10/03/05 21:43:42
「バイオで科学技術立国」のかけ声が虚しい。ライフサイエンス系の雑誌が次々と消滅して
いる。日本語で書かれた科学誌は風前の灯だ。
書店にいまも並ぶのは1月号のまま。共立出版のバイオサイエンス専門誌「蛋白質核酸酵素」
はもう消えた。
昨年10月、「来年1月号で休刊にする」と同社幹部から知らされた編集委員会幹事の山本
正幸東大教授にも休刊は「寝耳に水」だった。
「ついこの間、創刊50周年を祝ったのに」
■電子版英語雑誌が席巻
同誌は、生化学や分子生物学の研究が本格的になろうとする1956年、大阪大の赤堀四郎、
名古屋大の江上不二夫、東京大の渡辺格(いずれも故人)という先駆者3人が協力して創刊
した。当時は、ワトソンとクリックの遺伝子2重らせんモデル発見から3年ばかり。進歩の
速いこの分野を詳しく速やかに紹介するのが目的だった。
生物関係各分野の解説記事のほか、分析方法の詳細を載せたのが好評だった。読者は医学系
、理学系研究者ばかりでなく、農学系、工学系もいた。読者層の幅広さは同誌を学際的な
雑誌に育てた。
例えば、分子生物学といっても、ネズミなどの動物ばかりでなくイネなど植物も取り上げた
。あるテーマに沿った特集、あるいは増刊号など、隠れたベストセラーもあった。
以来、同誌に載った日本語の解説論文は、50年以上にわたって日本のバイオサイエンスを
支え続けた。2006年には創刊50周年を祝い、その際は発行部数が1万5千部とされた。米国の
専門家が使う医学・生物学論文データベース「PubMed」にも論文の題名が入力されている
唯一の和文解説雑誌としても知られていた。
今でも、原稿を書きたい人はいくらでもいたはずだ。なのに、休刊となったのはなぜか。
山本氏によると、数年前から部数が漸減。さらに、大学図書館などが高額で電子版専門誌を
外国の出版社からまとめ買いするようになり、その分、個人でも買える日本語誌は打ち切られ
る対象になった。「最新情報は電子版の英語雑誌で」という日本語離れも進み、経済危機に
よる広告減少がとどめを刺した。
ソース
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