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1990年WHO(世界保健機関)は「口腔保健医療関係者に対する教育上の重要課題―変革か衰退か」
を発表し、その第10章「勧告」の中で「いくつかの国での歯科医学校の乱増は非難さるべきであり、
この種の無計画な活動によって生ぜしめられた資源の浪費を認めざるを得ない」と述べている。
この一節は、具体的には日本の歯学部の無計画的増設を指しているのであり、逆に欧米では虫歯、
歯槽膿漏の減少に対処して、歯学部の入学定員の削減、歯学部の閉鎖を計画的に進めたのである。
ボン大学では、保健・衛生思想の定着とともに、受診率の低下がおこっているのを予見して、
入学定員70人であった歯学部を36人と51%に縮小しているし、アメリカでも歴史ある歯学部を廃止し、
医師過剰問題を事前に防いでいる。
日本でも社会的必要をはるかにこえる歯科医師供給になることは、関係者の間でよく知られていた。
にもかかわらず、歯学部の増設が政治家の思惑と受験生の増大によって推し進められた。
その結果、医師の一般診療所の医師収入を100としたとき、歯科のそれは、1981年の10月調査時点
の100.7から87年11月には61・5に落ちたのである。
* 将来の歯科医師過剰が明確であるのに、なにゆえ、これほどの数の歯学部増設を文部省が認めた
かについて、歴代の責任者はすべて、その新設に与党の実力政治家がからんでおり、その力の前に
受けつけざるをえなかったと述べている。
「日本経済の変容」伊東光晴(著) (2000年)より