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川崎憲次郎コラム
『川崎憲次郎の野球はサプライズ！』 連載16
「オールスターゲーム」
オールスターには４度（90､91､98､00年）出場。
91年には優秀選手賞を獲得し、賞金100万円と８ミリビデオカメラをゲットしました。
が、苦い記憶もあります。
03年のことでした。
ドラ番記者から「ファン投票で川崎さんの名前が10位に出てますよ」と告げられたのが始まりでした。
当時の僕は00年にＦＡで中日へ移籍したものの、右肩故障で３年間、一軍登板なし。
「給料ドロボー」という罵声にも甘んじるしかなく、
その年に実績を残している選手が出場する球宴うんぬんなんて悪い冗談です。
それでも、はじめは「うれしいね」と前向きに受け止めて一層、練習にも熱が入りました。
が、僕の気持ちとは裏腹に、
ネット掲示板で『川崎祭り』と名付けられた悪質な投票行為はどんどんエスカレート。
中間発表で阪神の井川を抑えて１位(69万3367票)に踊り出ると、
僕のもとにはスポーツの記者のみならず、「『フライデー』ですが、今のお気持ちは？」、
「川崎さん『フラッシュ』です」と、写真誌の取材まで殺到。
でも、何を聞かれても「やめてくれというしかない」「選ばれても辞退する」
と言うほかに言葉は見つかりません。
票は不気味にどんどん伸び、最終的には91万1328票を獲得。
セ・リーグ先発投手部門の断然１位でした。
「大きな舞台に上がることで、ショック療法で治るかもよ」と言ってくれた人もいましたが、
オールスターの権威を汚すような真似はできません。
選手会を通じて「一票、一票を自分への叱咤激励だと思って一日でも早く一軍で投げられるように頑張ります」
とコメントを発表し、出場を辞退しました。
得票のほとんどはこの年から導入されたネットを悪用した嫌がらせでした。
ただ、一片の救いはハガキによる得票が17万票もあったこと。
「まだ僕を応援してくれているファンがいる」
その「事実」は、僕を何より勇気づけてくれたのでした。
29日付、日刊ゲンダイP29
川崎憲次郎コラム『野球はサプライズ！』より