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連載 今週の遺言 大橋巨泉 第28回
日本のスポーツ報道は「変なの」を通り越して「狂ってる」と思う
日本の報道機関―ジャーナリズムがおかしい、という事はたびたび書いて来た。
記者クラブを作って排他的になり、かつそのヌルマ湯に満足して、競争性が無い。時には
権力にすり寄っているとさえ感ずる時がある。森田健作千葉県知事の「詐称問題」にしても、
どこかが選挙中に「抜けなかった」ものか。結果は中退した落ちこぼれでも、早大新聞科で
報道の何たるかを学んだ人間として、ボクは今日のあり方には大いなる疑問をもっている。
これは政治、社会だけの問題ではなく、スポーツの分野でよりひどい。
イチロー選手の、日米通算最多安打なるものは一体何だ!? 新聞や、記者や
コメンテイターが、イチローが世界最高の打者であると書くのは自由である。しかし
こと記録となると話は別だ。記録というのは、公的な機関で認められたものに限られる。
つまり、メジャーリーグ(MLB)とか、日本プロ野球組織の事務局とかである。しかしこの
3086本という記録は、MLBは勿論日本でも認められない数字なのである。加藤コミッショナー
もはっきり「日本記録は張本勲の3085本」と言っている。それなのにあの騒ぎは何なのか。
報道は事実を客観的に伝えるものではないのか。そしてもっと恐ろしいのが、
どのメディアも「次はピート・ローズの4256本だ」と書いたり、言ったりしている事である。
イチローの安打数はMLBではあの時点で1808本であり、ピート・ローズの記録どころか、
3000本安打も不可能というのが〝事実〟なのだ。こんな事が起るのは日本だけという
のが恥かしい。今やMLBには、ベネズエラ、プエルトリコ、メキシコ、ドミニカ、キューバ、
豪州、韓国、台湾など、多くの国から選手が集まっている。このうち中米諸国は地理的な
関係で、昔から多くのメジャー・リーガーが居るが、誰も出生国との「通算」などと報道する
国はない。早い話、セシル・フィールダーの本塁打記録は319本で、阪神時代の38本を
含めた記録なんて、この世に存在しないのだ。
>>2以降へ続く
週刊現代 2009年5月9日号 p.54~55 の依頼あり。確認済み。
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