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「低コスト技術は低級ではない」ことの一例を紹介しよう。
韓国に続いて、米マイクロンテクノロジーの台頭も日本を激震させた。
96年に、マイクロンテクノロジーは日本半導体の約半分のマスク枚数15枚でDRAMを製造し、
価格破壊を起こした。この出来事を半導体業界では「マイクロンショック」と呼んだ。
これに触発された日本半導体は、半分のマスク枚数でのDRAM製造を試みた。
しかし、「やってみたができなかった」のである。
実際に、私が所属していた日立製作所のデバイス開発センターでは、その時のセンター長から、
「20枚のマスクでDRAMを作れ」と号令がかかった。その時点での日立のDRAMのマスク枚数は32枚もあった。
まず、設計部は、何とか20枚のマスクで設計を終えた。次に、このマスクを使って、
デバイス開発センターでの試作が始まった。その際、マスクが1 枚、2枚と追加されていった。
その際、プロセス技術者は、従来の性能と品質を維持するために、「まあ1枚くらいならいいだろう」
という考えで追加したのであった。また、その時のプロセス開発部長も、何と「マスクの1枚や2枚の追加は
問題ではない。性能と品質を下げるな」と指示を出していたのである。
さらに、試作後のDRAMを検査する品質保証部も、これまでのスペック「25年保証」を一切変更しようとしなかった。
そのため、品質保証部の承認が得られるまで、性能と品質を向上させるために、試作が繰り返され、
それとともにマスク枚数はじりじり増えていった。
デバイス開発センター長の号令はいつの間にか無視されていた。このような結果、試作が完了し、
工程フローが量産工場に移管される時には、マスク枚数は元の32枚に戻ってしまっていた。
つまり、半分のマスク枚数でDRAMを生産する技術は、すぐに真似ができるものではないのである。
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