10/02/05 01:57:08
日本航空の経営問題ばかりが話題になるが、じつは全日空もこの3月決算で500億円近くもの巨額赤字を計上する。
日本航空の倒産を横目で見ながら、全日空幹部は1月28日に急逝した山元峯生前社長への思いを新たにしている。
「山元前社長の時代に、当社は思い切ってANAホテルの売却に踏み切った。
その時に得た2300億円のキャッシュフローがなかったらと思うと、ぞっとする。JALは他人事ではない」
全日空も債券市場からの資金調達が困難に
絵空事ではない。
日本航空の法的整理は必然の判断だったが、そこから派生する航空業界全体への影響について政府はあまりにも鈍感だ。
全日空幹部の心配は、もう既に債券市場からの資金調達が困難になっていることだ。これは由々しい事態だ。
日本航空とは比較にならぬほど全日空の財務体質はいい。
だがその全日空も、リーマンショック後の需要激減のなか、今期の決算で500億近くもの赤字を計上する。
マーケットの先行き不安は日本航空も全日空も一緒だ。
しかし全日空がリーマンショックにも耐え、公的資金にも依存せず、自力で運航ができている直接的な背景は
ホテル売却で得た2300億円のキャッシュフローのおかげだ。
山元前社長と親しかった全日空幹部が思い起こす山元の言葉がある。
「日本航空の後ろを追いかけるのはもうやめる」
米国の9.11以降、世界の航空会社はどこもみな苦しみ続けた。燃料価格の高騰もあった。
そんななか山元前社長は全日空の体質改善に奔走したが、その際、山元が貫徹した信念は日本航空の呪縛をかなぐり捨てること。
ANAホテル売却はそれを象徴する経営判断だった。
全日空は自社で出来ることを、確実にやっていく以外に生き残る道はないと割り切った。
日本航空へのライバル心を捨て去り、全日空は細い道だが将来への活路を見出してきたという経緯がある。
自己改革せず、体質が変わらないJAL
そこへ、借金棒引きと公的資金で財務がピカピカになった日本航空がダンピング攻勢をかけている。
経営者の顔は挿げ替えられたが、日本航空幹部の深層心理はなにひとつ変わっていない。
朝日新聞によれば
「日本航空は2007年3月に廃止した『バースデー割引』を今年4~9月に復活、誕生日の前後7日間、国内線運賃が最大74%割引になる」という。また「4~6月には各月ごとに7日間の安売りを実施するバーゲンフェアも設定した」という。
悪質きわまりない。さすがに前原誠司国交相も即座に
「公的資金を入れてダンピング競争に陥ることは厳に慎まなければいけない」との考えを示したが、
すぐにこうした行為に出てしまう感覚こそが日本航空の本質を表しているといえよう。
やはり日本航空の幹部社員には、当事者意識が決定的に欠落しているのだろう。
悪いのは国であり、族議員であり、自分たちは犠牲者だと思っているのではないか。
少なくとも公的資金で救済されたことの意味を日本航空の幹部社員たちがまったく理解していない。
私はこれまで倒産の地獄から這い上がり、見事再生を果たした企業の事例を数多く取材してきたが、そこに共通するのは自己改革への執念だ。
景気の善し悪しやライバル企業の戦略など、外部環境への意識など入り込む余地などありえない。
過去の栄光も、プライドも何もかもかなぐり捨て、自己改革に集中することができなければ、倒産企業の再生など絶対にありえない。
>>2に続く
ソース:nikkei BPnet
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