10/01/26 21:08:30
■すべての個人に無条件で8万円程度を給付する
低金利政策で景気を回復させようにも、そもそも需要が不足しているので、
企業は設備投資をして生産性を向上させようとは思わないでしょう。
また、低金利の円を借りて海外に投資をする円キャリートレードを生み出し、
国際的な過剰流動性を引き起こし、米国の住宅バブルの原因の一つとなったとも言われます。
必要とされていないところにお金を流すのではなく、不足しているところにお金を流すことを考えないと、
現在のデフレ状況を脱することは難しそうです。生産と消費のバランスを取るための手段として
注目されているのがベーシック・インカムです。ベーシック・インカムとは、
すべての個人に無条件で飢え死にしない程度の所得、だいたい月8万円くらいを給付するというものです。
この程度の収入であれば、生活の補助程度の目的で心ならずも働いていた人たちは
働くのをやめるかもしれません。一方、自活しなくてはならない人が、
働くのをやめるという選択をするほどの給付ではありません。
また、収入があると切られてしまう生活保護と違い、働くインセンティブを阻害することはありません。
ベーシック・インカムが実現することによって得られるものは選択肢の束です。
選択肢がないことによる不都合、たとえば劣悪な労働環境を拒否できないとか、
収入が少ないために好きな仕事をあきらめるとか、失敗を恐れて夢への挑戦をあきらめるとか、
もう一度勉強をし直したいけれど生活のためにあきらめるなど、
「こんなはずじゃなかった」という鬱屈した思いから解放される可能性は高まります。
日本初のさまざまな芸術や文化が花開くかもしれません。
雇う側の企業としては、契約書1枚で労働力を安く調達できる環境ではなくなり、
労働力確保のための工夫が求められる一方、
ベーシック・インカムによって労働者の生存は保証されるので、
会社都合による退職勧奨がしやすくなるかもしれません。
しかし、経営状態が悪くなったとしても、社員の雇用を守るという名目で
国に助けてもらうということは難しくなるでしょう。
■他の現金給付は不要になる
ベーシック・インカムが導入されると、生活保護や雇用保険、
老齢基礎年金などの現金給付部分は不要になり、そのために要していた事務コストも減らせますし、
現行税制における基礎控除や配偶者控除、扶養控除などはなくせます。
また、失業と同時に住むところをなくし、刑務所に入りたいがために万引きをするといった犯罪を防げ、
それも行政コストの減少につながります。
何よりも、「今の自分が仕事にありつけないのは●●のせい」とか「自分が虐げられているのは▲▲のせい」
といったような、敵をつくることにより自分の居場所を見つけるギスギスした社会ではなく、
人々がつながっていける社会に近づけるのではないでしょうか。
続く