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(続き)
一方で自分の収入だけで家族を養える男性は減少している。大手結婚相談所「オーネット」が
20、30代の未婚男性1135人を対象にした09年の調査では、結婚相手に「フルタイムで働いてほしい」が
40・4%を占め、99年調査よりも13ポイントも増えた。「派遣などで働いてほしい」を合わせると8割近くに達する。
このギャップを女性たちはどうとらえているのか。日本女子大2年生(20)は「高校時代から目的は明確でした。
一流大学、一流企業に入り、いい夫と出会うこと。だから、受験勉強で努力したし、これから就職に向け、資格を取るつもり。
不況だからこそ、早い時期から頑張っているんです」。明確な目的意識と目標達成への周到な準備。まさに「婚活」だ。
そこで、足を運んだのは東京都港区南青山の料理婚活教室「アールズキッチン」。20~30代の男女4人が、
森由美子先生の指導を受けていた。フランス料理教室「パリ15区」を主宰する森さんのこの日のメニューは
「スパイシーサマードリア」など3品。男性が混ぜたクリームソースに女性が牛乳を注ぐ。
女性2人は専業主婦志望。ウェブ関連企業の営業職、江副友美さん(26)は「数字に追われるストレスを抱え続けるのはきつい。
子どもが生まれたら、仕事は辞めたい」と言う。一方、不動産会社勤務の森勉さん(35)は、「結婚したら専業主婦になってほしいが、
経済的に厳しい。二人が料理を作れたら共働きでも便利」。男女の思いは微妙にすれ違う。
「男は仕事、女は家庭」という保守的な価値観への回帰を示しているのだろうか。
女性の働き方の問題に詳しい実践女子大学の鹿嶋敬教授は、この見方を否定する。
今回の調査だけで保守化傾向を肯定することはできないという。
「女性が高学歴化し、夫をサポートする人生だけでは満足できなくなっている」
話を聞いた女性のほとんどは「自宅で趣味の教室を開きたい」(20歳、学生)、「友人との交流やスポーツを楽しみたい」
(22歳、総合商社勤務)という。趣味を通して社会とつながり、妻や母というより、一人の女性として輝きたいという思いが強い。
この特徴は98年の厚生白書で「新・専業主婦志向」と紹介されている。だが、安定した生活基盤が崩れつつある今、
専業主婦は当時より「狭き門」。鹿嶋教授は、専業主婦へのあこがれは「砂上の楼閣である」と指摘する。
「この世は二人組ではできあがらない」(新潮社)などの著書がある作家の山崎ナオコーラさん(31)は、
20代女性の意識について「人生が生き残り合戦のように見えているのではないか。『専業主婦になりたい』は、
『安定した公務員になりたい』と同じ発想のように思える」と言う。
「私が学生のころに専業主婦になりたい友人がいなかったのは、上の世代の女性が社会とつながる夢を見せてくれたから。
それに比べ、暗い話を聞かされ続けている若い世代は、高校生のうちから年金や老後の不安を感じ、
自分や家族の狭い世界に踏みとどまってしまっている」
山崎さんはこうも言う。「質素でも、家族仲良くやりくり上手に暮らす女性の好感度は上がっている」
道無き道を切り開きながら外で働いてきた“先輩女性”から見れば、20代女性の専業主婦志向はどこか物足りず、
「甘えている」とさえ見えるかもしれない。しかし、経済低成長時代に生きる若い世代にとっては、精いっぱいの願望とも言えるのではないだろうか。
(記事終)