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株式市場の裏側で暗躍する仕手筋。それに対し、捜査当局が包囲網を狭めている。
昨年来、次々と摘発された大物仕手筋の顔ぶれは多彩。一方で、新手の手法を使った不穏な動きも進行する。当局による「市場浄化作戦」の最前線を追う。
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今年2月から3月にかけ、警視庁は大捕物を展開した。
組織犯罪対策総務課などによる捜査本部が、証券取引等監視委員会とともにメスを入れたのは、元ジャスダック上場企業のトランスデジタルを巡る怪しげな資金異動の数々だった。
同社は2008年9月に前触れなく突然倒産。その直前、多額の売掛債権が都内のワイン輸入会社に秘かに担保として提供されていた。
さらに新株予約権を大量発行して資金調達を行うと発表していたが、肝心のカネはどこかに消えた。
トランスデジタルの旧経営陣やブローカー、山口組系暴力団とも親密な経営者など、逮捕者は計8人に上った。
その中でも一際目を引く人物がいた。黒木正博被告(44)である。
ちょうど10年前、黒木被告は時代の寵児だった。東証マザーズ第1号として、華々しく上場したリキッドオーディオ・ジャパンの実質的なオーナーだったのである。
同社が開いた上場記念パーティーには、小室哲哉氏ら有名芸能人も多数駆けつけたほどだった。
ダークスーツに身を包み、周囲からは「クロちゃん」とあだ名された黒木被告は、慶應義塾大学在学中に起業した青年実業家。
その後、ダイレクトマーケティング会社を設立するなど、グループは拡大した。
しかし、ITバブルが弾けると、その人生は暗転する。
リキッド社の社長に据えていた部下が、同僚に対する拉致監禁事件で逮捕されるという不祥事まで発覚。米国の提携先からも契約を打ち切られた。
リキッド社の瓦解後、水面下に潜った黒木被告はいつしか仕手筋の仲間入りをする。
不振企業に増資話などを持ちかけ、手数料を抜き、あわよくば株式の売り抜けでひと山当てる。いわば法律のグレーゾーンを領域とする裏稼業だ。
丸石自転車、ゼクー、キーイングホーム-。
経営の空洞化で株券乱発が本業になってしまったような、それら「ハコ企業」こそが、黒木被告にとって活躍の場。
トランスデジタルはもってこいの獲物だった。
バブル紳士の代表格だった元EIEグループ総帥、故高橋治則氏がかつて背後から支配していたトランスデジタルは、その死後、無法地帯と化していた。
黒木被告が同社に入り込み、主導権を握ったのは07年のことだった。
黒木被告が転落した世界には、裏のネットワークが張り巡らされている。
不振企業を使った儲け話が伝わるや、蜜に群がるアリのように多方面からさまざまな勢力がやってきて、案件ごとに共同戦線を組む。
一緒に逮捕されたブローカーらもそうした手合いだった。
「市場浄化作戦」は裏のネットワークを解明し、個別に叩いていく作業の連続。次のターゲットは-。(高橋篤史)
■たかはし・あつし 1968年生まれ、早稲田大学教育学部卒、日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト、
著書に『粉飾の論理』『兜町コンフィデンシャル』など
URLリンク(www.zakzak.co.jp)