10/03/23 02:24:14
超高頻度取引(ハイ・フリークエンシ-・トレーディング、HFT)を行う海外投資家の資金が、今夏以降に本格的に日本株市場へ
入ってくる可能性がある。HFTには欠かせない私設取引システム(PTS)で決済リスクが解消、また欧州最大手のPTS業者が
日本に参入する予定で、彼らにとっての日本の使い勝手が良くなるためだ。
大和総研・情報技術研究所の古井芳美課長代理はこのほど、ブルームバーグの取材に対し、東京証券取引所に超高速
システム「アローヘッド」が導入されたことで、今後はPTSが拡大すると予想。海外の「HFTの本格参入は、今夏以降ではないか」
との見通しを示した。
PTSは現状、決済リスクの課題を抱える。取引所を通じた取引では、日本証券クリアリング機構 (JSCC)が清算業務に当たり
決済履行を保証しているが、現時点でPTSは対象になっていない。
しかしJSCCは、7月をめどにPTSでの約定も清算対象とする方針。さらに野村ホールディングス傘下で、欧州最大手のPTS業者
であるチャイエックス(Chi-X)が10年夏までに日本で業務を開始する予定で、古井氏の見方はこうした情勢を踏まえる。
アローヘッド導入から2カ月
東証に超高速システムが導入され、2カ月が経過した。取引処理速度は欧米並みに向上、多様化したトレーディング手法や
戦略の活用が可能になり、海外のHFT資金の新規流入などが期待されたが、東証1部の売買代金は昨年1年間の1カ月当たり
平均30兆7315億円に対し、1月は31兆7359億円、2月は26 兆7856億円と、新システム移行後も劇的変化は起きていない。
大和総研の古井氏によると、昨年東証の売買代金が上海取引所に抜かれ、取引が低迷する中でのアローヘッドの登場は
市場活性化の切り札、との意見もあった。しかし、現状の売買代金は「市場が活性化したとは言い難い水準」と言う。
HFTは2000年代に入り誕生、発達した超高性能のコンピュータを駆使し、1秒に1000回以上の取引注文・売買を行う
プログラム取引。HFTが米国並みになれば、東証の売買代金は現状比較で2倍、出来高は3倍、約定件数は数倍に膨れる
可能性があると同総研では見る。
実際、HFT先進のニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場銘柄の出来高、約定件数、売買代金の変化は、HFTが一般化
する以前の04年4月を1とした場合、06年4月は出来高が1.25倍、約定件数1.99倍、売買代金が1.54倍となり、09年4月には
それぞれ3.41倍、12倍、2倍に拡大した。東証では、約定件数については公表していない。
コロケーション、SORなど周辺インフラも着々
東証では、取引所のデータセンター内に発注サーバーを設置する「コロケーション」サービスを開始するなど、HFT向けの
インフラを整備してきた。コロケーションは、外部ネットワークを介さない分、注文執行が早い。また、証券取引所とPTSの株価を
比較し有利な市場に瞬時に発注するスマート・オーダー・ルーティング(SOR)機能を中心に、HFT向けのサービスを提供する
証券会社も増え始めた。
大和総研では、今回のアローヘッド導入を契機にPTSが拡大していくと予想。HFTにより、SORを利用した東証とPTSとの
市場間裁定取引なども増えると見ている。
▽ソース:ブルームバーグ (2010/03/18)
URLリンク(www.bloomberg.co.jp)