10/04/30 09:32:19
東京・日本橋のオフィス街で営業する立ち飲みバー「キハ」は、ちょっと変わっている。
ツナ、塩味の焼き鳥、そして札幌ラーメン……。
L字形カウンターの上には約40種類の缶詰がうずたかく積み上げられ、大半が500円以下だ。
客はそれらを自分で開け、生ビール(600円)やカップ酒(500円)を飲みながら食べる。
数千円で、酔っぱらうことができ、おなかも結構いっぱいになる。
近くの会社に勤める独身男性(33)は、知人に教えられて昨年秋から月数回、
この店にふらりと立ち寄るようになった。「缶詰料理だとすぐに楽しめるので1人で来ても楽。
食べたことのない缶詰を頼む時は、中身を当てるゲームをしているよう。おいしいと『当たり』なんて」
缶詰を温めたければ、オーナーの二上登さん(34)が気軽に応じてくれる。
この男性は、ビール2杯と缶詰数缶を一緒に頼むことが多く、会計は2000円程度。
「値段を気にせず飲めるのもいい」店内には駅の看板や電車のつり革などが飾られて何やらにぎやか。
「鉄道旅行が好きで、だれでも気軽に過ごせるバーを作りたかった。身近な缶詰がその鍵になりました」
と二上さんは話す。
総務省の家計調査によると、1世帯が1か月に支出する外食費は2009年で1万1601円と、
02年に比べ約12%減少。不況で節約傾向が強まり、外食を控えてスーパーなどで買った食材や酒を
家で仲間と楽しむ「家飲み」ファンが増えている。缶詰バーには家飲みに似た気軽さもあって、
消費者の人気を呼び、東京や大阪、名古屋などで続々と店ができ、異業種から参入する企業もある。
2002年に参入した「クリーン・ブラザーズ」(大阪市)もその一つ。本業は美術展企画会社で、
07年12月に京都市左京区の鴨川沿いに缶詰バー「mr.kanso京都」を開いた。
メーカーなどから仕入れた国内外の缶詰を250種類以上そろえ、店内の棚一面に色とりどりの缶詰が並ぶ。
300円前後のものが中心だが、中には「宝うに」(4000円)、「熊肉のカレー」(1500円)といった高級品も。
ギャラリーのようなしゃれた雰囲気で平日夜9時を過ぎると、学生や会社員、外国人観光客らでごった返す。
ここ1年で評判を聞いた女性客も増え、1か月の売り上げは開店当初の3倍近くになった。
週に3、4回利用する京都市内の男子大学生(23)は「値段も安くてユニークな味と出合える。
缶詰のデザインを眺めているだけでも楽しくなります」と話す。
同社は昨年秋からチェーン展開も始めた。「缶詰は日持ちがして管理しやすく在庫ロスも少ない。
飲食店の経験がなくても営業をしやすい」と同社企画営業部の川端健史さん(24)。夏には大阪市中央区の
オフィス街にチェーン店をオープンする予定だ。
消費生活アドバイザーの和田由貴さんは、こうした缶詰バーを「飲食店の間で激しさを増す低価格競争の究極の形」
と指摘する。「客にとっては缶詰という保存食を肴(さかな)に、都心で酒を飲むというギャップが新鮮に感じられ、
家にいるような気軽な雰囲気も魅力なのでしょう」
URLリンク(www.yomiuri.co.jp)
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