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日本も韓国も見事にその戦略に組み入れられたわけだが、ここまでＷＢＣでの強さを
見せつけたのであれば、今度は日本や韓国がＷＢＣを世界の野球界のなかにどのように
位置づけるか、堂々と意見を開陳してもいいはずだ。また、ＭＬＢの戦略に巻き込まれる
だけでなく、ＭＬＢに劣らないアジアのリーグを立ちあげようという声が聞こえてきても
いいはずだ。
が、まったく残念なことに（情けないことに）日本の野球組織のなかでは、どの組織の誰が
そういう主張を展開するのか、まったく判然としない。コミッショナーが「お飾り」であることは
衆知の事実で、プロ野球は読売、社会人野球は毎日、高校野球は朝日と巨大メディアに
分断支配され、日本の野球界全体の未来の青写真を描く組織が存在しない。
そうしてＭＬＢは、日本のスター選手を次つぎと獲得するだけでなく、日本で開幕戦を
行ったり、少年野球教室をはじめるなど、日本の野球のマーケットを蚕食し続けている。
今回のＷＢＣ２連覇はじつに素晴らしいことには違いないが、メディアに少しでも
ジャーナリズムの精神があるなら、高い視聴率やスポーツ紙の売上げの伸びに
狂喜するだけでなく、日本野球のあり方、ＭＬＢとの関係のあり方等、さらに重要な
問題を取りあげてほしい。それが、ＷＢＣで頑張った強い日本の野球選手たちに
対する礼儀というものだろう。
Hot journal：2009.3.25 from：玉木正之