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このところテレビ局の営業部門の人と話す機会がとても多くなっている。各所で伝えられる
ように、CMのセールスは芳しくない状況が続いている。ところが、異口同音に聞こえてくる
のは「市況」のせいだという意見だ。構造的な問題だと捉える向きは多くはない。
■合い言葉は「放送外収入」
最近のテレビ局では「放送外収入」という用語が盛んに言われている。放送外収入とは
CM以外の売り上げのことで、ほとんどの局は、会計的に別枠としてカウントしている。具体
的には映画を制作したり、様々なスポーツや文化的なイベントを開催したりして得られる
収入である。
テレビ局において、この放送外収入という言葉には、他の業界における類似の名称とは
やや異なるニュアンスが含まれていた。テレビ局たるもの視聴率20パーセント、30パーセント
を取る番組がいちばん偉く、番組以外の事業は愛でられないといった風潮が少なからず
あったからである。それほど番組にかけるウエイトや情熱が高く、実際いい番組をたくさん
送り出してきた。
CMの売り上げが落ち込み、放送以外の収入を拡大する必要に迫られるなかで、こういった
風潮も急速に様変わりしつつある。しかし、50年間もクローズドなビジネス環境下で放送事業
をし、ほとんど成功体験しかないテレビ局が、放送外に活路を見い出すのはなかなか難儀
なことだ。
■多すぎるローカル局
ローカル局の経営が厳しい状況にあるのは、言われてみれば何となく感覚的に分かる
ものの、きちんと説明するのは難しいのではないか。これは県域の免許制度による市場の
サイズと、そこに存在する放送局の数のバランスが適正ではないからである。そうなったの
はローカル局が放送をやりたかったというだけでなく、各系列が全国ネットワークを作るため
に拡大したり、郵政省時代からの放送行政、電波行政が手を入れたりした結果である。
地上デジタル放送云々を抜きにしても、そもそも日本にはローカル局が多すぎる。情報
格差の是正と正論を言ったところで、ビジネス的に無理なものは元々無理なのだ。
(>>2-3に続く)
日経ネット(江口靖二のテレビの未来)[2009年2月9日]
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