10/01/14 02:14:07
>>1の続き
ここで取り得る代替策は、より大きな経常黒字を出すことだった。
しかし、それには為替レートの下落が必要になる。
日本は中国の為替政策に追随せざるを得なかったわけだ。
もしそうしていたら、間違いなく米国が激怒していたはずだ。
だが、クー氏の主張には1つ弱点がある。
同氏の理論は、そもそもなぜ巨額の債務が発生したのかを説明していないし、
ようやく企業部門のバランスシート調整がほぼ完了した今、なぜ日本が世界的なショックにこれほど脆かったのかも説明していない。
企業の過剰貯蓄と投資機会の減退
筆者自身の見解では、日本の根本的な構造問題は、
西側諸国に追いつこうとするキャッチアップの成長段階が終わった後の過剰な企業部門の貯蓄(留保利益)と投資機会の減退だ。
ロンドンに拠点を置くスミザーズ・アンド・カンパニーのアンドリュー・スミザーズ氏が指摘するように、
住居を除く日本の民間部門の固定投資は 1990年にGDPの20%を占め、米国の割合の2倍近くに達していた。
それが2000年代に多少回復を見たものの、今では13%まで低下している。
だが、企業の留保利益には、これに相当するような減少が見られない。
1980年代には、こうした貯蓄を吸収するという課題に対応したのが金融政策で、
それが借り入れコストをゼロ近辺にまで押し下げ、継続的な無駄な投資につながった。
2000年代には、この課題に対応したのが対中貿易を中心とした輸出と投資ブームだった。
そこへ今回の世界的な経済危機が起き、輸出と投資に大打撃を与え、深刻な景気後退をもたらした。
ピークから大底までのGDP縮小率が8.6%に達した日本は、高所得国から成るG7の中で最も大きな景気後退に苦しめられた。
経済協力開発機構(OECD)によると、純輸出の落ち込みは2009年に、それだけで経済を1.8%押し下げた模様だ。
今、日本の目標は内需主導の成長を達成することでなくてはならない。
最も重要な要件は、企業の貯蓄の大幅な削減である。
前出のスミザーズ氏は、これは自然に起きるはずと主張する。
というのは貯蓄は主として資本減耗であり、それ自体が過剰投資の歴史の産物だからだ。
筆者はここに1つ付け加えたいことがある。
もし、こうしたお金を活力のない経営陣の手から引き離すために企業支配権の市場を必要とする国が存在するとしたら、
それは日本だということだ。
日本の大企業に恩義のない新政権は、今こそついに、企業の行動を変えるような政策を採用すべきである。
また、日本はデフレを止める必要がある。
これを実現するためには、日銀は政府と協力して、為替レートの行き過ぎた上昇を阻止しなければならない。
最近見られた円高に対しては、もっと積極的な金融政策を取って然るべきだった。
日本がついに意味あるインフレ―最低限でも2%の物価上昇―を実現できたら、実質金利はマイナスになる。
これは日本がなお必要とするものだ。
日本の教訓を一番学ぶべき国は・・・
一方、世界各国は、自分たちが日本経済の凋落から教訓を学んでいるのかどうか考えなければならない。
日本の経験は、継続的な財政赤字、ゼロ金利、そして量的緩和をもってしても、
今の米国のように過剰生産能力と膨れ上がったバランスシートに苦しむバブル後の経済に
突如インフレ高騰をもたらすことはできないことをはっきり示している。
>>3に続く