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-続きです-
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日本や欧米企業の技術開発が進み、新製品の開発テンポが加速された場合、技術や部品、
製造装置の一部まで海外企業に頼っていると、自国の企業がその流れから取り残される懸念がある。
また、技術集約性の低い製品については、人件費の安い中国やベトナムなどで製造することが可能になる。
その結果、韓国企業が中国・ベトナム企業からの追い上げに苦しむことも懸念される。
上からは取り残され、下からは追い上げられる―。
それが“サンドイッチ現象”の正体だ。主要国の多くが経験した苦難を、韓国もいずれかの段階で、
味わうことになるだろう。
韓国企業は、そうしたハードルを上手く乗り切ることができるか否か。注目に値するところだ。
■浅田選手の気概を忘れるべからず!日本にも追撃のチャンスは十分ある
さて、こうして韓国の現状を考えてみると、「わが国企業にもまだ十分勝機がある」ということができる。
しかし、だからと言って安穏としているわけにはいかない。
韓国には、わが国にはない企業に対する政府の支援体制や、効率的な企業戦略がある。
それらが、わが国企業にとって大きな脅威であることは間違いない。
現在のわが国政府は、企業よりも家計部門に対する厚生を重視しているようだ。人口減少に悩むわが国には、
そうした政策運営がある程度必要であることに異論はない。
しかし一方で、「企業を強くする視点」が必要であることも、忘れてはならない。
何故なら、わが国の高い生活水準を維持するためには、どうしても、それなりの経済的価値を
稼ぎ出すことが求められるからだ。
収益を稼ぎ出すことができるのは、企業しかない。
企業が強力な競争力を持って利益を上げられるからこそ、政府はそこから上がる税収で、国民の
福利厚生を厚くする政策が打てるのである。
むろん家計部門も、企業が作る付加価値の分け前を得て、消費活動ができるのである。
それを忘れるべきではない。
わが国企業の税負担は、世界的にかなり高水準にある。わが国の有力な電気メーカーの経営者は、
「実効税率40%のわが国と、25%の韓国企業では競争にならない」と言っていた。
仮に、日本企業と韓国企業が100億円の利益を手にしたとする。
その場合、韓国企業の納税額が25億円に対して、わが国企業は40億円の納税を行なわなければならない。
その差額は、実に15億円。儲けの差で、どうしても設備投資などに当てられる資金量に違いが出てしまう。
一方、責任は政府ばかりにあるわけではない。企業の経営者にも大きな責任がある。
経営者には、常に動きの早い経済動向を適切に分析して、迅速で有効な経営判断を行なうことが
求められる。そうした役割期待を十分に果たすことができれば、わが国企業が韓国企業に勝てるチャンスは
十分あるはずだ。
フィギュアスケートの浅田選手は、雪辱を期して次の五輪に挑むという。
我々も、そうした気概を忘れるべきではない。
執筆者プロフィール 真壁昭夫(信州大学教授)
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。
ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。
みずほ総研主席研究員などを経て現職に。
-以上です-