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日本航空の破綻は、想像以上に日本に大きな衝撃をもたらしたと私は考えている。前年
には学生の就職人気ランキングにも上位に顔を出し、経営環境は厳しいながらも、企業と
しては超一流と認識されていた会社である。危機が叫ばれるようになって以降、そんな会社
から驚くほどの実態が次々と伝えられるに至ったことは、日本のビジネスパーソンにとっても大きなショックだったと思う。だが実は私には、その後の日本航空の動きにも、ショックは続いていた。
法的整理に向かった日本航空の再生は、企業再生支援機構の手に委ねられることになった。
そして、その難しい再生の先導役のCEOに就任したのが、京セラ名誉会長の稲盛和夫さんで
ある。この人選に関しては、マスメディアも含めて異論はほとんど出なかった。交通イン
フラ産業の経験がないことは指摘されたが、それほど大きな声にはならなかった。
あれだけの債務超過の会社、あれだけの機構の資金、さらには政策投資銀行の資金までも
が入り、しかも説明責任も出てくるとなれば、そうそう引き受けられる人はいないことは
わかる。政財界から厚い信頼があり、まったくのゼロから京セラという世界的企業を作り
上げた実績を考えれば、この方以上の適任者はいらっしゃらないと私も思う。
■なぜ、もっと候補者が出なかったか
だが、それを承知で敢えて言わせていただくならば、人材ビジネスを生業としている立場
、かつ数々の再生局面の企業に経営者をご紹介してきたプロの立場から申し上げれば、これ
ほどの大変な再生が、今年78歳になられた大先輩にお任せするしかなかったのか、という
思いはやはり消えない。
限られた時間軸の中での意思決定とは言え、これほどの複雑かつ大型な再生案件ならば、
もっと数多くの候補者が、中にはもっと若手の候補者が数多くリストアップされるべきでは
なかっただろうか。
これが米国ならば、再生経験豊富なターンアラウンド・マネジャー、航空業界出身の経営
コンサルタント等、経験業種・職種・年齢・性別・国籍の多様な属性のプロがリストアップ
され、各選択肢の賛否が議論されただろう。経営課題の優先順位と再生の時間軸を考慮した
上での最適な経営者(あるいは経営者の組み合わせ)はどういうタイプなのかの議論と精査
が、もう少しじっくりとなされてもおかしくなかったのではないか、と思うのだ。
ソース:日経ビジネスオンライン
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