10/02/22 18:39:50
2月5日と6日、東京・秋葉原で、「森林の仕事ガイダンス」が催され、林業に関心をもつ
老若男女が2000人以上集まった。俳優の菅原文太氏による農林業復興に向けた活動の
トークショーや、林業従事者による仕事内容の紹介、林業就業相談会などが行なわれた。
今年度で9年目を迎え、東京のほか、1月に名古屋と大阪で開催された。認知度は高まり、
各会場とも参加者の数は上々。「ここ2年間は不況で、失業者が林業に関心を示し来場する
ケースが増えている」と主催者の全国森林組合連合会は言う。
林業は、若手の就業者不足に直面している。ガイダンスの主な目的は、林業に関心の
ある人を就業に結びつけることにあり、成果は出ている。
ガイダンスを資金面で補助するのは農林水産省林野庁の「緑の雇用担い手対策事業」だが、
以前は1800人程度だった年間の新規就業者が、この事業が始まった2003年度以降、
平均で3200人程度と1.7倍になっているのだ。
同事業は、新規に人を雇用した林業事業体に、教育費などの面で支援している。期間は
最長3年で、初年度は新規雇用者1人につき年90万円を補助している。「この制度を利用
することで、数年ぶりに新規採用した事業体が出てきている」(連合会)という。
見方を変えれば、それだけ林業の経営が厳しいということだ。人を新規で雇う余裕がない
ため高齢化が進み、全国で4万7000人弱の就業者の中で 65歳以上の高齢化率は26%超に
も及ぶ(全産業の高齢化率約9%)。
林業の産出額は、1980年の1兆2000億円弱をピークに、2007年で4414億円と下がってきた。
国内の木材価格も下落が続いてきた(スギの立木価格でピークの7分の1に)。この事実は、
「林業は衰退産業」という一般的なイメージを裏付ける。
しかし、森林の資産は相当なもの。国土に占める森林面積比率は、日本は世界第2位で
68%(1位はフィンランド74%)。森林面積は日本2500 万ヘクタールで、フィンランド
2300万ヘクタールやスウェーデン2800万ヘクタールなど北欧の森林国と肩を並べるほど
豊かだ。
にもかかわらず、日本の林業の経営が厳しいのは、「森林所有が分散して事業体が
小規模」「機械化が遅れている」「木材の搬送ルートが整備不十分」などから、
全体として生産性が低いためだ。
ただし、近年、追い風が吹き始めている。第一に、中国を中心とした新興国の木材需要が
急増する一方、ロシアなど木材供給国が輸出税を増やすなど制限をかけており、木材
価格は上昇傾向にある。
第二に、地球温暖化対策で、森林価値が高まっている。日本政府はCO2吸収のために
森林整備に注力すべく、間伐面積を07年度より従来水準に比べて毎年20万ヘクタール
増やす計画を実行している。間伐とは、森林全体の成長を適正化するために木を間引く
こと。これにより林業の仕事は増える。
しかし現状は、この追い風を活用する流れにはない。民間の森林主とすれば、木材の
販売収益が上がらなければ、費用増となる間伐などをわざわざ行う気にはならないからだ。
間伐をしない森林は通常、衰退していき、価値が低下してしまう。
そして、間伐などの仕事が増えなければ、新規就業者が増えず、林業の技術が後世に
伝承されない。林業全体で悪循環に陥っているのだ。
※続く
◎ソース URLリンク(diamond.jp)