10/01/18 23:38:13
>>6のつづき
■奨学金は“日本版サブプライム”か?
学費をまかなうために借りた奨学金の不良債権化も、深刻な問題だ。
日本学生支援機構によると、奨学金を3カ月以上滞納した人は2007年度、約20万人。延滞
債権は2200億円超に上っている。
もちろん、中には無責任な借り手もいることだろう。だが、一方で低所得のため、返済
したくてもできない人々もいる。大学院卒で6カ月以上の延滞者を見ると、正社員はわずか
31%。アルバイトや無職は52%だった。年収300万円未満の人も66%いる。
専門の社会政治学の分野で、すでに多数の著書や翻訳書を出している吉村幸二さん(仮名・
44歳)。博士課程のとき、奨学金として400万円を借りた。だが、いまだに返すことができ
ないという。
「2つの大学の非常勤講師を掛け持ちし、専門学校の講師や通信添削の副業をしても、年収は
やっと180万円弱。年間19万円の返済額はとても捻出できません」
借金を背負い、先の生活の見通しも立たない状況では、不安が募ってやりたい研究にも
没頭できない。
首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長はこう説明する。
「高学歴を取得するには、研究に時間を割かざるをえない。したがって多くの院生はアルバ
イトをする時間もなく、やむをえず奨学金を借りるわけです。しかし大学の学費は近年高く
なる一方。私立大学の授業料は30年前の4.5倍、国立大学はなんと15倍です。OECD諸国内
ではトップのアメリカに次ぐと言われています。
しかも独立行政法人化後の国立大学は、国からの運営費交付金が年々減額されているため、
もう学費を下げることはできません。その結果、世界でも異常なほどの高額な借金を、若手
研究者が背負うことになってしまったのです」
奨学金とはいっても、欧米のスカラシップ(給付型)と違い、日本のものは単なる“教育
ローン”だ、と松村さんは言う。おまけに6割以上の学生が借りるのは、利子がつく第2種
奨学金だ。
「まもなく施行される改正貸金業法では、年収の3分の1を超えるなど、返済能力を超えた
貸付けは禁止されます。ならば、無職の学生に多額のおカネを貸す今の奨学金事業は、
“日本版サブプライム”とはいえないでしょうか」(松村さん)。