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■短所も長所になるお話
結婚間もなく、大事なお嫁さんのようすがどんどんおかしくなった。顔は青く、口数少なく、
沈み込んでいく。
「じつは、おら、へ、こきたいのす」
気の良いばばさまは「がまんはいらん」。お嫁さんが「では、ごぶれいいたします」と
立ち上がると-。
嵐のような風がわき起こり、ばばさまは畑まで飛ばされた。ダイコンの葉につかまると、
「引きっぺ」が始まりダイコンごと家へ。次は林へ飛ばされタケノコにしがみつくとタケノコごと
家へ。しまいにイノシシまで家へ。「たいしたよめっこだ」。夕食はイノシシ鍋の大ごちそうである。
この民話はこれまでも「へっこき姉さ」「へっこき嫁ご」「日本一のへっこきよめ」などの題で
10を超す本やCDで親しまれた。短所も長所になるめでたい話に、多くの人が勇気づけられた。
どれも義母を気遣う嫁と、嫁を案じる義母の会話から、温かい暮らしが描かれているが、
イノシシ鍋まで登場する本書はなかなか珍しい。
「ブビンビ ボンボ ボンバボン!」。現代的なリズムのおならに、初めて読んだ子供たちは
大喜び。飛ばされるばばさままでまねて笑い転げている。刊行が始まった「日本名作
おはなし絵本」全24巻の2巻目。来年12月の「一休さん」まで予定されている。
実は、この民話には続きがある。嫁は実家へ戻されることになり、途中、カキの実をとろうと
苦闘する旅人に出会う。おならで全部落とし、ひき替えに貴重な反物を贈られる。別の話では、
ナシの実を落として殿様から褒美をもらう。“お手柄”の嫁さんは、再び夫に迎えられるのである。
楽器、奏者によって同じ音楽もさまざまな調べになるように、同じ民話も作者によって異なる。
平易な本書を入り口に読み比べれば、子供たちは日本の民話の豊かさと多様さを、笑いの中で
知るだろう。(小学館・1050円)
評・牛田久美(文化部)
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