10/05/31 18:55:38
富士通は、スーパーコンピューター(スパコン)事業で10年ぶりに海外市場に再参入する。
今夏、独、英など欧州での発売を皮切りに、アジアは実績のあるシンガポールを起点に中国
や東南アジア諸国にも販売を広げる。世界シェアは現在の2.2%から5年後に10%を目指し
、1000億円以上の事業に育てる。
同事業を統括する山田昌彦本部長がブルームバーグ・ニュースとのインタビューで明らか
にした。スパコンは主にミサイルの弾道軌道解析など軍事・先端科学分野の研究に使われて
きたが、近年は需要のすそ野が民間企業にも急拡大している。需要の9割を占める海外を
主戦場と位置付け、巻き返しを図る。欧州では、自動車、医療機器、製薬、航空機メーカー
などへの納入を期待しているという。
山田氏は、スパコンの用途が「先端研究から実用段階に入ってきた」と述べ、自動車、航
空機、新薬の開発、油田探索、気象予想、津波・地震予測などにスパコンが必要になってい
ると説明。「スパコンを使ったシミュレーション能力が、企業の競争力を左右する時代。
車や携帯電話をスパコンですべて開発できる日もそう遠くないだろう」と話す。
富士通は、世界のスパコン市場が年率約9%で成長し、12年には1兆円になると予測。
スパコンには、核融合シミュレーションなど高度な計算に必要な最先端機種から、多数の
サーバーをつないで製品開発などに使う「PCクラスタ」と呼ぶ廉価版機種まで、多くの
種類がある。価格も、1システムが一千数百万円から100億円以上と幅広く、同社の山田氏
は「双方のニーズに対応していく」と言う。
再参入に手ごたえ
スパコン産業では1990年代に日米貿易摩擦が生じ、多数の訴訟を経て最終的に日本勢は米
市場から閉め出された。富士通も2000年頃に海外から撤退し、国内に集中した経緯がある。
だが、昨春に独シーメンスとのコンピューター合弁会社を買収し、欧州で設計開発・製造・
販売などの事業基盤が整ったため、これを契機に海外に再参入する。
世界の市場は、国際団体が公表するスパコンランキング「TOP500」によると、IBMとHP
の米2社が8割のシェアを握る寡占状態。現行ではIBMが09年に発売した「ロードランナ
ー」が最高性能のスパコン。しかし山田氏は「米製スパコンだけになるのは望ましくないと
考える顧客の声は多い」と、海外再参入に手ごたえを感じているという。
スパコンは、膨大な情報処理に欠かせない。身近なアップルのiPhoneやiPadな
どで大量の情報をダウンロードできるのも、スパコンに負うところが大きい。スパコンに
詳しい理研の基幹研究所グループディレクターの泰地真弘人氏も、これらの技術は「オーバ
ーラップするところも多く、相互に発展していくもの」と指摘する。さらに「大規模な情報
処理はグーグルやヤフーなどが強いが、今後はこれらとスパコン技術の接点も多くなるだろう
」と分析している。
ソース:Bloomberg
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