10/03/16 23:22:10
近年、若年貧困層が立ち上がり、声をあげています。そのスローガンの中に「この年収では
結婚もできない!」というタイプのものがあります。ちきりんは、若者層がひどく虐げられて
いるといるという現状認識については同意見なのですが、この手のスローガンにはいつも
違和感を感じます。
それは、この「結婚できる給与額の要求」が、まさに日本が高度成長時代に作り上げてきた
「年功序列賃金制度の維持」を意味しているからです。その主張の中では、給料とは「お金が
必要な人に払うもの」であり、「仕事の成果に対して払うもの」とは位置付けられていません
。だから、子どもの教育費や家のローンなど、一番お金が必要な50代の給料を高くして、
薄給でも暮らしていける若者には安い給料を払うのです。
日本では女性の給料は男性よりかなり低く抑えられていますが、この背景も同じでしょう。
女性軽視うんぬんの前に、女性とは「一家を養わない人間」であり、「一家を養う必要のある
」男性により多く払うのは当たり前だと考えられてきたのです。
さらに、今は多くの企業で廃止されましたが、以前は大企業には「家族扶養手当」なども
存在していました。給料とはまさに「家族を養うために必要なお金を支給する制度」だったの
です。
翻って現在、若者たちは「こんな年収では結婚できない」と自らの不遇を訴えます。けれど
、もし今の段階でそれに必要な額を払えば、彼らは数年後には「こんな給料では子育てできな
い」と言い出すでしょう。そして10年後には「こんな給料では家のローンが払えない」、
60歳になれば「こんな退職金では親も介護できない」と言い出すことになります。
これをすべて満たしていけば、彼等の主張は「年齢が上がれば、必要な額も多くなる。
したがって、中高年により多くを支払え」という主張となり、つまりは「年功序列賃金を
維持してくれ!」という主張と同一となります。
35歳の男性(妻と子どもあり)と、23歳の新卒1年目の男性(独身)が同じ仕事をしていた
としましょう。妻子がいる35歳の男性には35万円の給料を支払い、 22歳単身者には22万円を
支払う。その代わり、22歳の男性が35歳になった13年後には35万円(+インフレ分)を支払う
と約束する。これが年功序列賃金であり、正社員の給料はこのように決められています。
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ところが非正規雇用では、一律の時給で給料が計算されます。同じ仕事であれば、労働者の
年齢に関わらず時給は同じです。すなわち時給の仕事では賃金は年功序列ではなく、「同一労
働・同一賃金」なのです。だから35歳妻子持ちの男性も、 22歳単身者と同額しか稼げなくな
り、結果として「この年収では結婚できない」となる。これが現在起こっていることです。
しかし、だからといって「非正規雇用の労働者にも、年功序列賃金制度を導入するべきだ!
」というのが、本当にワーキングプアと言われる若者たちが主張すべきことなのでしょうか。
ソース:Business Media 誠
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