10/03/05 14:52:28
「ここに書かれているのは方法論。すべてごもっともなことですが、それでは、一体
何を目指すのか。それが明確でない。本来は、最初にそういうビジョンが示されて、
そこに向かって、どうしていくのかが示されていくものではないでしょうか」
3月3日に行われた食料・農業・農村政策審議会企画部会。委員の1人、合瀬宏毅氏
(NHK解説主幹)は、「新たな食料・農業・農村基本計画」の策定に向けた主な
論点について、痛烈に批判した。
他にも、荒蒔康一郎氏(キリンホールディングス相談役)から、「目指すべき姿を描く
ことが必要」などの意見が述べられた。最後に、部会長を務める鈴木宣弘氏(東京大学
大学院教授)からも、「10年後のビジョンをはっきり示さなくてはいけない」という
発言があり、課題が示された。
ここで策定しようとしている食料・農業・農村基本計画は、「国民の食料をどのように
確保していくか」「そのために国内の農業をどのような形にしていくか」などを、10年
という長期で考え、政策を決めていくための骨格となる。いわば、最も重要な国策の
指針だ。5年ごとに見直され、その審議が今、佳境に入っている。
予定では、残り3週間ほどで答申案がまとめられ、それを受けて閣議決定されることに
なっている。これまで、2年5ヵ月間、20回の審議(民主党に政権が交代してからは
5ヵ月間8回の審議)を重ねてきている。
しかるに、最後の最後になってもまだ、「目指すべき姿」について、審議会の合意形成
には至っていないばかりか、十分な議論にすらなっていない。審議会のメンバーは、
農業生産者、主婦、学者、メーカー経営者など幅広い分野にわたり、意見が大きく
異なり、激論になってもおかしくないが、そうはなっていない。
原因は、時間が少ないにもかかわらず(特に政権交代後)、審議の対象が広がり過ぎて
いることと、審議事項の順番の設定にある。
たとえば、農業の目指すべき姿を議論する上で最も重要な論点である、農業経営体の
育成・確保(誰が日本の農業の中心になるのか。彼らをどう育て、確保するのか)は
今頃になって、冒頭の議論に入る前に1時間強、意見を述べ合っただけだ。
各委員からの意見を受けて、政務官の佐々木隆博氏が、問題解決の難しさをまとめた。
要旨は、農業も、産業としての競争力や効率性を追求すれば、大規模化して少数精鋭で
担うほういい一方で、農村地域のコミュニティを維持するためには、既存の家族経営
などを維持していく必要がある、というものだ。
確かにその通りだ。しかし、だからこそ、それに対する政策上の解決策を議論することが、
審議会に求められているはずだ。たとえば、「農業政策は、産業政策として競争力向上の
目的に集中すべきで、コミュニティ維持のための政策は社会政策として別途行うべき」
とか、「農村ではそれらは不可分で、両者の問題を同時に解決するような農業政策を
行うべき」といった議論が必要なのではないだろうか。
※もう少し続く
◎ソース
URLリンク(zasshi.news.yahoo.co.jp)