出す手法など、その後、今日に至る探偵小説の原点となった名作である。
だが、巽さんは「ポーが書こうとしたのは、ミステリーというより奴隷制を容認していた米南部の現実、
黒人奴隷への恐怖感だったのではないか」と考える。
「南部作家の意識が強いポーはすでに北部の産業資本主義に乗り遅れ、同時代を映してはいませ
んでした。それでもなお生き続けたのは、時代や国が違っても、別の魅力をみせる多面的な作品を
書いたからでしょう。乱反射するレンズを持っていたのです」
『エドガー・アラン・ポーの世紀』では、詩や批評、演劇、怪奇幻想小説、空想科学小説など、ポーの
多彩な側面を、それぞれの分野の研究者が明らかにする。
ジャンルを自由に行き来しさまざまな文体やスタイル、テーマに挑んだのは、ポーに雑誌編集者(マ
ガジニスト)の経験があったから。「おもしろいものは何か、売れるものは何か、人の心を引くものは何
かをつねに考えていた」というのだ。
「ポーは、結末のインパクト(衝撃)を考え、終わりから書くといわれたほど、作品の効果を重視した。
ムダのない構成や緻密(ちみつ)さ、独創性や多様性を重要視したのも、読者の注意をひきつけ、最
後まで一気に読ませるためでした」
(>>2-3辺りへ続く)
■引用元:毎日jp 毎日新聞 2009年6月16日 東京夕刊
URLリンク(mainichi.jp)