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>>5のつづき
■中国勢の急成長に怯える
「脱エレクトロニクス」を図る今後の成長戦略で、再び照準を日本に絞ったサムスン。足元の
業績を見ても、その死角を見出すのは難しいようにみえるが、決して彼らも盤石ではない。
彼らは今、中国勢の台頭に戦々恐々としている。中国の技術水準の上昇スピードは予想以上で
、最近では「このままではサムスンとて中国企業に負けてしまう」と指摘し始める業界関係者
も出始めた。かつて、自らが日本から技術と市場を奪い取って急成長を果たしたが、今度は、
中国勢が猛追するという姿が重なる。サムスンの危機感は人一倍だ。先を走る日本と急速に
追い上げる中国に挟まれ、身動きが取れなくなる状態を表現した「韓国経済のサンドイッチ
危機論」とは、サムスンの李健熙前会長が指摘した有名な言葉である。
実際、中国の景気刺激策「家電下郷」によって台頭した地元企業によって、サムスンは
家電製品分野で中国市場から駆逐され始めている。〇八年に市場シェア一一%でトップを
快走していた液晶テレビは、〇九年上期で同五%、八位に後退した。代わって台頭した上位
五社はいずれも中国勢であった。
また半導体や液晶パネルといった先端分野でも、その兆候が現れている。半導体では中芯国
際集成電路製造(SMIC)、グレース・セミコンダクター(GSMC)、上海先進半導体
製造(ASMC)などが存在感を急速に増しており、液晶パネルでも吉林彩晶や上海広電集団
(SVA)などの中国企業が生産量を伸ばしている。
こうした中国勢の台頭に危機感を抱くサムスンでは、半導体など先端分野の技術情報の
流出に異様なほど神経を尖らせている。特に技術情報が集まる生産工場での対策は徹底して
いる。ソウルから車で一時間、半導体の主力工場の一つである器興工場を訪れた日本人ビジネ
スマンによると、「正門と建物とを結ぶ道路脇に面会専用施設が設けられている。サムスン社
内の人間と外部の人間との接触は、すべてその施設内に限られ、原則社屋への立ち入りを
一切許可していない。外部訪問者のみならず、敷地を出入りする全社員にまで撤底したボディ
チェックと赤外線カメラによる空港の通関同様の厳重な持ち出し物検査など物々しい軍事施設
並みの検査が義務付けられていた」という。
これまでも韓国は「スパイ防止法」などで国家の重要技術の流出を懸命に防いできた。
有名な事件としては数年前、サムスンのエンジニアが中国企業に携帯電話端末の技術情報を
漏洩したとして、逮捕、起訴された。エンジニアが利用したタクシーの運転手の通報によって
事態が明るみにでたということで、韓国の情報管理の凄まじさを物語る逸話である。
しかし、このような徹底した情報管理をもってしても、完全には技術を守れないことは、
彼ら自身が誰よりも知っている。
「隣国に技術が盗み放題の国(日本)がある限り、我々がいくら技術情報を防衛したところで
意味はない」(サムスン関係者)との皮肉も聞かれる。また中国勢台頭の背後には、最近、
技術提携が本格化している台湾企業の存在があることもサムスンの苦悩を深めている。台湾・
馬英九政権による通商政策の転換から、台湾企業の大陸進出が緩和されたこともあり、台湾か
ら中国への技術流出はもう止められない段階にきている。