10/06/26 00:34:46
『わが「打倒サムスン」の秘策』
上記のタイトルで文藝春秋7月号に掲載されたパナソニックの大坪文雄社長の原稿は衝撃的だった。
大企業の現役経営者が、一般誌にこれほど赤裸々に思いのたけを綴った例を私は知らない。
日本のエレクトロニクスメーカーは束になってもサムスン1社の利益に追いつけず、
白物家電にも強いLGにも新興市場で徹底的にやりこめられている現状に対する危機感からだろう。
インド市場で韓国メーカーに戦いを挑む
新興市場を取材すればするほど、豊富な資金力と強靱な精神力で日本企業を圧倒する韓国勢の凄みに、辟易とさせられてきた。
世界中どこの国にいっても、入国審査を終えた後、真っ先に目に飛び込んでくるのはサムスンのモニターだ。
資金力にものをいわせた大量宣伝、いかなる僻地にも飛び込んでいく行動力、そしてローコストを背景にした段違いの価格競争力。
もはや日本企業には韓国勢の背中がはるか彼方に霞んでいた。巻き返しは不可能だろう。
そう思うよりほかなかった。
そんな折、パナソニックが全社をあげて韓国勢からアジア市場を奪還しにかかるという話を聞き、
6月中旬に予定していたアジア取材のなかで、パナソニックがいかに韓国勢を追い上げていこうとしているかを見に行くことにした。
実は離日直前に文春にくだんの原稿が掲載されたものだ。
インド訪問で売上目標を2倍に
大坪社長は文春の誌上でインドを例に挙げた。
人口10億人の巨大市場において、年間売上高ではトップのLGが2400億円、第2位のサムスンが1800億円。
それに対して、パナソニックはわずかに400億円である。
大坪社長はこれらの数字をあげつらいつつ、3年後には売り上げを2000億円まで急拡大し、
その後につづく中期計画によって韓国勢を凌駕するという並々ならぬ決意を表明した。
インドはサムスン、LGが「絶対に手放さない」と公言する巨大市場である。
しかも、売上規模、ブランド浸透力、いずれをとってもパナソニックに勝ち目があるとは思えなかった。
競争相手の実力差が開きすぎると、戦闘意欲自体が失われてしまう。
だがパナソニックの大坪社長は、超劣勢のインドにおいて韓国勢に追いつき、追い越すとコミットメントをした。
厭戦気分蔓延の今の日本にあって、私はそれだけでも特筆すべき話だろう受け止めながら、パナソニック・インディアの取組みを取材した。
関心事のひとつは「400億」を3年後に「2000億円」にするとした売上目標の根拠だった。
多方面の話を総合すると、現地の感覚では最大限に努力しても、最高に意欲的な目標として提示できる数字はどうやら「1000億円」だったらしい。
ところが今年4月に大坪社長がインド市場を視察直後に目標数字が一気に2倍に跳ね上がった。
「400億円」を3年で5倍にしようという乱暴さである。
インドにおける家電流通は近代的な量販店のシェアが2割程度で、大半は外国人旅行客にはとても立ち寄れぬ地元密着の小規模電気店が残りを占めている。
それだけに一朝一夕にはシェア拡大ができる市場ではない。
トップダウンでヒト、モノ、カネを集中投入
だが幸いなことに、パナソニックにはインド駐在15年のベテラン幹部をはじめ、
細いけれども、長い地元流通業者とのつながりが脈々と保たれているという。
>>2に続く
ソース:nikkei BPnet 財部誠一の「ビジネス立体思考」
URLリンク(www.nikkeibp.co.jp)