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あの夜、横浜フリューゲルスを率いて静岡県で合宿中だった加茂周は、三島市の居酒屋に居合わせた客全員に
「わしのおごりや」とビールを振る舞い、乾杯の準備をしていた。グラスは合わされることなく、
力なく卓に置かれた。NHKの衛星放送で解説をしていた岡田武史は、アナウンサーに試合の感想を聞かれ、
うつむいたまま、一言も発することができなかった。会社にも夜の街にも、沈痛な表情ばかりがあった。
翌日の夕刊フジは「ドーハの悲劇」の見出しで報じ、いつしかそれは、ロスタイムの同点弾で94年米国W杯へ
の切符を最後の最後で失ったあのイラク戦の代名詞となった。
加茂は98年フランスW杯を目指す日本代表の再起を任され、腹心のコーチとして岡田も入閣した。
最終予選の道半ば、加茂は代表監督を更迭され、後任を託された岡田は薄氷を踏むゲームを続け、
ジョホールバルでイランとの決定戦を延長で制して悲願のW杯初切符を勝ち取った。決勝ゴールを挙げた
岡野雅行は一躍、国民的ヒーローとなり、連日、「犬より速い」等のエピソードがワイドショーで紹介された。
7日未明、再び岡田が率いた日本代表はウズベキスタンを破り、南アフリカで行われるW杯の切符を勝ち取った。
敵地の洗礼を浴びながらの試合展開はお世辞にも華麗とは言い難かったが、その分、死闘と呼ぶにふさわしく、
岡崎慎司の泥臭いゴールは感動的ですらあった。当夜の平均視聴率は深夜帯であったにもかかわらず、
24・4%(テレビ朝日系、関東地区、ビデオリサーチ調べ)だった。
とはいえ、ドーハの48・1%(テレビ東京)、ジョホールバルの47・9%(フジテレビ)には遠く及ばない。
4大会連続出場の慣れもあるのだろうが、4年前、ジーコ率いる代表がバンコクで06年ドイツW杯出場を決めた
北朝鮮戦だって43・4%(テレビ朝日)を記録した。選手、スタッフの必死さが変わったとは思えない。
ウズベク戦後の選手らの感情の爆発をみれば、どれだけ苦しんできたか分かる。それでも、ドーハの落胆や、
ジョホールバルの歓喜が再現されないことは、試合前から想像できた。
>>2-10に続く
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