10/02/10 09:18:15
「マグロは抜きますか」。スシ好きのフランス人と日本レストランで「握り」を注文したら、
日本人のウエイター氏がこう尋ねてきた。
「えッ? トロは気持ち悪くて嫌いだけれど、赤身は好きよ」と私が答えると、
「フランス人の中にはマグロを絶滅の危機から救うために抜いてくれと言う人がいるので」と言う。
なるほどね。カタールのドーハで3月に開かれるワシントン条約の第15回締約国会議で
乱獲のため絶滅の恐れがある大西洋・地中海産クロマグロの国際取引禁止を求めるとの
モナコ提案を、フランスが支持すると発表して以来、乱獲の元凶は「スシ」にあるといったニュースが
テレビなどで派手に取り上げられている。
モナコが昨年10月にこの提案をしたときに欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は
支持を表明したものの、主要なマグロ漁国のフランス、イタリア、スペインは反対していた。
ところが、イタリアが1月下旬に支持に転じたのに続き、フランスも先ごろ、支持に回ったことで、
会議の流れは禁止へとぐっと傾きそうだ。投票国の3分の2以上がモナコ提案に賛成すれば
禁止が決まり、エジプト、ルワンダもすでに支持を正式表明している。
フランスは禁止までに、「1年半の猶予期間」を置くとの条件を付け、この間に科学的検査や
漁業関係者の補償問題などの「入念な計画を練る」(ボルロー・エコロジー・エネルギー・持続的開発相)
とし、この条件も会議で提案する。
禁止反対の日本は「(状況を)ひっくり返せるように努力したい」(赤松広隆農水相)と、
禁止回避に向けて関係国への事前説得に力を入れる考えを示しているが、
その声はフランスには届いていないばかりか、日本は「(クロマグロの)8割消費国」「スシ犯人説」などと被告人扱いだ。
ただ、ここ10年、クロマグロを大量に消費しているのは日本だけではない。
フランスなど欧州でも健康食ブームとあいまって、スシやサシミが人気を呼んでおり、
乱獲や価格高騰に“貢献”中だ。クロマグロは今や、「赤い金」とも「海のダイヤモンド」とも呼ばれる貴重品だ。
漁場も地中海から大西洋、リビア沿岸近くまで伸びているとか。
2002年には、世界自然保護基金(WWF)が欧州委員会に緊急措置を講じるよう訴え、
委員会もこれに応えて漁獲高の制限数量を決めた。だが、07年には地中海と大西洋の制限量4400トンを超過。
08年にも規定を超えないよう漁期の短縮を決めた委員会とマグロ漁者が対立して、
漁船が仏南部マルセイユの2港を閉鎖、石油タンカーなどが入港できない騒ぎになった。
補償金問題も代々の農業・漁業相の頭痛の種だ。
テレビのルポ番組で、仏北西部ブルターニュ地方では人気のマグロのステーキなどをメニューから外すという
「善行」を行うレストランが出てきたと紹介していた。
日本レストランはパリだけで約800軒。マグロ抜き「握り」の登場も十分にあり得る状況である。
URLリンク(sankei.jp.msn.com)